七色のドリフト使い(再制作予定)   作:独田圭(ドクタケ)

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※注意!!

アリスがキレます。





誰に対してかって?

言わなくても解るでしょう(笑)




第11話 vs慎吾 怒りのデスマッチ

拓海と中里のバトルはペース配分を怠った中里が自滅する形で決着した。この結果にナイトキッズのメンバーらは驚きのあまり誰も言葉を発しなかった。

 

ただ1人だけ中里の敗北を喜ぶ男がいた。

 

慎吾「(ハチロク相手にこの様とはなぁ、これで当分デケェ面は出来ねぇだろ。)」

 

何故チームメイトである筈の中里に対してそんな態度を取るのか、それは中里と慎吾は互いが仲間と思わない程犬猿の仲であるからだ。

 

理由は2人の走りのスタイルの違いにある。特に中里は勝つ為ならどんな卑劣な手段も平気で使ってくる慎吾のラフな走りを相当嫌っていた。

 

チームのトップ2が対立していれば自ずとチームのムードも悪くなる。現に最近では中里派と慎吾派との派閥争いが泥沼化しており、ナイトキッズは崩壊の危機に瀕していた。

 

この事態を重く受け止めた中里はチームを立て直す切っ掛けとして他所からの刺激が必要と考え、スピードスターズ宛に挑戦状を送ったのだ。

 

勿論勝ち負けも少なからず意識はしていたが、それよりもチームリーダーとして失った仲間同士の絆を取り戻す事に重点を置いていた。

 

本当は自分がバトルしたかったアリスの相手を慎吾に取られたが中里はそれでも良かった。自分は愚か慎吾ですら歯が立たない相手なのかも知れない。だがそれでも、否、それだからこそ中里はアリスとのバトルを慎吾に譲った。

 

もうすぐ次のバトルが始まる。負け犬である自分は黙ってバトルの結末を見届けようと決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中里の心境など知る由もなく慎吾はアリスと向き合っていた。

 

慎吾「噂の走り屋が女だったとはなぁ、こいつは期待外れだぜ。」

 

バトル開始前からアリスを挑発的な態度を取る慎吾。アリスは慎吾の相手をする気が無いのか終始無視し続けている。

 

その態度が気に入らなかったのか慎吾は更に高圧的な態度でアリスに言葉を掛けた。

 

慎吾「テメェみたいな小娘は車ヘコまされてヒイヒイ泣いてる姿がお似合いだぜ。」

 

散々アリスを罵倒する慎吾に傍らにいた蓬莱が怒りの表情を露わにする。そんな蓬莱を霊夢が宥める。

 

霊夢「落ち着きなさい、蓬莱。」

 

蓬莱「ですが、あそこまで言われて黙ってる訳には・・・」

 

霊夢「ここでキレたらあいつの思うつぼよ。少し冷静になりなさい。」

 

霊夢に言われて蓬莱は渋々引き下がる。尚この場には拓海もいたが拓海もまた慎吾を睨み付けていた。

 

拓海「(・・・あれ、何で俺こんなに怒ってるんだ?)」

 

言われた本人は落ち着いているのに何故自分は柄にも無く感情を露わにしているのか不思議に思う拓海であった。

 

慎吾はまだ言葉を発していたようだが、その全てを無視してアリスは車に乗り込んだ。そんなアリスを見て慎吾は舌打ちしながら自分の車に乗る。

 

両者が車に乗ったのを確認するとナイトキッズメンバー、主に慎吾派の連中が中心となって右手とステアリングを縛り付ける作業に入った。

 

その最中、アリスの方を担当していた男が卑劣な笑みを浮かべながらアリスの方に視線を向けていた。まるでアリスが負ける事を確信しているかの様に。

 

この様子にいままで黙っていたアリスが遂に口を開いた。

 

アリス「・・・良い年してチンピラ口調で挑発してきて、あなたの大将って子供なのね。」

 

その瞬間、卑劣な笑みを浮かべていた男の顔が凍り付いた。そしてその表情が怒りの色に染まる。男は乱暴にガムテープを千切るとアリスを睨み付けながら去っていった。

 

慎吾「先に行きなよ、S2000の嬢ちゃん。」

 

ここまで行くと最早溜め息しか出ない。慎吾の言動に暫し呆れながら走り出そうとした時、拓海がアリスの所に歩み寄って来た。

 

拓海「あいつに散々言われたからこのバトル、絶対勝とうな。」

 

アリス「解ってるわ。さっさと終らせるよこのバトル。」

 

拓海がアリスに声を掛けたのは先程の慎吾の挑発でアリスの集中力が乱れていないか心配した為であったがその心配は杞憂に終わった。

 

集中力を極限まで高め、一呼吸置くとアリスのS2000はスタートラインから飛び出した。

 

ダウンヒルバトル2回戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダウンヒルゴール地点、

 

そこには人目を引く様な真っ青な車が2台停まっていた。1台はフロントがS13シルビアの顔でリアがワンエイティの奇妙な車、その名もシルエイティー。もう1台はランサーエボリューションⅨ(以下、エボⅨ)

 

その車の持ち主らしき3人の女性が何やら会話をしている。

 

??「それにしても、まさかハチロクがR-32に勝つなんてね誰が予想したかしら。」

 

??「未だに信じられないよ。ナイトキッズの中里って言ったら群馬エリアを代表する走り屋の1人なのよ。」

 

??「R-32の戦闘力はハチロクの比ではありません。それでもR-32はハチロクに負けた。考えれる理由はドライバーの力量の差という所でしょうか。」

 

1人が先程のバトルの結末に感心してもう1人は中里の敗北に驚いており更にもう1人が先程のバトルを自分なりに分析していた。3人の反応は三者三様でそして髪の色もまた三者三様だった。

 

3人共同じロングヘアーだが上から言葉を発した順に、茶髪、黒髪、そして最後の1人は緑髪という地毛なのか疑いたくなる髪を持つ少女がいた。

 

??「あなたは相変わらず冷静ね。本当に高校生なの?」

 

??「この性格は生まれつきです。それに巫女という仕事柄もありますので。」

 

??「まぁ、巫女が走り屋やってる事自体がおかしな話だけどね。」

 

話にもあった通り、緑髪の少女は巫女でありながら走り屋をやっている少し変わった少女。だが考えてみればスピードスターズのメンバーの霊夢も同様に博麗神社の巫女なのだからこの2人は不思議な存在と言える。本人達は否定するだろうが・・・

 

??「とにかく、次はEG6対S2000のV-TEC同士のバトルです。これはどう予想しますか?」

 

??「車の性能で言えばS2000が有利な気もするけど、ナイトキッズのEG6は妙義の下り最速って言われてるし、正直分からないわ。」

 

??「慎吾はああいう奴だけど腕は確かだしね、でもあのS2000の事が分からないから今の所慎吾が勝つ確率は五分と五分ね。」

 

一体どんなバトルになるのか、ナイトキッズが一矢報いるのか、それともスピードスターズが完膚無きまでに叩きのめすのか3人は興味津々だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所はスタート地点に戻る。

 

蓬莱「何なんですか、あの慎吾って奴は!!先輩の事をあそこまで馬鹿にして!!ほんっと腸が煮えくり返りますよ!」

 

蓬莱は大声を出しながらスタート前の慎吾の態度に憤慨していた。先程は霊夢が宥めてくれたお陰で揉め事が起こる事は無かったが、蓬莱の怒りはまだ収まっていなかった。

 

拓海「蓬莱の奴まだ怒っていたのか。」

 

霊夢「えぇ、冷静になる様に言ってるんだけど、あの様子だと聞いて無いみたいね。」

 

蓬莱「そうそう、この間なんかもナンパして来たデブ共が先輩と先輩の母親の事を馬鹿にして、その時は先輩が私に変わって説教してくれたから良かったですけど、もしその場に私しか居なかったらデブ共を物理的にフルボッコにするつもりでs・・・って、そうじゃ無くて!!」

 

霊夢「まーた何時もの暴走癖が始まったわね。」

 

拓海「・・・あれって本当に怒っているのか?」

 

蓬莱の怒りの矛先が全く違う方向にずれていってる事に対して霊夢は呆れ顔で、拓海は若干困惑しながら1人文句を言っている蓬莱を見ていた。

 

本来、人間という生き物は二面性を持つ。本音と建前を上手く活用してこの現代社会を生きている。しかし人間はそう簡単には本音の部分を見せない。それは何故か。

 

例えば自分に唯一無二の親友が居たとしよう。そんな親友の嫌いな部分、または直して欲しい所があったとする。自己中心的、時間にルーズ等々・・・。

だが親友はそれを直そうとしない。その場合、人間はどういった行動を取るか?思った事をストレートに本人に伝えるか、それとも気付かないフリをするか。

 

大抵の人間は後者を選ぶだろう。理由は簡単、何故なら単に親友を傷付けたくないからである。

 

勿論それが悪いという訳では無い。しかし親友と本音で言い合えない関係ならそれは最早親友とは呼べないのではなかろうか。

 

・・・話を戻そう。だが蓬莱の場合は本来人間が隠したがる筈の本音の部分を何の躊躇いも無く表に出している。何故隠さないのか、それは蓬莱しか知らない。

 

蓬莱「この際だからもう1つ言わせて貰いますけど、この間先輩にやたらk・・・霊夢「蓬莱、アンタに聞くけどこのバトルのポイントは何処と思うかしら?」・・・そうですね、やはり右手をガムテープで縛ってる分ステアリングの舵角も制限されますからいかに少ない舵角でコーナーを曲がれるか、つまり先輩の技量の高さがこのバトルのキーポイントになりますね。」

 

全員「(切り替え早っ!?)」

 

蓬莱の思考の切り替えの早さに思わず全員がズッコケる。だが蓬莱の見解はかなり的を得ていた。

 

蓬莱の言葉を要約すると、勝敗はアリスのドラテクの幅の広さに懸かっていると言っても過言では無い。FF有利なこのルールでアリスに勝機があるとすればその一点に尽きるという事になる。

 

霊夢「アリスは荷重移動の技術を習得してるって言ってたわ。」

 

蓬莱「でしたら案外楽な展開に持っていけそうですね。」

 

霊夢「そうね・・・確かに【単純】な技術勝負なら勝つ見込みはあるわね。」

 

蓬莱「ただ、あのシビックのドライバーが何か仕掛けてくる可能性がある・・・という事ですね。」

 

霊夢「そう言う事。・・・どうも嫌な予感がするのよ。私の勘だけど。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慎吾は現在かなり焦っていた。それもそのはず、アリスは未だ頭を取っており、事故を起こすどころか軽快な走りで慎吾を圧倒していた。

 

スタート直後、慎吾は後ろから高みの見物を決め込むつもりでいたが、今ではプレッシャーを掛ける事は愚か付いて行くだけでも結構厳しい状況。

 

慎吾「(何故だ、何故まがれる!?いきなりやってこなせる程ガムテープデスマッチは甘く無いんだぞ。)」

 

慎吾自身ガムテープデスマッチをマスターするまで右手を持ち替えずに峠を走る練習を山の様にしてきた。だから慎吾はこのルールに自信があった。それが今ではどうだ、バトルは中盤に差し掛かろうとしていてアリスに対してプレッシャーを掛けているのだが一向に手応えが無い。

 

対するアリスは序盤こそ慣れないルールで手探りの状態で走っていたが呑み込みの早さからすぐに慣れてキレのある走りを見せていた。

 

元々荷重移動の技術を習得していたアリスにとってガムテープデスマッチのコツを掴むのにさほど時間は掛からず現在では慎吾を上回るペースでダウンヒルを攻めていた。

 

ルールに慣れてしまえばそこからはアリスのペース。一気に慎吾を突き放そうとするが慎吾も地元の意地とこのルールを持ち出した側のプライドがあるのか負けじとアリスに食らい付く。

 

勾配のきついS字コーナーをアリスは荷重移動だけで車をドリフト状態に持ち込み、カウンターを当てないゼロカウンタードリフトを完成させる。そして次の切り返しの右をタコ躍りの現象を応用して逆ドリフトを完成させてS字コーナーをクリアした。

 

「あそこのS字を逆ドリフトでクリアする奴初めて見たぞ!!」

 

「信じられねぇ!?地元でもあそこまで出来る奴居ないのに・・・」

 

「しかも速えェ!!とても右手をガムテープで縛ってるとは思えねぇよ・・・」

 

アリスの走りを間近で見たギャラリーは口々に感想を述べていた。そしてその走りを後ろから見ていた慎吾は予想以上の技量の高さを見せ付けられ度肝を抜かれた。

 

慎吾「(とんでもねぇ食わせもんだぜ。あそこまでやられちゃもうまぐれじゃ無ぇ。・・・だが関係ねぇ、要は勝ちゃ良いんだよ、どんな手を使ってもなァ!!)」

 

ニヤリと卑劣な笑みを浮かべる慎吾。それは何か良からぬ事を企んでいるかの様な表情だった。

 

左の中速コーナーに差し掛かり、アリスは軽く減速をし、ドリフトの姿勢作りをしていた時それは起こった。

 

慎吾のEG-6はコーナーが目の前に迫っているにも関わらず、一切減速せずにアリスのS2000目掛けて突っ込んできた。そして・・・

 

 

 

 

 

・・・ゴンッ!!

 

 

 

 

 

アリス「・・・!!」

 

突然の出来事にアリスは一瞬思考が停止した。だがすぐに自分の車がバンパープッシュをお見舞いされた事に気付いた。相当スピードに乗っていた所為で立て直そうにも車は回り続けるばかりで全く言うことを聞かない。かと言って車を停めてしまったらその分慎吾との差が余計に開いて追い付く事が難しくなる。そこでアリスは咄嗟の判断でスピン状態に陥った車を立て直そうとするのでは無く、【あえて】車を1回転させる方向に持っていく事にした。

 

車が180度回った頃に慎吾のEG-6は空いたスペースから悠々とアリスのS2000を追い抜いた。その後アリスの車はガードレールに衝突し大破、走行不能に陥りS2000はあえなく解体屋送りになる

 

 

 

 

 

・・・はずだった。

 

 

 

 

 

車は進行方向に引っ張られながら元の向きに戻ろうとする。そしてS2000のフロントノーズが進行方向に向いた瞬間、クラッチを繋いでフルスロットル。するとS2000は体勢を立て直し、そして何事も無かったかの様に走り出した。

 

アリスの咄嗟の判断が功を奏して絶体絶命の窮地から見事脱した。

 

この事は無線を通して頂上にいる霊夢達に知らされた。当然全員が怒りに満ち溢れているかと思いきや予想に反して皆が冷静さを保っていた。先程まで散々文句をぶち撒けていた蓬莱ですら意外な程冷静だった。

 

蓬莱「予想はしていましたが、バンパープッシュとは・・・卑怯な手を使ってきましたね。」

 

池谷「いくらラフな走りが好みだと言ってもこれは流石にやり過ぎだ。」

 

拓海「アリスに与えるダメージも大きい筈、これは相当厳しい戦いになったな。」

 

霊夢「・・・それはどうかしら。」

 

霊夢の言葉に池谷達が一斉に視線を霊夢の方に向ける。その言葉の真意を確かめるべく池谷が霊夢に話し掛ける。

 

池谷「どういう事だ?霊夢。」

 

霊夢「考えてもみなさい。スタートする時に慎吾は態々アリスに先行する様に言ったのよ。普通に考えれば何か裏がある事位解るわよ。」

 

拓海「成る程・・・」

 

霊夢「それにアリスは我がスピードスターズが誇るダブルエースの1人なのよ。こんな子供騙しに動揺する程ヤワじゃ無い。アリスを舐めて貰ったら困るわ。」

 

蓬莱「ともかく、これで先輩は攻守のスイッチが切り替わる筈です。狙いを定めた時の先輩の走りは他の追随を許さない程の物があります。攻守のスイッチが切り替わる時・・・その時こそギリギリの所で保っていた均衡が崩れる時です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スピン状態から立ち直ったアリスは慎吾に追い付く事以外何も考えていなかった。只々無心で愛車のS2000を走らせる。ベタ踏みのアクセルを通じて奏でられる甲高いV-TECサウンドがまるで今のアリスの心情を表している様だった。

 

アリス「(・・・ムカついた。わざとやったわね・・・)」

 

アリスの体は怒りで震えていた。アクセルを踏み込む足に力が加わる。それと同時にステアリングを握る手を力強く握り締める。ハイライトの消えた目は少し離れたEG-6を確実に捉えていた。

 

アリス「(アンタみたいなカスには・・・何があっても絶対に負けない!!)」

 

コーナーが目の前に迫って来てもアリスのS2000はアクセル全開で突っ込んでいく。スピードを殺しきれずS2000はガードレールに真横から衝突する。だがその反動を利用して次のコーナーを逆ドリフトで駆け抜ける。

 

アリスの走りの豹変っぷりにその場にいたギャラリーが言葉を失う。車をガードレールに当てようが何しようが一度床まで踏み込んだアクセルを戻さない。

 

並のドライバーならキレたら最後。ミスを繰り返すばかりで速くは走れない。

 

だがアリスの場合は違っていた。長年の走り込みで体に染み付いたドライビングセンスが自分の手足の様に馴染んだS2000を紙一重の所で操っていた。

 

 

 

 

 

【キレればキレるだけ速い】

 

 

 

 

 

ゼロカウンタードリフトでも無く、逆ドリフトでも無い。これこそがアリス・マーガトロイドの走りの真骨頂なのである。

 

 

 

 

 

猛然と迫り来るS2000に慎吾は動揺を隠しきれなかった。これ以上攻め込めないスピードで攻めているのにS2000はEG-6との差を徐々に詰めてくる。あのS2000何かがおかしい。慎吾の体に悪寒が走った。

 

そこまで考えた時、慎吾は周りの景色がいつもと違う事に気づく。走り慣れた筈の妙義の下りがまるで全く違う峠に化けて慎吾に牙を向ける。こんな事は今まで経験した事が無かった慎吾にとってそれは恐怖すら覚える程だった。

 

恐怖心と戦いながら慎吾は後ろから鬼神の如く迫り来るS2000から必死に逃げようとする。だが、標的をロックオンしたアリスがそれを許さず慎吾を威圧しながらその差を詰めてくる。そして完全にテールトゥノーズとなり、後ろからの威圧感が更に増す。

 

左の低速コーナーの入口でアリスのS2000は強引にインを差してきた。予想外のパッシングに動揺した慎吾は対応が遅れる。アリスはイン側の壁に車体を擦り付けながら慎吾のEG-6を抜き返した。

 

慎吾「(う・・・嘘だろ・・・この俺が、こうもあっさりと・・・)」

 

慎吾はこの時、もしかしたら自分はとんでもなく桁違いな相手とバトルしてしまったと思った。今の自分では到底歯が立たない。踏んできた場数が違う。走りに懸けてきた想いの強さが違う。自分とアリスとの実力の差を慎吾は痛感した。

 

逆境に立たされてこそアリスは真の力を発揮する。あの時、慎吾のバンパープッシュを喰らい窮地に追い込まれたその時点で、このバトルの勝敗は決まっていたのかも知れない。

 

モチベーションを無くした慎吾はアリスのS2000のテールが徐々に離れていくのをただ見送る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

妙義ナイトキッズ対秋名スピードスターズの交流戦は妙義山のコースレコードを大幅に更新したスピードスターズの圧勝で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔妙義山、ゴール地点〕

 

 

 

 

 

??「そんな・・・あのナイトキッズが完敗するなんて。スピードスターズってそんなに凄いチームなんだ・・・」

 

??「慎吾に大差を着けて勝ったあのS2000・・・何者なのかしら。」

 

??「スピードスターズのハチロクとS2000のドライバーはかなり高い能力の持ち主ですね。・・・これは調べてみる価値はありますね。」

 

先程の3人の女性はスピードスターズの実力の高さに驚いていた。ナイトキッズの圧勝という前評判をあっさりと覆したスピードスターズに興味が湧く。

 

??「このまま群馬エリアを総ナメにするつもりだろうけど、碓氷峠最速の私達『インパクトブルー』がいる限りそうはさせないわ。」

 

碓井最速の走り屋チーム、インパクトブルーの沙雪が次の標的として秋名スピードスターズに狙いを定めた。沙雪はドライバーのサポート兼ナビゲーターを務める女性。自らが走る事は無いが常に的確な指示でドライバーを支える縁の下の力持ち的存在だ。

 

後の2人はインパクトブルーを代表する碓井屈指のドライバー。碓氷峠で圧倒的な存在感を放つ2人はどちらも青い車に乗っている。シルエイティーを操るは、抜群のセンスとモチベーションの高さで勝負する感覚派ドライバー、佐藤真子。そしてもう1人、青いエボⅨを操るのはランエボを走らせたら彼女の右に出る者は居ないと言われる【奇跡のエボ使い】の二つ名を持つ天才ドライバー。

 

 

 

 

 

その名も東風谷早苗。

 

 

 

 

 

2人の会話から外れた早苗はゴールしてスピードスターズメンバーから祝福を受けているアリスの方に視線を向けた。

 

早苗の視線の先には何時の間にかゴールして霊夢達からの祝福に1人困惑しているアリスの姿があった。蓬莱から強烈なハグをお見舞いされ、あたふたしてるアリスを差し置いてスピードスターズのメンバーらは和気藹々としていた。

 

早苗「貴女とは一度本気でバトルしてみたい物ですね。その時が来るのを楽しみにしてますよ【七色のドリフト使い】さん。」

 

誰に言った訳でも無く、囁く様にそう零したタイミングでアリスが自分に向けられた視線に気付いたのか早苗の方に振り返った。2人の視線が交錯する。両者がどういう感情を抱いているか、それは本人達にしか解らない。

 

霊夢「アリス、どうかした?」

 

霊夢に声を掛けられアリスは早苗の方から視線を外した。

 

アリス「何でも無いわ。・・・そろそろ帰りましょう。」

 

そう言うとアリスはS2000の運転席に乗り込んだ。バンパープッシュを喰らってからゴールするまでの記憶が曖昧だが、勝ったなら良いかと割り切ってエンジンのセルを回す。

 

早苗は走り去って行くS2000の姿を見届けると雲1つ無い夜空を見上げた。明日になれば今回のバトルの事で走り屋達の間で持ちきりになるだろう。早苗は携帯の画面を開き、スピードスターズのホームページに目を通した。「当面の目標は群馬エリアの制覇」と書かれた文章を見ただけでも意志の強さが伝わってくる。

 

早苗「・・・私はそう簡単にはやられませんよ。全く・・・これから楽しみで仕方がありませんね。」

 

 

 

 

 

何の気なしに呟いた早苗の言葉を聞いた者は誰1人として居なかった。

 

【完】

 

 

 

 





蓬莱!!そのポジションを俺に変われ!!

・・・てな訳でアリスのバトルパートでした。

うちのアリスさんは静かにキレるタイプです。決してぎゃあぎゃあ騒いだりドンパチやったりもしません。

そして早苗さん登場です。やっぱアリスさんのライバルは東方のキャラが一番相応しいと思った次第でございます。

今後も東方のキャラを何人か出す予定です。誰にするかはまだ決まってませんが。

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