Monster Hunter ―残影の竜騎士― 作:jonah
依頼主:渓流に畑を持つ主婦
依頼内容:作物を収穫しに渓流に行ったんだけど、
なんとアオアシラと鉢合わせしちまったんだよ。
あのあたりは比較的安全なはずなのに…、恐ろしくて渓流に行けやしない。
アイツを倒しておくれ!
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タイトルの「★」は、クエストのランクを表しています。MHP3の星1つで本当にあるクエストです。
渓流のエリア6というと、あそこです。滝が落ちてる場所。池で魚釣りとか、滝の裏のフィールドにつながってます。ドスジャギィの寝床のすぐ隣ですね。
早速お気に入りに入れてくださった方、ありがとうございます!
「くっ! きゃああっ」
「ご主人!」
アオアシラの振り向きざまの回転ひっかきに、後方に吹き飛ばされる。なんとか太刀を間に入れて爪が直接防具を傷つけることはまぬがれたものの、衝撃を直に受けた両腕はジンジンとしびれていた。暫くまともに動きそうにない。太刀を取り落とさないようにするので精一杯だ。泣きそうな顔でハーヴェストが足元に走り寄ってきた。
一回転して地を滑り威力を軽減しようとするが、間髪いれずにアオアシラが突進してくる。咄嗟に横に飛び込み前転をして回避。だが、完全にバランスを崩したリーゼロッテはあたりを取り巻いていたジャギィのタックルを躱すことができなかった。
「あぅ!」
ジャギィは鳥竜種の小型モンスターで、新米ハンターが最初に相手にする肉食竜である。“小型”というくらいだから体躯は大きくなく、ちょうど大人の腰丈と同じくらいだ。また鳥竜種という特徴から細身の体をしているのだが、うちに秘める肉食竜としての荒々しさとびっしり並んだ小さいながらも役割をしっかり果たす牙は、人間の肉など易易と噛み千切る力をもつ。
何より恐ろしいのはその連携である。人間にとっては脅威でも、多くの肉食竜の中では最弱に位置するといっても過言ではないジャギィは、4~5頭のグループで常に行動し、獲物を取り囲み、数で倒す。ともすれば中型の草食竜にすら踏み潰されかねないほど小さなジャギィは、そうやって生き延びていく。
そんなジャギィが、今、アオアシラとリーゼの周りに3頭いた。それだけではない。なんとも運の悪いことに、ジャギィノスまで1頭いるのだ。
ジャギィのメスであるジャギィノスは、ジャギィよりも大きな体を持ち、必然的に力も強い。
ただでさえ狩猟経験の少ないアオアシラで苦戦しているというのに、周りにこれだけ敵の応援がいれば、リーゼロッテにとって不利以外の何者でもない。アシラが狙いをリーゼ1人に定めているのもある。
おまけにここは渓流のエリア6。足場が水に浸っている上、川底の小石をひっくり返して足を掬われかねない。候補生を卒業してハンターになって1年経ったとは言え、まだまだ駆け出しの
「ハーヴェスト、一旦引いて、ジャギィ達が去ったらまた行こう!」
「は、はいニャ!」
隙を縫ってジャギィ達の包囲を突破すると、太刀を背に戻し一目散にベースキャンプへ駆け出す。エリア移動をし、ガーグァ達の後ろを駆け抜けてベースキャンプへとたどり着く頃には、息も上がってへとへとになっていた。命をかけた緊張感から解き放たれたという安心もある。
「はぁ……」
簡易ベッドに腰掛けると、思わずため息が漏れた。空を見上げると、そろそろ日が沈む。遠くに鳶が旋回しているのが見えた。昼過ぎに渓流についたから、そろそろ5時間、渓流にいたということになる。といっても、半分以上はアオアシラを探すことに費やしたのだが。
「狩猟を初めてまだ5時間しか経ってないのに、もう諦めちゃいそう。やっぱり1人は無理だったのかな……。……シャンテ達、心配してるかな」
ボコッと音がすると、地面からハーヴェストが出てきた。アイルーやメラルーといった種族は、体力回復の為やエリア移動を高速で行う為に、地面に潜ることができるのだ。ハーヴェストは申し訳なさそうな顔をしてとぼとぼとリーゼロッテの前に立った。
「どうしたの?」
「ご主人、申し訳ないニャ。逃げるのに一生懸命で、ペイントボールを投げるのを忘れちゃったニャ……」
「あっ」
リーゼも忘れていた。とにかく一刻も早くアオアシラから逃げることを優先していたせいで、腰のポーチのなかのペイントボールのことなど、頭からすっとんでいた。
リーゼロッテの声で更に萎縮したハーヴヴェストは、今にも泣きそうな顔をしている。リーゼは慌てて言い募った。
「落ちこむことないよ。わたしだって忘れてたんだから、ハーヴェストのせいじゃない。むしろ、ハンターになって1年も経つのに、まだ基礎すら忘れるわたしが悪いんだから…」
言ってて自分もだんだん泣きたくなってきた。ハーヴェストはそんなリーゼの言葉に再び謝ると、彼女の足元に腰掛けた。
「……ボクは、いつも臆病ニャ。それはオトモ育成所でも言われていたことニャ…」
「ハーヴェスト…」
「ご主人はボクたちオトモアイルーより背が大きいから、大型モンスターに狙われやすいニャ。それをボクたちオトモが挑発して
あるいは笛やスキルを駆使してご主人の狩りをサポートするのがオトモの役割ニャ。小型モンスターの相手をして、ご主人が大型だけに専念できるようにするのもニャ」
「……」
「ボクは逃げる途中、ペイントボールをアオアシラにつけていないことに気づいたニャ。まだ奴は同じエリアにいたから、すぐ戻れば間に合った筈だニャ。
……それでも、ボクは怖くて1匹で戻れなかったニャ。こんなの、オトモ失格だニャ。他のハンターさんに雇われているオトモたちに馬鹿にされるのも、当然だニャ……」
周りを静けさが包んだ。遠くでトンビがいい声で鳴いている。リーゼロッテは、不意打ち気味に落ち込むハーヴェストの脇を抱えて持ち上げた。
「うニャッ!!?」
「だからさ、ハーヴェスト」
こちらを向かせて膝に乗せると、うニャうニャいいながら降りようとするアイルーを押さえつけた。ジャギィ装備の帽子の下から、青く丸い目がこちらをのぞく。
「ふたりとも半人前だから、一緒に頑張ろうよ。2人いても1人前にはならないかもしれないけど、頑張ればいつか、ひょっとしたら上級ハンターになれるかもしれないよ」
「じょ、上級!?」
目を白黒させるハーヴェストにくすくす笑いながら答えた。
「もちろん。ハンターやるからには、目標は
「うニャア!?」
「でも、目指すのは自由だもん。頑張ろうね!」
「……ボクよりもっと強いオトモを雇えば、ご主人の夢も現実的になるニャ」
「まぁたそんなこと言って。2人で頑張らないと意味ないんだよ」
そんな会話をしているうちに日は完全に沈み、2人は腹ごしらえをするために焚き火をした。丸鳥と呼ばれる鳥竜種ガーグァの肉を、香ばしい匂いが漂うまで焼く。
ガーグァは鳥竜種だが性格がおとなしくまた他の草食竜アプトノスやケルビと同じくらい臆病でなため、広く家畜としてユクモ近隣では飼われている。丸っこい体と飛ぶには適していない小さな羽が特徴である。
ほかには装飾として言い値で取引される【丸鳥の羽】がわりと有名だろうか。驚いた拍子に卵を落とすこともあるので、後ろからそうっと近づきお尻を蹴り飛ばした。上手くガーグァの卵をゲットしたので、夕飯に追加する。
そんなことをしていると、なんだか自分も一端のハンターになってきたような気がした。
食事もとってスタミナも回復。ついでに寝心地の悪いベッドで仮眠も取る。
「……さて。第2ラウンドと行きますか!」
「頑張るニャ!」
渓流のエリア1にはもうガーグァの姿はなく、代わりに月光を反射する緑がかったシカのような動物、ケルビが水を飲んでいた。小型草食獣であるケルビの角は万病に効く薬となるが、生きたまま剥ぎ取った方が効能としては優れている為、太刀使いであるリーゼロッテは今回手を出せなかった。
ちなみに、角を生きたまま取るというのは残酷に聞こえるかもしれないが、角をとったことで彼らが死ぬということはなく、また時が経てば立派な角が生えてくるため、何ら問題はない。
「待ってなさいよ、アオアシラ! ハーヴェストと一緒に、2人で1人前だって証明してやるんだから!」
「ニャー!」
渓流を駆けずり回り始めた。
一方その頃、ようやくエリザを乗せた竜車は渓流ベースキャンプに到着した。車にはガーグァがつながれている。一般的な竜車では力持ちなアプトノスが荷台を引くのだが、ガーグァの方が足が速いという特徴があるのだ。気を利かせたシャンテが用意させたものだった。
「これは、焚き火跡! ……まだ熱を持ってるわね。じゃあついさっきまではあいつここで呑気に肉焼いてたってことか」
まだベースキャンプには肉の美味しそうな匂いが立ち込めており、ついゴクリと喉がなってしまうエリザであった。
「……まったく、人の気も知らずに。村のみんながどれだけ心配していると…!」
「お仕置きだニャ」
エリザの後ろから覗くのはハッカ色の毛並みのアイルー族。装備はエリザとお揃いのアシラ装備、背にはアシラネコトゲ棍棒をかついでいる。エリザのオトモアイルー、チェルシーだ。小さな目を爛々と輝かせて、肉の残りを見つめていた。
「……チェルシー、あたし達がここに居るのは、あの馬鹿を村に安全に連れ戻すことよ。今日は携帯食料で我慢なさい」
「ええええ!? あれ美味しくないニャ。ウチどうせ食べるなら美味しいもの食べたいニャ!」
「あたしだって一緒よ! でも今回の任務はあいつを見つけることなの! ほら、食べたらさっさと探しに行くわよ。ついでに作戦会議!」
「ニャフー!」
再びベースキャンプに喧騒が戻ってきたようだ。
再びアオアシラとまみえたのは1時間後、エリア5だった。
蜂蜜を貪っていたアシラに後ろから奇襲をかけたのが悪かった。タイミングがいけなかったのか、それともそういう習性なのかわからないが、アオアシラが怒り狂ってしまったのだ。昼よりも激しい攻撃に、再びリーゼロッテは防戦一方となっていた。
「くぅ!」
太刀をその腕の頑丈な甲殻に弾かれ、大きな隙を見せる。しまった、と思う間もなくリーゼロッテは殴り飛ばされた。
「きゃああああ!!」
追撃の突進をしようと身構えたアシラの前に、小さな影が立ちはだかる。
「こ、こ、こ、こっちニャ! かかかかかかってこいニャ! くく熊めぇ!」
ガクブルガクブルしながらも必死に標的をずらそうとするアイルーに、アオアシラは狙いを定めたようだった。うまくいったことにホッとしつつも、今度はハーヴェストが逃げ回らなくてはいけない。
「ぶニャ――!!」
アシラの突進で後ろに逃げる奴はただの馬鹿だ。
そうどこかで習ったことを辛うじて思い出し、アシラから見て横に横にと走り続ける。が、あまりの恐怖にパニックになってしまった。とにかく走らなきゃという意思と、逃げたいという本能がぶつかり、とうとうその場で8の字を描き始めてしまった。
「ハーヴェスト!」
こうなるともう興奮が収まるのを待つしかない。だが、アオアシラはそれを悠長に待ってやるほど優しくもなかった。
グワアアアア!!
しなる両腕をブンブン回しながら前進していく。最初の1撃は遠かった。2撃目はたまたま隙間をくぐり抜けた。3撃目、かすった。が、まだ余力はあるようだ。すぐ起き上がる。
やった!
「よしっ!」
しかし、普段通りなら3回の筈の連続ひっかきが、怒り状態になると4回になるということを、この時リーゼは完全に失念していた。
4撃目――
「ニャンッ!!」
悲鳴とともに、ハーヴェストの小さな身体が空を舞う。二度三度くるくると勢いよく転がってからパタリと力尽きた。
「ご主人…申し訳ないニャ……」
「ハーヴェスト!!」
邪魔な獲物を倒したアオアシラは、今度はその殺気立った目をリーゼに向ける。一瞬怯むも、再び太刀を構えると踏み込み斬りからの突き、斬り上げ、といったところでアシラが右腕を上げていることに気づき、咄嗟に斬り下がりで間を保つ。直前までリーゼがいた場所を鋭い爪が風切り音とともに通った。
ごくり…
思わず唾を飲む。これからは一瞬たりとも油断できない。常にアシラを視界に収めて、いつどのような攻撃が来るか備えなければならない。こんな時にモンスターの全体像を常に見ながら攻撃できるガンナーが欲しい、とリーゼは思うのだった。
チラリと頭に浮かぶのは藍色の長髪の少女。だが、直ぐにそれを振り払った。
(なんでエリザなんか頭に浮かぶんだろ。誰があんなやつと組んでやるもんですか! あっちだってきっとそうよ。願い下げに違いないわ)
そんな余計なことを考えていたから、リーゼは気づかなかった。アシラとの間に多少の距離が空いていたことに安心して、
アオアシラが両腕を大きく振り上げていたことに。
通称“ベアハッグ”。
ドスファンゴを覗く牙獣種に総じて見られる攻撃である。
短い距離を一気に詰めつつ攻撃するそれは、後方に大きく吹き飛ばされる上に、与えられるダメージも大きい。
「きゃあああああ!!」
攻撃を受けた瞬間と吹き飛ばされたあとの衝撃がリーゼロッテに襲いかかる。全身を丸めて衝撃に耐え忍ぶが、痛みの余韻に浸る間もなく立ち上がらなくてはいけない。ハーヴェストがいない今、完全にソロでこのアオアシラを討伐しなければいけないのだ。
「あぐっ」
丈夫と名高いユクモの倒木に背中を強かに打ち付ける。ガン、と音がして頭にも強い痛みを感じた。どうやら遠心力に負けて頭もぶつけたようだった。
(まずい……)
ふらふらしていてとてもじゃないが走って逃げれる状況じゃない。明滅する視界の中で、アシラは突進の準備とばかりに威嚇をしていた。
なんとか木に手をついて立ち上がるも、一歩踏み出すだけで吐き気がこみ上げてきた。
「うあっ」
アシラが地面の振動とともに突進してくる。少しでもこの牙獣から逃れようと、本能でのけぞると、昨日の雨のせいかぬかるんでいた土に足元を掬われ、倒木のむこうがわへと転げる。体が悲鳴をあげたが、倒木のおかげでなんとか突進の直撃は阻止できていた。
だが、それとてただの時間稼ぎ。すぐに再び攻撃を始めるだろうアシラに、だがもうリーゼロッテの体力も気力も、限界に近かった。
次の瞬間、空を切る音が聞こえた。
ヒュンッ…ドドドッ!
ガアアアア!!
「なにボサッとしてんの! 早くこっち来なさい!」
「エ、エリザ!?」
まさかここで聞くことになるとは思わなかった声に思わず狼狽するが、今はそれどころではないと思い出した。だいぶ落ち着いてきた痛みにしっかりした足取りでエリザの元へと行けた。その間エリザはずっとアシラを牽制する矢を打ち続けている。
「チェルシー!」
「ハーヴェスト回収完了ニャ!」
「よし! 引き上げるわよ。あんた走れるわね、リーゼ!」
だがそれに答えるリーゼロッテの声は、どこまでも弱々しい物だった。まるで、全てを諦めてしまったような……
「……無理だよ……」
「何言ってんのよ! このあたしが助けに来てやったんだか…ら……嘘でしょ……?」
後ろを振り向くとしゃがみこみたくなる現実に、思わず笑いがこぼれた。後ろにいる青熊獣のことなど忘れてしまいそうになる。
「あはは、何なのよこれ…ギルドの報告ミス? 笑わせるわね」
2人の前に立つもの。
大きな緑色の翼には白い斑点がいくつか見られる。それが意味するのは、
しかし最も恐ろしいのは、彼女が得意とするのは陸上戦であることだ。その足で恐るべき威力の突進を繰り出す。
「【陸の女王】がなんで渓流にいるのよ!?」
「――雌火竜、リオレイア」
震える声で目の前に立つ竜の名を口にするリーゼロッテ。チェルシーから受け取ったぐったりしたハーヴェストは胸に抱えたまま、立ち尽くしていた。
グアアアアアアアアア!!!!!!!
怒りの炎を秘めた金の眼がこちらに向くと、一歩踏み出しバインドボイスを繰り出した。
ビリビリと震える大気。頭にガンガンと響くそれに、大きな隙が生まれると分かっていても、思わず耳を塞がずにはいられない。チェルシーなどは体が軽いので、後方に吹っ飛んだ。
「…に、逃げなきゃ!」
先に意識が覚醒したのはエリザだった。となりを見ると、ガクガク震えながらも放心したようにリオレイアを見上げるリーゼロッテがいる。腕を引っつかむと、なりふり構わず引っ張り走り出した。途中気を失っていたチェルシーも蹴っ飛ばしてたたき起こす。
「ギニャ――!! もうダメニャ! 死ぬニャ! なんでこんなとこに飛竜がいるニャ――!!?」
「いいから逃げるわよ!!」
背を向けて走りだそうとした、次の瞬間。ハッと左から迫り来る緑色の何かに気づくが、もう遅かった。
「ッ! リーゼ!!」
リオレイアの尻尾回転攻撃だった。リーゼロッテを突き飛ばした瞬間、脇腹に堅い棘が叩き込まれる。ボキ、と骨が折れる音が体に響いた。直後吹っ飛ばされ、木に叩きつけられる。辛うじて受身はとったものの、激しい痛みに気が遠くなる。呼吸をするたび痛みを強く感じた。
(流石に…アオアシラ程度の防具じゃ折れる…か……)
なんとかリーゼは攻撃範囲のぎりぎり外にいたようだった。ちなみにチェルシーは身長の関係で頭上を素通りしたようで、安心する。
「エリザ!」
「あたしはいいから、さっさと逃げなさい!」
痛みをこらえてなんでもないように立ち上がると、背中にしまっていたハンターボウⅡを流れるような動作で組み立てた。キリキリと引き絞ると、もう半回転し終わったリオレイアの頭に三連射する。
「この至近距離で…弾くわけ……ッ!?」
苦笑いを浮かべながらも、転がるようにリオレイアの足元を通過して後ろに回る。
痛い、痛い、痛い。
バクバクと心臓が破裂しそうだった。
「近接のあんたがいると、あたしの弓の邪魔なのよ! ただでさえ叶わない相手なら、遠距離から安全に狙ったほうが生き残り易いに決まってんでしょ!? あたしは隙を見て逃げるから、あんたはチェルシーとハーヴェスト抱えてさっさと逃げなさい!」
「でも!」
「逃げるニャ、リーゼにゃん! ご主人の好意を無駄にしちゃダメニャ!」
「…ッ! すぐ応援呼んでくるから!!」
リーゼロッテは踵を返し、一目散にベースキャンプへと向かう。ポーチから緊急発煙筒を出して、着火の紐を引こうとした。その後を負うように、リオレイアが突進する。
「くっ! こっちを狙いなさいよ!」
頭、翼膜、尻尾、足。どこに狙っても矢は雌火竜に微々たるダメージをも通していなかった。
「こっち来なさい! なんで狙わないの!? リーゼ! 危ない!!」
まだ16の少女の1歩と、竜の一歩、それも【陸の女王】と呼ばれるリオレイアの一歩では、歩幅は倍以上に違う。エリザの牽制も虚しく、リーゼロッテはレイアの巨体に踏み潰される――そのとき。
リーゼの体が誰かに掬われた。
ガアアア?
確かに踏み潰したと思ったのに、直前で餌が消えた。リオレイアは頭をキョロキョロと振って、逃げた得物を探した。
「え……?」
「……だ、れ…?」
思わず目をつぶって痛みを覚悟したリーゼロッテも、腕に当たる暖かい人肌に薄目を開ける。エリザのかすれた声を、耳が拾った。
「間一髪……ってとこか」
リーゼロッテの視界を、“黒”が埋め尽くした。
エリア5は6とつながっているところで、森の中といった感じのあそこです。大きな切り株があったり、大型モンスターの攻撃で蜂の巣が現れる大木があったり…クエストによってはブルファンゴが湧いて出てきたりします。ほんとあれ、地面からボコって出てきますよね。どんな仕組み?笑