Story Spun Friends   作:Gliscor

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第八話 初デートだよね

 

その男はこう呟く。

 

 

 

我、産まれながらに空白の物語を受け取る。(The first was just a white paper)

 

 

 

鎖を持った人物と槍を構えた人物は身震いをした。

 

 

-----曰く、数秒後のその光景を見た者はこう言う。

 

 

 

-----ひとつの物語を知った、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Story Spun Friends

 

第八話 初デートだよね

 

 

 

 

 

眼が覚めるとそこはベッドの上だった。

昨日の戦いの後---凛さんとイリヤの話が終わって2人が戻ってきたとこまでは覚えている。

 

そこからの記憶は一切なかった-----というより覚えていない。

 

恐らくくたくたになった俺は帰ってすぐ寝たんだと思う。

 

それと昨日の盾------あれを見てまた何かがパズルのピースのように俺の頭の中で当てはまっていく。前の剣を見た時と同じ感覚だった。

 

徐々に埋まっていくソレ…きっと俺の大切な何かを掘り起こしてくれる予感がした。

後何個だろうか…このパズルの完成には果たして辿り着けるのだろうか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はああああぁぁぁぁぁ…最悪だ…」

 

朝ごはんから戻った俺は自分の部屋のベッドにうなだれた。

 

何しろマジで散々だった。魔力の使いすぎって奴のせいで上手く箸を持てずに何度も落とすし、茶碗は割るわみんなには余計に心配されるわでもう最悪…。こりゃまたヤブ医者さんにドクターストップくらうな…。

 

それにしても今日のイリヤはなんか控えめだったな…。

 

 

 

と俺が思ったのも束の間、部屋のドアが開いたかと思うとイリヤが入ってきた。

 

「紡! 今日は私がデートしてあげるから! じゃあ着替えて15分後にまたね! じゃ!」

 

 

…はい?

 

 

「いや、じゃ! じゃねえよ!何だよいきなり出てきたと思ったらデートって…何言ってんだお前!」

 

「うるさいうるさーーーい! いいから今日は紡は私と出かけるの! 強制よ、拒否権はないからね!」

 

そういうとイリヤは思いきりドアを閉めて出て行った。

 

「あいつ…こっちの事情も聞かずに勝手に決めやがって…!」

 

かと言って昔から走り出したイリヤは止まらないし…しゃーない、今日は休みだしたまにはあいつのワガママに付き合ってやるか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜しかしイリヤさん、中々大胆ですねぇ! 私とデート!なんてイマドキの女の子はそうそう言いませんよ?」

 

ルビーはふよふよと浮遊しながら私を茶化すようにそういった。

 

「ち、違うもん…これは私を守るために命張ってまでカード回収に参加してくれた紡へのご褒美!ご褒美だから!」

 

「へぇ〜ご褒美ですかそうですか…でもその割にはイリヤさんのが何か嬉しそうですよ〜これじゃどっちのご褒美かわかりませんねぇ〜」

 

ルビーは(多分)にやにや顔を浮かべながら私に向かって話していた。

 

「ち…違うから! 別ににやにやなんてしてないもん…」

 

「はいはいわかりましたって、それよりイリヤさん服選びに時間かけすぎじゃないですか? 時間きちゃいますよ」

 

「あわわわわ…そうだった…ええっと…どれにしよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っておせえよ!」

 

「えへへ…ごめん、ちょっと着替えに時間かかっちゃって…」

 

その割には普段着ているのと同じような格好な気もするけど…。

 

「んで…どこ行くって?」

 

「9時30分にバスが来るからそれに乗ろ」

 

そうイリヤが言うと100m先にあるバス停にはバスが停まっていた。

 

「ってもう来てる! 紡、走って!」

 

「え、ちょっ…おいこら!!」

 

俺はイリヤに手を引かれそのままバスへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街へ着いた俺とイリヤは特に目的もなくぶらぶらと歩いていた。

 

「おいイリヤ、今日なんか予定でもあんのか?」

 

「う〜んどうしよっかな…あ!」

 

そういうとイリヤはゲームセンターのクレーンゲームを指差していた。

 

「あれ欲しい! 紡取って!」

 

イリヤが指差していたのは頭がでかくて腕は長いくまのぬいぐるみだった。やけに変な体型してんな。

 

「ふっふっふ、あんな簡単なのでいいのか? あまり俺を舐めんじゃねえぞ…見てろ!」

 

俺は100円を投入する

 

「く…なかなか難しいな…もっかい!」

 

---100円

 

「うっ…もっかい!」

 

---また100円

 

「だああああクソ!アームどうなってんだよ!」

 

---また…

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、紡…ごめんね、ありがと…」

 

「あぁ…いいんだよこのくらい…」

 

イリヤは調子こいた割りに15回も取るのに回数をかけた俺に慰めてくる。その優しさがまた悲しい。

 

「お金後で払うから、ね?」

 

「いいよ金なんて、こういう時くらい払わせてくれって」

 

「え、いいの…?」

 

「当たり前だろ、嘘ついてどうすんだよ」

 

「えへへ…ほんとにありがと、大事にするね」

 

「あぁ、苦労したんだから大事にしなかったらキレるからな」

 

「も〜、からかわないでよ!」

 

俺たちは別の場所へと歩き出した。

 

 

 

「うわ〜キレイ…」

 

俺とイリヤがウインドウショッピングをしているとイリヤがアクセサリーショップを覗きながらそのアクセサリーに目を奪われていた。

 

「それが欲しいのか?」

 

「い、いや全然!」

 

「嘘つけ…どれどれ…げっ、たっか!」

 

その値段を見ると普段お金をあまり使わない俺でも貯金を合わせても足らない額だった。

 

「流石にこんなに高いのを買ってもらう気はないよ…紡に悪いよ…」

 

「つーかそもそも買えねえし…よし、じゃあこうしてやる」

 

「?」

 

「後2ヶ月でお前の誕生日だろ、その時に絶対渡すからな」

 

「い、いや…!だからほんとにいいって!そんなのダメダメ!」

 

「ちぇ〜イリヤに似合うと思ったんだけどな…」

 

「そ、それは嬉しいけど…と、ともかく!ほんとにいいからね!」

 

「は〜い」

 

 

 

 

 

 

 

それから俺たちはただ普通に一緒に映画を見て、一緒にご飯を食べて…本当にただイリヤと一緒に遊んだ。それだけだった。

 

「ねぇ紡、行きたい場所があるんだけど…」

 

「いいよ、どこ?」

 

「ついてきて」

 

10分ほど歩いてイリヤに連れてこられたのは小さな丘だった。

 

「いい景色でしょ、ここ好きなんだ」

 

「あぁ…いい場所だな」

 

なんだろうか…懐かしい、なぜか良い分になる場所だった。

 

 

「紡…今日はありがとね、紡の初デートだよね」

 

「デートっていうのかは知らないけど…まぁそうだよ」

 

「やったー! 紡の初デートの相手は私だ!」

 

「そうですよイリヤ様ですよ…んで、今日は本当に出掛けたかっただけか?」

 

俺がそう問うとイリヤの表情は真剣なものに変わった。

 

「ううんお出かけしたかったのもあるけど…どうしても紡と話したいことがあったの」

 

「…ま、そんなとこだと思ったよ。で、なに?」

 

「昨日…凛さんに聞いたの。紡が戦ってる本当の理由…」

 

「なっ…!」

 

凛さん…イリヤに喋ったのか…それで今日の朝イリヤの様子がおかしかったわけだ…。

 

「紡、私の為に無茶してたんだよね…黒いステッキのこととか、どうしてそこまでして私の為に戦おうとするの…?」

 

「…」

 

すぐに言葉は出なかった。

ただ、イリヤには理由を知られず何にも気にせず過ごして欲しかった---それだけだった。

 

 

「…聞くか?」

 

「うん、話して…」

 

「…俺の父さんと母さんが死んだ。それで俺はイリヤの家に引き取ってもらったろ?」

 

「え、うん…セラが紡に」

 

「違うだろ、知ってるよ」

 

喋ろうとしたイリヤの言葉を俺は途中でシャットアウトした。

 

「…知ってたんだね」

 

「あぁ、セラから聞いた…俺が1人になった時、俺を家に迎えようって提案してくれたのはイリヤなんだってな」

 

だけど最初はみんな悩んでいたらしい…色々とイリヤの家にも事情があったんだと思う。

 

それでも-----イリヤがみんなに必死に訴えかけてくれてそこまで言うならと俺を迎え入れてくれた…そうセラは言っていた。

 

あのままもしイリヤが何も言わなかったら今頃俺は…どっかに引き取られて寂しく1人で過ごしてたかもな…

 

「新しい家族、まだ一緒にいたかったイリヤといられる…1人でどうしようもなくなっていた俺はイリヤに救われたんだよ…」

 

 

 

 

その話を聞いたイリヤは少し気恥ずかしそうにしていた。

 

「ううん…別に大したことじゃないよ…私だって、まだ紡と一緒にいたかったし…」

 

もじもじしながらイリヤはそう言った。

 

「そ、それで私の為に…?」

 

「いや…他にも理由なんてたくさんあるよ。イリヤに感謝することがいっぱいだ。そういえば----ちゃんとお礼、言えてなかったな」

 

 

 

 

 

俺はありったけの気持ちを込めて言った。

 

「ありがとう、イリヤ」

 

 

 

 

その時イリヤは思った。

 

あ…そっか…。そうだったんだ…。

 

時々紡が私のことを自分のことのように気にかけてくれてたこと。それに私は なんで? って思ってた。

 

だけど…紡も一緒だったんだ。私は紡と一緒にいたいし紡も私と一緒にいたかったんだ…って。

 

だからあの時私は紡を家に迎えようって言った。

そうだったんだ。

 

 

 

 

 

「-----うん、どういたしまして」

 

イリヤは俺の目を見ながらそう言った。

 

「でも無茶するのはダメ! いい?昨日またムリしたんだから今度も見学すること!」

 

「はいはい、わかってるよ」

 

「よーし!それじゃ帰ってまた特訓! 紡、帰ろ!」

 

「おし、了解」

 

 

 

イリヤは笑顔で俺の手を引っ張った。俺もその手を握り返す。

 

その小さな手を守りたくて-----これからも俺はずっと頑張ろうって、そう思えたんだ。

 

 





本家に比べてイリヤの性格がカーニバルファンタズムっぽくなってる気がするのは僕だけですかね…。

紡には心を許してるからそれ故にラフな感じってことで。
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