「イリヤ、入るぞ」
コンコンとノックをして俺はイリヤの部屋へのドアを開けた。
Story Spun Friends
第十五話 友達
「紡、どうしたの?」
イリヤはまだ本調子ではないようだが朝よりはずっと表情も穏やかになっていた。
その様子を見て俺は少し安心する。
「いや〜あのさ、今日算数の宿題があるだろ? 一緒にやろうと思って」
半分嘘、半分本当の発言。
本心は-----イリヤの隣にいてやりたかったからだ。
「うん、いいよ。私もわからないとこあったら教えて欲しいし」
「よし、じゃあやるか」
俺はイリヤの部屋で座り込んだ。
そろそろ始まる頃…か、美遊…もう少しだけ待っててくれ…。
冬木市にある高層ビル。
その屋上に3人は立っていた。
「さぁ…いくわよ!」
1人の声が発されると共に、その3人は姿を消した。
「んっ…あ〜、疲れた!!」
30分くらいたっただろうか、問題も解き終わり俺は伸びをする。
「お疲れ、ありがとね、教えてもらってばっかりだったけど…」
「ん〜そうだな、イリヤはもう少し勉強した方がいいんじゃね?」
「なっ! バカにしないでよね、これでも成績はいい方なんだから!」
イリヤは少しだけ怒った様子を見せた。
「ごめんごめん、知ってるって。まぁ俺の方が上だけどな」
「も〜紡はいつもそうやってからかって…見てなさいよね、今度のテストでは私のが絶対いい点数を取ってやるんだから!」
「はいはい、期待せずに待ってますよ」
「イリヤさーん、紡さーん、お風呂沸きましたよ」
俺たちが話しているとセラの声が聞こえてきた。
「ほらイリヤ、先に入ってこいよ」
「わかった、じゃあお先に〜」
イリヤはとてとてと階段を降りて行った。
「…さて、行くか」
俺は自分の部屋へ戻りステッキを持った。
イリヤもだいぶ元気を取り戻してきた。
後は心おきなく元のように生活できるような環境に戻してやるだけだ。
「…よし!」
俺は空へと飛び立った。
「まさか…蘇生能力…!?」
美遊の
しかし
「ッ…撤退よ!」
凛とルヴィアは美遊を連れて撤退する。
そしてサファイアを使って現実世界へ移動しようとするが-----。
「美遊!?」
美遊は2人だけを移動させ、自分はその場にとどまった。
「よし…ここだな」
俺は美遊から聞いていたビルにたどり着いた。
早く…行かないと。
「ジャンプ!」
ステッキを使って鏡面界へ移動すると…そこには驚いた光景があった。
「美遊…!?」
傷を負い、体から血まで出ていた美遊の姿がそこにはあった。
俺は急いで美遊の元へと駆け寄った。
「紡…」
「美遊…大丈夫か!? ごめんな…俺が1人で戦わせたせいで…」
「大丈夫…あなたは悪くない…、それよりも敵…規格外の破壊力、それに蘇生能力を持っている。気を付けて」
蘇生能力…どうやら敵はタダモノじゃないらしい。
「あぁ、じゃあ…いくか」
「うん」
美遊は立ち上がり、俺の隣に立った。
紡が戦いの場へ到着する頃、イリヤはルビーと風呂に入っていた。
イリヤは1人になると先ほどまで紡に見せていた元気さとは一転、今度は元気の無い様子をしていた。
長い沈黙-----が、それはある人物によって破られることになる。
「イヤッホウ!ただいま、イリヤちゃーん!」
「マ、ママ!?」
イリヤのお母さん---アイリが唐突に風呂のドアを開けた。
「うん、ただいまイリヤちゃん!」
「ず、ずいぶん急な帰宅だねママ…」
アイリはイリヤが入っている風呂に押し寄せて入り、2人は一緒に風呂に入っている状態になった。
「そうねー、それと紡ともお話したかったから連れてこようと思ったのに、部屋に行ったけどいなかったのよ。イリヤちゃん何か知ってる?」
「えっ…」
イリヤはその発言にもちろん疑問を持った。
もしかして…紡は美遊のところへ行ったんじゃないかと憶測が頭をよぎる。
いや、もしかして"最初からそのつもり"で私に気を使ってくれていたんじゃないか…と。
「どうしたの?」
「えっ…あ、あぁ! 紡はちょっと出かけてくるってさっき…っていうか連れてこようと思ったって、お風呂に!?」
イリヤは顔を赤くしたと思うと、バシャバシャと風呂に波を立たせた。
「え? 何かおかしいとこあるかしら? 昔はよく一緒に入ったわよね〜」
「そ、それは昔のことで…! もう、ママは…」
「あらあら、もうそんなお年頃なのかしら?」
「も〜、からかわないでよ…」
それからイリヤとアイリは話をした。
差し当りのないこと、転校生の美遊のこと、そして…紡のこと。
話している内に…イリヤは今自分が置かれている状況を思い出していた。
「なんだこれ…全然…!」
俺と美遊はステッキによる魔力砲を繰り返す。
だけど敵にその攻撃が一度も通ることは無かった。
「硬度が上がっています! 恐らく…宝具級のものでないとダメージは通りません…!」
サファイアの発言に俺は気付く。
そうだ…宝具なら…。
「美遊! 俺は宝具を使う! 少し離れてろ!」
俺がそういうと美遊は首を振りながらカードを取り出していた。
「それは…」
Saberと書かれたカード、この前の戦いで得たカードだった。
「紡を1人にはさせない、私も…戦う」
「そっか…ありがとな、美遊」
お互いに一呼吸置いて動き始めた。
「いくぞ! 美遊!」
「うん!」
「
「
とてつもない破壊音と爆発。
ビルは壊れ、敵の姿は煙で見えなくなっていた。
「やった…のか…?」
「…ハッ…ハァ…!」
数メートル先で美遊が倒れ込んでいた。
サファイアはもう元の姿に戻っていた。
「美遊! 大丈夫か!?」
無理もない、俺が来るまで1人で戦い続けていたんだ。
魔力も限界に違いない。
「へい…き…」
そう美遊が言った瞬間だった。
俺たちが倒したと思っていた敵は-----。
瞬時に美遊に飛びかかり攻撃態勢に入っていた。
「美遊!!」
考えるよりも先に体が動いていた。
俺は必死に-----美遊へと手を伸ばした。
「美遊は…1人でなんでも出来る。紡だって…」
イリヤはアイリに向かって少し顔を落としながらそう言った。
「紡も…相変わらず強いよ。3人でやろうって決めたことから私が逃げたときも全然責めずに私の味方をしてくれた。いつだってそうだった」
「そう…きっと紡と美遊なら…」
そう…なんだろうか。イリヤは心配で仕方なかった。
イリヤはその落とした顔を上げることは無かった。
「イリヤ…ちょっとだけ前の話をしましょうか」
その様子を見てアイリが一言そう言った。
「話…?」
「私が前に仕事でこの家から離れた時…そう、半年くらい前かしら、私は出る前に紡と少しだけ話をしたの」
「紡と…?」
「そう、一言"イリヤのことを守ってあげてね"って」
その言葉にイリヤは驚く。
「そしたら…紡は何て言ったと思う?」
「何て…言ったの…?」
一呼吸置いてアイリは口を開いた。
「"元よりそのつもり"…そう言ったの」
「あ…」
そのアイリの一言でイリヤはこれまでの沢山の紡との思い出を思い出した。
私は…紡が…紡のことを…。
「イリヤちゃん…わかったみたいね」
アイリはそれを悟ってイリヤに話しかけた。
「うん…簡単なことだった…」
「そうよ、なら…進みなさい…」
「うん、ありがとうママ」
そう…簡単なことだった。
紡だって美遊だって…私にとって"大切な存在"なんだ。
そんな2人の力になる…。
イリヤはステッキを手に取り走り出した。
「うぅ…」
美遊は倒れ込んで煙だらけになっている周りを見回した。
それと同時に紡の存在を思い出す。
「紡…!? どこに…うっ!?」
美遊の見た光景。
それは余りにも残酷で、絶望。
痛い、痛い?
痛いのか? 痛くないのか?
熱い、熱い、熱い
わからない、わからない、わからない
美遊を助けようと突き飛ばし、攻撃を食らったのは---俺だった。
数メートル先には--------俺の腕だったものが落ちていた。
「あ…が…」
気が狂いそうだ。気絶してしまいそうだった。
何を考えていいかもわからない。
ただ、自分の左側から流れる血、血、血。
それしか目に入らなかった。
「つ、紡!」
美遊が俺の元に駆け寄ってきた。
「美遊…よかった…無事で…」
「な、なんでこんなこと…!サファイア!」
「は、はい!」
美遊は泣きながらサファイアを使って止血をしてくれていた。
なんで?
思考する時間は無かったけどこれだけは間違いなかった。
「当たり前だろ…"友達"が危ない目にあってるんだから助けるのは…」
「!!」
いくらこっちの状況が絶望的だろうと敵は御構い無しにこちらへ近づいてくる。
「ごめんな…美遊、俺が頼りないせいで…」
そして…ごめん、イリヤ。
俺は…ずっとお前のことを守りたかったのに…それももう無理かもしれない。
本当に…ごめん。
結局…俺は何も出来なかったんだな…色んな人を犠牲にした。
色んなものを犠牲にした。
ごめんな-----クロワール。
-----そう思った時だった
敵を斬る一閃の刃。
その姿は-----イリヤだった。
「凛さん! 効いたよ!」
続いて凛さんとルヴィアさんが魔術で敵を縛り付けた。
「イリヤ…なんで…」
驚いていたのは俺も美遊も一緒だった。
「つむ…うっ!?」
イリヤは俺の姿を見ると同時に驚愕した。
「な、なんで…つむぎ…ごめん…私のせいだよね…ごめん…うっ…えっ…」
そして同時に涙を流し始めた。
当たり前だ-----こんな姿を見て正気でいられる方がおかしい。
「イリヤ…お前のせいじゃないよ、それよりどうして来てくれたんだ…?」
「えっ…ぐっ…ごめん…私がバカだったって気付いたの」
「何の覚悟もないままただ言われるままに戦ってた。戦ってても…どこか他人事だったんだ。こんなウソみたいな戦いは現実じゃないって…なのに…」
「そのウソみたいな力が自分にもあるってわかって…急に全部が怖くなって…!」
「イリヤ…」
「でも…」
「本当にバカだったのは…逃げ出した自分、簡単なことに気付かなかった自分!!」
イリヤは涙を拭って俺たちの元へと歩み寄ってきた。
「紡も美遊も大切な存在…大切な"友達"なんだって、それを見捨てるなんて…ダメ!」
イリヤの言葉…それはまったく俺と同じ意見だった。
だからこそ---なんだろうか、俺がイリヤを好きなのも。
「ありがとう…イリヤ、お前の思い、十分わかったよ」
俺は右手でイリヤの頭を少し撫でた。
「イリヤ、美遊、いくぞ!!」
「「うん!」」
最後の戦いは---ここからだ。
場面転換が多く、読みにくかったかもしれません。申し訳ありませんでした。