七色のドリフト使い(再制作予定)   作:独田圭(ドクタケ)

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最近知った事なのですが、アリスさんの母親って神綺さんだったんですね。

・・・ガチで知らんかった(汗)

まぁそこはご都合主義という事で作者の脳内設定を変えるつもりは微塵もありませんが。←開き直り

そんな訳で随分と時間が掛かりましたが第12話です。

タイトルで誰が出て来るか見当が付いてる方が大半でしょう。





・・・あぁ妬ましい。



第12話 GARAGE Water Bridge

 

ある日の昼下がり、藤原豆腐店に来客が訪れていた。その客は豆腐を買いに来た訳では無く、豆腐屋の店主の文太と談笑していた。

 

文太「拓海の奴から話を聞いたが、お前ん所の娘も結構なレベルにまで成長してるらしいじゃ無ぇか。」

 

アリシア「そうかしら?私からしたらまだヒヨっ子よ。アンタん所の息子はどうなのよ?」

 

文太「まだまだだな。以前に比べたら少しはまともになってきたが。」

 

客として来ていたのはアリシア・マーガトロイドだった。かつて秋名山を席巻していた2人の伝説の走り屋が引退してから一堂に会する機会は滅多に無い。アリシア自身もこうして文太の元を訪れるのはおよそ2年ぶりだった。

 

文太「豆腐食ってくか?昨日の売れ残りだが。」

 

アリシア「客人に売れ残りを出すってどういう事よ。」

 

文太「偶に来たと思ったらただ無駄話して帰る奴を客とは思っちゃいねぇ。」

 

アリシア「本当、良い性格してるわね。」

 

文太「お互い様だろ。」

 

売り言葉に買い言葉でお互い皮肉を交える。一見仲が悪いのかと思うがこの2人は昔から顔を合わせると前述の様な掛け合いを繰り広げるのだ。特別仲が悪いという事では無いという事だけは言っておこう。

 

冗談混じりに皮肉のキャッチボールをしていた2人であったが不意に文太が話題を変えた。

 

文太「ところで今日は何の用で来たんだ?」

 

アリシア「・・・ちょっと悩みがあるのよ。」

 

さっきまでの明るい空気から一転して神妙な顔付きで悩みがあるとアリシアは打ち明けた。アリシアの暗い表情を見て重要な話だと思った文太は黙って話の続きを促す。

 

アリシア「・・・最近会ってない所為で私の中のアリスちゃん成分が満たされて無いのよ~。」

 

 

 

 

 

文太「・・・は?」

 

 

 

 

 

アリシア「・・・えっ?」

 

表情と悩みの内容の違いに文太は肩透かしを喰らう。アリシアはそんな文太を見て自分が何かおかしな事を言ったのだろうかと疑問に思う。

 

文太「何だそのしょうもない悩みは。」

 

アリシア「しょうもないって何よ!!私からしたら充分な死活問題なのよ!!」

 

文太「そんなもん会いに行けば済む事だろ。」

 

アリシア「それが出来たら苦労しないわよ。今日なんかも久し振りに会いに行こうと思って電話してみたら「車を板金に出しに行くから無理」って断られたのよ。最低でも週に一度は会いたいのにもうかれこれ1ヶ月近くは会えて無いわ。これは最早非常事態よ。」

 

文太「・・・お前の親バカっぷりは良く解ったよ。」

 

呆れて物も言えないとはまさにこの事か、と思いながら文太はしっかりと自立してるアリスに称賛の念を送る。それに比べてウチのバカ息子は・・・とこの場に居ない拓海を心の中で毒ついた。

 

文太「それより、板金に出すなんて珍しいな。お前の娘は一体何をやったんだ?」

 

アリシア「昨日の追いかけっこで何かあったみたいよ。まぁ、詳しい事は聞いてないけどね。」

 

アリシアはアリスから前日のバトルの事については少ししか聞いていなかった。だが普段車を大切に扱うアリスがあそこまで傷を付けたのだから余程許せない出来事があったのだろうと自分なりに解釈する。

 

アリシア「どういう事情があったかは知らないけど、車に傷を入れる程度じゃあまだまだ未熟って事ね。私達はどんな事があっても絶対ぶつけたりなんかしないわ。そうでしょ、文太。」

 

アリシアの言葉に文太は違いないと頷く。事実2人は現役で走り屋をやってた頃、自慢の愛車を事故らせた事など一度も無かった。その点で言えば拓海とアリスはまだこの2人の足元にも及んでいなかった。

 

アリシア「・・・久々に来た訳だし、アンタん所の豆腐でも買って帰るわ。・・・取り敢えず厚揚げ何枚か適当に入れて貰えるかしら。」

 

文太「へいへい、毎度。」

 

折角だから、文太の作った厚揚げを愛娘と一緒に食べようと思いアリシアは携帯を手に取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのアリスはS2000を走らせながら、いつも贔屓にしているディーラーを目指していた。

 

今朝、母親から電話が来て今日会おうと言われたが、昨日の出来事があった所為でとてもそんな気分になれず結局アリスは断った。

 

車を走らせる事約10分、【GARAGE Water Bridge】と書かれてある店の前に車を停める。此処がアリスの行き付けのディーラーである。

 

店の辺りを見渡すとその店のチューナーが仕上げたチューニングカーが所狭しと並べてある。どの車も派手過ぎない程度に仕上げてある所にそのチューナーの拘りが見てとれる。

 

ガレージの方に歩を進めると1人の少女が車のシャシーの下に潜っていそいそと作業をしていた。

 

アリスはその少女に声を掛ける。

 

アリス「こんにちは、久し振りね。」

 

??「あらいらっしゃい・・・って誰かと思えばアリスじゃない。」

 

車の下から出て来たのは首元に白いスカーフを巻き、尖った耳が特徴的なオレンジのつなぎを着た金髪の少女だった。

 

少女もとい水橋パルスィはこの店を1人で切り盛りしていてアリスとは同い年。元々は【水橋商会】を経営してた女性の1人娘で幼少期から母親の仕事の手伝いをしていたが中学卒業を機に独立し今の【GARAGE Water Bridge】を開いた。【シンプル且つ速い車づくり】をモットーに幾多の走り屋達に様々な車やパーツを提供し、若干18歳にして現時点で自身の仕上げた車は軽く1000を超える。今やこの界隈の走り屋から絶大な支持を集めるチューナーにまで上り詰めた。

 

当然だが、アリスのS2000を仕上げたのもこのパルスィで、外観からエンジン、足回りの至る所に彼女の手が加わっている。

 

余談だが、アリスのS2000の外装パーツは全て無限というメーカーで統一されている。外観のパーツを同じメーカーにして統一感を持たせる事もパルスィのモットーの1つである。パルスィ曰く「パーツの手配が面倒じゃなくて済むというのが本音。」と漏らしていたがそこは触れないでおこう。

 

アリス「貴女に板金を頼みに来たわ。」

 

アリスの後ろに停まってるS2000を見てパルスィは眉を顰める。結構な傷の入り具合にパルスィは溜め息をついた。

 

パルスィ「・・・全く妬ましいわね。貴女、一体何を仕出かしたのよ。」

 

アリス「これにはちょっとした事情があって・・・」

 

アリスは事の顛末をパルスィに話した。昨日のバトルやこのような事に至った経緯なども。パルスィは「何やってんのよ・・・」と漏らしていたがやがて「まぁ良いわ。」と言うと真剣な眼差しで車の状態をチェックし始めた。

 

パルスィ「・・・傷の入り方からして車をガードレールにぶつけたみたいね。塗装が剥げてる程度で傷自体は浅いわ。これなら少し手を入れるだけで直ぐに元に戻りそうね。」

 

アリス「それを聞いて安心したわ。」

 

パルスィ「でも今日中は無理よ。直るまでの間この車は預かるからそれまでは此方を使いなさい。」

 

そう言って差し出したのはパルスィが店のデモカーとして使っているNBロードスターだった。

 

ターボは付いておらずコーナリング性能の良さを重視したセッティングになっている。ターボ車を嫌うアリスにとってまさに打ってつけとも言える車だ。

 

「そう言えば、」とアリスは昨日のバトルで最も印象的だった出来事をパルスィに話した。

 

アリス「走り屋の情報に詳しい貴女に聞くけど、この辺のエリアで緑髪の女の走り屋っているかしら?」

 

パルスィ「緑髪?・・・あぁ、それってインパクトブルーの早苗の事ね。」

 

アリス「インパクトブルー?」

 

パルスィ「碓氷峠最速って言われてる走り屋チームで、その名の通り車の色を青で統一しているのが特徴よ。その1人、青いエボⅨを操るドライバーが東風谷早苗。実家が守矢神社って所で早苗もそこの巫女よ。噂によると滅茶苦茶速いらしいよ。妬ましい程にね。」

 

アリス「へぇ・・・」

 

パルスィの説明を聞いてアリスは1人考える。

 

妙義山のゴール地点で一瞬だけだが早苗と目が合った。その時彼女からとても速そうなオーラを感じた。・・・こいつは出来る、アリスの直感がそう告げていたが彼女の走りを見た訳では無かったので自分の勘が正しいかどうかも怪しかったのだが、今の話を聞いて自分の勘が正しかったのだと思った。

 

アリス「私なら・・・勝てるかしら?」

 

パルスィ「やってみなければ分からないけど貴女も妬ましいくらい速いから、多分紙一重の勝負になるんじゃないかしら。」

 

アリス「私はその早苗って人の走りを知らないから何とも言えないわね。・・・そうだ、直接碓氷に行ってどんな走りをするのか観て見ましょう。パルスィ、貴女も一緒に来る?」

 

パルスィ「随分と急な話ね。・・・その突拍子の無さが妬ましいけど、どうせ客も居ないし付いて来てあげるわ。」

 

結局は自営業なのでこれ以上の集客が見込めなければ臨時休業にした所で経営に何ら支障は無い。パルスィはそう結論付け、アリスの提案を受ける事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

群馬と長野の県境に位置するここ碓氷峠はかの有名なドリキンが若かりし日に自らの腕を磨いた場所として知られている。

 

今でも走り屋達が夜な夜なドラテクを磨いており、群馬エリア屈指の走りのスポットと言っても過言では無い。尚、碓氷峠は道幅が狭く見通しも悪い為、この峠を走る場合はかなりの技量が要求され、故に碓氷峠は総じて高いレベルを持った走り屋達が密集している。

 

その碓氷の走り屋達の中でもインパクトブルーは群を抜いているとはパルスィの弁。

 

 

 

 

 

さて、アリスとパルスィはそのインパクトブルーの走りを一目見ようとこうして碓氷峠にやって来た訳だが・・・

 

アリス「・・・で、何でママが此処にいるのよ。」

 

何故かそこにはアリシアが居て、しれっとアリス達の輪の中にに紛れ込んでいた。

 

・・・厚揚げを片手に。

 

アリシア「つれない事言わないの。私はアリスちゃんに会いたかったのよ~。」

 

アリシアはアリスの携帯に連絡してみたが繋がらず仕方なくアリスの家に向かっている道中、NBロードスターを運転するアリスを見つけて此処まで付いて来たという訳だ。

 

アリシア「私の電話を無視するなんて何時からそんな冷たい子になったのかしら。・・・これはお仕置きが必要ね。」

 

お仕置きという言葉にアリスは顔を青くする。お仕置きと言ってもアリシアはアリスに対して暴力を振るったり暴言を吐く訳でも無い。では何故アリスはそんな態度を取るのか?原因はそのお仕置きの内容にあった。

 

アリシア「必殺、全身羽交い締め!!」ガシッ!!

 

アリス「イヤアァァァァァ!!」

 

全身羽交い締め・・・それは関節技でも何でも無く只の抱擁なのだが、問題なのは所構わずそれをやるという事。アリスが小学生ならまだしも、思春期真っ盛りの高校生が母親からの分厚い抱擁を喰らったら、アリスにとってそれは最早拷問でしか無い。

 

アリシアは何かある度に【躾】と称してそれをやってきた。

 

アリス「ママ、お願いだから離してよぉ・・・」

 

アリシア「い~や~だ♪」

 

満面の笑みでキッパリと断る母親を見てやっぱりかと肩を落とす。1人空気となったパルスィは隣で「妬ましい・・・」とボヤきながら碓氷に来た目的を忘れていないか確認をとる。

 

パルスィ「あのねぇ、そう言う茶番は後にしてくれないかしら。アリス、貴女は此処に来た目的を忘れて無いでしょうね?」

 

アリス「勿論覚えてるわよ。でもママが・・・」

 

アリシア「あら、貴女確か水橋商会の所の娘じゃない。」

 

パルスィ「・・・今頃気付いたんですか?久方振りですね、アリシア・マーガトロイドさん。」

 

アリシアはパルスィとは面識があった。・・・正確には彼女の母親と面識があったのだが。パルスィの母親とはアリシアが10代の頃からの付き合いで自身が知ってる知り合いの中では最も付き合いの長い友人である。パルスィの母親はアリシアが文太と組む前に彼女と組んで秋名山を攻めていた元走り屋でその当時の愛車はサバンナRX-7(FCより前の型)。2人の車の色から【紅白のロータリー使い】と言われ、当時では今よりも女性の走り屋の存在が珍しかった為人気があったのだが、活動期間僅か2年という短さで走り屋を引退した。その2年後秋名の走り屋達を裏から支えたいという理由で水橋商会をオープン。腕前の良さと過去の名声、そしてその時には既に秋名の守護神的存在にまでなっていたアリシアの宣伝効果もあって瞬く間に店は繁盛していった。

 

パルスィは12歳の時にマーガトロイド親子と知り合っている。その時のアリスはアガリ症で人見知りが強かった事もあり、パルスィが話し掛けても碌に応答も出来ずアリシアの後ろに隠れてばかりだった。あれから6年、あの時からアリスは心身共によく成長したものだとパルスィは1人思う。

 

思い出に耽っていると、先程までとは違うスキール音が近付いて来て3人は会話を中断する。

 

周りのギャラリーの騒ぎようから見ていよいよインパクトブルーのお出ましかと3人は視線をコーナーの先に集中する。スキール音が聞こえて来てからそう時間が経ってない内に先のコーナーから1台の車が飛び出して来た。特徴的なリアウィング、漆黒の闇を照らす2つの横長のヘッドライト、グリルのド真ん中に3つの菱形のエンブレムが付いてる【それ】は東風谷早苗のエボⅨだった。

 

エボⅨはフェイントモーションを使い、先のコーナーから次のコーナーへと流しっぱなしで進入する。驚異的なスピード且つ理想的なラインを描いて3人の目の前を通り過ぎて行った。

 

アリス「(・・・速い!!)」

 

パルスィ「この狭い碓氷のコーナーを流しっぱなしで抜けるなんて、妬ましいくらい凄腕の持ち主ね。」

 

アリシア「へぇ~、最近の走り屋にしては結構やるわね。最も、本人は軽く流してるつもりなんでしょうけど。」

 

アリス「あれで流してるの!?・・・信じられないよ。」

 

普通ターボ車はコーナーの突っ込みではNA車に劣るというのが世間一般の常識なのだが、今のエボⅨはNA車に匹敵する程の進入スピードで突っ込み、スピードを落とさないまま抜けて行った。

 

それだけでも衝撃的だったのだが、更に凄い事に今のでまだ本気では無いと言うのだ。アリスとパルスィはてっきり全開で攻めていたかに思えたがアリシアだけはその事実をしっかりと見抜いていた。

 

アリス「・・・何て言うか、世の中広いわね。あの走りは常識では語れない程の何かがあるわ。」

 

パルスィ「何言ってんのよ、貴女だって私から見たら充分非常識な走り屋よ。」

 

アリス「ふえっ!?・・・そ、そうかしら。」

 

パルスィ「自覚が無いとは・・・何て妬ましい。」

 

パルスィは終始妬ましいと連呼しながら先程の早苗の走りを見て、奇跡のエボ使いの異名は伊達では無いと感心していた。

 

【完】

 

 




皆さんの予想通り、パルスィさんが登場しました。

ここいらでこの小説での東方キャラの設定をしておきます。ついでに早苗さんも一緒に。





水橋パルスィ

好きな事・・・日本車、車いじり

嫌いな事・・・外車、派手な車、妬ましい事全て

妬ましいが口癖。アリスと同い年でありながら自らのディーラー【GARAGE Water Bridge】を経営する少女。メカの知識は霊夢と同等。小学6年の時にアリスと出会い、以降アリスは彼女のディーラーの常連となっている。【シンプル且つ速い車造り】をモットーとしている為、派手なパーツやデコレーションを心底嫌う。彼女がディーラーを経営する事になった経緯は本文に書いてある通り。





東風谷早苗

愛車・・・ランサーエボリューションⅨ

カラー・・・ブルーマイカ

好きな事・・・MT車、自身の2つ名、釜飯

嫌いな事・・・AT車、ワゴン車、差別・偏見

碓氷峠最速の走り屋チーム、インパクトブルーのエースの1人。その実力はもう1人のエースである佐藤真子以上。データや駆け引きを重視して走る所謂理論派ドライバー。【奇跡のエボ使い】と称され群馬エリアでは彼女以上にランエボを操れるドライバーは居ないと言われている。また、早苗自身もその2つ名を気に入っている。妙義での交流戦の際にアリスの走りを見て衝撃を受けると同時にライバル心を抱く。





・・・という所です。

この2人は今後も出番があります。特に早苗さんに至ってはアリスさんのライバルポジですのでパルスィさん以上に登場させる予定です。

ではサヨナラ!!

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