七色のドリフト使い(再制作予定)   作:独田圭(ドクタケ)

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お待たせしました第19話です。題名の通り今回は蓬莱がメインです。

そういえばここの所上海の出番が無かったなぁと思い久し振りに上海を出してみました。やや強引に登場させたので若干違和感があると思いますがそこはまぁご愛嬌という事で(コラ!!)

表紙を描こうかと思ってはいますが作者は絵心とは無縁なもんで…

だーれか表紙描いてくれないかなぁ←人任せ


第19話 蓬莱の二面性

 

 

朝までファミレスで時間を潰した2人は登校の時間になると解散した。

 

拓海「じゃあ、また学校で会おうな。」

 

アリス「えぇ、またね。」

 

拓海は着替えに一旦家に帰る事になった。拓海のハチロクがファミレスを出るまで見送るとアリスは愛車S2000のトランクを開けた。

 

中から出てきたのは学校の制服でアリスは車の中でせっせと着替えた。アリスの自宅は学校から微妙に離れており今から着替えに戻ったとしてもそこから徒歩で通学すると間に合わない。かと言って走って学校に向かう気分ではない。ならばと学校の近くまで車を走らせて何処か近くのコインパーキングに車を駐めてそこから徒歩で通学すれば良いやと考えたアリスはこうなる事を予め予想して車のトランクに制服を積んできたのだ。

 

車での通学は当然禁止されているのだが要はバレなければ良いだけの事なのだ。

 

時計を見ると学校が始まるまでまだ少し時間がある。そこでアリスはボンネットを開けてエンジンの状態を確かめる事にした。…と言ってもエンジンはこの間OHを済ませたばかりなのでやるとしてもオイルチェックぐらいなのだが。

 

アリス「…おかしいわね。最後にオイル交換したの結構前なのに全然汚れてないわ。」

 

何故かと思ったがその理由は直ぐに解った。恐らくだが以前板金を出した際にパルスィが気を利かせてOHついでにオイルも交換してくれたのだろう。幾ら知り合いだからといってそれをサービスでやってくれたのだから水橋パルスィ様々である。

 

その後バッテリーの状態や配線の接触具合など色々確かめてみたが特に異常は見当たらず最後にエンジンのセルを回して正常に掛かるか確認した後ボンネットを閉じた。

 

ここで再び時計を見ると丁度良い時間帯になっていたので学校に向かって(厳密にはその近辺のコインパーキングに向かって)車を走らせた。

 

途中、見覚えのあるシルエットが猛ダッシュをかまして通学していたのでアリスは車を停めてその人を呼び止めた。

 

アリス「…魔理沙、また寝坊したのね。」

 

魔理沙「アリスゥ〜。一生のお願いだぁ、乗せてくれ〜。」

 

アリス「…仕方ないわね。隣、乗りなさい。」

 

魔理沙「た、助かったぜ〜。」

 

息も絶え絶えに魔理沙はアリスの助手席に乗り込んだ。

 

魔理沙「それにしても、自慢のS2000で登校するなんて、アリスも大胆だなぁ。」

 

アリス「バカ言わないの。このまま学校まで行ったらそれこそ自殺行為よ。」

 

魔理沙「まっ、そりゃそうだよな。ウチの学校の生徒指導もうるさいからな。特に閻魔教師なんかに捕まったら地獄だぜ。」

 

魔理沙は捕まった事があるのか、心底嫌そうな顔で言った。

 

アリス「でもあの先生はなんだかんだ言って説教だけで済ませてくれるから他の生徒指導よりかは優しい方だと思うよ。」

 

魔理沙「アリスは捕まった事が無いからそんな事言えるんだよ。あの説教は地獄以外の表現のしようが無いぜ。」

 

魔理沙の発言にそんなものかなとアリスは思う。以前アリスのクラスで無断でバイク通学をしていた生徒が居た。その時に閻魔教師と呼ばれる先生に見つかり1日中刻々と説教を喰らったのだが、あれがもし別の生徒指導に見つかっていたら説教だけでは済まなかっただろうと後にその生徒は語っている。

 

無断でのバイク通学は重大な校則違反である為、発覚したら停学処分は免れない。それが説教だけで済んだのは案外ありがたい事である。もし捕まるなら閻魔教師に捕まった方がかえって良いのではとアリスは思った。…最も捕まるつもりは微塵も無いが。…閑話以下略。

 

その後コインパーキングに車を駐めて歩いて学校へと向かう2人、だが学校に到着すると先程話に出ていた閻魔教師が門前に立っていた。まさに噂をすればなんとやらである。

 

隣の魔理沙を見ると明らかに嫌そうな表情で「げぇ」と漏らしていた。

 

閻魔教師こと四季映姫は2人の姿を見つけると早速呼び止めた。

 

映姫「アリス・マーガトロイドと霧雨魔理沙。貴女達は通学の方向が逆の筈です。これはどういう事ですか。」

 

魔理沙(…目敏い。)

 

会って早々容赦が無いとアリスは思った。とはいえそれを顔には出さず咄嗟に思い付いた言い訳をサラッと述べる。

 

アリス「実は昨日、魔理沙と2人で知り合いの家に泊まってたんですよ。今日はその人の家から通ってるんです。」

 

咄嗟に出た嘘の割には事のほか饒舌に話す事が出来た。映姫はアリスの目をしばらく見つめるとはぁと1つ息を吐いた。

 

映姫「…疑わしいですが証拠が揃ってない以上正当な裁きを行えませんね。ですので今日の所は不問としましょう。」

 

魔理沙「やったぜ!!」

 

映姫「但し!!今後同じ様な事が起きた場合は問答無用で裁きを下しますので覚悟しておくように。」

 

アリス「…肝に銘じます。」

 

喜ぶ魔理沙に釘を差すかの様にそう宣言きた映姫にアリスは閻魔教師ならやりかねないと思い気を引き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「はぁ!?…アンタ車で来たの?」

 

アリス「これにはちょっと訳ありで…」

 

教室に到着するなり霊夢から来るのが遅かった事を指摘されたアリスは正直な理由を述べた。霊夢は特別な理由があったのかと思い聞いてみたが話を聞いて呆れ返ってしまった。

 

霊夢「アンタねぇ、曲がりなりにもスピードスターズのエースドライバーなんだからあまり目立つ様な行動は控えなさい。」

 

アリス「…分かってるわよ。」

 

映姫の説教は免れたが結局霊夢に説教を喰らったアリスは何とも言えない気持ちになった。アリスはどうにかして話題を変えて話を逸らそうと試みる。

 

アリス「…そういえばさ、昨日小耳に挟んだ事があるんだけど、最近秋名山で白のFCと赤のSWが出没してるって噂を聞いたんだけど、霊夢は何か心当たりはない?」

 

霊夢「FCとSW?……今の所心当たりは無いわね。」

 

上手い事霊夢の気を逸らす事に成功した。とは言ってもこの件は遅かれ早かれ霊夢の耳には入れておく必要があったし心当たりが無いとなれば霊夢は直ぐにでも調査を始めるだろう。

 

霊夢「…どうも気になるわね。…良いわ。この件は私が調べておくわ。一応池谷と蓬莱にも何か知らないか聞いておくわ。」

 

アリスの予想通り霊夢はスピードスターズのメンバー総出で調査する事になった。スピードスターズは霊夢が加入した事によりただの仲良しチームから徹底的に速さを追及する戦闘集団へと様変わりした。このご時世、相手に挑戦状だけ叩き付けてぶっつけ本番でよーいドンは時代遅れなのだ。

 

そこで霊夢は情報捜査の確立をチームを運営する上での第一の課題に挙げた。

 

彼女が中心となって造り上げたネットワーク回線を駆使して対戦相手のドライバー、コース、そして車のチューニングやセッティング内容を事細かに分析しその上で最も有効な作戦を組み立てる。

 

ホームページを使って対戦相手を募集しているのはその為である。自分達の情報をわざとおおっぴらに公表して餌をばら撒き相手が食い付くのを待つ。そして対戦の申し込みが来た直後には相手の戦力を細部に至るまで調べ上げて丸裸にする。つまり、スピードスターズの対戦相手として名乗りを挙げた時点で相手は既に霊夢の手の平の上で躍らされているのだから対戦相手には気の毒な思いになる。

 

まさにスピードスターズ躍進の影の功労者である。

 

そんな霊夢だがチームの屋台骨を支えているだけあってこなしている仕事量もまた多い。チームに加入した当初から外報部長と戦術参謀を掛け持ちしていたが今ではそれに加え情報管理やセッティングパターンの作成も霊夢が受け持っている。

 

だが霊夢も1人の人間である為、一度に大量の仕事が舞い込んでくると流石に対応出来ない。そこで霊夢が対応出来ない部分の仕事を池谷や蓬莱が変わりに受け持つのだ。

 

今回の調査はスピードスターズの対戦相手ではない為全ての情報を一から調べる必要がある。霊夢はそう考え効率良く情報を集めるべく池谷と蓬莱を頼る事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、霊夢は早速池谷と蓬莱を呼び出して前述の内容を2人に告げた。だが2人の反応は今一つで、むしろ霊夢の言ってる意味が分からないと言いたげな表情で首を傾げた。

 

池谷「…そんな事する必要があるかな。第一、まだ対戦相手と決まった訳じゃないんだろ?」

 

池谷の言葉に同意するかの様に蓬莱も頷く。

 

池谷は間違った事は言っていない。スピードスターズの次の対戦相手であるならば相手の情報を調べるのは至極当然の事なのだが、そうでない以上この件について調べるのは時間の無駄である。池谷はそう考え霊夢の発言に異を唱えたのだ。

 

霊夢「確かにそうだけど、近い内にバトルするかも知れないから事前に情報は得ておきたいのよ。…アリスの話だけしか聞いてないけど私の勘ではかなり出来る奴だと思っているわ。」

 

蓬莱「速い走り屋なら何処の峠にも1人や2人は居ると思いますよぉ。…それになにも此方から調べなくても向こうから挑戦の申し込みがあれば私達の情報網を駆使して調べても遅くはないと思いますけどねぇ。」

 

蓬莱の意見も最もである。どのみちバトルする事になるのなら向こうから挑戦状という名の情報提供が来るのを待っていれば良いだけの話。それをわざわざ自分達が躍起になって調べる必要が無いと蓬莱は言う。

 

霊夢「…アンタ達ねぇ、事の重大さが解ってないの?これがただ速い走り屋が居るって程度の噂話で済むなら私も自ら動く様な事はしないわよ。だけど問題なのはソイツ等の出没場所が秋名だって事よ。この意味が解らない程アンタ達は馬鹿じゃないでしょ。」

 

蓬莱「…成る程、そういう事ですか。」

 

霊夢の話を聞いて蓬莱はそれが何を意味する事か瞬時に理解した。一方の池谷は依然として何の事だかよく解っていない様子。

 

蓬莱はそんな池谷に分かりやすく説明する。

 

蓬莱「つまりアレですよ。私達スピードスターズは秋名山最速を宣言しているチームでギャラリーの大半もその認識を持ってます。でもそこに別の速い走り屋が現れたら、スピードスターズは本当に秋名最速なのか?って疑問に思う人が出てきて私達が今まで築き上げてきた名声が失われる危険性があります。そうなる前に手を打っておこう、って事ですよね霊夢さん。」

 

霊夢「正解よ。蓬莱の言う通りこれは放っておくと私達の地位を脅かす事態になりかねないのよ。不安の芽は実る前に摘み取った方が良いって事。」

 

漸く言ってる意味を理解した池谷はただただ感心するばかりだった。同じ秋名を地元にしている走り屋だからこそこの問題を放っておく事は出来ない。関東最速を目標に掲げていても地元を蔑ろにする訳にはいかないのだと霊夢は話す。

 

蓬莱「しかしながら霊夢さんの頭は一体どうなっているのでしょうねぇ。脳科学者も真っ青になる程の頭脳ですよぉ。」

 

それを言うならアンタも一緒だろと霊夢は思う。

 

確かに霊夢は頭脳明晰で聡明な少女だ。だか彼女以上に頭が切れる人物が居たとしたらそれは誰かと問われれば霊夢は真っ先に蓬莱を挙げるだろう。

 

普段こそ人を弄り倒して聡明のその字も無い態度を取っているのにいざバトルが始まるとなると狙ったかの様に思考のスイッチが切り替わる。その時の蓬莱は前述とはまるで別人格になる。

 

ガチモードやモード賢者と呼ばれるソレに切り替わるとバトル中相手のクセや欠点、ひいてはバトルの要点となるポイントをズバズバと言い当てる。その的中率は霊夢でさえも一目置く程だ。

 

それならば何故蓬莱はわざわざ馬鹿丸出しな態度を演じるのか。その点については霊夢の頭脳を持ってしても解らない事だった。

 

霊夢「とにかく、秋名山最速のプライドに賭けても今から情報収集に努めるわよ。出来るだけ早急に頼むわ。」

 

池谷「心配はいらないさ。俺達のネットワークを駆使すれば鼠達を捕捉するのに時間は掛からないさ。」

 

蓬莱「えー今からですかぁ!?蓬莱この後用事g…霊夢「つべこべ言わずにやる!!」…分かりましたよぉ……ぶぅぶぅ。」

 

霊夢の鶴の一声に蓬莱は不貞腐れながらも了承した。…しかしながらアリスが思ってた通り本当に今どきぶぅぶぅなんて言う人間が居るのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、秋名山には蓬莱の姿があった。

 

何でも…

 

霊夢「私がインターネットで池谷はガソリンスタンドで情報を集めるからアンタは直接秋名に行って噂の真偽を確かめてきなさい。」

 

蓬莱「えぇー!!また蓬莱だけボッチですかぁ!?嫌です面倒くさいです!!」ウダウダ

 

霊夢「我が儘言うなら今日から1ヵ月間私の神社でずっと座禅を…蓬莱「全力で行かせて参ります!!」ビシッ…よろしい。」

 

…という事があり蓬莱は単身で秋名山に向かった。

 

いくら自由奔放な蓬莱であってもどうやら霊夢には逆らえないらしく前述のやり取りを見ればそれはもう一目瞭然である。

 

蓬莱はじっとしてる事が大の苦手だ。どんな経緯があったかは不明だが、以前霊夢の住む博麗神社で座禅をした事があるがやはり性に合わず5分もしない内にそわそわし出してその度に霊夢からバシバシ棒で叩かれていた。以来蓬莱はその事がトラウマになり霊夢が座禅という単語を出しただけで過剰反応を示すまでになってしまった。

 

さて、秋名山にやって来た蓬莱はゴール地点に原付を停めて2台の車が来るのを待つ事にした。

 

噂の2台が現れる時間帯は大体夜の8時から9時までの間、事前に調べた事により出没時間は大体把握している。

 

上海「…蓬莱、なんで私を此処に連れて来たの?」

 

蓬莱「ボッチになるのが嫌だったから。」キリッ

 

上海「…そんな事だろうと思ったよ。」

 

秋名には何故か蓬莱だけでなく上海もその場に居合わせていた。2人のやり取りから察するにどうやら蓬莱が強引に連れ出したらしい。

 

上海「私なんかが居ても大して役には立たないと思うけど。」

 

蓬莱「別に役に立って貰おうとは思ってないよぉ。上海は蓬莱の立会人って事でアーユーオーケー?」

 

上海「…英語棒読みになってるよ。」

 

上海は蓬莱が立会人と言った事よりも蓬莱がわざとらしく英語を棒読みで読んだ事の方が気になった。が、気にしたら負けだという結論に至り上海は立会人という言葉の意味について尋ねた。

 

上海「それよりも、さっき私が蓬莱の立会人って言ってたけど、あれってどういう意味?」

 

蓬莱「言葉通りだよぉ。って言っても伝わらないかぁ。あれは何かあった時の蓬莱のストッパー役って言う事。アンダースタンド?」

 

それって蓬莱の思考が暴走する前提の話だし、また英語が棒読みになってるしと上海は思った。蓬莱が暴走すると止めるのは非常に面倒くさい上に止めようにも止まらない事は上海のみならず蓬莱と関わっている者全員が良く知っている事実である。現時点で蓬莱の暴走を止められる人物が居たとしたら彼女の弱みを握っている霊夢だけだろう。

 

どちらにせよ上海は蓬莱の提案に賛成する気は毛頭なく、どうでも良いから早く帰りたいとさえ思っていた。

 

ただ、帰ろうにも上海は蓬莱の原付に2人乗りでこの秋名に来た為、蓬莱が用事を手短に済ませない限り帰る事は出来ない。その事実が上海の心を憂鬱にさせていた。

 

その後はお互い他愛もない会話(と言っても蓬莱が一方的に話し掛けて上海はテキトーに返すと言った感じだが)をしながら時間を潰していた2人だったが、上の方から2台の車のエキゾーストノートが聞こえ蓬莱は会話を止めた。

 

蓬莱「…この音、FDとは違うロータリーサウンドに3Sエンジンの排気音、…どうやら来たみたいだねぇ。」

 

上海「……?」

 

この時上海は蓬莱に違和感を覚えた。

 

口調こそ先程までのと一緒だが何時もの蓬莱とは何かが違う。思考が暴走したにしても静か過ぎるしそれに妙に落ち着いた表情をしている。普段の蓬莱とはどうもしっくり来ない、それが上海の抱いた違和感だった。

 

やがて2台の車が姿を現すと蓬莱は口すら動かさなくなった。2台の車はゴール地点の駐車場に入ってくるとそこに車を停めた。

 

蓬莱(ナンバーを確認したら帰ろうと思ってたけど、…これはラッキーな展開ですねぇ。)

 

上海(…蓬莱のこんな顔、見た事無い。)

 

蓬莱はてっきり真っ直ぐ帰るのかと思っていた2台の車が駐車場に入ってきた事でドライバーと接触出来る機会を得た事に思わず口角を吊り上げた。

 

傍らに居た上海は蓬莱の様子がまた変わった事にますます違和感が強くなった。

 

蓬莱とは幼馴染の上海だが蓬莱のモード賢者という物は霊夢や魔理沙から聞いている程度で実際にこの目で見た事は無い。故に上海は蓬莱の変化を何かが違うという捉え方しか出来ない。

 

上海が混乱してる内に2台の車から2人のドライバーが降りてきた。1人は銀髪にメイド服を着た女性でもう1人は金髪に帽子をかぶった小さな少女だった。蓬莱の視線にも気付かず2人は会話をしていた。

 

??「妹様、セッティングの具合は如何でしょうか。」

 

??「バッチリだよ。咲夜のセッティングは何時も完璧だから走っててとても楽しいよ!!」

 

??「そう思っていただけて何よりです。」

 

話を聞いた限りだとこのメイド服を着た女性は本物のメイドのようで妹様と言われた少女の車のセッティングも彼女がやっているらしい。余程メカに精通した人物であると蓬莱はにらんだ。

 

蓬莱は2人の元へと歩み寄る。上海もその後に続く。コース偵察という真面目な仕事以外で蓬莱を1人にしておけば何を仕出かすか分からない。下手をすれば初対面の相手を平気で弄り倒す可能性も無きにしもあらず(というか事実それをやらかした事がある)。尚、依然として2人は蓬莱達が近付いている事に気が付いていない。

 

??「でも咲夜と2人で走るのもいい加減飽きちゃったからそろそろバトルがしたいなぁ。」

 

??「…そうですか。でもこの秋名山には私達より速い走り屋なんて居ないと思いますよ。」

 

蓬莱「聞き捨てなりませんねぇ。今の一言。」

 

??「…!!」

 

??「…?」

 

メイド服を着た女性は蓬莱がすぐ近くに居た事に驚き警戒心を露わにした。もう1人の少女の方はこの人誰?と言いたげな視線を蓬莱に送る。

 

??「…どういう事でしょうか。」

 

蓬莱「言葉通りの意味ですよぉ。相当腕には自信があるようですねぇ、お2人さん。」

 

??「貴女達は誰なの?」

 

蓬莱「アハッ、これは失礼しましたぁ。…でも人に名前を尋ねる時はまず自分から名乗るのが筋ではないでしょうかぁ。」

 

上海「ちょっと蓬莱!!」

 

蓬莱「…上海は少し黙っててねぇ。」

 

上海「…ッ!!」

 

挑発的な態度で相手に話し掛けた蓬莱に上海は堪らず抗議の声を挙げるが蓬莱の一言に押し黙った。口調や飄々とした態度は普段の蓬莱と変わりなかったが今の蓬莱の一言には有無を言わせぬ程の威圧感を上海は感じた。

 

咲夜「…失礼しました。私の名は十六夜咲夜。職業はメイドをしております。」

 

フラン「私はフランドール⚫スカーレット。みんなからはフランって呼ばれてるよ。で、貴女達は?」

 

蓬莱「自称峠のアイドル蓬莱で〜す。」

 

上海「……」

 

あの威圧感の後にこのノリである。先程までの張り詰めた空気は何処へやら、蓬莱のコロコロ変わるテンションに上海はツッコむ気力をごっそり持っていかれた。

 

蓬莱のノリが平常運転なのが分かった所で上海は自分も名前を名乗るべきか蓬莱に尋ねた。

 

蓬莱「上海は別に良いと思うよぉ。」

 

上海「イヤでも、此処に居合わせた者として名乗っておくのも礼儀じゃないのかな。」

 

蓬莱「関係ないと思うなぁ。元々上海はスピードスターズのメンバーって訳じゃないんだし。」

 

蓬莱の口からスピードスターズの名前が出た直後、蓬莱のテンションにすっかり置いていかれていた咲夜の顔色が変わった。

 

咲夜「…スピードスターズって、あの自称秋名最速の走り屋チームの事ですか。」

 

蓬莱「自称じゃなくて事実ですよぉ。って言ってもメンバーはこの蓬莱だけですけどねぇ。」

 

咲夜「でも貴女、車で来てないじゃない。」

 

蓬莱「別に蓬莱がドライバーな訳じゃないですよぉ。蓬莱はチームの裏方として働いてま〜す。」

 

だからさっきの言葉を無視する事が出来なかったんですよぉと蓬莱は続けた。確かに秋名山最速を自負するスピードスターズなら自分達の存在を無視するは出来ないだろうと咲夜は思う。

 

…が、咲夜もフランも走り屋である以上自分達が最速だと気持ちは譲れない。そもそもそうでなければ走り屋なんかやってない。

 

咲夜「そうですか。…ですが私達も秋名を地元としている走り屋です。例え貴女達が秋名山最速を宣言していたとしてもはいそうですかって引き下がるつもりはありません。」

 

蓬莱「ですよねぇ〜。蓬莱もこればっかりは話し合いで解決出来る問題ではないと思ってますよぉ。ですから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…どちらが秋名最速か白黒はっきりつけましょう。」

 

咲夜⚫上海「…!!」

 

…空気が変わった。先程までの飄々とした雰囲気とはまるで違う賢者としてのオーラを纏った蓬莱に咲夜は警戒の色を強め、上海は初めて見る蓬莱の別の顔に驚いていた。

 

蓬莱「ルールは至って簡単、貴女方2人とウチのチームのダブルエース2人とでバトルして貰い勝ったチームが真の秋名最速の座を手にします。勝敗が五分だった場合はどちらか1人が代表で出てもう一戦行いそれで勝敗を決めます。バトルは次の土曜日夜10時、場所はここ秋名山という事でよろしいでしょうか。」

 

咲夜「…えぇ。」

 

蓬莱の雰囲気に圧倒された咲夜は空返事を返す事しか出来なかった。

 

フラン「バトル出来るの!?やったぁ!!」

 

フランは蓬莱の威圧感に屈する事無くバトルが出来る事を喜んでいた。

 

上海「……」

 

逆に上海は蓬莱の放つオーラに圧倒され言葉を発する事すら出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バトルは次の土曜日夜10時。このバトルの火蓋はこの瞬間切って落とされた。

 

【完】

 

 




誰も触れていなかったので蓬莱のモード賢者について解説。

蓬莱はモード賢者になると一人称の呼び方が蓬莱から私に変わります。口調も間延びした話し方から淡々とした喋り方に変化します。後は普段の蓬莱は面倒くさがり屋ですがモード賢者の時の蓬莱は自ら率先して行動します。

…とまぁこんな所です。

後、ウチの咲夜さんは完全で瀟洒なメイドさんです。決してレミリアとフランを見て鼻血出す様な駄メイドなんかじゃありません。(レミリアの出番があるとは言ってない)





…オイコラ、誰だ今咲夜さんの事をPAD長って言った奴は。

苦しゅうない、近う寄れ。
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