Fate/SAKURA   作:アマデス

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元号改正初日を記念して番外編を投稿!

大奥イベントが作者に特効過ぎてたんで衝動的に書いてしまいました。一発ネタなんで深く考えずに読んじゃってください。

ネタバレ全開なので注意!


【突発番外短編】桜ちゃんのいく大奥【一発ネタ】

 ビーストⅢ/L。

 

 カーマ/マーラ。

 

 『並行世界の間桐桜』を依代とし、擬似サーヴァントとして顕現した愛を司る神性。

 そんな彼女(彼?)が人類悪()として覚醒した後に行ったのは、カルデアの職員及びサーヴァント達を材料(リソース)とした徳川廻天迷宮・大奥の作製だった。

 

 全五階層からなるこの迷宮に一歩でも足を踏み入れたなら最後、巧妙(あからさま)に調えられたその在り方によって知らず知らずの内に人としての()()を暴き出され、待っているのは徳川化という洗脳(愛による溺死)

 

 そう、全ては()()()()()()()()()()()()である『この世界の間桐桜』を屈服(堕落)させ、己が『R』よりも優れている事を証明する為に。

 そしてその先にある()()()()を達成する為に。

 

 

 

 ───────だと云うのに。

 

 

「………なん、なんですか、貴女」

「?何、とは?」

 

 カーマは己の目の前に居る自分と瓜二つの女───依代が同一存在なのだから当たり前だが────を、まるでUMAに遭遇したかの様な心境で見据えていた。

 

 ─────何なんだ、何なんだこの女は。

 

 

「…有り得ません…だって、術式は完璧に、問題無く発動していた筈です」

「…術式、ですか」

 

 カーマの発言に桜は目を細めて相手の腹を探る様な面持ちで言葉を紡ぐ。

 

「確かに、精神に作用するタイプの、何等かの魔術…と云うよりは権能?でしょうか?まあ兎に角それっぽいものは感じましたよ。私その手のものには敏感なので。ですから焼け石に水かもしれませんが精神安定、概念防御の術を自分にかけておいたのですが……其方(そちら)の様子を見るに、案外上手く嵌まったみたいですね?」

「…っ!違う…違う違う違うっ!!そんなんじゃありません!!そんなもので、()()()()()()()筈が無い!!」

「……は、え?とく、え?とく、がわ…?」

 

 想定外の事態に喚き散らすカーマとは対照的に、その口から飛び出して来た素頓狂(すっとんきょう)な単語に桜は首を傾げて呆けていた。

 

「惚けないで!一体どんな手を使ったんですか!?()()()()()()とは云え、高々人間風情の貴女が神霊である私の施した術式に逆らえる筈が無い!」

「……惚けてなんて、いませんよ。今言った事以上の対策を私は取っていません」

嘘仰(うそおっしゃ)い!だって貴女、此処に来る迄に、完璧に迷宮に嵌まって…あ゛あ゛あ゛っ!もうっ!!これだから人間って嫌いです!ちっぽけで矮小でその癖突拍子も無い事ばかりしでかして、その責任(負担)を全部偶像()に押し付けてくる!!」

「え、えと…」

 

 ヒステリックに喚き出したカーマ(自分と瓜二つの少女)への対処法が判らず、桜は眉根を下げた困惑の表情で後ろを振り返って頼れる仲間(同行者)達にヘルプを投げ掛けた。

 しかしマタ・ハリは桜と同じ様に眉根を下げて苦笑い、シェヘラザードはオロオロと桜、カーマ、周りの皆と視線を周回させるばかり、柳生宗矩は静かに黙して首を振った。

 要するに全員が対応を(マスター)に丸投げした。

 

 頼れる筈の仲間達のまさかの裏切りに桜は困り果てる。

 ─────そしてそんな桜とカーマ、二人の様子を殺生院キアラは実に愉快気に、朗らかな笑みを浮かべながら見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 

 

 

 

 第一階層にて。

 

 

「…この自動人形(オートマタ)、見掛け程手強くはありませんね?」

「そうですわね……ですが敵、それも命の無い絡繰(からくり)と云えど無闇に蹴散らすというのも───」

「───いえ、甘い事は言ってられません。先に仕掛けてきたのは向こうです。こうして武器を向けて来ている以上、問答無用!」

「あら、それでは?」

見敵必殺(サーチアンドデストロイ)です!一気に突破しましょう!相手を始末しようとすると云う事は逆に自分が始末される可能性を常に孕んでいるのだと拳で教えてやりますとも!─────というか士郎さんと姉さんに手ぇ出した時点で情け掛けて貰えるなんて思うなやあああああああああああああっ!!!」

「あらあらうふふ、ええ、ええ、良いですわよ桜さん。その常に前へと進もうとする気概は何時見ても心地が好いもの。─────それに御存じかと思いますが、私、荒っぽく激しい交わりも、嫌いじゃありませんのよ?」

「アアハイ、嫌って云う程知ってマスヨ」

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 続く第二階層にて。

 

『アア、将軍様、将軍様』

「へ?しょ、将軍?」

『コノ大奥ハ将軍様ノ為ニ造ラレタ場所。此処ニ居ラレル以上貴女ハ将軍様ニ違イアリマセン』

『ササ、ドウゾコチラヘ、オモテナシ致シマス』

「………ええ、そうですね。私は将軍ですもの。えーっと、よ、良きに計らえ~?」

「桜さん桜さん」

「あっと、何ですかキアラさん?」

(よろしいのですか?こんなあっさりと相手の誘いに乗ってしまわれて)

(ん~まぁ、確かにあからさまに罠っぽいですけど、まだ敵の正体も目的も何もかもが分からない状況ですからね。敢えて誘導されてみるのもありかと)

(全く、旦那様がいらっしゃる身でありながら何と身持ちが軽い事でしょう。もっと御自愛くださいと普段から皆様に散々諫言(かんげん)されているではありませんか)

(キアラさんにだけは身持ち云々言われたくありませんよ!)

(あら、以前私の誘いにほいほい乗ってどの様な目に遭われたかもうお忘れですか?)

(…………今はこうして仲良く出来てるんですから結果オーライですよ)

(ふふ、そうでしたわね。どれだけ派手に転んでも最終的には上手く着地するのが貴女ですものね)

(くっ、色々と納得いかないのに納得せざるを得ない…!)

『将軍様?』

「おっと、ごめんなさい。それじゃあ奥まで案内お願い出来ますか?」

『畏マリマシタ』

『アア、将軍様ガ中々来テクダサラナイモノデスカラ、我々寂シュウゴザイマシタ。ドウカ土産話ヲオ聞カセクダサイマセンカ』

「土産話…?う~ん、そうですね~…新婚の時夫と喧嘩して半ば殺し合いになった話とか…」

「桜さん、それは捨て身トーク過ぎますわ」

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 そして第三階層にて。

 

「─────っぷっっっはーーー!!」

「あらあら、良い飲みっぷりねー。ささ、もっともっとぐいっと」

「ええ…まだまだお酒は有ります…酒だけでは満たされない渇きは、私が癒しましょう」

「ええ~!?まだ有るんですか~?んもっほう、大っ!歓っ!迎っ!もっとじゃんじゃん持って来てくださーい」

「………………あ、あの桜さん」

「あっはは、流石は大奥!サービス良過ぎですよも~。このお酒も着物も上物ですしぃっししCCCコラボレーションライター!にゃっははは~」

(あ、これ下手に声掛けたら地獄見る奴ですね判ります)

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 更に進んで第四階層。

 

「いやぁ~~~愉しかったですね~~~」

「ソレハナニヨリデス」

「此処の所ちゃんとしたお酒も飲めてませんでしたし、正しく極楽気分でしたよ~」

「私は叫喚地獄に堕とされた気分でしたわ」

(と云うよりこの大奥自体……やはりこれは、五戒が関係している…?)

「まあまあ、そう言わないでくださいよ。酔い覚ましの霊薬は何時如何なる時でも常備してますし、何やかんやでマタ・ハリさんとシェヘラザードさんも解放出来ましたし」

「貴女ごと皆さんを峰打ちで気絶させたのは宗矩様ですけどね……いやもう、本当にありがとうございました」

「何、流石に見ていられなかったのでな…主殿の絡み癖は相変わらずの様だ」

「ごめんなさいね~、覚えてないとは云え色々と迷惑かけちゃったみたいで」

「ですが、此処からはカルデアの皆さんをお救いする為に、私達も微力を尽くしたいと思います」

「ありがとうございますお二人共。───さて、それで差し当たってはこの鍵が掛けられた扉ですけど…」

「何処かに鍵が有るって事かしら~?」

「───あっ…マスター…あれを」

「ん?あ、ほんとだ、人形が鍵の束を」

「…力尽くで奪い取りますか?」

「…いえ、あの人形がこれ迄と同様の性能とは限りませんし、無駄な戦闘を避けられるならそれに越した事はありません。───という事でちょっと()って来ますね」

「あら、十八番の虚数空間潜航ですか」

「あれほんと下手なアサシン顔負けの技術よね」

「───はい、お待たせしました」

「お見事、です」

「ふふん、どうですか?某蛇男も真っ青なこのスニーキングスキル!」

「見事な手際だったわよ~、生来の手癖の悪さが滲み出てるって感じだったわ正に」

「あ、マタ・ハリさんにナチュラルに毒吐かれると色々キツいものがありますね……ま、まあ兎に角、この調子でどんどん進んで行きましょう!」

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 そして締めの第五階層にて。

 

「─────うふふふふふ、待ってましたよ」

「───私?」

『貴女は…カーマ!』

「っ、パールさん、この人が誰だか判るんで…っていうか、カーマ!?」

『はい、この神性、間違いありません!愛の神、カーマデーヴァ!』

「成る程、桜さんとパールヴァティー様の御二人が導かれた理由が漸く解りましたわ。まさか同一存在を依代にしているとは…と云うかカーマデーヴァは本来男性神ではありませんでしたか?」

「ああ、はいはい。そういう考察とかどうでもいいですから───此処まで遠路遥々御苦労様でした。お疲れでしょう?さあどうぞ此方へ、()()がその疲れ、癒して差し上げます」

「っ!?これは、マスター…いえ、カーマが、こんな…?」

「分身の術なんて、まるで忍者みたいね~」

「…BBちゃん達で慣れてるつもりでしたけど、自分と同じ顔がこんな一杯湧いて来るというのは、なんか、こう、根源的な恐怖を煽られますね」

「増えるワカメならぬ増える桜…千夜一夜物語に加えるべきでしょうか」

「加えるべきではないと思いますねーはい!」

「そろそろ全ての桜顔を殺すヒロインB(ブロッサム)とか出て来るんじゃないかしら?」

「それXさんと違ってギャグ抜きのガチでエグい感じになりそうなんで勘弁してください!」

「───皆様、御戯れはそこまで。この状況、如何なさいます?」

「…えっと、カーマさん?貴女はどうしてこんな事を?と云うかそもそも目的は何なんですか?カルデアの皆さんは無事なんですか?」

「質問が多いですねー。そんな馬鹿正直に尋ねれば答えが返ってくると思ってるなんて、流石パールヴァティーが依代に選んだだけあって優等生キャラなんですね貴女」

『こらカーマ!桜さんへの悪口は許しませんよ!桜さんは確かに根はこの上無く善性ですが、結構な頻度で嘘吐きますしその際に表情を一切変えない腹の黒さだけに飽き足らず、時偶天然で相手を(たぶら)かすという恐ろしい二面の魔性を持ち合わせた女性なんですよ!(さなが)ら表では優等生を演じながら裏では複数の相手に粉をかけるビッチの如く!』

「フォローすると見せかけてマウントでボコるの止めてくれませんかパールさん!!」

「………はぁ、よく分かりませんけど、どうでもいい事ですよそんなの、貴女の性根なんて。貴女がどんなに穢い人間だろうと、私は貴女を愛します。ええ、愛せますとも」

「?愛、せる?」

「はいそうです。間桐桜さん、私の目的は只一つ、実に単純明快です。そう、貴女を愛する事。その為に私はこの大奥を造りました。─────どうでした?此処に来るまで。気持ち良かったでしょう?」

「はぁ…まぁ確かに途中途中でやたらサービス良かったですけど」

「うふふ…あんなのは序の口ですよ。この最後の階層では、私が直接相手をしてあげます。ええ、文字通り体を使って、ね」

「…えーっと、それ一応私の体なんですけど」

「自分自身を犯し、また犯されるというのも凄くイケナイ感じで興奮しませんか?やっちゃいけないと言われている事をするのって、とても気持ちがいいものでしょう?」

「ああ~、それには全面的に同意しますね」

『桜さん?』

「ええ、人ってそういうものです。ものの善し悪しを脇に置いて述べるなら、正しくそれが本質だと思います」

「くふっ、そうでしょうそうでしょう。───ですからほら、是非此方にいらしてください。何せ此処は、他でも無い貴女の為の極楽なのですから。道徳観、倫理観、そんなものに囚われる必要はありません。ただ只管に、その欲を満たしていただければそれでいい」

「……貴女は…………いえ、分かりました。折角のもてなしです。そのお誘い、受けましょう」

『んな!?』

「!?マスター!?」

「ちょっと、それは怖いもの知らず過ぎるんじゃないかしら~」

「マタ・ハリさん、私だって怖いものは怖いですよ。でも、何でしょう…あの人の事は、あまり怖く感じないんです」

「桜さん、張本人である私が指摘するのもあれですが、貴女以前私に対しても同じ事を仰って結局酷い目に遭ってませんでしたか」

『そうですよ桜さん!貴女は危機感センサー自体は正確に作動しているのに基準値がガバガバなせいで結局まともに回避出来ないんです!貴女はポンコツなんです!自分を信じちゃ駄目です!』

「いい加減泣きますよ、どんだけボロクソ言うんですか……兎に角、カーマさんが嘘を吐いていないのは確かです。それだけはちゃんと判りますから。だったら、折角の好意(アプローチ)を無下には出来ないじゃないですか。毒を食らわば皿まで、受け容れる事で人と人は愛を育み、絆を深める事が出来るんです」

(そうやって懐が大き過ぎる所を見せ付けていくから厄介な()達に執着されるんですよ。例えば私とか)

「わぁ…いいですねぇ桜さん。そういう姿勢大好きです。流石は私の依代になれるだけあります」

「ただし、一つだけ条件があります」

「おや、何ですか」

「私の為だけにと仰いましたよね?目的は私だけだと。───でしたら、キアラさん達と拐ったカルデアの皆さんを此処から解放して、もう手出しはしないでください。それが誘いを受ける条件です」

「─────ん、ふ、くふふ、欲張りですねぇ、要するに私の事を独り占めしたいと」

「解釈は好きにしてくださって結構ですよ」

「ちょっと、二人だけで勝手に話進めないで!」

「そうですよ、いけませんマスター…!死んでしまいます…!」

「はいはい、外野は黙っていてください。本人の許可が下りたんですから、桜さんの希望通り、速やかにご退場願いまーす」

「っ!これは」

「重圧…いえ、排斥ですか」

「っ!いけません、弾き出されます…!」

「マスター!!!」

『桜さん!!!』

 

「さあ、これで御望み通り二人っきりですよ」

「…の、様ですね。ご丁寧にパールさんと局さんまで私の中から排除しましたか」

「それでは早速……ふふ、ええ、そう、そのままで。貴女が何かをする必要はありません。只私に身を任せてくれればそれでいい、私が貴女を気持ち良くしてあげる、溺れる程の愛をあげましょう」

 

 

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 

 

 そんな感じでカーマによって大奥の最奥に連れ込まれた桜。

 自分と瓜二つの、無数の少女としっぽり過ごす事数時間。

 

 

 

 最初の一時間はカーマにもまだまだ余裕があった。

 

 二時間経つ頃には違和感を感じ始めていた。

 

 三時間経つ頃には焦燥が胸中で渦巻いていた。

 

 そして四時間が経過し、再度大奥を踏破して来たキアラ達一行が辿り着いた頃には、警戒心を剥き出しに桜を睨むカーマという構図が出来上がっていたのだ。

 

 こうして冒頭に戻る─────。

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 さて、大奥イベントをクリアした人なら既にお分かりの事と思う。

 

 そう、この桜、各階層にテーマとして施されていた五戒、その全てをロイヤルストレートフラッシュも斯くやという程にド直球で破ったにも拘わらず、()()()()()()()()()()のだ。

 

 これには仕掛人であるカーマも大いに精神を揺さぶられた。

 上手くいき過ぎて逆に怖くなるくらい完璧に嵌まってくれた相手が何の異常も(きた)す事無くケロっとしているのである、何等かの種を疑うのは至極当然と云えた。

 

 だが桜本人は正真正銘、先述の簡易的な対策しか取っていなかった。

 自身の領域を構築した神霊の施した、最早権能に近いそれを簡易の防御魔術等で防げる筈が無い。

 ならば桜以外の誰かが加護を付与して桜を護ったのかと云えば、そういった事も無い。

 正真正銘、桜は丸腰だった。

 

 そして相手の誘いに素直に応じてお互いに愉しんでいただけなのに、急に機嫌を悪くされ終いには警戒心剥き出しで怒鳴られてしまった桜は、何か不味い事をしてしまったか、自分のテクではこの娘を満足させられなかったのかと、いまいち緊張感無く困り果てていた。

 

 

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 

 

 殺生院キアラは朗らかに笑みながら内心で己の対極に位置する獣を嘲笑う。

 

 ()()()()()()()()()()と。

 

 見通しが甘い訳でも仕掛けが緩い訳でもない。

 やり方を間違えているのだ、あの蟲は。

 

 

 ─────間桐桜の、これ迄の28年間に及ぶ人生は、正しく波乱万丈と称するのが適当な程苦難に満ち溢れた、ベリーハードもといルナティックモードであった。

 魔術師の家系に長女と同等以上の才を持って生まれるというなんとも扱いに困るポジションを背負い、そのせいで転がり込んだ他所の魔術師の家にて無惨な仕打ちを受け、それでも性根を歪ませず歩み続け聖杯戦争に参加したかと思えば祖父の要らん置き土産のせいでドえらい目に遭い、段々と明らかになる真実、そのせいで生じた周囲との軋轢、強大な敵サーヴァントとの死闘等で心身共にボロボロになりながらも逃げる事無く全てを背負ってゴールテープを切り、その後先輩もとい夫と姉と共に世界中を回って様々なゴタゴタに巻き込まれまくってきたのだ。

 

 そして、その巻き込まれたゴタゴタの分だけ、()()()というものに触れてきたのだ。

 

 理想を追い求め続けた結果、手段と目的が入れ替わり外道と呼ばれる人種に堕ちてしまった者が居た。

 普通の人間とは真逆の感性を持って生まれ堕ちたが故に、自らの出生の意味を神に問い続けた者が居た。

 生まれが貧しいというだけで家族も財産も自由も奪われ、同じ様に奪われた者達の為にと国と権力者に立ち向かう者が居た。

 国力に乏しい国を何とか存続させ未来有る子供達に希望を持たせてやれる様、一を切り捨て十を救う苦渋の決断を下した権力者達が居た。

 只々正義の為に、大勢の人の笑顔の為に、人を苦しめ陥れる悪と呼ばれる連中を殺し続けた者が居た。

 周囲の無理解から悪のレッテルを貼られ排斥された大切な人達の仇を討つ為、世論を利用して正義の味方を気取る馬鹿を追い詰める者が居た。

 

 多くの人間を見てきた。

 本当に、大勢の人の心を聞いてきた。

 虚数という属性を持つが故に、人一倍そういった(もの)に桜は敏感だった。

 

 その結果桜は、他者を受け容れる様になった。

 

 元々素質はあったのだ。

 優しく慈しみに溢れ、自身を二の次にして周囲を気遣い、基本的に他者を責めず己の内に抱え込む、そんな愛情深い在り方が桜の本質である。

 数多の人々と交流し、その者の本質、原点、今に到るまでの経緯、どんな経験によりそう考える様になったのか、一番大切なもの、譲れないものは何なのか─────先ずはその者が懐く愛と正義を、見極め理解しようと努める様になった。

 そうして理解した後、それはいけない事だと判断したのなら、口で説き伏せ拳で語り合い、最終的に締めるとこはちゃんと締めるが、先ずは理解を示す、先ず最初に相手の事を受け容れるというステップを桜は踏むのだ。

 

 

 

(そう、彼女は─────この私の在り方さえ、受け容れたのです)

 

 

 殺生院キアラは一人、かつてを思い浮かべる。

 

 そんな彼女を()()()()()

 

 

 本当に、見当違いもいいところだ。

 

 

 

 

 

 彼女は()()()()()()()()()()()()のである。

 

 

 全てを平等に差別する事無く受け容れると云えば聞こえは良いが、それはつまり悪徳や不浄と云った醜いものも認めるという事である。

 それ等を律する事無く、抵抗も拒絶もしないというのは、全てを諦めて流されるまま軟弱に怠惰に過ごす、ある意味堕落の極致という見方も出来てしまう。

 勿論上記の通り実情は全く異なるが、桜が初期段階では相手がどれだけどうしようもない輩でも絶対に拒絶しないというのは事実である。

 だからこそ桜は大奥の影響を受けない。

 (はな)っから崩れ切ったボロボロの要塞を攻撃する事に何の意味が有ると云うのか。

 

 

 そしてその上で桜は自分を見失わない。

 

 先述の通り桜は締める所は締めるのだ。

 相手の心の内を知り、その在り方に共感する、実情に同情する、そうやって受け容れる事で理解を示す。

 だがその上で桜は裁くべきは裁くのである。

 大切な人を殺された、成る程復讐を果たしたいだろう、だが殺すのは駄目だ、その人にも事情があったのかもしれない、此方にも非が多少あったのかもしれない、確りと生かして償わせるべきだ。

 あの悪人を殺さねばならない、成る程その人が本当にどうしようもない外道なら殺すのも已む無しだろう、だが貴方は本当にその悪人の全てを理解しているのか、何等かの事情があるのかもしれない、その根底には悪人なりの正義があるのかもしれない、その正義に僅かでも心が揺れるならその刃を振り下ろすべきじゃない、一々理解する余裕等無い、話し合い等不可能だ、そんな甘ったれた事を抜かすなら、徹底出来ないのなら正義の味方なんて名乗ってはいけない。

 ─────そうやって、何処までも優しく周りを諭しながら、何処までも厳しく罰を与える。

 何処までも妥協して少しでも皆が笑える結末に辿り着けるよう、何処までも冷徹に実情を把握して処理していく。

 己の力の及ぶ限り、己の身を削って届く限り。

 

 それが、間桐桜という人間。

 矛盾しながらも己を失わず、根底にある本質に沿った在り方。

 心ある人間だ、無論猜疑心や警戒心は人並みに…いや、夫に付き合って修羅場に飛び込む事が日常茶飯事なのだ、人並み以上にそれ等を持っている。

 その上で相手を受け容れる優しさと信じる勇気を持ち合わせているという話だ。

 

 故に懐に入り込むのは至極容易い、自分の側に引き込む事すら簡単だ、最後の一線の内側に足を踏み入れるのだってチョロいもんである。

 だがそこまで籠絡しても桜はいざという時そういった前提を全部脇に置いて動けるのである。

 演技をしている訳ではない、本当に心の底から桜は相手の事を想っている。

 だからこそ相手にとって最善の選択を掴み取るべく、相手への理解、共感、同情、そういった自らの私情を一時殺して突っ走るのである。

 

 要するに、堕とすのは超簡単だが、そこから息をする様にさらっと復活して牙を剥いてきやがるのだ。

 

 ゲームシステム的に例えるならあれである。

 防御力は紙同然でHPも並だが、zeroにしたと思ったら瞬く間に全回復する復活効果がほぼ無限に等しい回数付与されているのだ。

 こんなもんチート通り越してギャグ、と云うか完全にシステムバグの類いだ、まともにやり合って勝てる訳がない。

 

 

 事、精神面での戦いなら桜は無敵に等しい。

 …物理面でもサーヴァントに引けを取らない、と云うか滅茶苦茶にヤバイレベルだがそこは今は関係無い。

 

 だからこそキアラはこんな()()()()で彼女を堕とせると思っていたカーマに対して失笑を禁じ得ない。

 マタ・ハリやシェヘラザードも彼女の大切な仲間ではあるが、それでは足りなさ過ぎる。

 彼女に対し勝機を作り出せるとしたら、それは彼女の根底に根差した二人───夫と姉を上手く使って揺さぶりをかければよかったのだ。

 

 尤も、それをやったが最後、地獄を見る羽目になっていただろうが。

 いや、或いはカーマ自身が依代の影響を受けて無意識の内にそれを忌避していたのか、どちらにしろ詰めの甘い事だ。

 

 

 

「もういいです!!数時間で駄目なら数日、数年と懸けて……絶っっっっ対に堕落させてやりますから!!!」

「っ!薄々思ってましたけどその角…やっぱりビースト!」

 

 そんな事を考えている間に状況が変わる。

 痺れを切らしたカーマ…いや、カーマ/マーラがその本性を現し直接攻撃に出て来た。

 それを受けて臨戦態勢に入る桜達の下へキアラは馳せ参じる。

 

 間桐桜を護る為に。

 何せ彼女は()()()()なのだから。

 私の生い立ち、そこから培われた魔性、その全てを知って尚私を受け容れた(ひと)

 

 欲しいと思った。

 愛とは、違う。

 上手く言葉に出来ないが、貪りたいというのとは違うんだ。

 ただ、傍に置いておきたい、と─────。

 

 並行世界の私が出逢った、あの毒舌作家。

 彼に抱いたそれに似ている様な、そうでない様な。

 

 『気持ち良い』ではなく『心地好い』。

 そんな存在を護る為にキアラは拳を振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          ∵∵∵

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、令呪三画を用いた勅命でキアラを半ビースト化させ自身の虚数を用いたダークマターの生成等で宇宙パワーを相殺して中々優勢に戦いを進めたが群体化という数の暴力の前に一旦キアラ含め全員で退却して再度対策を立てて殴り込みをかけ完封してやったらギャン泣きされてその際の独白が心にぶっ刺さったのでしょうがねーなという感じでパールヴァティー同様カーマを自分の中に受け容れてカルデアに帰ったものの度々パールヴァティーとカーマとルルハワ事件の際BBホテップに対抗する為協力してもらった■■■■■(クトゥグア)が頭の中で喧嘩するせいで寝不足になり更にそれがバレて夫と姉とマシュと所長とサーヴァント達にめっちゃ怒られるという桜ちゃん総受け状態になったけど、この話は一発限りのネタで続きとか特に無いんで後は各々の妄想で補完してください。




因みに作者は間違いなく五階層で脱落します。え、知ってた?

しかし書き終わってから読み直してみるとこれ桜ちゃんアゲを装ったキアラさんアゲっぽくなってんなオイ。


前々からFGO編の妄想を脳内だけで練り回してた私。

2004年の1月時点で15歳って事は同年の3月2日で桜ちゃん16歳。つまり2015年には桜ちゃん27歳ですよ。最高じゃねえか。子供生まれてるのかな。

きっと桜ちゃんがカルデアに行ったら所長を兄に、マシュを自分に重ねてめっちゃ世話焼いて救済しまくってくれるんだ。

そんでもってライダーさんと同じ様に桜ちゃんの過去を夢で見たサーヴァント達が暴走して鎮静化の為に奔走する桜ちゃんを愉悦部がワイン片手に見てるんですよ。

特にバーサーカー連中はヤバイかもしれない。
蟲蔵で泣き叫ぶロリ桜ちゃんを見て頼光ママをはじめ母性EX勢が発狂するんですよ。
あとスパPも「汝も虐げられし者だったか」的な感じでめっちゃ抱擁してきて桜ちゃん全治一ヶ月ですよ。
ジャンヌオルタや巌窟王も「何で憎まねえんだよもっと怨めよ!」みたいな感じで優しく怒ってくれるんですよ。



まあ全部妄想だから続きは書かねえけどなっ!!!
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