俺達の前に現れた凛さんは、間も無く口を開いた。
「あんた達に伝えたい事があるわ、ちょっと時間貸しなさい」
Story Spun Friends
第四話 戦い慣れてる?
「伝えたいこと…?」
「そ、まず2人に言いたいことがひとつ。それから紡、あんただけにも言いたいことがあるわ」
「俺に…?」
凛さんは少し頷くとその口を再度開く
「まずひとつ目、今夜0時に高等部の校庭に来なさい。前言ってたことの本番に入るわ」
「そしてふたつ目…」
そういうと凛さんは俺の方を向いてちょいちょいと手を招いた
「イリヤ、ちょっと待っててくれ」
「うん…わかった…」
そして俺はイリヤを置いて道路の角へ凛さんと移動した
「いい?あんたのステッキの件よ」
「あぁあれね…」
黒いステッキ、凛さんもルビーもまったく知らないという謎のステッキ。
まぁバレたら恥ずかしいし流石に家に置いてきたけど。
「あれの正体について今日ロンドンの方に連絡を取ってみたわ。そしたらこれがまた結構ややこしいのよね…」
ハァ〜 とため息を吐きながら話す凛さん。
「あの黒いステッキはね、ルビーとサファイアが作られる前に実験的に作られたの。所謂"試験品"ってわけ」
「"試験品"…?」
「そう、時計塔は高性能の魔術礼装を作ろうと血眼になって全技術をそれにぶち込んだ。つまりそれはとんでもなく強いステッキなわけよ。」
「へ〜じゃあラッキーじゃん」
「…って思うでしょ? だけどそこにはね"重大な欠陥"があった…。そのステッキ自体の魔力に対する自我が強過ぎるため生半可な奴が使うと勝手に暴走するのよ。持ち主の魔力を吸い取ってね」
「持ち主の魔力を吸い取る…何となくだけどつまり最悪…」
「そういうこと。つまり魔術も魔力の使い方もてんで学んだ事ないあんたが使ったら…わかるわね?」
「…」
勿論俺は魔力なんて知ったのも昨日の今日だしそれを使えば…。
「わかったわね、じゃああのステッキは…」
でも…
「いや、降りない」
ここで退くわけにはいかない。
「はぁ!? あんた自分が何言ってるかわかってんの!?」
「いや〜出来ればわかりたいんだけどな〜俺だって命は大事にしたいし」
「ちょっ…じゃあやめればいいじゃない!このバカ!」
「でもわかんね…イリヤ1人を危険な目に合わせるわけにはいかないんだよ…危険なんだろ? カード回収」
「そりゃ危険だけど…あんた、他人の為に自分の命を捨てるっていいの!?」
「いいよ、別に」
「っ…」
イリヤの為なら。それにまだ死ぬって決まったわけじゃないし、奇跡的に魔力が使えたり--なんて。
「…あきれた。そこまで言うならいいわ、今夜0時よ、忘れずに来なさい」
「了解しました」
それから凛さんは反対方向に歩いて行った。
(そう…でも気掛かりなのよ、"あのステッキは魔力を求めてマスターを探す"。あいつは本当に特に何も感じない…本当に正真正銘の『一般人』ってワケなのに…神楽なんて魔術師系統も聞いたことない…何で…?)
カリ、と爪を噛みながら歩いて行った。
「あっ、紡。話終わったの?」
「あぁ、別に大した事じゃなかった」
俺がそういうとイリヤは少し俯いた
「ほんと…? 何か凛さんちょっと荒っぽそうだったし…」
こいつ、覗きやがったな
「別に…ちょっと凛さんの年齢って20歳ですか?とか言ったらキレただけだって」
「それはそれで問題だよ!」
「ハハハ、まぁお前が心配するようなことは何にもねーって」
「紡…いつも体を張って私を助けてくれるから…もうあんな前みたいな無茶はしないよね…?」
「…」
何年か前、イリヤが山で見つからなくて怪我をしながらも探した時のことを言ってるんだろう…。
「…あぅ」
俺はイリヤの頭をポンと叩いて帰り道を歩いた。
0時 高等部校庭
「お、ちゃんと来たわね…って何でイリヤはもう転身してるの?」
「いや…実はさっきまで色々練習してまして…」
「そうですよー基本的な魔力弾射出くらいは問題ないです。後はまぁ…イリヤさんの魔法少女力で!」
「それはそれは頼もしいわね… で、あんたは?」
凛さんは俺の方をチラッと伺う。
「いや、俺はちょっと眠いから寝てた…」
「…そ、まぁいいわ。転身しなさい」
俺は凛さんに言われるがままにその場で転身をした。
「ねぇねぇ凛さん、校庭に来たけど何にもないよ?」
「そりゃそうよ、カードはこっちにあるんじゃないんだから。"鏡面界"…カレイドステッキを使って反転世界へ移動するの。ルビー」
「はいはい了解です、では移動しますよー!」
そういうとルビーは円のようなものを地面に描き、俺たちはあっという間に別の世界へと移動させられた。
「うっわ何だこれ…」
「すごい…さっきまではまったく別の世界…」
「説明してる間は無いわ!来るわよ!」
凛さんがそう叫ぶと大体20メートル前方に黒いゲートのような物が現れ…
敵が---その姿を現した。
-----あれ?
-----どこかで、あの姿を…
「ライダー…」
-----俺は無意識に、口から勝手にその言葉を放った。
自分でも何が何だかわからなかった。俺は敵のことも、勿論この鏡面界の事も何も知らない。
---でも、確かに俺はそう言った。
「あんた…今、なんて…?」
その俺の発言を凛さんは聞き逃さなかった。
「え…」
「え じゃなくてよ! あんた、あの英霊のこと知ってるの!?」
知らない。そんなの勿論…知らないハズなのに。
「まぁいいわ…後で聞く事にして、来るわよ!2人とも!」
敵が俺達の前に一撃を繰り出すと地面が大きく抉れた。
「わぁーーー!!なにこれーーーー!!」
イリヤはパニックになり、敵からただただ離れようとしていた。
「イリヤさん!落ち着いて下さい!イメージですよ、さっきやったみたいに魔力弾を出すイメージをして下さい!」
「そ、そんなこと言ったっていきなりはムリムリ!!」
イメージ…イメージ…。
俺は思考を張り巡らせ"鋭い斬撃"をイメージした。
「こんな感じ…かなっ!」
俺のステッキはイメージ通りの鋭い斬撃を放ち敵にヒットする。
「なっ…そんな…!何で上手く"扱える"のよ…」
俺はイメージを続け、ビームやら斬撃を連続して繰り出す。
わからない、わからないのに自分でも訳がわからないくらい気持ちのいい程に上手くステッキを扱えていた。
「つ、紡…なんかすごい…」
「ほんとですね〜何ででしょう、紡さん、魔力を扱うなんて今日が初めてなハズなのにすごく魔力の扱いもイメージも上手いです」
「紡…なんか戦い慣れてる…?」
「ほら、なーにボーっとしてるんですか!紡さんに良いとこ見せられてるばっかじゃいけませんよ!イリヤさんだって練習の成果を見せつける時ですよー!」
「ムリムリムリムリ!30分の練習に成果も何もないよ!」
後ろの方でイリヤとルビーがあーだーこーだ言っている。
まぁそれは良いとして…。
「ルビー!ステッキって別の形状に形を変更させたり出来ないのか!?このままじゃジリ貧だ!」
敵は明らかに攻撃を受けているものの、このままじゃ決定打に欠ける。何か…武器、新しい…武器を。
「もちろーん!紡さん、イメージして下さい!形を…形状をイメージしてみるんです!」
そうか…イメージ…イメージ…
俺は何かに形を変えたかった…ただそれだけだが、気付いたら俺は"剣"をイメージしていて手元には剣があった。
わからない、ただそれを手に取るだけで何故か安心感と懐かしさが心の底から沸いていた。
-----そう思ったのも束の間だった。
敵から溢れんばかりの魔力、ビリビリと体を伝わるほどの魔力を感じた。
「な…なにあれ…」
イリヤは体を震わせていた。
「ッ…! まずい、"宝具"を使う気よ!! 紡!イリヤ!こっちへ来て!ダメ元で防壁を張るから!」
凛さんが遠くから叫ぶ、それに伴いイリヤは凛さんの元へ走って行った。
----でも、ダメだあれはそんな生半可なものじゃない…俺の第六感はそう告げていた。
「ちょっ…紡!?」
気が付いたら俺は敵の方へ走り出していた。
「バカ!!あんた死ぬ気なの!?」
違う…違う…このままだと3人とも殺される…!
そうなる前に俺の手で…!
「紡! 戻って! 紡ーーーーー!!!」
「ああああああああああああああ!!!!!」
叫びと共に俺は斬り込んでいた。そして俺の剣先から光が放たれた。
------そして、それとは違う別の姿が見えた。
---クラスカード『ランサー』
俺の刃が敵に切りつくのと同時に…槍が敵に刺さっていた。
そしてその槍を持っている少女はこちらを見て言った。
「あなた…カード無しで宝具を…」
その言葉の意味が----俺にはまだわからなかった。