Fate/SAKURA   作:アマデス

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劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel] I.presage flower」観てきました。

最高ッスね(小並感)

活動報告の方に感想を書き殴ったのですがそれだけではテンションがまるで治まらず数ヶ月ぶりに執筆!ほんと更新遅くて申し訳ありません。orz

今回は幕間で短い上に桜ちゃん出ないけどな()


幕間 その頃のお姉ちゃん

 午前2時。

 私、遠坂凛の魔力が最も高まる、所謂(いわゆる)絶好調タイム。

 普段なら明日に備えてとっくに就寝しているこの時間帯に、私はとある儀式を行っていた。

 言わずもがな、聖杯戦争の切り札にして参加資格でもあるサーヴァントの召喚儀式だ。

 

 聖痕自体は数日前に宿っていたのでどのタイミングで召喚しても問題は無かった。

 いや、寧ろ希望するクラスのサーヴァントを確実に手に入れる為、早めに召喚を行うのがベターだろう。

 例えば最優と称されるセイバー、そうでなくとも対魔力を持ち基本的に優秀とされる三騎士のクラスを召喚出来ればラッキーだが、既にその枠を他の参加者達に取られてしまっていたらスタートラインからして不利を強いられる事になってしまう。

 他のクラスよりも多数の宝具を所持している代わりにサーヴァント自身の能力がそこまで高くないというケースの多いライダー。

 

 この枠ならまだ全然許容範囲だ…が、残る三つの枠が問題である。

 

 現代よりも遥かに多くの神秘が残っていた過去の時代の魔術を行使でき、それと陣地作成のスキルによって神殿クラスの工房を造り上げる事が出来る者も居る為、()()の戦法や搦め手なら最強だが、殆どのサーヴァントが持っている対魔力のスキルのせいで正面切っての真っ向勝負では最弱と呼ばれるキャスター。

 

 気配遮断のスキルによる、マスターの天敵とも言われる程の諜報・暗殺能力を持つ代わりに素のステータスが全クラスで最も低い為、キャスター同様真っ向勝負では最弱候補のアサシン。

 

 狂化によってステータスを大幅に底上げする事が出来るがその分燃費が悪く、理性を失っている為細かい作戦を伝え実行する事がまず不可能…というかまともに意志疎通を行って御し切れる保証も無く、おまけにサーヴァントの切り札足る宝具を使用(解放)する事も(まま)ならないという、よくよく考えなくてもメリットとデメリットの釣り合いが全然取れていないバーサーカー。

 

 他のクラスにも短所はあると云えばあるのだけれど、この三つのクラスはズバ抜けて癖が強い。

 特にバーサーカー。

 

 キャスターのクラスで呼ばれる程の英霊の持つ神秘の技術には魔術師として興味があるが、同じ魔術師の為マスターとサーヴァントの役割が被ってしまいお互いの弱点を補えないという問題があるし、個人的に()()より()()の姿勢でガンガン行きたいタイプなので取り敢えず却下。

 

 アサシンも上手く嵌まれば最後の最後に漁夫の利で優勝を狙えるクラスだが、上記のキャスターと同じく隠れてコソコソ戦いを進めるのは私の性に合わないし、何より聖杯戦争に参加する以上覚悟は出来ているが進んで(マスター)を殺したいとは思わないのでやっぱり却下。

 

 バーサーカーは却下、とにかく却下。

 

 まぁどのクラスも自分の得意分野(土俵)に持ち込めば強いというのは変わらないので結局の所マスターの采配次第という気がしないでもない。

 バーサーカー以外は。

 

 だがその中でも三騎士、特にセイバーはどんな局面でも基本安定した性能を発揮する事が出来る。

 バーサーカーと違って。

 

 そう考えるとやはり引くべきカードは尖った性能の色物枠より、堅実に三騎士、若しくはライダーを含めた四騎士の内のどれかなのだ。

 バーサーカーは論外である。

 

 そもそも狂戦士のクラス(バーサーカー)は力量の足らないマスターがサーヴァントのステータスを無理矢理底上げする為、若しくは能力の低いサーヴァントを強化する為に(あて)がわれるクラスだ。

 慢心する気はないが私の魔術師としての力量はかなり高い。

 故によっぽど出鱈目な燃費の悪さを誇る英霊でもなければ、召喚したサーヴァントのポテンシャルを十全に引き出す自信がある。

 要するに私がバーサーカーのクラスを召喚しても、唯一の長所と言って過言ではない能力の底上げの恩恵を殆ど受けれないばかりか余計な負債をこれでもかと背負う羽目になるのだ。

 そんなもん誰が喚ぶかって話だ。

 なんだか必要以上にバーサーカーをディスってしまった気がするけれど、これが私の本音なのだ。

 兎にも角にもバーサーカーは論外、絶対に喚んではならない、喚んでしまったらその瞬間私の聖杯戦争は終わる(断言)。

 

 という訳で長々と語ってしまったが、結局の所私が喚びたいクラスはやはり三騎士、出来ればセイバーだ。

 だがこれは少しでも頭の回る人間なら簡単に辿り着く結論であり、ましてや聖杯戦争は魔術師という『神秘を探求する学者』達の集う儀式、間違いなく殆どの参加者がこの結論に至るだろう。

 聖杯戦争において同じクラスのサーヴァントが複数召喚されるという事は決してあり得ない。

 だからこそたった三つしかない有望枠を何としてでも手に入れる為、又他の参加者(マスター)に喚ばれ強力な敵として立ち塞がれる事を防ぐ為、三騎士を喚ぼうとみんな躍起になるだろう。

 昔何処かで偉い人が言っていたのかどうかは知らないが、正しく戦争というものはその準備段階からして既に戦いが始まっているのだ。

 なら尚の事枠を奪われない様、早めに召喚を行うべきだったのだけれど私はそれをしなかった。

 

 理由は一つ、()の意思を確認してから行いたかったのだ。

 

 間桐に引き取られる前、まだ遠坂家の次女だった頃のあの子は…ハッキリ言って臆病な子だった。

 引っ込み思案で、外で遊ぶ時も家にお客様が来た時も、何時も私の後ろに付いて隠れている様な子。

 何をするにも一番じゃないと気が済まなくて、常に猪突猛進だった私とは正しく正反対な性格。

 だからこそ、私が妹を守ってあげなければという想いが最早本能レベルで刷り込まれていて。

 だからこそ、あの臆病な妹が知らない人ばかりの家に行ってしまうという事が心配で。

 もうあの子を姉として守ってあげられないという事が辛くて。

 それ以上に自分が寂しくて、堪らなかった。

 その時になって漸く、依存していたのはお互い様だったんだと私は気付いた。

 

 でもあの子は強くなった。

 先代当主の死去という唯一頼れる()を失った恐怖、一人っきりで家の全てを守っていかなければならない責任、そういったものから生じる不安、重圧に耐え抜いて。

 私と殆ど同じ条件下で、あの子は己を研鑽し続けて来たんだ。

 逞しくならない筈が無かった。

 そうして正式に間桐の当主となったあの子が、自身のホームである冬木の地で行われる魔術儀式から下りる様な事は十中八九無いと分かってはいたが、それでも確かめざるを得なかった。

 あの子が聖杯戦争を降りるという選択をするなら、いや、万が一令呪が宿らないなんて事態になったら直ぐ様根回しをする必要があったからだ。

 例え令呪が宿らなくても御三家の当主である桜は他の参加者からマスターと勘違いされて狙われる可能性が高いし、ひょっとしたら桜にサーヴァントに対抗する術が無いと知った輩が戦争の混乱に乗じて間桐の秘術を掠め取ろうとするなんて事も有り得る。

 そうならない為には聖杯戦争の監視役にして中立の教会を頼らなければならない。

 只でさえ()()()()は仲が悪いのによりにもよって今回の監督役は()()()である。

 普段なら絶対に頼りたくない相手だが何よりも大事な家族の為だ、どれだけの代償を払ってもあの子の身の安全を確保する覚悟があった。

 

 まぁ結局全部杞憂だったのだけれど。

 

 あの子は紛れもなく魔術の家系の当主だった。

 私の心配なんて何処吹く風とばかりに。

 昼間、確かにあの屋上で覚悟を示された。

 ならば、姉として、同じ御三家の当主として、妹の覚悟に応えてあげなければ嘘だろう。

 数日のロスの間に三騎士の枠は全て埋まってしまったかもしれないが、そんなもの差し引いて余りある程の価値があの数分間の会話にはあった。

 それに、なんというか、あれである。

 妹がまだ準備も出来ていないというのに姉である私が早々にサーヴァントを召喚してしまうのは、なんかフライングっぽくて嫌だったのだ。

 我ながら、魔術師の癖に何スポーツマンシップ気取ってんだって感じだが、一旦思い至ったらどうしても妥協出来なくなってしまって。

 ほんと、自分の性分に失笑が漏れる。

 心の贅肉という奴だ。

 でも、悪くない。

 我が家の家訓とは程遠いけれど、可愛い妹に振り回されてドタバタするというのも、それはそれで悪くないのだ。

 寧ろこの胸の内で滾る心地好い熱すらも魔力に変えてやる、それくらいの気概で以て臨む。

 きっと桜も今頃、自身の工房でサーヴァントの召喚を行っているだろう。

 どっちがより優れた英霊を呼び出せるか勝負よ!なんて子供の遊びの延長線上にある競争みたいな思考をしながら、それでいて遠坂の当主としての誇りと義務を決して忘れないよう、私は英霊召喚に挑んだ。

 

 あ、でもバーサーカーはマジでノーサンキューね。

 

 

         ∵∵∵

 

 

 

 

 

「───問おう。貴女が、私のマスターか」

 

 勝った。

 ごめんなさいね桜、今回の聖杯戦争、私の勝利よ。

 

 目の前で凛と佇む──ちょっと嫉妬してしまうくらいに可愛い──女の子を見て私が最初に思ったのは、そんなある種のフラグとも取れる確信だった。

 

 

 

 

 

         ∵∵∵

 

 

「アーサー王!?あ、貴女が!?え、ちょ、本当なのセイバー!女の子なのに!?」

「はい。生前は本来の性別を隠し、常に男装して過ごしていましたから。おそらくそれが原因で後世には私が男性として伝わっているのでしょう」

 

 

 アーサー王。

 かつてブリテンの王として君臨し、数多の戦において不敗を貫いた常勝無敗の騎士王。

 世界一有名と言っても過言ではない()の聖剣、エクスカリバーの担い手だ。

 

 そんな英雄の中の英雄である筈の人物が──まさか、こんなにも可憐な少女だったなんて。

 家訓であるところの優雅さを忘却の彼方にして、私は思わず絶叫してしまった。

 

「凛、驚く事ではありません。時代と共に人の価値観、物事の解釈は常に移り変わっていきます。言い伝えられた知識と事実が異なるのはよくある話だ」

「ぅ、んー…言われてる事はまぁ、分かるんだけど」

「第一性別等関係ありません。私は騎士であり、この身は凛、貴女のサーヴァントだ。重要なのは私が貴女にとって有益な存在であるか否かです」

 

 (ぎょく)の様に光る碧眼を一切逸らす事無く私に向けながらセイバーはそう言い切った。

 一見すると冷たいというかお堅いというか、取りつく島もない感じがするけど…たぶん違う。

 この娘はただ事実を述べているだけなのだろう。

 此方の疑問や葛藤を一時の誤魔化しでは無く理路整然(りろせいぜん)とした話で解き解そうとしてくれているんだ。

 生来の責任感の強さからくるものだろう、所謂学級委員長タイプというやつだ。

 流石は一国を治めた騎士の王、自分の芯というものを確り持っている。

 

 うん、こーいうキッチリしたスタンスは嫌いじゃない。

 

「ま、それもそうね。ごめんねセイバー。いきなり取り乱したりしちゃって」

「いえ、不意を突かれるというのは生きる上で間々ある事だ。大切なのは如何に早くそこから立て直しが出来るかです。その点、凛は優秀だ。魔力の質も素晴らしい。どうやら今回はマスター運に恵まれた様だ」

 

 そう言ってセイバーは表情を綻ばせる。

 打算無しの真っ直ぐな称賛が心地好い。

 よかった、どうやら私という人間は大英雄様の御眼鏡に適ったらしい。

 

「ふふ、ありがと。でもそれはお互い様よ。貴女みたいな頼り甲斐のある英雄を喚べたなんてこの上無い幸運だわ」

 

 相手の誠意に応えるべく、此方も嘘偽りの無い本音を言う。

 いや、実際マジでラッキーなのだ。

 マスター権限でステータスを確認した時は思わず目を瞠ってしまった。

 なんとBより下のランクが無い。

 アルファベットの横には幾つもの+マークが乱れ飛んでいる。

 そんな彼女が(たずさ)えるのは星の内海によって鍛えられた神造兵装、エクスカリバーなのだ。

 

 圧倒的な高水準スペックに、究極の聖剣。

 紛れも無く最高にして最強のカードを私は引き当てたのだ。

 これを幸運(ラッキー)と言わずして何と言うのか。

 

「それも凛のお陰です。サーヴァントのステータスはマスターが優秀であればある程高く、生前のものに近付いてゆく。サーヴァント(使い魔)である以上、生前の能力を超える、或いは同等になるという事はあり得ませんが、それでも限り無く真に近付く事は出来る。そして、今の私は正しく()()だ。私が十全に在れるのは、凛、貴女がこれ迄積み上げてきた研鑽のお陰です」

 

 

 ヤバイ、私この娘好きだわ。

 

 まさかこんな褒め殺しを喰らわせられるとは。

 ふと昼食時の衛宮君を思い出す。

 それと──外見的には全く似ていないのに──まだ幼かった頃の、何時も自分の一挙手一投足に凄い凄いと喜んでくれた無邪気な妹の事を思い出した。

 

 清廉潔白な心がそのまま声帯になった様な、芯の通った涼しい声色。

 それによって紡がれる一切のブレが無い言葉が、本当に心からそう思ってくれているのだと、理屈なんかすっ飛ばして私を信じさせていた。

 なるほど、これがカリスマBってやつなのかも。

 

「…ありがとね、セイバー。あーヤバ、ごめん、私、魔術(これ)に関して褒めて貰えた事なんてもうずっとなかったから。うん、ほんと、ありがとう。嬉しい」

「お礼を言われる様な事ではありません。これは凛が受けるべき正当な評価だ。そして、そんな貴女とならば、必ずや聖杯に届きうると私は信じています」

 

 自分より圧倒的に高次の存在が、自分に信頼を置いてくれている。

 それだけでこんなにも心が満たされるのだと初めて知った。

 

 人類史に名を残し、人でありながら精霊の域に達した存在、英霊。

 こうして対面しながら会話するだけでも、普通の使い魔とは文字通り次元が違うという事を正しく理解出来る規格外さ。

 『人』という種の、頂点に到った者、臨界を究めし者。

 

 そんな相手にここまで言われたのだ。

 

 ───ならば、張り切らない訳が無い。

 

 自分はここまで言わせてしまったのだ。

 

 ───だったら、その信頼に応えない訳にはいかない。

 

 

「ええ、当然よ!───セイバー、勝つわよ」

「ええ、勿論です。───これより我が剣は貴女と共にあり、貴女の運命は私と共にある。ここに契約は完了した」

 

 どちらが先にという事も無くお互いに手を差し出し、固く握り合った。

 聖杯戦争が終わるまでの、ほんの僅かな付き合いだが、この娘と二人で駆け抜ける日々はきっと自分にとって輝きに満ちた財産になるだろう。

 無意識の内に聖杯戦争の後の事を考えていた。

 敗退して命を落とすという可能性を一切考慮しない程に、私は目の前の少女に魅せられていたんだ。

 

 その後、召喚の儀式で大量の魔力を消費した事により強烈な疲労と睡魔に襲われた私は、セイバーに断りを入れてから寝室のベッドに潜り込んだ。

 

 

 

 ──そして次の日の朝、普通に学校に行こうとした事をセイバーに咎められた時、よくよく考えればお互いの能力の確認とか情報の交換とか作戦の立案とか、具体的で建設的な話を一切していなかったという事に気が付いた。

 

 …うん、セイバーのカリスマスキルと深夜テンションが重なり合った結果による凡ミスよ凡ミス。

 断じて遠坂の体質(うっかりの血脈)のせいではない。




凛「霊体化して付いて来てよ」
剣「私霊体化出来ませんので」
凛「ゑ?」

何故私の書く遠坂姉妹はこれ程までにうっかりが迸っているのか()

という事でお久し振りの更新です。まとまった時間がまるで取れねぇ。そろそろ亀更新タグを付けねばならんか…

凛ちゃんの鯖はテンプレ通り(なのかは知らんけど)アルトリアさんで行きます。原作と違いベストコンディションで行った召喚のお陰で見事に星5を引き当てました。彼女が居ないとFateは始まりませんよね。エミヤ…?知らない子ですね…

凛ちゃんバーサーカーを必要以上にディスるの巻。実際バーサーカーを従えたマスターは最終的にみんな自滅しちゃってるからね、仕方無いね。

そしてカリスマBの影響をもろに受ける凛ちゃん。アルトリアさんは人の心が分かる王様ですよ。この丁寧な対応を生前全うしていれば…どっちにしろ抑止力案件ですね()是非も無いよね。

凛ちゃんがマスターの時のアルトリアさんはかなり生前に近いらしいです。敏捷と耐久は切嗣さんの時の方が高いという事実に何とも言えない笑いが込み上げますが。

アルトリアさんが聖杯に掛ける願いをまだ知らない凛ちゃん。今後そこがネックになるかどうかは作者の腕次第。

父親と全く同じフラグをぶっ建ててしまった凛ちゃんの明日はどっちだ()

次回は出来るだけ早く投稿出来るといいなぁ…(遠い目)

みんなもFateの映画を観に行こう!それでは。

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