教官   作:takoyaki

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外伝19です


ごめんなさい、間違えました。
こっちが外伝19です





てなわけでどうぞ!!


「もうちょい後」

「さて、皆さんお集まりありがとうです」

箱の中を当てるクイズから数日が過ぎたその日、ルイーズ達はクイーンにとある教室に集められていた。

因みに集められた三人はと言うと………

「って、どうしたんですか?三人とも」

疲れ切った様子で机に突っ伏していた。

ルイーズは、顔だけあげると目の前のクイーンを見る。

「あの騒動以降、君と付き合うには私を倒してからってことになってるみたいでね………」

ルイーズはここのところ古今東西ありとあらゆる方法で勝負を挑まれていた。

ベイカーが不思議そうに首を傾げる。

「ワザと負ければいいんじゃないですか?」

「なんで私のこと馬鹿にしてる奴にワザワザ負けてあげないといけないんだよ……」

心底嫌そうに言うルイーズにクイーンは、頷く。

「結構負けず嫌いですよね、ルイーズ」

クイーンは、うんうんと頷く。

「ルイーズは、分かったんですけどベイカーは、どうしてそんなに疲れているんですか?」

「俺はですね」

ベイカーは、パンパンに膨らんだ紙袋を二つ机の上に置く。

「勝負を諦めた連中からクイーン隊長にラブレターを渡すよう頼まれました。男女問わず」

「今なんて?」

クイーンの耳に聞き捨てならない台詞が入った。

「ちゃんと読んでくださいね。受け取るのも運ぶのもすっごい疲れたんですから」

「いや読むですし、返事もするですけど………それより、なんか聞き捨てならないセリフが………」

「君は?」

クイーンの言葉を遮ってエラリィに話を振る。

「貴女を倒すための弱点とか聞かれました」

「わあい、繋がった」

ルイーズは、机に顎を乗せながらそういった。

「色々言いたいことはあるのですが!!」

クイーンは、バンと机を叩く。

「とりあえず今日から私達は、隊として動き出すわけです!!まずは、拍手!!」

ぱちぱちと気の無い拍手が響き渡る。

クイーンが拍手止めの合図を出し静かになる。

「さて、それにあたって報告です!!」

そういって懐からあるものを取り出す。

「それって………」

「そう!リリアルオーブです!!私ことクイーン・リーは、隊長なのでもらえたのです!!」

「おぉー。君の苗字久々に聞いたよ」

「どこに感心しているんですか!リリアルオーブを手に入れたんですよ!」

「いやだって、隊長は手に入れるの決まってるんじゃあないか。特に感心しないよ」

ルイーズのつれない返事に肩を落とした後、少し真面目な顔になる。

「さて、もう一個報告事項です。本部から憲兵部隊に命令です」

そこで言葉を切るとクイーンは、言葉を続ける。

「『切り裂きジャックを確保せよ』とのことです」

一行に緊張が走った。

クイーンは、真剣な顔で続ける。

「被害者の数も優に五十越えです。このままでは、軍の威信に関わるということです」

クイーンは、そう言うと更に言葉を続ける。

「今後の方針としては、うちの隊も確保を目的に動ごきますです。何かあるですか?」

ルイーズは、首を横に振る。

他の二人も似たような感じだ。

「では、それにあたって隊長命令です」

クイーンは、そのグリーンの瞳に力を込める。

 

 

 

 

「絶対に単独で切り裂きジャックには、挑まないこと」

 

 

 

 

 

 

 

先ほどまでのふざけ様子からは想像も出来ないほどに真剣だ。

「はっきり言って、ルイーズがあそこまでやられる相手なんて普通じゃないです。絶対に一人で挑まないでください」

「まあ、リリアルオーブも持ってるしね」

つまらなそうにいうルイーズをクイーンは、ジロリと睨みつける。

「ルイーズに言ってるつもりなんですけど………あんな無茶本当に二度としないで欲しいです」

「前向きに検討するよ」

「うっわ、なんて信用出来ない言葉でしょう………」

クイーンは、苦虫を噛み潰したような顔をする。

「それより、頼んでいたものは?」

「はい、それなら………」

クイーンは、そう言って懐から紙を取り出す。

ルイーズは、紙を受け取りながらふふと笑う。

「流石。君は、やっぱりこういうの得意だよね」

その紙には、数字と文字が書かれていた。

「『技能予算』………って、なんですか?」

ベイカーは、不思議そうに尋ねる。

「技術職の人間がいる隊には、下りるんですよこの予算。主に隊員の黒匣(ジン)や銃の整備費」

クイーンの説明にベイカーは、頬を引きつらせる。

「いや、ワザワザこんな予算つけなくても研究所の方の予算手厚くした方がいいんじゃないんですか?結局どうしようもなくなったらそこ行くわけですし」

ベイカーの言葉にクイーンは、チッチッチと指を振る。

「今言ったのは、表向きの理由です。本当の理由は、技術職のスキルアップのためのものです。何せ研究所のメンバーとは違って開発が出来ないですから」

技術職の人間は、やはり開発に携わりたいという思いがある。

そのためにはやはり勉強や研究が必要になるのだが、研究所にいない状態でそれをやるのは困難だ。

しかし、現場で経験を積んだ技術職の人間を手放すのも惜しい。

そんな連中を救うためにつけられた予算なのだ。

「まあ、全部ルイーズの受け売りなんですけど」

最後にそう言うと首をかしげる

「それで、どうしてこんなものが必要なんですか?」

ルイーズは、ニヤリと笑う。

「リリアルオーブに近いものを開発する」

一行が息を飲む。

「切り裂きジャックはリリアルオーブを持っている。確保したいなら私達もそれを持たなきゃダメなのだけど………貴重品だから、隊長しか持っていない」

ルイーズは、ニヤリと笑う。

「そこで私は思ったね。無ければ作ればいいと」

「は?」

まさかの言葉にベイカーから間抜けな声が出る。

「お忘れかい?私はもと技術職の人間だよ」

そして、と言ってエラリィの肩に手を置く。

「彼も技術職だ。二人揃えば怖いものなしさ」

「ちょっと、待ってください」

エラリィも目を丸くしながらルイーズを問いただす。

「初耳なんですけど、僕にもそのリリアルオーブの開発に関われって言うつもりですか?」

「つもりも何もそう言ってるんだけど?」

それから更にルイーズは、意地悪くニマニマと笑う。

「あれ?もしかして、出来ないのかい?無理なのかい?不可能なのかい?」

煽るような口調にエラリィの額に血管が浮き出る。

「なんですか?煽ってるんですか?」

「いやいや〜ただの確認だよ〜」

そのイラっとくる口調にエラリィの方からブチッと何かが切れる音がした。

「上等ですよ!!やってやりますよ!!」

エラリィは、バンっと机を叩きながら目に力を込めて言い返す。

「いやいや、エラリィ。そんな見え見えの挑発に乗らなくたって………」

ベイカーがなだめようとすると、エラリィはギロリと睨みつける。

「阿保か!!この挑発に乗れなくて何が研究者だ!何が技術者だ!!」

「お、おう……」

その熱意にたじろぎながらベイカーは、なんとかうなづいた。

「場合によっては、もしかしたら隊員に配布されるかもしれないんですけど………」

「私がいるのに来ると思うかい?」

「まあ、そうですね………」

ベイカーは、気まずそうに目をそらす。

否定出来ないのが悲しいところだ。

それからベイカーは、少しだけ不機嫌そうに尋ねる。

「というか、いい加減本当の事を教えてくださいよ」

「本当のこと?」

首をかしげるルイーズにベイカーは、完全に不機嫌な顔でさらに尋ねる。

「あなたの評判がガタ落ちしたあの事故ですよ」

新聞に載っていたあの事故のことだ。

あの時は踏み込んでくるなと言われたが今、この面子は一連托生だ。

彼らには、聞く権利がある。

ルイーズは、少しだけ遠い目をする。

「ふっ…………風に聞いてくれ」

「部屋の中なんで無風なんですけど」

ベイカーの冷めた言葉にルイーズは、芝居掛かった表情を止め、コホンとせきばらいをすると机の上で両手を組む。

「今は話せない。いずれ時が来たら話そう」

「本当に話すんでしょうね?今際の際とかに話すのなしですからね?」

低くそう返すルイーズにベイカーの冷めた言葉が再び響く。

ルイーズは、ため息をつく。

「あぁ、もう!話さなくちゃいけなくなったら話すよ」

「……………」

「なんだい、その目は!!」

ルイーズの返しにベイカーは、一切信用していない目でジトっと睨む。

クイーンは、そんなベイカーをなだめる。

「まあ、勘弁してあげてくださいです。ルイーズもベイカーのことを信用していないから話さないってわけじゃないので」

申し訳なさそうにいうクイーン。

隣にいたエラリィがベイカーの方を向く。

「まあ、ここは隊長の顔に免じてやるべきじゃないか?」

エラリィが腕を組みながらそう言う。

「う、まあ」

ベイカーもそれを言われると弱いようだ。

ルイーズの友人であり、そして自分達の隊長にあんな顔までさせる訳にはいかない。

「そうだぞー!!うちの隊長困らせるんじゃないぞー!!」

「その代わり私は喋らないですからね。その時が来たらルイーズが喋るんですよ」

調子にのるルイーズにクイーンがピシャリと言う。

そのあまりに有無を言わさない迫力にルイーズは、たじろいだ。

そんなクイーンを見ながらベイカーは、首をかしげる。

「クイーン隊長は、全部知っているんですか?」

「そりゃそうですよ。なんてったその場にいたんですから」

「へ?」

「あ、しまった」

クイーンは、コホンと咳払いをする。

「ま、まあ、私たちの秘密はいいじゃないですか!!いい女に秘密は付き物なんですから!!」

今度はルイーズから贈られるジトっとした目とどす黒いオーラにクイーンは、冷や汗をかきながらバンと机を叩き無理やり話を変える。

「さて!!今後の私たちの拠点ですが」

「ちょっと待ってすごい気になる話が………」

「拠点ですが、ここです!!」

「諦めろ。あぁなったら話してくれないから」

エラリィがベイカーの肩をポンと叩く。

ベイカーは、ため息を吐いて肩を落とす。

そして、辞令を見る。

そこには、『ドヴォール』と書かれていた。

「…………あんまり、いい噂は聞かないところだねぇ」

ルイーズの言葉にコクコクと頷くエラリィとクイーン。

商会との対立がなんどもあるところだとか、何かと黒い噂があるところだ。

まあ、黒い噂のないところなんてないと言われてしまえばそれまでなのだが。

「どんなところなんだろ?」

「俺の実家があります」

「へぇー……………?」

思いもしないベイカーの発言にルイーズが首をかしげる。

「それは驚きだねぇ!」

「なんで、驚くんですか!!俺のあなたの訓練生だったんですよ!!なんで知らないんですか!!」

「えぇ………いやだって、訓練メニューに必要なところ以外どうでも良かったし」

「うっわ!この人信じられない!」

ベイカーが本気でドン引きしていると、ポンと思いついたように手をつく。

「もしかして、君が憲兵を締めたって自慢してたところってここかい?」

「ええ。まあ」

クイーンとルイーズの顔が引きつる。

「どうしました?」

「それ、何年前?」

ルイーズの言葉にベイカーは、指を折る。

「えーっと、今、俺が十六歳の頃だから……二年前ですかね?」

更に二人の顔が暗くなる。

「どうしたんですか?二人とも?」

「君が締めた憲兵と引継ぎが行われる可能性が大きいんだよ」

ルイーズは、うんざりした顔で言う。

何が楽しくて自分達にロクな印象を持っていない人間と話をしなくてはいけなのか。

「まあ、引継ぎの場に行くのはクイーンだけだけど」

「ルイーズも来てくださいです。なんで私だけ気まずい思いなくちゃいけないんですか」

「隊長だからだろう?」

「うわーん。友達が冷たい!!私()唯一の友達のクセに!!」

「すっごい引っかかるんだけど、その言い方!!」

ぎゃあぎゃあと言い合う二人にベイカーもようやく自分の置かれた状況が分かったようだ。

「………俺も行った方がいいかな?」

「余計拗れるからやめた方がいいだろ。それに、ルイーズ……さんも言っていたようにそれは、隊長の仕事だ」

エラリィは、『ルイーズ』のところだけ言いづらそうにしながらそういう。

ベイカーは、了承したように頷く。

「その、ごめんなさいクイーン隊長。早速迷惑をかけちゃったみたいで………」

「本当ですよ!!後、クイーンはとって欲しいです!!隊長だけで十分です!!」

クイーンは、そう喚くだけ喚くと今日何度目か分からない咳払いをする。

「さて、最後ですけどこれだけは話し合ってもらうです」

「話し合い?」

首をかしげるルイーズ。

そんなルイーズにクイーンがビシッと指差す。

「そう、ルイーズの呼び方です!!」

クイーンは、更に続ける。

「今のエラリィの発言で確信したです!!私以外ルイーズの呼び方に悩んでいる、と!!」

クイーンの言葉を聞きながらルイーズは、更に首をかしげながら、エラリィとベイカーの方を向く。

「そう?」

「まあ………」

「えぇ………」

二人とも何とも言えなさそうに頷く。

「え?なんで?」

ルイーズの言葉にベイカーは、居た堪れなさそうに口を開く。

「だって………隊長でなくなったとはいえ、呼び捨てってのもなんか違和感あるし………」

その後をエラリィが引き継ぐ。

「かといってさん付けってのもなんかしっくりこないっていうか……」

元隊長で現隊員という何とも言えない立場にいるルイーズを何と呼べばいいのか完全に迷っていた。

「ね?言った通りでしょう?これが決まらない限り隊が始動で出来ないです」

クイーンの言葉にルイーズは、眠そうな目で手を振る。

「じゃあ、もう呼び捨てでいいよ」

「話聞いてました?違和感あるって言いましたよね?」

面倒くさがるルイーズにベイカーは即答する。

「女の子をさりげなく呼び捨てにするのがモテるコツだよ」

「ヴォルマーノ」

「どうしてそっち?距離を感じるんだけど」

「いや、なんかイラっとしたので……」

「んなこと言ってるから君には、薔薇色の青春が来ないんだよ」

ハッと思いっきり馬鹿にした口調でベイカーをなじる。

ベイカーもそこまで言われて黙っているほど大人しくはない。

「あなたこそ、何かありましたか?薔薇色の青春」

「当然!!告白したこともあるしされた事もあるんだよ!!」

胸を張るルイーズにしらっとした目を向けるベイカー。

「…………付き合わなかったんですか?」

その瞬間、目をそらすルイーズ。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………そのごめんなさい」

その言葉が合図だった。

ルイーズは、ベイカーに掴みかかった。

突然のことにベイカーは、なす術もなく、頬を引っ張られる。

「いひゃいいひゃい」

「謝るじゃあないよ!!まるで私がかわいそうな子みたいじゃないか!!そりゃあ、告白されたのだって相手の罰ゲームだったしぃ!!私が告白した相手だってクイーンと付き合いたからそのための好感度アップのために私に優しくしてただけだしぃ!!唯一付き合った奴なんて私のこと裏切りやがったけどぉ!!」

相当凄惨な恋愛体験を暴露するルイーズのボルテージは、どんどん上がっていく。

「あ、あのルイーズ」

あわあわとしているクイーンではもう止められない。

「そういう君には、何かあるんですくぁ!?私の過去をほじくり返したんだから、胸焼けするぐらいの甘い話じゃないと許さないからねぇ!!」

ひゃんへへすか(何でですか)!!ひゃいひゃい(だいたい)………!」

ベイカーは、そういうと手を振り払ってルイーズをビシッと指差す。

 

 

 

 

 

 

 

 

教官(ヽヽ)が勝手に言い出したことでしょうが!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉にその場の面々は、ピタリと動きが止まった。

ベイカーは、肩で息をしながらそう言った後不思議そうにみる。

「あれ?どうしたんです………」

「ベイカー、今のもう一回」

ルイーズが指を立てながら言う。

「あれ?どうしたんです……」

「もっと前」

「何でですか」

「もうちょい後」

「教官が………あ」

ベイカーもようやく気がついたようだ。

「まあ、やっぱりそれがいちばんだな」

エラリィは、うんうんと頷いている。

「アッハッハッハ!!」

ルイーズは、ついに我慢できなくなり笑い出した。

先ほどまでの怒りも今の一言ですっかり何処かへ消えていってしまった。

「そうだねぇ。まだ、そう呼んでもらえるのは私としてもやっぱり嬉しいよ」

ルイーズは、二人の方を向き直る。

「エラリィ、ベイカー」

二人の呼び掛けるとルイーズは、胸の前に手を置く。

 

 

 

 

 

 

 

「私のことは教官(ヽヽ)と呼びたまえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ベイカーとエラリィは、どちらともなく笑い出した後、大きく頷いた。

クイーンは、満足そうにそれを見ると辞令を懐にしまい、代わりに腕章を取り出す。

「それじゃあ今度こそ!!」

クイーンは、その腕章を自分の腕にはめる。

多少恥ずかしいが言わねばなるまい。

こういうのは、形が大事なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クイーン隊、始動です!!」

 

 

 

 

 





これにて軍事学校でのお話は、終了です!
色々ありましたね………でもね、もっと色々あるからね?


ではまた、外伝20で( ´ ▽ ` )ノ
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