七色のドリフト使い(再制作予定)   作:独田圭(ドクタケ)

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長い事、間を開けて申し訳ありません。最新話です。

この話でアリスの追加設定が入ります。

ではどうぞ。




第18話 恋と凄技と噂と

 

 

 

インパクトブルーとの激戦から翌日が経過した。

 

スピードスターズのメンバーの全員が帰ったと思いきや、池谷はただ1人チームの輪から外れ別行動をしていた。

 

何の為に1人別行動をしているのかというと・・・

 

 

 

 

 

池谷「うん、やっぱ此処の釜飯はうまいな。」

 

ランチタイム時の峠の釜飯お○のやで池谷は1人釜飯に舌鼓を打っていた。インパクトブルーとの交流戦の前日に立ち寄って以来、すっかり虜になってしまったようだ。

 

池谷「出汁が具材に染み込んで良いアクセントを出している。名物になるのも頷けるな。」

 

池谷は余程この釜飯を気に入ったようでおかわりをするのに躊躇は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思う存分釜飯を堪能した池谷は帰路に着く事にした。釜飯を食べる為だけにわざわざ群馬から来たのだからご苦労な話である。

 

そうして自分の車へと向かっている最中、池谷の目にある光景が飛び込んできた。

 

駐車場の隅っこの方で1台の赤い軽自動車がボンネットを開けたまま停車していた。そしてそこには1人の人間が立っていた。身体のラインからして恐らく女性だろう。女性はエンジンルームの中を覗いては時折首を捻っている。

 

池谷「・・・故障かな?」

 

状況から察するに恐らくは車に何らかのトラブルがあったのではないのかと思った池谷は何とかしてあげたいという気持ちになった。

 

スピードスターズのリーダーである以前に車マニアである池谷は霊夢程ではないにメカの知識は少なからずある。元々単車を弄って遊んでいた池谷は自身の今の愛車を買ってからも毎日の様に車を弄って楽しんでいた。気が付けばメカの知識を手に入れ、軽い故障程度なら自分で修理出来るまでになった。

 

生まれつきお人好しな面がある池谷はこうして目の前で困ってる人がいれば男女問わず首を突っ込んでしまうきらいがある。特に車の故障と聞けば自ら修理を買って出る程であり過去にも健二や祐一らの車も修理した経験があった。その際、両者から腕が良いなと褒められた為、割と本気で板金屋を営もうかと考えている今日この頃である。

 

やがて女性の顔が見える位置まで近づいた時、女性の方も池谷が近づいて来たのに気が付いたのか顔を上げてきた。

 

池谷「・・・あれ?君は確か、」

 

??「・・・もしかして、スピードスターズの池谷さんですか?」

 

なんと両者は面識があった。というかついこの間初めて顔を合わせたばかりである。

 

車のボンネットを開けたまま立ち往生していたのはインパクトブルーが誇るもう1人のエース、佐藤真子であった。

 

真子「どうして此処にいるんですか?交流戦はもう終わったじゃないですか。」

 

池谷「此処の釜飯が美味くてさぁ、ドライブがてらつい立ち寄ったんだよ。ところで君の車は故障でもしたのかい?」

 

真子「・・・はい。スターターは回るんですけど何故かエンジンが掛からなくて・・・」

 

池谷「ふむ・・・(という事は原因はヒューズ切れか何かかな)・・・少しエンジンを見せて貰っても良いかな。」

 

真子「良いですよ。」

 

池谷は真子から許可を貰うとボンネットの中を覗き込んだ。池谷の手元には何時の間にか六角レンチとスパナが用意されており完全に修理する気満々である。

 

余談だが池谷の車のトランクにはその他の工具やジャンプコードといった物まで積んであり、あらゆる原因から成る故障にも対応出来る様にしてある。

 

もしかすると、車をメンテナンスする技術に於いては霊夢よりも優れているのかも知れない。

 

真子の方は残念ながらハイレベルな運転技術とは裏腹にタイヤの山の残り具合やセッティング内容などメカに関しては驚く程チンプンカンプンであった為、エンコした時にこうして立ち往生するしか無かったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言えば真子の車の故障の原因は池谷の推測通りヒューズ切れによるものだった。池谷はヒューズ切れを直したついでにヒューズボックスからスターターへと繋がるコネクターの配線も交換して真子に「エンジンを掛けてみて」と促した。

 

真子が言われた通りセルを回すとそれまで何の反応も無かった車のエンジンが一発で掛かった。

 

真子「うわぁ〜、凄い。掛かりました。池谷さん、メカに強いんですね。」

 

池谷「そんな大した事無いよ。霊夢なんかに比べたらまだまだだし。」

 

真子「それでも凄く尊敬します。いつかお礼がしたいんで、もしよろしければ携帯の番号を教えてください。」

 

池谷(・・・幾らか段階を端折ってる気がしないでも無いが、これも何かの縁だろう。)

 

随分と積極的だなぁと思いつつも断る理由が無いので池谷は赤外線通信を使い自分の番号を真子に教えた。真子の事を知らなければ舞い上がっていたであろうが真子の走りを知ってる分、有頂天になる事無く冷静さを保つ事が出来た。

 

真子「もう知ってるとは思いますが、アタシ佐藤真子って言います。電話してね。」

 

そう言うと真子は自らの車に乗ってその場を去って行った。1人残された池谷は今更ながら何故真子の車がシルエイティでは無かったのか疑問に思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって此処は秋名山。

 

日も暮れて静寂に包まれているかと思いきや、秋名山には何故かギャラリーが集まっていた。

 

・・・その理由はというと、

 

 

 

 

 

「今日も来てるぞぉ、スピードスターズの双璧がぁ!!」

 

「【七色のドリフト使い】が乗る白いS2000と北関東最速の豆腐屋が乗るパンダトレノって言ったら今や群馬で知らない奴はいないからな。」

 

「2人共ドリフト主体の走りだけどコーナーがめちゃくちゃ速いんだ。一度生で見たら度肝抜かれるぜ!!」

 

ギャラリー達が憧れと尊敬の眼差しを向ける先にはアリスと拓海がバトル形式で走り込みを行っていた。無論、2人共本気である。

 

2人が秋名で走り込みをやる場合は最後に必ず下り一本勝負行う事になっている。ついさっき言ったばかりだが手加減無しのガチンコ勝負である。

 

これまでの戦績は全くの互角。あっさり勝敗が決する時もあれば最後まで縺れる事もある。そのガチンコバトルを見物する事がギャラリー達の最近の日課になりつつある。

 

「俺は豆腐屋のハチロクに2万。」

 

「じゃあ俺はS2000に1万。」

 

「なんだよ、もっと賭けろよ。」

 

「今月ピンチなんだよ・・・」

 

中には前述の様に賭博紛いな事をしてる奴等もいる。賭け事をするのは結構だが、程々の額でしてもらいたい。何故ならバトルをしている当人らはその為にバトルしてるのでは無いのと、下手をすれば自己破産街道まっしぐらになるからである。

 

 

 

 

 

さて、勝負の方はアリスが先行を走り、その後ろを拓海が追いかけるという展開になっている。両者の実力は言わずもがな。走り込みのキャリアでは拓海より1年長く走り込んでる分アリスに分があるが、秋名山という峠の熟練度に於いては拓海の方が1年長い。

 

実を言うとアリスは生まれこそ群馬だが生後間もなくアリシアの仕事の都合で神奈川に引っ越した。それから小学校6年生までの間を神奈川で過ごした後、群馬に戻ってきた。その為、秋名山の走り込みの期間は拓海よりか1年短い。

 

バトルは終盤、秋名名物5連ヘアピンへと差し掛かる。拓海が一気に真後ろに食っ付いて出方を伺うが、アリスが巧みにブロックして拓海を牽制する。

 

アリス(明らかに何か仕掛ける気満々じゃない。でも、そうはさせないわ!!)

 

拓海(・・・隙が無い。しょうがねぇ・・・アレやるか。)

 

ここで敢えて両者の欠点をそれぞれ挙げるとしたら、アリスは先行逃げ切りが得意ではなく、拓海はアリスに比べて駆け引きに乏しい。故にアリスは突き放す事が出来ず、拓海はアリスに走行ラインを潰されて攻めあぐねていた。

 

5連ヘアピンの3個目、アリスはワイドなラインを描く為に車をアウト側に振った。それを見た拓海がここだと言わんばかりに開いたイン側にノーブレーキで突っ込む。

 

アリス「なっ!?」

 

アリスだけでは無い。その場にいたギャラリーの誰もが見てもそれと解る程のオーバースピードでコーナーに進入した拓海。絶対に曲がる筈が無い。この時アリスを含めた誰もがそう思った。だが・・・

 

 

 

 

 

・・・ガリッ

 

 

 

 

 

アリス「えっ?」

 

一瞬何が起きたのか分からなかった。どう見てもインベタの苦しいラインの筈なのに拓海のハチロクはアリスのS2000を上回るコーナリングスピードでヘアピンを立ち上がったのだ。

 

混乱するアリスをよそに拓海は自慢のハチロクでスイスイと5連ヘアピンを抜けてゆく。その後どうにか落ち着きを取り戻したアリスは拓海に離される事は無かったが結局最後まで抜き返す事が出来ずゴールラインを通過した。

 

 

 

 

 

この日の勝負は拓海に軍配が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴール後、何時もなら1言2言程度交わして解散する所だが、アリスは拓海に抜かれた時の事が気になって拓海にもう一度走ってと頼んだ。拓海はあっさりと了承してアリスを横に乗せた状態で頂上へと戻ってきた。

 

拓海「本当はあまり見せたくないけど、普段アリスには色々と教えて貰ってるから特別に見せてあげるよ。」

 

そう言うと拓海は何故か紙コップに水を入れてドリンクホルダーに置いた。アリスは何故そんな事をするのか解らず頭の中に?マークが浮かぶ。

 

アリス「・・・まさかとは思うけど、その状態で攻めるの?」

 

拓海「配達の時は何時もこうやって走ってるんだ。でないと豆腐が崩れるってオヤジが五月蝿いから。」

 

ただ下りではあまりやった事無いけどと拓海は言う。聞けば拓海は配達を始めた時からコレをやっていたが初めの頃はノロノロ走っても水がバシャバシャこぼれていたとの事。アリスは水をこぼさずに走れるだけでも凄いと思うと同時に拓海の卓越した運転技術がコレによって培われたのならば豆腐を崩さないという目的以外に何か本当の意図があったのではと思った。

 

拓海が走り始めるとアリスは更に驚いた。水をこぼさずに走る事は予想出来たが、まさかドリフトまで出来るとは思ってもいなかった。それでいて半端なく速い。

 

アリス(・・・冗談でしょ。)

 

複合コーナーをドリフトしっぱなしで抜けた時には流石のアリスも衝撃を受けた。このテクニックがどれ程凄い事かアリスにはそれが解る。

 

複合コーナーをドリフトしっぱなしっていうのはかなりの技量が問われる。繋ぎのストレートを流しっぱなしで行くといざコーナーに入ってからのドリフトアングルが決めにくい上に立ち上がりでのタイヤのグリップが戻る感覚も掴みづらい。それに下手な奴はシフトチェンジでとっちらかる事もあるので、コレを出来る人間はプロのレーサー並のテクニックを持っているとかのドリキンは言う。

 

アリスは拓海の速さの秘密が解った気がした。非力なハチロクでは一旦スピードを落とすと回復するまでに余計な時間が掛かる。だから拓海は無駄な減速を一切しない。一見凄い技に見えても恐らく拓海にとっては日常茶飯事なのだろうとアリスは判断する。

 

そして問題の5連ヘアピンへとやって来た。すると走り始めてから今まで無言だった拓海が口を開いた。

 

拓海「じゃあ、このヘアピンを減速せずに曲がるから何をしたか良く見といて。」

 

アリス「・・・イヤイヤ、その宣告はおかしいよ。」

 

さらっと爆弾発言をする拓海にアリスは即座に突っ込みを入れる。あからさまに死刑宣告してるみたいじゃないと言いたかったがそれは心の中に留めておいた。

 

そうしてる間にもコーナーは目の前にまで迫ってきておりアリスは焦り始める。もしここで失神でもしてしまったら魔理沙や蓬莱から当分の間笑いのネタにされるに違いない。冗談じゃない、それだけは絶対にイヤだと迫り来る恐怖心に必死で抵抗する。

 

だがその瞬間、ソレは起きた。

 

 

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 

 

 

アリス「ふえっ?」

 

一瞬にして恐怖心という物は遥か彼方にすっ飛んでいった。氷点下にまで下がりきった思考は拓海が何をしたのか理解するまで少しばかり時間が掛かった。

 

だが若干イン側に傾いて、まるで電車がレールの上を走ってる様な感覚を覚えた時、アリスはその答えを見つける事が出来た。

 

アリス「・・・もしかして、道路脇の側溝にタイヤを落としたの?」

 

拓海「そう、俺はコレを【ミゾ落とし】って呼んでるけど、コレをやると面白い様にスイスイ曲がるんだ。」

 

拓海が語ったミゾ落としという技は一見破天荒な技に見えるが、実際にラリーの世界でもよく使われている実践的なテクニックだ。極端に言えば速く走る為のテクニックであり、車のポテンシャルの違いをリカバリーする事だって出来る。ミゾに片側のタイヤをわざと落とす事で車の遠心力から来るアンダーステアを殺す事が出来ると同時にタイヤのグリップ以上のコーナリングフォースを得る事も可能である。但し、ミゾに引っ掛けるタイミングが悪いととっちらかってスピンしたりミゾから飛び出す恐れもあるのでコレをやるにはかなりの練習が必要となる。

 

自分の目の前拓海の凄技をまざまざと見せ付けられたアリスはただただ感心するばかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び麓まで降りてきて今度こそ解散かと思われたが、拓海が腹減ったからメシ食いに行こうと言い出したので2人は秋名山の麓から程近い深夜営業をしているファミレスに立ち寄った。

 

真夜中なのにも関わらず店内にはそれなりに客が入っていた。秋名山のギャラリー達なのだろうか、そこかしこの席で車と峠の話題が上がっており盛り上がりを見せている。

 

拓海はトンカツ定食をガツガツと頬張っており、余程腹が減っていたのだろうと思われる。アリスは普段から夜食は摂らない主義なので紅茶だけ頼んでのんびりとくつろいでいる。あっという間に定食を平らげた拓海は口直しにコーヒーを頼んで一息ついた。

 

今から帰って寝たとしても寝坊する事間違いないので2人は学校が始まる時間までファミレスに居すわる事にした。

 

拓海「真夜中なのに結構人が多いね。」

 

アリス「深夜営業するだけの事はあるってとこかしら。」

 

2人は他の客の会話を小耳に挟んで紅茶(コーヒー)を啜っていた。客の話題は専ら走り屋に関する事ばかりで他に話す事は無いのかと2人揃って苦笑していたが・・・

 

 

 

 

 

「それにしてもスゲェよなぁ。」

 

「何がだよ。」

 

「スピードスターズに決まってんだろ。あのS2000とハチロクのコンビは今や俺達秋名の走り屋のヒーローなんだぜ。」

 

アリス・拓海「「ブブーッ」」

 

この言葉を聞いた途端、2人共々飲んでいた紅茶とコーヒーを吹き出して盛大にむせた。スピードスターズが話題に上がる事は仕方の無い事だが当人達がいる前でその話をするかと2人は同時に同じ事を思った。

 

「何が凄いって、そりゃ勿論ドリフトだろ。」

 

「あのドリフトには見る者を圧倒させる程の強烈なインパクトがあるよなぁ。」

 

「俺達、平凡な走り屋には到底マネ出来ないぜ。」

 

アリス・拓海「「・・・・・・//」」

 

ベタ褒めである。当の本人達がこのファミレスに居る事を知ってか知らずかそれぞれが各々の賛歌の嵐を述べている。嬉しい気持ちは多少はあったがそれ以上にむず痒い気持ちが大半を占めていた。

 

「そういえばさぁ、俺この間秋名の麓で白いFCを見たんだよ。」

 

「白いFCって言ったらレッドサンズの高橋涼介の車かぁ?」

 

「イヤ、多分違うと思うよ。」

 

「なんでそう言い切れるんだよ。」

 

「レッドサンズのステッカー貼ってなかったからな。それにもし秋名に偵察に来たなら弟の啓介も一緒に居た筈だ。だけど一緒に居たのは赤いSW20の車だった。レッドサンズに赤いSW使いが居るなんて聞いた事も無いからな。」

 

アリス・拓海「「・・・・・・」」

 

2人の手が同じタイミングで止まった。アリスと拓海はその2台の車の事がどうしても気になった。

 

アリス「ねぇ、秋名にそんな車なんて居たかしら?」

 

拓海「・・・少なくとも俺は見た事も聞いた事も無いな。」

 

では一体何者なのか?それはまだアリス達には解らない。

 

ただ、2人の頭の中ではその2台の車とバトルに発展するような気がしてならなかった。

 

【完】

 

 






最近仕事が忙しくて執筆する暇が無い・・・
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