かえでさんといっしょ   作:朝霞リョウマ

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今月もまったり進行。


射的と食事を楽しみましょう

 

 

 

 16:45 マジックランド・ウエスタンエリア

 

 

 

 先ほど『ブラックダイヤモンド・マウンテン』から降りてきた俺たちだが、未だにこのウエスタンエリアに留まっていた。というのも、降りてすぐのところに俺たちの興味を引くアトラクションを見つけたのである。

 

 

 

『ウエスタン・ガンマンズ・バー』

 荒野の酒場を舞台にしたシューティングゲーム。一回二百円でプレイ出来る園内では珍しいタイプのアトラクションで、十発全てを的に当てることが出来れば記念バッジを貰えることが出来る。

 

 

 

「結構本格的な重さね、コレ……」

「ライフル型……ってことでいいのかな」

 

 出店などで見かけるコルクを飛ばすタイプの射的ではなく、赤外線レーザーを発射して的を狙う仕組みになっているようだ。カウンター越しにバーの中に設置された様々な標的を撃つのだが、どうやらここでもマジックリゾートの遊び心が備わっており、ヒットすると様々なギミックが作動するらしい。

 

 例えばスロットマシーンの的にヒットするとスロットマシーンが回り、壁に飾られたヘラジカの剥製にヒットするとなんと剥製が動き出す。他にも様々なギミックが満載な上に、当然十発じゃ全ての的のギミックを見ることは出来ない。

 

「記念メダルは勿論欲しいけど、それ以上にギミックも見たいわね」

「これはリピートしがいがあるな……」

 

 運のいいことに後ろに並んでいるゲストがいない場合、何度か連続でゲームをしていいらしい。

 

 というわけで楓と並んで早速プレイである。

 

「おっとっと、重くて上手く狙いが定まらないわね……」

「こうやってカウンターに肘を突くと安定するぞ」

 

 照準器は付いておらず、どうやら銃の先端に付いてる小さな窪みで照準を合わせるようである。

 

 まずはカウンターに置いてある酒瓶の真下の的に狙いを定め、引き金を引く。ドンという結構低い音が鳴った。勿論本当に銃弾が飛んだ音ではないが、それでも結構雰囲気の出でいる。

 

 さて、そんな見えない銃弾の行方なのだが。

 

「……………」

「……外れた?」

「……多分」

 

 とても分かりづらいけど、なんの反応もないところを見ると多分外れたのだろう。

 

「それじゃあ、次は私が……」

 

 カウンターに肘を突き、前屈みになって的を狙う楓。学生服のため普段と比べてスカートが短いから、少し気を付けてもらいたいところである。

 

「あっ、当たった」

「えっ」

 

 楓のスカートの長さに気を取られていたが、慌てて振り返ると先ほど俺が狙っていた酒瓶がグルグルと回っていた。

 

「当たると的の赤いランプが消えるみたいよ。ひぃくんよりも先に成功させちゃった」

 

 楓のドヤ顔が可愛いものの、純粋に悔しい。俺も負けじと次の的に狙いを定める。

 

 

 

 第一ゲーム終了。結果。俺、十発中四発。楓、十発中三発。

 

「……勝った!」

「この結果で本当にひぃくんは勝ち誇れるの?」

 

 あまりにもあんまりな結果に無理やりテンションを挙げて勝利宣言したものの、楓からの問いかけに思わず視線を逸らしてしまった。

 

「いや実際結構難しいなコレ」

「赤外線で真っ直ぐ飛ぶからこそ、ちょっとでもズレちゃうと外れちゃうのね」

 

 実際に撃っている感覚が無いのも少し調子が狂うポイントだと思う。

 

「あれ、動く的なんてものもあるんだな」

「え、何処?」

「ほら、あそこ、カウンターの下と天井の梁」

 

 どうやらネズミを模した的が出たり隠れたり移動したりしているらしい。一定間隔で動いているようなのでタイミングは計りやすそうではあるが、ただでさえ小さくて当てずらい的がより当てづらくなっている。

 

「もしかしてあの的に当てると二ポイントもらえたり?」

「そこんとこどうですか?」

「残念ながら……」

 

 傍にいたキャストに尋ねてみるが苦笑と共に首を横に振られてしまった。まぁそりゃそうか。

 

「でも当てづらい的だからこそ当てたくなるなってくるな……!」

「ひぃくん、結構こういうゲームに熱中するタイプよね。クレーンゲームとか」

 

 どうせ当たらないのであれば、せめてあの小さな的に当ててみたい。そんな熱意のもと、俺たちは再びゲームに興じるのであった。

 

 

 

 第二ゲーム終了。結果。俺、十発中一発。楓、十発中四発。

 

「ひぃくんってば、ネズミに固執するから」

「でも当てたぞ!」

 

 先ほど以上に悲惨な結果になってしまった。しかし最後の一発でついにネズミの動く的へ命中させることに成功したのである。大袈裟なギミックは存在しなかったものの、俺は今充実している。

 

「それよりコレなんだと思う?」

「え?」

 

 それはゲーム終了時に印刷される小さなカードで、命中した数とカウボーイの恰好をしたマジックドッグが一言コメントをくれるのだが、先ほどとは違い『ラッキー! キミは付いてるね!』という不思議なコメントになっていた。

 

「もしかして動く的に当てたときの特別な演出?」

「いえ、違いますよ」

 

 楓と二人で首を傾げていると、俺たちの会話を聞いていたキャストさんが答えを教えてくれた。

 

「それはラッキーターゲットに当たったときの特別なメッセージで、特別なバッジを差し上げています」

「「えっ」」

「おめでとうございます」

 

 そう言ってキャストさんが金色の保安官バッジをくれた。他のゲストが貰っていた全発名中の銀色の保安官バッジの色違いだが、少し特別感が漂っていた。

 

「おめでとう、ひぃくん」

「ぶっちゃけ十発名中の記念バッジを手に入れるのは諦めてたから、嬉しいな。ありがとうございます」

 

 しかしふと思った。俺が当てたのは動くネズミの的だけである。つまり……。

 

「あの動くネズミがラッキーターゲットだったと?」

 

 キャストさんは無言でニッコリと微笑んだ。つまりそういうことなのだろう。

 

 俺たちのやり取りを聞いていた周りのゲストたちが、一斉にネズミを狙い始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

「うおおおついに念願のラッキーメダルゲット目前だぁぁぁ!」

「ありがとう名も知らぬ学生カップル!」

「感謝の念が強すぎて最推しカップルに見えてきた!」

 

 

 

 

 

 

 17:05 マジックランド・ウエスタンエリア

 

 

 

 引き続きウエスタンエリアである。シューティングゲームで見事金色の保安官バッジを手に入れ、次は何処に行こうかとアトラクションを後にした俺たちの足を再び止めたものは、食欲を湧きたてるカレーのいい香りだった。

 

「こまめにおやつとかは食べてたけど、この匂いを嗅いでるとお腹が空いてくるな……!」

「ちょっと早いけど晩御飯にしない?」

 

 この後の予定としては、十八時ぐらいから夜のパレードを座ってみる場所を確保し、十九時からのパレードを観た後に退園する、という流れになっている。そう考えると今が園内で食事をする最後のタイミングだった。

 

「パークの外で食事をして帰るっていう手もあるけど」

「折角なら食事も園内で済ませたいよな」

 

 ということで満場一致。このいい匂いに誘われるがまま、俺たちはすぐ近くにあったカレーのレストランへと足を向けるのであった。

 

 

 

 とはいえ。

 

「流石に混んでるなぁ」

 

 既に夕方、食事時といってもいい時間帯。パレード前に食事を済ませようという俺たちと同じ考えのゲストによって、注文口まで長蛇の列が出来ていた。

 

「これ並ぶのはちょっと……」

「……もしかして」

 

 思わず難色を示しそうになるが、楓がはっとなった様子でパチンと手を叩いた。

 

「ねぇひぃくん、これだけ並んでるならいっそのこと今からモバイルオーダーした方が早く受け取れる可能性があるんじゃない?」

「いやそんなまさか……」

 

 そう言いながら念のためアプリを開いて確認する。

 

 えっとカレーレストラン『ハングリー・カウボーイ・キッチン』のモバイルオーダーの最速受け取りは……。

 

「17:20」

「……どう考えてもこの行列は十五分以上待つわよね」

 

 考えるまでもなくモバイルオーダーの方が良かった。しかも先に席を確保することが推奨されるレストランだったため、確保した席でモバイルオーダーをすれば良いので一石二鳥である。

 

 二人並んでスマホを覗き込みながら注文を決め、モバイルオーダー。あとは待つだけでいいのだから、やはり行列に並ぶより楽勝である。

 

「今までずっと『マジックリゾートは長時間並ぶテーマパーク』っていう印象だったけど、この二日間で大分イメージが変わったわね」

「そうだな」

 

 ただその殆どが大人(おかね)の力で解決していることも事実である。

 

 待つ時間を短くするためにお金を払っているということに抵抗がある人もいるだろうし、今回の俺たちも『折角来たのだから』の精神で財布の紐を緩めていただけである。

 

「まぁ普段はお金をかけなくても二人きりの幸せな時間を過ごせるわけだし……こういうところでたまに贅沢をするぐらいなら、いいバランスが取れてるんじゃない?」

 

 そう言いながら、隣に座る楓がコテンともたれかかって来た。

 

「そうだな……どうせお金なんてかけなくても楽しいんだし、それでより沢山楽しめるのであれば、それはきっと正しい使い道なんだよ」

 

 考え方は人それぞれだろうけれど。

 

 少なくとも、今こうして楓とのんびりする時間を確保するためにかけたお金は、確実にそれ以上の価値があるはずである。

 

 

 

 

 

 

「うーん、なかなか考えさせられるわね……」

「とはいえ学生カップルならバイトとか大変だろうに」

「大人の私たちが負けるわけにはいかないわね!」

「えぇ! ザブザブ使うわよ!」

 

 

 




「お姉ちゃん、このバッジ見たことある?」
「ない」
「……もしかして、パパ無くした?」
「え、マジ?」
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