イリヤと美遊は俺の隣に立った。
敵は未だに凛さんたちの魔術によって縛られていた。
「でも…どうしよう」
イリヤが不安そうに語りかけてきた。
俺には…きっと勝てると思っている方法がある。
「イリヤ、美遊…ひとつ、提案がある」
「?」
「紡…それは一体…」
「頼む、2人で時間を稼いで欲しい。そうすれば…絶対に2人を守れるから」
俺がそう言うと2人は顔を合わせて少し頷いた。
「ごめんな…2人だけで戦わせるなんてそんな危ない目に合わせるなんて…」
「ううん、紡は私の為に戦ってくれた…だから今度は私が…」
「あの敵を倒せるのはあなたしかいない、だから…お願い」
イリヤと美遊の心強い言葉が迷っていた俺の背中を押した。
「よし…じゃあいくぞ!」
俺がそう言った瞬間、敵を縛る魔術が解けた。
俺はありったけの魔力を込めた。
力を入れ、この"宝具"に全てを賭けようとした。
「うおおおおおおおお!!」
その-----つもりだった。
「あ…れ…?」
体に力が入らない、体が重い。
まるで-----身体中の魔力が無い感覚だった。
もしかして…一度宝具を使ったのと腕をちぎられたのが原因で…。
「クソッ…なんで!!なんでこんな時に…!」
俺は何をやっているんだ。
自分を恨んだ、激しく恨んだ。
2人を守りたくて、あんなに格好付けておいてこれか…。
俺は今まで何をやってたんだ…。
「紡!? どうしたの!?」
イリヤの声で俺は我に返った。
「イリヤ…ごめん、魔力が足りないんだ…」
「えっ…」
イリヤは応戦しながらも呆気に取られた顔をしていた。
当たり前だ、バカな俺のせいで頼みの綱が消えたんだ。
「ル、ルビー! 何とかならないの!? 魔力を分ける方法とか!」
イリヤは必死にルビーに話しかける。
「あ、あるにはありますけど…その…」
「あ、あるの!? 早く言って!」
「え、えっとですね…」
そう言うとルビーはごにょごにょとイリヤに話した。
「っ〜〜〜〜〜〜〜!!?」
それを聞いたイリヤは慌てて顔を真っ赤にしていた。
「イリヤ? どうしたんだ!?」
俺がそう言うとイリヤは立ち止まり戦闘をやめて言った。
「美遊、ごめん… 少しの間だけお願い…」
そう言うと俺の方へと何か呟きながら近づいてきた。
大丈夫、大丈夫と連呼しているように聞こえた。
「仕方ないよね…そう、仕方ないもん…こうするしかないもん…」
「イリヤ…?」
「つ、つむぎ…え、えっとね…これから起こることに驚かないで、そ、それと…止めないでね」
「一体なに…むぐっ!!?」
一瞬。
何が起こったのかもわからなかった。
眼前に広がるのは…至近距離でのイリヤの顔。
イリヤの匂い、イリヤのサラサラした髪。
全てが近くにあった。
そして唇は----------塞がっていた。
「ううううぅぅ…」
その行為が終わるとイリヤは即反対を向いて倒れ込んだ。
それと同時に-----俺の魔力は回復し、その行為の意味を理解した。
「イ、イリヤ…」
「こ、こっち向かないで…」
俺は気恥ずかしくてイリヤに何て言えばいいかわからなかった。
そのイリヤも…きっとそうなんだと思う。
「今…きっとすごい顔してるから…見ないで…」
やっぱり…きっとイリヤも状況に頭が追いついてこない状態だ。
「…お願い、絶対に勝ってよね」
「…あぁ」
ここまでしてくれたイリヤの為にも。
ずっと俺を信じて戦ってくれてる美遊の為にも。
俺は…みんなを守る為に負ける訳にはいかない。
守るべき居場所がある。
「よし…いくぞ」
俺が力を込めると黒のステッキは俺の思いに応えるかのようにその力を発揮していた。
大気が震え、身体中の魔力が全て反応していた。
そして…俺の右腕は蘇生した。
「なっ…!? そ、そんなの…有り得ない!」
「これが黒のステッキの真の力…ですの!?」
凛さんとルヴィアさんは驚いた表情を浮かべていた。
ありがとうイリヤ、美遊。
2人のお陰でここまでたどり着けた。
絶対に…みんなを守るから。
■
■
■
■
「
「なっ…!? なにここ…!?」
ビルは光に包まれた。
そして目を開けると-----緑、丘が広がっていた。
イリヤは紡とデートで行った丘のことを思い出していた。
あの景色に-----似ていたからだ。
そして…3人の男性がいた。
「久し振り…みんな」
紡はそう言うと少し穏やかな表情を浮かべた。
「久し振り…リアン」
「よぉリアン! 何だ? もしかして俺が力を貸さないといけないってか? まったく仕方ねぇなぁ」
「なんだ? あいつをぶっ倒せばいいのか?」
3人の男性はそれぞれの言葉を発した。
「あぁ、ごめんな…力を貸して欲しい」
紡がそう言うと3人の男性は剣を構えた。
「行くぞ!!」
まさに--------一瞬の出来事。
4人の攻撃によりあっという間に敵は倒れた。
イリヤはこの光景をこう評した。
"ひとつの物語を知った"…と。
---みんな、ありがとな。
---いいよ、このくらい。
---へっ、やっぱりお前は俺たちがいなきゃダメだな!
---それと…ごめんな。俺は…みんなを…。
そう紡が言おうとした口を1人の女性が指で塞いだ。
---クロワール…。
---リアン、あなたは私たちを守れなかったことを後悔してる…だけどね、これだけは言わせて。 私たちはあなたと過ごし、共に歩んだ。その最後がどうであったとしても…私たちは"あなたと過ごせて幸せだった"…それを伝えたいの。
---!
その言葉に紡は衝撃を受けた。
そして周りを見ると…みんなは笑顔だった。
---ありがとう、リアン。あたと過ごした時間…とても楽しかった。
---ありがとう…大好きだよ。
最後に女性はそう言うと消えていった。
その言葉と共に景色は消え、元のビルの景色へと思った。
最後の戦いは…幕を閉じた。
「つむぎいいいいい!!」
「うおっ…と…」
戦いが終わるとイリヤは俺に抱きつき、その目には涙を浮かべていた。
良かった…やっと愛した人を守れたんだな…俺は。
「紡…!」
しばらくして美遊たちも俺の方にやってきた。
美遊の目にも少し涙が浮かんでいた。
「まったく…あんたには最後まで驚かされっぱなしだったわね」
凛さんはそう言って少し頭をかいていた。
「でも…ま、ありがとね」
凛さんは照れ臭そうにそう言った。
俺たちの戦いは幕を閉じた。
何年、何百年たったかもわからない。
だけど…俺はこの手でようやく守ることが出来たんだ。
愛する人を、大切な友達を。
ありがとう…みんな、クロワール。
Story Spun Friends
第十六話 Story Spun Friends
次回、最終話。
詠唱を書いている時の私は赤面でした。