どらごんくえすと惨――オレと彼女達の冒険譚   作:ショウマ

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 rァ はなす(しぶしぶ)

 

 

【逃げられない! 回り込まれてしまった】

 

      ※ ※ ※

 

 

 三度目の逃走失敗のツケは随分と高くついた。

 

「――で、オレからもお前らに質問があるんだが?」

 

「えら、そうに」

 

 言えば、オレの後頭部に置かれたヤツの足にググッと力がこもる。

 

 ……ヤロォ!

 

 グリグリと足を動かしながら、鼻で笑うかのように――いや、実際笑ってんだろ――言ったのは黄色のストエビ。逃げようとしたオレを叩き伏せたのもコイツの仕業だ。

 

 オレの上に座っていたドーターを押し退ける→立ち上がって走りかけたところで腕を掴まれる→投げられる→二度目の地面と対面(いまここ)

 

 ストエビはドーターよりも容赦がない。投げ方は力任せだったし、性格も過激だ。

 ドーターと同じように体術も優れてるが、しかしアイツとは別の意味で力の使い方が上手い。

 

 アチラ(ドーター)が相手の動きを利用するのに対し、こっち(ストエビ)は最低限の動きで最大の効果を得ようとする。

 力任せの投げも同時にオレの関節を極めてたし、腹立たしくもオレの後頭部に置いてやがるこの足もそうだ。

 力加減が絶妙で、頭を持ち上げることが出来ねえ。投げた時にそのまま奪われてる片腕の自由も含め、オレは完全に身動きを封じられていた。

 

「はいはい、そこまで」

 

 パンパン手を叩きながらこちらに歩み寄ってくる気配。出会い……遭遇したばかりで分かりにくいが、声からして青ローブのシスだろう。

 

 てか、コイツら似すぎだろう。三人ともが美少女顔ってだけでもアレなのに、声音までよく似てやがる。

 

 性格だけか? はっきり違うのは。

 

 お気楽=ドーター。

 

 お姉さん=シス。

 

 邪悪=ストエビ。

 

 いきなり後頭部にある靴底の感触が強くなった。

 

「コレから、なにか、悪いもの、感じた」

 

 良い勘だ。しかしお前が言うな。絶対にコイツの方が性格悪いだろ。

 

「ストエビ?」

 

「チッ!」

 

 シスの咎めるような声に舌打ち一つ。腕が解放されて後頭部に乗せられていた足もなくなる。

 

 コイツはいつか絶対に泣かす!

 

【オレは記憶に深く刻み込もうとした!】

 

 まぁ、オレってばすぐに忘れる性質(たち)だから鳥頭って呼ばれてたワケだが。こんだけされりゃ忘れねぇだろ。

 

 起き上がろうとしたオレの前に差し出される、白い手。

 

 見れば、ハの字に両眉を下げたドーターだった。さっきまでの威勢はどこへやら、申し訳なさそうな感じでうつむき気味にチラチラとオレを見ている。

 

「立てる……?」

 

「……ああ」

 

 振り払っても良かったんだが、その何とも言えない表情を見た瞬間――――オレはその手を取って立ち上がっていた。

 

「感謝はしねぇぞ」

 

「うん……!」

 

 いきなり元気になりやがった。今度はニコニコ笑いだしたヤツは、何が面白いのかジッと自分の手を見ている。

 

「チッ……!」

 

 頭上から聞こえる、再びの舌打ち。誰がしたのか、見なくても分かる。ホント態度悪いな、コイツ。

 

 それでも音が聞こえた方を見てみれば、さっきの今で数メートル上にせり出した木の枝に座るヤツの姿。ふんぞり返って腕を組み、片膝を立てた姿勢で。……そのまま落ちてしまえ。

 

 オレからの音無き声が届いたのか、ストエビは小憎らしい表情でフフンと鼻で笑う。

 

「ざん、ねん、しょー」

 

「ストエビ?」

 

「チッ」

 

 ザマァみろ。

 

 ちなみに興味のあるヤツがいるとは思えねぇが、あんな姿勢でも某中身は見えなかったことを記しとく。

 

「お話の前に、改めて自己紹介をしましょうか? ク ロ ウ さ ん」

 

「あ、ああ。ってか、何でお前らはオレの名前を?」

 

 “ザマァ”

 

 頭上からの悪意ある視線は無視する。

 

 ドーターのとはまた違う印象のニコニコ顔をしているシスに、オレは頷きながらも疑問を投げる。

 

 そもそもオレは名乗っていないのだ。ドーターと会った時も。

 《アリアハン》に住んでる連中なら知らない者はいないだろうが、コイツら三人とも街で見たことはなかった。それなのにドーターとシス、オマケでストエビの奴も知ってるようだ。

 

 とは言っても、ちょっと調べりゃすぐに分かることだけどな。口の軽いオバチャンみたいな人も多いし。

 

「そうですね。どうやらドーターも、まっっったく説明していないようですし」

 

「うぅ、説明しようとはしたよぅ……。勧誘の後で」

 

 ギロリ(ホントにそんな感じだった)と視線を向けられたドーターが、音が出るんじゃねぇかって勢いで顔を逸らした。

 

「こういうことは順番が大切なんです。『ハラワタをほじくってやるぞ!』って宣戦布告した後に、『ようこそ、とりあえず世界を半分くらいどう?』と訊ねても、緊張感がまるでないでしょ!」

 

 どういう例えだ。

 

 世界がえらくおざなりな扱いだな、おい。

 

 てか、やっぱりコイツ(シス)もおかしいな。

 

「そっかー!」

 

「いや、だからお前も納得するな! もういいから、話を進めろ。オレには時間がないんだよ」

 

 いつの間にやら太陽はかなり傾いている。って、オレは何時間ここにいたんだろうか……。

 

 見つかる前に、なんとしても《レーベ》まで辿り着かねば。

 

「そうですね、クロウさんには失礼いたしました」

 

 そう言って、深々と馬鹿丁寧にお辞儀をするシス。

 それはきちんとした作法を学んだ者の動きだった。オレも母親からは一通り習ってはいるが、出来はご想像にお任せしよう。あんな堅苦しいもん、お貴族様はよくやるぜ。

 

「では、《レーベ》へ向かう前に自己紹介だけでもいたしましょうか」

 

 コイツら、なし崩し的に同行する気か。

 

 二人はともかく、一人はいらねぇ。

 

 そんなオレの前に進み出てきたのは、何が楽しいのか朗らかな笑みの淡緑色のローブを来た少女。そもそものトラブルの発端。

 

「はい! ドーター、ま……ほうつかいです」

 

 自分の職業くらい、詰まらずに言えと。

 

「私はシスと申します。お見知りおき下さい。職は魔法使いです」

 

 ドーターの横へ並んだシスはやはり優美な一礼を披露する。馬鹿丁寧な挨拶ではあるんだが……んん?

 

 今の挨拶でちょいと気になることはあったが、ふと感じたものに顔を上げてみれば、コチラを見下す(見下ろすではない)ヤツの視線と交錯した。

 

 そのうち絶対泣かす。

 

「ストエビ」

 

 それだけかよ。職も話す気ねぇってか?

 

 それなら。

 

「お前の職は邪悪使いか?」

 

 今まで散々にやられた恨みを込めて、皮肉で言ってやった……のだが、何故かヤツは急にキョトンとした表情を浮かべ、何やら考え始めた。

 

 ……今の一瞬の表情に、不覚にもオレは可愛いと感じてしまう。邪悪さを取り除いてしまえば、やはり素となる顔立ちがいいんだろう。

 

 神様は不公平だねぇ、色々と。

 

「邪悪使い……邪法使い……うん」

 

 オレの思考がそれていた間に、それ以上の斜め方向へ爆進しているヤツが。

 

 大きく一つ頷くと、ストエビは木から飛び降りてシスとは逆位置のドーターの隣へと並ぶ。意外(?)と身長も、三人は同じくらいだった。

 

「邪法使い、ストエビ。ありが、とう」

 

「感謝されるようなことが何一つ思い付かねぇんだがな」

 

 今のコイツはさっきまでの悪鬼羅刹ではなく、それどころか穏やかな微笑みを浮かべている。

 

 いかん。悪寒が走った。

 

 頭いてぇ……。コイツが何を考えてるのかサッパリだ。

 

 しかも、コイツら魔法使い三人かよ。

 冒険者ってのは普通、戦士や武闘家、僧侶なんかとバランス良くパーティを組むもんだろ? 魔物の中には魔法が効き難いのもいるらしいし、そんなのと出会ったらどうにもならない。魔力だって限りがあるんだし。

 もちろん逆もしかり。剣が効きにくいのもいるだろう。

 冒険に怪我は付き物。だから治療の出来る僧侶が居てくれれば安心だ。

 

 それぞれの職に得手不得手がある。だからパーティを組むんだが……誰も他に組むヤツはいなかったんだろうか?

 

 ツッコミ所が多すぎる。

 

 思わず額を揉み解していると、真正面からなにかを期待している視線が注がれてるのが分かった。

 

 ……ああ、くそ。分かってるよ。

 

「オレはクロウ。ただの」

 

「むっつりす――」

 

「ちげぇ! ただの――」

 

 

 

 

 

 ――――臆病者だ。

 






※ 森でも一歩も動かなければ魔物は出ない!(ゲーム的な意味で)

 しかし時間は過ぎる(物語の都合的な意味で)

 次でようやく村へ。

 そしてこれは思い付いたのをツラツラと書き貯めていただけの作品のため、ストックも間もなく尽き(ry
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