教官   作:takoyaki

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外伝11です。


今年のライダーも面白いですね。


新ベルトのクセが大分強いですが、かっこいいです。


てなわけで、どうぞ


「本当性格クソですよね」

「さてと、残るはここだけだねぇ」

ルイーズは、そう言って物陰から洋館の空き家を確認する。

空き家の周りは、塀でぐるっと囲われており、唯一の出入り口は門のみだ。

一行は、あの後直ぐに訓練学校を出るとルイーズの目星を付けた場所をしらみ潰しに探していた。

そして、最後に残ったのがここだったのだ。

「門の前に人がいますね」

ベイカーの言う通り、男が二人いた。

タバコを吸ったり、GHSを弄りながらもその場から一切動かない。

「空き家の前に見張りですか………これは、あたりじゃないですか?」

クイーンの言葉にエラリィも頷く。

「どうしますか、ルイーズ教官?塀を超えるのは無理そうですよ」

エラリィの質問にルイーズは、ふむと考え込む。

「裏口とかアレばいいんだけどねぇ………」

先ほど四人で確認したのだが、残念ながらなかった。

いや、扉自体はあったのだが、荷物が山積みされていてとても出入り出来る状態ではなかった。

それからクイーンの方を向く。

「クイーン。道を聞くフリして二人を伸してきてよ」

「私、軍服なので無理ですよ」

「私だって無理だよ」

「なんで、自分にできないこと他人に要求するんですか?」

「何言ってるんだい。自分で出来ないから他人に頼んでいるんじゃあないか」

「本当性格クソですよね」

「うるさい。ポンコツスイーツ女」

「二人とも喧嘩しないでください」

ベイカーは、ため息を吐きながらお互いの頬を引っ張り合う二人を諌める。

「それで、結局どうするんですか?」

ベイカーの質問にクイーンは、ため息を吐いて立ち上がる。

 

 

 

 

 

 

「道を聞くフリは無理ですけど、伸すのは、どうにかなるですよ」

 

 

 

 

 

 

 

クイーンは、そう言うが早いかあっという間に物陰から躍り出た。

物音を最小限にした走りで距離を詰める、気付く前に一人目の鳩尾に左の拳打を叩き込む。

叩き込まれた男は、そのまま自分が何をされたかも分からぬまま意識を飛ばした。

「!?」

その行動に気付いた二人目が武器を構えようとした瞬間にクイーンは、身体を捻って一歩踏み込む。

たった一歩なのだが、クイーンは手足が長い。

よってその一歩が致命的なのだ。

距離を詰めるクイーンは、踏み込みを力に変えて右の拳を鳩尾に打ち込んだ。

「──────っ!?」

二人は、一言も発することなく地面に倒れた。

クイーンは、ポケットから手錠を出すとそれぞれ二人に嵌め、無理矢理立たせ何とか見張りの体裁だけは整えた。

一通り作業を終わらせたクイーンは、物陰に隠れている面々を手招きする。

一行は、走り出した。

「とっとと終わらせてとっとと帰る。優先事項は、人質の救出のみ。いいね?」

「「「はい」」」

二人は門を開けて塀の中に入る。

塀の中に入ってしまえばこちらのものだ。

一階の窓が複数あり、進入経路はいくらでもある。

「どこから行くつもりですか?」

ベイカーの質問にルイーズは、頷く。

「正面突破でいいだろう?」

「ですね」

ルイーズの言葉にクイーンは、頷いてドアノブに手をかける。

「いや、空いてるわけ」

かちゃりと音がなりドアが開いた。

クイーンは、腰の拳銃を構えて突入する。

一行の前には大広間が広がっていた。

しかし、誰もいない。

「どういうことなんでしょう?」

ベイカーの呟きにルイーズは、髪を弄る。

「虎穴に入らずんば虎子を得ずって知ってるかい?」

「えぇ………まあ」

脈絡のないルイーズの答えに戸惑いながらもベイカーは、頷く。

「でもそれが」

「いだぁっ」

どうしたんですかと聞き返そうとした瞬間ルイーズは、転けた。

「教官………」

突っ伏したままのルイーズは、ごろりと仰向きになる。

呆れるベイカーに構わずルイーズは、不貞腐れた顔のまま更に呆れる要求をしてくる。

「起きるのだるい。起こして」

「嫌ですよ」

「君一人で無理なら三人で起こしておくれよ」

こと更に図々しい我儘にベイカーの額に青筋が立つ。

クイーンは、ため息を吐く。

「まあ、隊長の言うことです。聞いてあげるのですよ」

「………ハァ。エラリィも手伝ってよ」

「僕は、力仕事専門じゃないんだがな」

三人が屈んだ瞬間ルイーズは、ボソボソと呟く。

「(そのまま聞きたまえ)」

先ほどのふざけた様子とは打って変わってルイーズは、静かに鋭く告げる。

「(私たちは、どうやら誘い込まれたようだ。その証拠にこの誰もいない広間の床に靴跡が複数残っている)」

転んだフリをしながらルイーズは、それを確認していた。

 

 

 

 

──── 虎穴に入らずんば虎子を得ずって知っているかい?────

 

 

 

 

 

ベイカーは、先ほどのルイーズの言葉の意味をようやく理解した。

もうここは虎穴なのだ。

「(気取られたことに気付かれれば、それこそ一斉攻撃が来る可能性が高い。警戒しつつこのまま気付かないふりをしたまえ)」

「ったく、しょうがないですね」

クイーンは、そう言ってルイーズを起こす。

「そんなんでこの先もやっていけるんですか?(作戦は、続けるんですか?)」

ルイーズは、パンパンと誇りを叩く。

「今更変えられないよ(続ける)」

二人は、何気ない会話でカモフラージュして意思を確認する。

ベイカーとエラリィも理解した

「それで、どうするんですか?」

「人質を探そう。まずは、それからだ」

ルイーズがそう答えてしばらくすると助けを呼ぶ声が響き渡った。

「三階みたいだねぇ」

声の発信源は三階だ。

(本格的に誘ってる…………!!)

このタイミングの意味が分からないベイカーではない。

ルイーズの言葉があった後、しばらくしてタイミング良く声が響いたのだ。

(でも、何のために?)

ベイカーを拭いようのない不安がまとわりつく。

「ビンゴです!!」

クイーンが先行して階段を駆け上がった。

音を響かせながらクイーンは、階段を上がっていく。

慌てて後に続く一行。

階段を上がるにつれて助けを求める声も次第に大きくなっていった。

三階に上がった一行の目に飛び込んで来たのは、不自然に開いた扉だ。

「…………あそこですね」

罠と分かっていても飛び込むしかない。

「よし、行くのです!」

クイーンは、銃を構えて扉を蹴り開けた。

一行の目に飛び込んできたのは、ズタボロの軍服を来た二人と、その二人を拘束し刃物を突きつける男達二人。

そして、その周りに各々武器を持った男達。

ボロボロの二人に押し付けられ刃物が物語るのは

(人質………!!)

動きを止めたクイーンを見て男は、口角を上げる。

「よし、動くなよ。そのままぶっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は、クイーンを飛び越えて殴りつけたルイーズのせいで最後まで言い切ることが出来なかった。

手から武器が落ちる。

ルイーズは、容赦なく男の手を踏みつけ骨を砕く。

「あ………ぐっ!!」

その予期しない展開に部屋中の人間は、呆気にとられていた。

皆が正気に戻るより早くルイーズは、もう一人の人間の鼻っ柱を殴る。

面食らって後ろに倒れる男からもう一人の人質を奪い返した。

ルイーズは、人質二人を肩に担ぎクイーン達の方を振り返る。

「よし!撤収!!」

言うが早いか二人を担いだまま部屋を出た。

ワンテンポ遅れてクイーン、エラリィ、ベイカーも後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『待て!!』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく正気に戻った面々も追いかけ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「あーもう!!めちゃくちゃだぁ!!」

ベイカーは、走りながら頭を抱えていた。

「どの辺がめちゃくちゃだい?人質を救出して今逃げてる真っ最中じゃあないか」

「助け方の話をしてるんですよ!!見たことないですよ、アレ!?普通交渉とかするもんじゃあないんですか?一歩間違えれば大惨事でしたよ!?」

「うるさいなぁ、一歩も間違えなかったからいいだろう?」

ルイーズは、そう言いながらベイカーに人質を渡す。

ベイカーは、とりあえず人質を背負う。

「ほら、君も」

「……はあ、じゃあ、こっちお願いします。

ルイーズは、そう言ってエラリィにもう一人を渡す。

エラリィは、代わりに持ってきていたハンマーを渡す。

ルイーズは、ハンマーを肩に担いで走り出した。

その間クイーンは、拳銃で迫る敵を牽制する。

「彼女に何言っても無駄ですよ!最初から間違ってるんですから!」

クイーンは、そう言いながら的確に相手の足を撃ち抜いていく。

カチンと弾切れの音が鳴り響く。

各々武器を構えた男達がここぞばかりに襲い掛かる。

クイーンは、懐から更に銃を取り出す。

「それよりも今はここからどう切り抜けるか、です!!」

一瞬のうちに三人の足を撃ち抜く。

「二階ぐらいなら飛び降りれるんじゃ……」

「無理だね。怪我人背負って飛び降りたら怪我人も自分も無事じゃあすまないよ」

ベイカーの提案をルイーズは、即座に却下する。

「とはいえ、このままじゃあジリ貧ですよ。多分出入り口は、塞がれていますし………」

エラリィの言葉にルイーズは、頷く。

「そうなんだけど、やるしかないんだよね」

「そんな貴方達にお知らせです。弾が切れてしまったのです……」

「そんな君にお知らせです。挟まれました」

廊下の一本道。

後ろから敵が追い付こうとする。

前の男達も壁となってルイーズ達に迫る。

「「ま、関係ない《です》けど」」

ルイーズは、そう言うとエラリィのハンマーを短く持つ。

そして、目の前の男を吹き飛ばした。

男は、他の面々を巻き込みながら、吹き飛んでいく。

クイーンは、腰の刀に手をかけ抜刀した。

後一歩のところまで迫っていた男の手を切り落とした。

切り落とされた男は絶叫しながら、後ろに下がる。

その隙を一行は、走り抜ける。

「その身体のどこにそんな力があるんですか?」

「企業秘密ってことで」

適当にそんなことを言いながらルイーズは、先頭を走り続ける。

三階の階段を降り始めると二階から足音が響く。

ルイーズ達を逃すまいと階段駆け上がって来たようだ。

階段を駆け上がった男達は、黒い機械を構えていた。

その男達の後ろには普通の武装集団が万一の突破に備えて、並んでいた。

「ヤバイ!!黒匣(ジン)です!!」

「んなもの見ればわかるよ」

「睡眠不足のタレ目ちゃん!!」

クイーンは、振り返りながらルイーズに向かって叫ぶ。

「任せたまえ。後、次それ言ったら君の元彼の名前でリズム刻んであげる」

ルイーズはそう言いながら懐からドライバーを取り出す。

「ドライバー?」

エラリィは、思わず首を傾げた。

ルイーズは、そう言うと階段を下りずに踏み込み大きく飛び上がる。

壁と階段の手すりを足場にし、ぴょんぴょんと飛びながら距離を詰める。

眼前に迫ったルイーズに男は慌てて黒匣(ジン)をかまえる。

ルイーズは、その隙間をするすると通り抜けると武装集団の後ろに回った。

「だぁっら!!」

「ぐっ………!?」

ルイーズは、ドライバーを握りこんだ手で男を殴りつけた。

大きく吹っ飛ばされる男。

「このアマ!!」

それ以外の男達が、ルイーズに向かって武器を構えようとする。

ルイーズは、男達が構えるより早く動いた。

ルイーズの蹴りが、拳が、頭突きが、男達たちに構えるという行為を許さない。

構えようとするたびにルイーズが片っ端から意識を奪っていく。

男達は、次々と倒れ気が付けば立っているのは、黒匣(ジン)を構える男達だけになった。

「残るは………君たちだけだねぇ?」

「図にのるなよ。息が切れてるぞ?」

ルイーズの呼吸は、先ほどからずっと荒い。

立ち止まったルイーズに照準を合わせ、引き金に指をかける。

「そんな状態で防げるかぁ?!」

「そんな必要はないねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男達が、発動させようとした次の瞬間黒匣(ジン)は、爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何せ当たらないんだもの」

 

 

 

 

 

 

ルイーズは、ドライバーを弄びながらニヤリと笑う。

先ほどまで乱れていた息もすっかり元通りだ。

「何が………?」

ルイーズは、訳が分からないという顔の男達の頭を掴む。

「私の前で黒匣(ジン)を使ったのが、運の尽きって奴さ!!」

そう言ってそのまま二人を顔から地面に叩きつけた。

叩きつけられた二人は、そのまま起きあがらない。

壁が消えた瞬間三人は、走り出した。

「今の何ですか!?」

ベイカーは、追いついたルイーズの背中に問いかける。

ルイーズは、走りながら後ろのベイカーにネジを見せる。

「………………まさか」

「まさかも何もそれしかないだろう?」

「分解したんですか!?あの一瞬で?」

「ネジ外しただけだよ。分解ってほど大げさじゃあないよ」

ルイーズは、黒匣(ジン)を発動するのに重要な所のネジを取り、使えば暴発させるように仕組んだのだ。

仕組んだのだが………

「いやいやいや。ネジの大きさとドライバーが合わないと………というか、黒匣(ジン)ごとにそれも微妙に違うはずですけど……」

エラリィが遠慮がちに突っ込むとルイーズは、事も無げに返す。

黒匣(ジン)見れば、どのドライバー使えばいいかわかるもの」

「補足すると、たれ目ちゃんの軍服にはかなりの種類のドライバーがあるんですよ。数えたことないので正確な数字までは分からないですけど」

「あなたの友人どうなってるんですか!?」

ベイカーは、後ろのクイーンの方を振り返ってツッコんだ。

「まあ、そんな訳だからとりあえず黒匣(ジン)については、気にしなくていいよ」

ルイーズは、淡々とそう言うと二階の階段を降りる。

そして、一階にようやく辿り着いた。

「よし!後は、ロビーを抜ければ………」

 

 

 

 

ルイーズは、思わず言葉を失う。

ロビーには、真っ赤な手袋をした一人の男が立っていた。

腰にある刀に手をかけいつでも抜き出せるようになっている。

 

「教官?」

ベイカーが不思議そうに首を傾げる。

ルイーズは、唾を飲み込む。

「…………血染めの手袋に、刀、そしてこの殺気…………マジかい……」

「おやおやおや?オレのことを知ってるのか?」

男はニヤリと笑いながら一歩前へ進む。

目はどろりと濁りながらも爛々と輝いている。

それは、まさに狂気とでもいうべきか。

ルイーズは、後ろの三人を庇うように前に出る。

「時間を稼いであげるからその隙に一気に出口まで駆け抜けたまえ」

いつもの調子が鳴りを潜めたルイーズにベイカーは、目の前の男とルイーズを見比べる。

「………そんなにヤバイ奴なんですか?」

「何だ、お前、そんな事も知らないのか?」

ベイカーの質問に男は馬鹿にしたように笑う。

「切り裂きジャック……って知ってるか?」

記憶を辿るベイカー。

その脳裏にエラリィから渡された新聞が現れる。

「………昨今巷を騒がせている殺人鬼だっけ?」

「そう、それが」

男はそう言って目の前からふっと姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に姿を現したのは、クイーンの後ろだった。

男、切り裂きジャックの刀をクイーンは、自分の刀で受け止める。

「へぇ………いい反応するじゃん」

「私の隊員に刀向けてんじゃあない!!」

ルイーズは、男の土手っ腹を拳で打ち抜く。

「教官!!」

ベイカーの声を聞きながらルイーズは、クイーンにエラリィのハンマーを渡す。

「走りたまえ!!」

「でも、教官一人じゃ………」

「早く!!」

ルイーズは、怒鳴って指示を飛ばす。

クイーンは、刀をしまうとベイカーとエラリィの肩をポンと叩く。

「私たちの任務は、人質の救出であって、切り裂きジャックの確保ではないのですよ」

そう言ってクイーンは、ルイーズの方を向く。

「ちびっ子ちゃんも。その辺は、理解しているのですか?」

「分かってるよ。後、ちびっ子じゃあない。次にそれ言ったら君の彼氏から切り出された別れ文句ベスト10でバラードうたってあげるからね」

「やめてください」

クイーンは、そう言うと走り出した。

「おっと、行かせると思ったのか?」

切り裂きジャックは、クイーン達を追おうとする。

「おっと、させると思ったのかい?」

ルイーズが真っ黒な手袋をはめながら前に出る。

「マジで一人か?何のつもりだ?」

ルイーズは、脚を一歩前に出す。

「私は、あの中で一番強い」

「ほほう?」

「そして、君は間違いなく強い」

「まあな」

「だったら、私が残るのは、当然だろう?」

ルイーズは、そう言うと床を踏み込んだ。







切り裂きジャック登場です。

外伝を考えていた時どんな風に話を転がそうか考えていた時、ふと思いつきまして、今ならアニメもゲームも盛り上がっているし、そこそこ知名度あるからいいかな?と思い投入しました。


可愛い女の子でなくて申し訳ないですが、ご勘弁ください(笑)

では、また外伝12で

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