七色のドリフト使い(再制作予定)   作:独田圭(ドクタケ)

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何時の間にか通算UAが5000件を突破している事を知りついつい頬が緩みがちになっている今日この頃。

毎度どうも、Doctor Kです。

遅れ馳せながら新年一発目の投稿です。皆さんはお正月をどう過ごしてましたか?因みに作者は寝正月でした(笑)。

ギャグとシリアスがごちゃ混ぜになってますが予めご了承下さいまし。



第20話 仲違いはチームの結束を高める為のフラグである

アリス「何があったというのよ……」

 

アリスは学校の屋上で広がっている光景を前に朝っぱらから大きく溜め息を付いた。

 

アリスの目に映っているのは、鋭い視線で仁王立ちしている霊夢と…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その霊夢と向かい合う形で正座したまましおしおと縮こまっている蓬莱の姿があった。しかも頭にたんこぶを付けた状態で。

 

どうしてこうなったのか、話は数分前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、アリスが学校に登校(今回はちゃんと歩いてきた)するなり魔理沙がアリスの元に近寄って来て…

 

魔理沙「アリス、屋上に行こうぜ。」

 

アリス「…いきなりどうしたのよ?」

 

魔理沙「説明は後、面白い物が見れるぜ。」

 

と言われ、魔理沙に先導される形で屋上へと向かった。

 

面白い物とは一体なんだろうかと思いながら屋上へとやって来たアリスであったが屋上に来た途端目の前に広がる光景を見て思わず「は?」と声を上げた。

 

霊夢「蓬莱、アンタは自分が何をしたか解ってるの。」

 

蓬莱「はい…」

 

霊夢「確かにアンタに秋名に行って来いって指示したのは私だけど喧嘩売って来いって何時私が言ったかしら。」

 

蓬莱「はい……」

 

霊夢「アンタは何時まで私達を振り回せば気が済むのかしら。」

 

蓬莱「スミマセン……」

 

霊夢に刻々と説教されている蓬莱を見て恐らくは蓬莱が何かやらかしたのだろうとは思っていたが霊夢がここまで怒るというのも珍しい。

 

一体蓬莱はどんな失態を犯したのか、そう思ったアリスは冒頭の台詞を呟いたのだ。

 

アリスの呟きに対して霊夢は蓬莱を指差しながら答えた。

 

霊夢「コイツは昨日秋名で例の2人組の走り屋にバトルの段取りをしたのよ。しかも私達に何の相談もせずに。」

 

アリス「あぁ……」

 

魔理沙「あちゃ〜。」

 

蓬莱「でもしょうがないじゃないですかぁ。だって向こうが自分達が秋名最速だって言い張ってきましたから売り言葉に買い言葉でつい…」

 

霊夢「言い訳は良い。」キッパリ

 

蓬莱「うぅ……」

 

霊夢に自らの主張をバッサリと切り捨てられしゅんとする蓬莱。確かに勝手に事を進めた事はまずかったかなとアリスは思う。だが…

 

アリス「でも蓬莱も良かれと思ってやったんだから、そこまで頭ごなしに怒る事も無いじゃない。」

 

アリスは蓬莱を擁護した。勿論非があるのは蓬莱の方だが自分の言い分も聞いて貰えず情けなく項垂れている蓬莱を見たアリスはなんだか無性に霊夢に腹が立った。思わず語気を強めて霊夢に反論する。

 

霊夢「何言ってんのよ。物事には段取りってのが必要でしょ。でも蓬莱が余計な事をした所為でバトルまで今日を入れて後2日しか無いのよ。」

 

しかし霊夢も自分が秋名スピードスターズというチームの屋台骨を支えているという自覚があるからか引こうとしない。2人共似た様な性格をしているだけに一度意見が食い違うと中々終わりを見せない。

 

魔理沙「あ…あの、アリス?」

 

アリス「ごめん魔理沙、少し黙ってて。」

 

魔理沙「お、おう……」

 

魔理沙はアリスの気圧に圧倒され首を縦に振る事しか出来なかった。何で怒ってるんだと思ったがそれを口にすると自分もとばっちりを食らうのでは無いかと思い言葉にしなかった。

 

事実、アリスは霊夢に怒っていた。アリスが霊夢に怒っているのは霊夢が蓬莱を頭ごなしに説教していたからではない。

 

アリスが怒っている訳は霊夢が蓬莱に対して「余計な事」と言ったからだ。蓬莱は曲がりなりにも秋名スピードスターズの一員なのだ。蓬莱は彼女なりにチームの為にと思ってした事を真正面から否定されて弁明すらさせて貰えなかった。

 

アリスは自分が家族と認める者が何者かによって傷付けられた時に怒りが爆発する。幼い頃から家族ぐるみの付き合いをしてきた蓬莱も勿論自分の家族だとアリスは思っている。だからせめて言い訳の一つぐらいさせても良いじゃないかと思い蓬莱を庇ったが霊夢が蓬莱を除け者にした事によりアリスは完全に怒った。

 

アリス「……余計な事って。蓬莱もスピードスターズのメンバーなんだよ。それに貴女はリーダーでも無いんだから蓬莱にあれこれ指図する筋合いは無い筈よ。もしこれ以上蓬莱を邪魔者扱いするなら私はチームを抜けるわ。」

 

霊夢「……っ!!」

 

痛い所を突かれて霊夢は押し黙った。アリスの言う通り、スピードスターズの実質的なリーダーは池谷であって霊夢ではない。チームの方針で池谷より霊夢の方がリーダー的な行動を取っているが霊夢の立場はあくまで外報部長兼戦術参謀であるのだ。それを忘れるなとアリスに言われた様な気がした。

 

それにアリスがスピードスターズを抜ける事になると霊夢だけではなくチームにとっても死活問題となる。

 

表に立つ人間は裏方の仕事無くして最高の仕事は出来ないと言われているがその逆も然り、表に立つ人間が居なければ裏方は仕事すら出来ない。それは即ちチームの崩壊を意味する。

 

拓海とアリスの二枚看板を支えているのが霊夢達裏方である様に裏方の霊夢達を支えているのも拓海とアリスなのだ。

 

秋名スピードスターズは藤原拓海とアリス・マーガトロイドの2人が居て初めてチームとして成立する。当初全く面識も無く赤の他人だった池谷と霊夢を繋げているのも前者の2人である。もしどちらか片方でも抜けようものならふとした事が切っ掛けで池谷と霊夢の間に亀裂が生まれ、それは次第に両者の溝を深め、結果としてチームは崩壊する恐れもあり得る。

 

蓬莱「(…どうしよう。私の所為でアリス先輩がキレちゃったよ。最悪なムード…)」

 

アリスと霊夢の板挟み状態となっている蓬莱は2人の間に入れずどうして良いのか解らず途方に暮れていた。やっぱり自分は必要とされていないのかなぁと自己嫌悪に陥り、蓬莱の表情に影が差す。

 

そんな蓬莱の姿を見てアリスはハッと我に返った。こんな些細な理由で喧嘩してる場合じゃない、それ以前に今の自分達は他にすべき事があるだろと。

 

アリス「…ごめんなさい霊夢。きつく言い過ぎたわ。」

 

霊夢「…良いのよ。私の方こそ少し出しゃばり過ぎたわ。」

 

アリス達が万全な状態で走る事が出来るのは霊夢が中心となってアリス達をサポートしているから。その事を知っていながら自分は霊夢に対してあんまりな事を言ってしまったとアリスは自分の失言に心から反省した。

 

拓海「…なぁ、蓬莱の件はともかく、これはプラスに考えるべきじゃないかな?」

 

いつの間にかその場に居た拓海が呑気な声でそう言った。拓海曰くアリスと霊夢が口論になっていた時に樹によって連れて来られたらしい。アリスの時と全く同じ状況である。

 

拓海の一言に何時だったら「何呑気な事言ってんのよ」と霊夢がぼやく所だが、アリスと和解した事により落ち着きを取り戻した霊夢は拓海の言葉を黙って聞いていた。

 

アリス「それってどういう事?」

 

拓海「確かにバトルまであまり時間は無いけど、蓬莱のお陰で相手の情報を調べる手間が省けたじゃないか。それに場所が秋名ならわざわざコースを調べなくても良いし。」

 

霊夢「…一理あるわね。」

 

なる程そういう事かとアリスは思う。相手の情報を事前に掴んでいれば霊夢は短期間で勝つ為のシミュレーションを完成させる筈。ましてや同じ秋名を地元にしている走り屋ならば当日の路面コンディションさえ知っていればその分車のセッティングやミーティングに時間を稼げる。その点で言えば蓬莱は大仕事をやってのけたと言える。

 

霊夢もアリスと同じ結論に辿り着いたようで、拓海の言葉に素直に感心していた。

 

霊夢「…なる程、それを考えれば残り2日でも充分間に合うわね。」

 

アリス「それに仮に何かあっても私達が勝てば良いだけの話でしょ。」

 

蓬莱「おぉ!!なんて頼もしいお言葉なんでしょうか。」

 

霊夢「…言ってくれるわね。」

 

すっかり何時もの調子に戻った蓬莱に呆れつつも霊夢はアリスの言葉に頼もしさを感じていた。

 

霊夢「それじゃあ、放課後早速だけど全員スタンドに集まってミーティングするわよ。皆遅れない様に。」

 

霊夢が全員の返事を聞いた所でこの場は解散となった。そんな中、アリスは教室に戻ろうとする蓬莱を呼び止めた。

 

アリス「蓬莱、ちょっと良い?」

 

蓬莱「…なんですかぁ。もう説教は勘弁ですよぉ(泣)。」

 

アリス「そうじゃなくて、蓬莱は例の2人と接触したのよねぇ。どんな感じの人だった?」

 

アリスが質問すると蓬莱は顔つきを変えた。

 

蓬莱「…ドライバーは2人共女性でしたよ。名前はFCに乗っていたのが十六夜咲夜、SWに乗っていたのがフランドール・スカーレットです。十六夜咲夜はドライバーとしても優秀ですし話した感じだと頭も良さそうですね。フランドールの方は多少粗さはありますが腕は確かです。」

 

アリス「車の方は何か解った?」

 

蓬莱「FCの方はフロントスポイラーとホイールを変えてる以外はそれ程弄ってはなさそうですね。それとシフトポイントが早かったので恐らくはラリー用のクロスミッションを組んでるかと思います。対照的にSWの方はエンジンの音を聞いた限りでは相当弄ってると思われます。多分あの車はビックタービンを搭載してますね。馬力は推定350ps以上は出てると思いますよ。」

 

流石は蓬莱の観察力といった所か。ただ無闇に喧嘩を売っていた訳ではなく相手の言葉一つでその人物の性格を把握したり、走ってる様子やエンジン音を聞いただけで大体のチューニング内容を同時に理解していた。何時も飄々としているがやはりこの少女は侮れない。

 

アリス「なんだかんだ言って見てる所は見てるじゃない。」

 

蓬莱「えっへへ〜それ程でもぉ。」

 

アリス「でも今度からはバトルの取り決めは霊夢か池谷さんのどっちかに一言言っておきなさい。次またやったら流石に私も擁護出来ないわよ。」

 

蓬莱「…へ〜い。」

 

アリス「(…本当に大丈夫かしら。)」

 

やる気の無い返事をする蓬莱に若干不安になりながらも自分の言い付けは守るからまぁ大丈夫かと結論付けアリス達はそれぞれの教室へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、アリスがスタンドに到着すると既に他のメンバーが集まっていた。どうやら自分が最後だったようでアリスは慌てて席に着いた。

 

霊夢「全員揃ったようね。じゃあ早速始めるわよ。」

 

霊夢の言葉に先程まで騒いでいたメンバーも静まり返り皆耳を傾ける。

 

霊夢「まず最初に蓬莱から報告があったけど例の2人のドライバーと車の詳細が解ったわ。…池谷【さん】、説明をお願い。」

 

霊夢が池谷の事を初めてさん付けで呼んだ。朝方学校の屋上でアリスに指摘された通り、スピードスターズのリーダーは自分ではなく池谷だという事の再確認と、それを自分だけではなく他のメンバーにも意識付けさせる事が主な理由である。

 

霊夢からバトンを受けて池谷は言葉を紡ぐ。

 

池谷「解った。ドライバーは十六夜咲夜とフランドール・スカーレットの2人で前者がFCに、後者がMR2に乗っている。蓬莱の話では十六夜咲夜は腕も良く頭も優秀だそうだ。車のチューニング自体はそこまで手を入れてないらしい。それを踏まえてFCの相手は拓海、お前だ。」

 

拓海「わかりました。」

 

池谷「アリス、君の相手はMR2だ。蓬莱の話によるとフランドールは腕はそこそこだがツボにはまると速い走りをするらしいぞ。おまけに元々戦闘力の高いミッドシップレイアウトのMR2にビックタービンをドッキングさせてるようだから車そのものの戦闘力はかなり高いぞ。気を付けてくれよ。」

 

アリス「はい。」

 

咲夜の相手を拓海が、フランの相手をアリスが務める事で話は決まった。今度のバトルは場所が秋名山という事もありコース攻略等のミーティングは無しとなった。

 

拓海「なぁ、ミッドシップって何だ?」

 

アリスにメカの勉強を受けている拓海だが聞き慣れない単語が出てきたところで何のこっちゃか分からないので拓海は隣に居たアリスに問うた。

 

アリス「ミッドシップっていうのはドライバーの後方にエンジンが付いてる車の事を言うのよ。旋回性能は他のレイアウトの車よりもダントツで高いからコーナーが恐ろしく速い車なの。」

 

池谷「欠点としてはその高い旋回性能故にちょっとした事でもすぐとっちらかってスピンし易いから初心者には絶対扱えない車なんだ。」

 

霊夢「それに近い特性を持った車にフロントミッドシップレイアウトってのがあるわ。フロントミッドシップはフロントにマウントされているエンジンを出来るだけエンジンフードの奥に押し込んで本物のミッドシップにも負けないくらいの旋回性を持った車の事を指すわ。今回のバトル相手の十六夜咲夜のFC、そして魔理沙のFD、後アリスのS2000もこれに該当するわね。」

 

拓海「へぇ~。」

 

アリスの簡単な説明を池谷が補足し、更に霊夢がミッドシップと似たような特性を持つフロントミッドシップの説明を拓海にした。一度に多量な情報が入ってきたが、どうやら拓海はちゃんと理解したようだ。

 

今回はスピードスターズの地元秋名山でバトルする事になる為、チームの方針に則ってホームページの活動記録には残らず所謂【非公式バトル】として扱われる事になる。相手の土俵で勝ちをもぎ取る事に意味があるというのは霊夢の弁。

 

池谷「バトル当日の天気予報は雨だそうだ。2人共地元だからって油断するなよ。」

 

拓海・アリス「「わかりました。」」

 

揃って威勢の良い返事をする2人を見て池谷はまぁ2人なら大丈夫だろうと思う。

 

無論、2人が負けるとは思っておらずまた油断するとも思ってない。だがリーダーとして締めるべき所は締めていかないと足元を掬われる恐れがあると考え、最低限の注意喚起を促した。

 

少しづつではあるが着実に池谷はリーダーとして相応しい姿に成長していた。

 

長かったミーティングも終わり、アリスは自宅へ帰ろうとしたが久しぶりに母親の家に行こうかと思い立ち自宅とは反対方向へと車を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アリスの母アリシアは愛車のボンネットを開けてエンジンの状態を確認していた。

 

その表情は芳しくなく、まるで傷付いた我が子を見ているかの様な目で愛車のコスモスポーツを眺めるアリシア。

 

アリシア「…う〜ん、やっぱりローターが傷んできてるわね。祐一の言う通り買い換えた方が良いのかしら。」

 

アリシアが免許を取得してから20年以上毎日乗り続けてきただけに愛着というのは当然ある。故にどうしても手放そうという気持ちにはなれない。

 

しかし、人間と同様に車にも寿命がありアリシアのコスモスポーツは何時走行不能になってもおかしくはない。既に秒読み段階に入っていると言っても良い。

 

それを考えると別の車に乗り換えるのは致し方ないと言えるがどの車もあまりピンと来ない。

 

政志に車探しを手伝ってもらうという手もあるがアリシアの知り合いの中では付き合いの浅い政志が彼女のお眼鏡に叶う車を見付けてくれるとは限らない。

 

いっそパルスィが営むディーラーで車を探そうかと考えていた時に聞き慣れたV-TECサウンドが耳に入ってきた。

 

アリシア「あら?」

 

音が聞こえた方向に目をやると純白のS2000がこちらに近付いて来る。それを見た時アリシアは心の底から喜びを覚えた。

 

アリス「ママ、こんな時間に何やってるの?」

 

S2000から出てきたのは勿論アリス。アリスがアリシアの家に来るのは久しぶりの事だ。思わず頬が緩み抱きしめたい衝動を抑えきれないアリシア。

 

アリシアは娘の身に何かあろうがなかろうがアリスを見ただけで抱きつくという妙な癖がある。思春期真っ盛りな高校生のアリスにとってこれは非常に恥ずかしい事である。

 

アリシアの様子を見てあっこれ絶対抱き付かれるなと瞬間的に察知したアリスは素早く回避行動を取ろうとしたが…

 

アリシア「つ〜かまえた♪」ガシッ

 

アリス「嘘でしょ!?」

 

思いの外アリシアの動きが早かった為に回避が間に合わずアリスはあえなく捕まってしまった。…無念、アリス。

 

アリシア「アリスちゃ〜ん、ママは嬉しいよぉ。こうしてアリスちゃんが家に来てくれて。」

 

アリス「分かったからもう離してよぉ〜…」

 

アリシア「い〜や〜だ♪」ムギュ

 

アリスの頼みをバッサリと切り捨てアリシアは抱きしめている腕の力を一層強める。時折アリスが「苦しい…」と呻いているがアリシアは聞く耳を持たない。おまけにスリスリと頬ずりまでする始末。

 

この抱擁はアリシアの気が済むまで終わらない。アリシア曰くアリス成分を自身の体内に取り込んでいるらしい。…アリス成分とは一体何なのだろうか。

 

マーガトロイド家には父親がいない。アリスの父親はアリスが産まれてすぐに亡くなった。

 

原因は交通事故である。アリスの父親も元ラリー屋だった。ある日、何時の様に峠を単独で攻めていた時に運悪くタイヤがバーストしてしまい制御を失った車はガードレールを突き破って崖下に落下、車は大破しアリスの父親も即死だった。

 

それからというものアリシアは女で一つでアリスを育ててきた。自分と夫との間に産まれた唯一の子供であるが故に誰よりも愛情を持って接してきた。勿論今もそれは変わらない。

 

元々親バカであったがアリスが親元を離れて一人暮らしを始めた事でそれがより顕著になった。アリシアがアリスと会う度に抱擁してくるのは親バカで子煩悩なアリシアが出来る最大の愛情表現なのだろう。

 

アリス「むきゅ〜……」

 

アリシア「……あれ?」

 

しかし、何事にも限度というのは大事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリス「…で、ママはこんな時間に何やってたの。」

 

かなり疲弊した様子のアリス。

 

あの後気が付いたら母親の分厚い抱擁から解放されていた。その時の記憶がゴッソリ抜けているがこういう事は良くある事なので特に気にしていない。というかいちいち気にしたら負けだと思っている。

 

アリシア「車の状態を確かめていたのよ。でもエンジン自体の基本設計が古いからこの子はもう限界ね。」

 

20年前は現役バリバリだったのにねぇ…と今では満身創痍となったコスモスポーツに意気消沈するアリシア。

 

世界初のロータリーエンジンを搭載した乗用車として華々しいデビューを飾ったコスモスポーツは走り屋の世界に革命を起こしたと言っても良い。

 

それまでのレシプロエンジンと比べて小型で軽量、尚且つ小排気量ながらパワフルさを兼ね備えたピュアスポーツマシンの元祖とも言える。

 

だが、ロータリーエンジンは燃費の悪さがネックで当時車を買うだけで精一杯であったアリシアは燃料代を捻出するのも一苦労だったそうだ。

 

アリス「じゃあ新しい車でも買うの?」

 

アリシア「今の所その予定になるわね。でも何にするか決まってないのよねぇ〜。」

 

アリス「パルスィに頼めば?」

 

考えてる事は親子共に一緒かとアリシアは微笑む。現状ではそれが一番妥当ではある。パルスィの目利きに狂いは無いのできっとアリシアのお眼鏡に叶う車を提供してくれる筈。

 

ともかく、パルスィのディーラーで車を探す事で話は纏まった。では、そうなるとアリシアのパートナーとしての役目を終える事となるコスモスポーツは一体どうなるというのか。

 

アリス「じゃあこの車はどうするの?廃車にでもするつもりなの?」

 

アリシア「嫌よ廃車だなんて。この子はウチに置いとくわ。」

 

どうやら手放すつもりは無いらしい。もし新たに車を買った場合、単純計算で維持費は通常の2倍掛かる事になるがちゃんと払えるのだろうかと不安になるアリス。

 

アリシア「それじゃあご飯を食べたら久しぶりに親子で峠に行きましょう。アリスちゃんのS2000にも乗りたいし。拒否権は無しね♪」

 

アリス「はぁ〜……」

 

峠に行く事自体は賛成なのだが勝手に話を進めないでせめて返事ぐらいは聞いて欲しい。

 

今日も今日とて自由奔放な母親に振り回されアリスは溜め息しか出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後秋名でアリシアのクレイジーなドライブにアリスの悲鳴が木霊したのは言うまでもない。

 

【完】

 

 





新たにキャラが出てきたところで簡単な説明を。

十六夜咲夜

搭乗車種…サバンナRX-7 ∞Ⅲ(FC3S)

カラー…クリスタルホワイト

ナンバー…群馬15 よ 13-417

装着パーツ… 藤田エンジニアリング製マフラー、WORK製アルミホイール、CHARGE SPEED製フロントスポイラー、トーコンキャンセラー、足回りはダンパーとブレーキのみそれ以外はノーマル

秋名山を地元にしている走り屋の1人。普段は大人しくて控えめだが走りの事になると勝ち気な性格に豹変する。フランの車のセッティングも彼女がやっている。熱狂的なロータリー信者。





フランドール・スカーレット

搭乗車種…MR-2(SW20)

カラー…スーパーレッドⅡ

ナンバー…群馬16 に 49-540

装着パーツ…FUJITSUBO製マフラー、SSR製アルミホイール、ボアアップ、大口径タービン、大容量ラジエター、過給圧アップ、フルコンピューター等

咲夜と同じく秋名最速を目指している走り屋の少女。非常に無邪気な性格で裏表が無い。走ってる時は感情的になりやすくそして泣き虫。メカに全然詳しくないので車のチューニングやセッティング等は基本的に咲夜任せ。実は小学生の時は上海や蓬莱と同じ学校に通っていたが本人達はその事を憶えていない。





以上です。

補足ですが蓬莱は相手がスピードスターズの敵だと判ると喧嘩腰な態度になります。咲夜みたいなタイプの人間とは相性最悪です。

ではまた。
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