教官   作:takoyaki

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外伝23です


テイルズの新作まだかーー!!




てわけで、どうぞ


「友達からこそ信じられないんです」

「本題だぁ?」

椅子に拘束されながらも男は不敵な余裕を崩さない。

「そ。本題」

ルイーズは、男を指差す。

「何故軍服を盗ったんだい?」

「なんだ?知りたいのか?だが」

「まあ、予想ついてるから別にいいけど」

男が答える前にルイーズは、ぴしゃりと返す。

「詐欺でもいいし、裏で売ってもいいし、使い道なんて腐るほどある」

ルイーズは、そう言って懐からサバイバルナイフを取り出す。

「私が聞きたいのは、一つ」

そう言うとナイフを男に突きつける。

「主犯は、プラートなのかい?」

「………………」

「だんまりか………いいよ、そっちがその気なら」

ルイーズは、そう言って手錠に掴まれている右手にサバイバルナイフを思い切り突き立てた。

「ルイーズ!!何やってるんですか!!」

「ぃ…………ぎ!」

突然の行動にクイーンは、声を荒げる。

赤い液体が男の右手を伝って滴り落ちる。

「早く答えたまえよ」

ルイーズは、ベイカーの言葉にもそんな光景にも顔色一つ変えないで淡々と尋ねる。

激痛に堪えながら男は口を開く。

「っ!!そうだ!!俺たちプラートが考えた!!あいつは関係ない!!」

「へぇ。じゃあ、あの子はプラートじゃあないんだ」

「………!!」

意地悪く笑うルイーズに男は、ハッとした顔になる。

「あの子は協力者、いや、依頼人かな?まあ、どちらでもいいけど」

ルイーズは、そう言うとサバイバルナイフを引き抜く。

「…………!?」

引き抜かれた手には、刺し傷などどこにもなく、小さな赤い打撲のような跡があるだけだった。

「準備の違いとか、動きとか、どうにも同一組織とは思えなくてカマかけてみたんだけど」

訳がわからないという顔をする男にルイーズは、サバイバルナイフの刃先を指で押す。

「当たりだったみたいだねぇ」

すると刃先は、刀身にしまわれ代わりに赤い液体が溢れ出る。

「本当に刺すわけないだろう?バッカだなぁ、君達は」

「ルイーズならやりかねないですからね」

「君、私の友達だよね?」

「友達だからこそ信じられないんです」

クイーンの言葉にルイーズは、引きつり笑いをしながらベイカーを見る。

「なんで、俺を見るんですか……フォローしませんよ」

「みんな冷たい」

ルイーズは、ふくれっ面でそう言うとサバイバルナイフもどきをその辺の椅子に放り投げる。

「つまり、私たちに喧嘩を売る奴が、プラートとは別にいるわけだ」

ルイーズは、そう言うとベイカーに目を向ける。

「警察の資料でも探せば出てくるからかなぁ?」

「きっと見せてくれませんよ。署長がプラートの一員なんですからね。もみ消しきれなかった事件があるかもしれない資料室なんて見せないと思いますよ」

確認を何度しても完璧や絶対に辿り着けないなど、よくあることだ。

もしかしたらあるかもしれない。

そんな資料をわざわざ見せたりしないだろう。

ルイーズは、耳元の茶髪をいじりながら考え込む。

「ふむ…………」

しばらくそんなことをしていたルイーズは、パンと手を叩く。

「まあ、とにもかくにもとりあえず警察だね」

ルイーズの言葉にベイカーは、渋い顔をする。

「話聞いてました?署長もプラートの一員なんですよ。もみ消されますよ」

ベイカーの言葉にルイーズは、ニヤリと笑う。

「だからいいんだよ」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「署長を呼んでください」

クイーンは、警察署の窓口でそう要求する。

「申し訳ありません。アポがないと流石に」

「エレンピオス軍、憲兵部隊隊長のクイーンです。窃盗の疑いでこのプラート(ヽヽヽヽ)の男を捕まえてきたんですけど」

クイーンの言葉に受付の女は、唾を飲み、居住まいを正す。

「………分かりました。署長をお呼びしますので少々お待ちください」

「了解です」

クイーンは、そう言うと奥に消えていった受付嬢を見送りながらルイーズに向き直る。

「本当にプラートと繋がっているんですね、署長」

先程の言動と全然違うその女の行動にクイーンは、そう分析する。

「しかもそれが周知の事実ってのが凄いねぇ」

ルイーズは、呆れたようにそう言うとベイカーの方を向く。

「それで?ベイカー?」

「?」

「いいのかい?このままいけば君の制服が来るの大分後になるよ」

「なんでですか?」

「交渉に使うから」

「微妙に質問に答えてないんですよね……」

ベイカーは、不満げにそう言うと帽子のツバを押さえる。

「今は、これがあれば十分ですよ」

「女の子の物身に付けてご満悦なんて凄い変態だね」

その瞬間ベイカーは、帽子をルイーズの顔面に叩きつけた。

「いったぁっ!!」

「じゃあ、いらなですよ!!返します!!」

「嘘嘘冗談だって!大事に使っておくれよ」

「そんな事言われて付けていられるわけないでしょ!!」

ぎゃあぎゃあとここがどこだか忘れて言い合う二人にエラリィがパンと手を叩く。

「まあ待て、ベイカー。少し整理しよう」

エラリィは、そう言って指を一本立てる。

「ベイカー、ルイーズ教官の年は知っているか?」

「二十二、三どっかその辺じゃなかった?」

「二十超えた人を果たして女の『子』と言っていいのだろうか?」

「…………いや、違うね」

「ちょっと?」

「という事は、お前が身に付けているものは、女の『子』のものではない」

「つまり、俺は女の『子』のものを身に付けている変態ではない!!」

「そう言う事だ」

「おい、クイーン。その手を離したまえ。あの馬鹿二人をこの場で締める」

「嫌ですよ。今回は……というか今回()ルイーズの方が悪いんですから」

部下の凶行をふんじばって止める隊長の鑑のようなクイーン。

「あの………署長が会うとの事ですが………何してるんですか?」

いつの間にやら戻ってきた受付の女性の言葉でようやくここがどこだか思い出した一行は、気まずそうに居住まいを正し署長室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

一行は、扉の前に案内された。

「さて、クイーン。手筈通り頼むよ」

「苦手なんですけどね、こういうの……」

クイーンは、そう言うと部屋をノックした。

どうぞという返事を聞いたクイーンを先頭に一行は、署長室に足を踏み入れた。

「おやおや。軍部?の方達にわざわざ来ていただけるなんて何よりです」

まともな軍服を着ているのがクイーンだけなので、署長は不思議そうに首を傾げながらそう言った。

「いえいえ。少し用事があったので挨拶がてら寄っただけですので、お気になさらず」

クイーンは、そう返すと盗人を引っ張る。

「さて、挨拶はこの辺で。早速本題です」

クイーンは、男を自分の前に立たせる。

「この男は、我々憲兵の制服を盗み逃亡したです。おまけに制服は切り裂かれ無残な状態になってしまい、現在修復中です」

「それはそれは………」

署長はそう気の毒そうに言うと手を広げる。

「分かりました。こちらで処分いたしましょう」

「身柄を渡せとおっしゃるんですか?」

「他にどうするつもりですか?貴女達にそのものを裁くことは出来ないはずですよ?」

「ええ。そうですね。この警察もそうですよね?或いは、裁判もダメですかね?」

「何を言っているのか………」

「この盗人は、プラートだと言いました」

クイーンは、署長の言葉を遮り続ける。

「プラートが何の事か(ヽヽヽヽ)分からないですが、この男のした事は我々も見過ごせないんです」

「何をしようというんですか?」

「本部に報告させていただこうと思っているんですよ。なにせ、制服を盗もうとするなんて、何かクーデターの準備かもしれないですからね」

クイーンは、署長を真っ直ぐ見据える。

署長は狼狽えながらも言葉を続ける。

「待ってください………これは警察の仕事です。軍の方には……」

「『関係ない』とは言わせないですよ。先ほども言ったのですが、この盗人が盗んだのは軍服です。詐欺どころの騒ぎではない。反社会団体のスパイ活動に悪用のされることだってありえたんですよ?」

「し、しかし………」

有無を言わせないクイーンの口調に署長は、目を泳がせながら押され気味だ。

だが、身柄を軍で預ける事には頷かない。

「逆に聞くんですけど、どうしてそこまで警察で処理したいんですか?軍に絡む重要犯罪なのですからこちらに任せた方が楽だと思うんですけど?」

「いや、そうは言ってもですね……こちらにも立場が………」

「なんの立場ですか?」

思わず口を滑らせた署長にクイーンは、更に詰め寄る。

「もう一度聞きます。何の立場ですか?」

「い、いやその」

署長は冷や汗を流しながら更にどうにかして乗り切ろうと必死だ。

プラートの一員である署長としては何としてもこの盗人を逃さないとただではすまない。

だが、軍に介入されるとなればそれはそれでただではすまない。

「まあまあ、隊長」

そんな時、ルイーズの呑気な声が響いた。

「きっと警察としての面子ですよ。何たって、盗難事件を軍に解決してもらったなんて体裁が悪いですもんね?」

「そうそう、そうです!!」

ルイーズの言葉を聞いて署長は、一気に元気になった。

「そう言うわけですから、こちらで身柄を預からせていただきたいんですが……」

「そうは言ってもですね、こちらとしてもこれは見過ごせないんです!」

クイーンは、エメラルド色の瞳を険しくさせながら睨みつける。

「別にいいじゃないですか。ちゃんと裁いてくれるんですから」

「そうですよ。安心してください」

署長はルイーズにこれ幸いとばかりに乗っかる。

「でも、隊長の気持ちも分かります。何せ、ちょっとやらかした事が大きすぎる」

ルイーズは、署長が乗った瞬間にそう言うと一本指を立てる。

「なので、こうしませんか?こちらにも警察にも通報のあった事件をつぶさに報告する。反社会団体の活動の兆候を見逃さないためにも、ね?」

ニヤリと笑いながらルイーズは、詰め寄る。

署長は猿轡を咬まされている盗人をちらりと見る。

盗人は、こくりと頷く。

「分かりました。それなら………」

「あともう一つ」

ルイーズは、すかさず口を挟む。

「事件資料の閲覧許可をいただけますか?」

「………どのようなものでしょう」

「私が見たいと思った事件です。いいでしょうそれぐらい」

渋い顔をする署長。

ベイカーの言った通り、署長としては資料をわたすのを渋っている。

ルイーズは、わざとらしく大きなため息をつく。

「悪い話じゃあないとおもうんですけどねぇ。資料を見せてくれればいいんですから」

嫌な笑みを浮かべながらルイーズは、そう言う。

「分かった。その代わりそちらの身元は、こちらで預かろう」

「そうこなくっちゃ!!」

ルイーズは、懐から一枚の紙を出す。

内容は、資料閲覧許可証だった。

「直筆のサインと印鑑をお願いしますね、署長殿。

何せそんなこと言ってないなんて、言われたらたまらないですから」

ニヤニヤと笑いながらルイーズは、紙を指差す。

署長は、一瞬抜け穴を探したが残念ながらどこにもなかった。

諦めてサインと印鑑を押すとルイーズにその紙を返した。

ルイーズは、クイーンにその許可証を渡す。

クイーンは、中身を確認すると敬礼をする。

「ご協力感謝するです、署長殿。それじゃあ、そこの男はしっかり絞ってください」

そう言ってニヤリと笑うとクイーンは、部屋を出て行った。

ベイカー、エラリィもそれに続く。

最後に残ったルイーズも後に続くように一歩踏み出し、後ろを向く。

「またね」

 

 

 

 

 

 

その言葉を最後に扉は、ゆっくりと閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「ゔー…………疲れたです………」

喫茶店で一息ついた一行は、各々自分の好きなものを注文している。

「なかなかの演技だったねぇ。クイーン」

「ああ言う駆け引きとか苦手なんで勘弁して欲しいです」

「あれ?結構交渉ごと得意じゃん?」

「ああいうひとを騙してコケにする交渉ごとは、苦手なんです…………ルイーズと違って」

疲れ切った顔で不満をブツブツと漏らすクイーン。

「あっはっはっは」

「否定してください」

隣で聞いていたベイカーは、頬を引きつらせながら言う。

そんな面々をコーヒーを飲みながらエラリィは、ルイーズの方を見る。

「それで、教官は何であんな事をしたんですか?」

「切り裂きジャックの手がかりが欲しかったんだよ」

ルイーズの元にサンドウィッチが運ばれてくる。

いただきますと言うとルイーズは、たまごサンドから食べ始めた。

「エレンピオスで起きているんだ。この街でも事件が起きてないとは限らないだろう?」

「つまり、その手がかりを探すためにもこの街で起こった事件を調べるってことですか?」

「まあね」

口をモゴモゴとさせながらルイーズは、そう返事をする。

「切り裂きジャックの事件と処理されていないものも多分あるだろうから、それも含めて調べてみようと思ってるんだ」

そう言いながらルイーズは、更にBLTに手を出す。

「てなわけだから、本部に制服の申請はしばらく出来ないんだよ」

「途中で気づきましたよ。しばらくはこれで過ごします」

本部に報告をしない、そういう条件で資料を閲覧するのだ。

ベイカーの制服の申請をすれば、何故ということを伝えなくてはならなくなる。

「それよりも早く調べましょうよ」

ベイカーの言葉にルイーズは、肩をすくめる。

「まあ、今日はここまでにしよう。やることも多いし、何より最初の閲覧は、隊長名義で行った方が筋が通るってもんだろう?」

「?別に、この後行けばいいじゃないですか。私も行くですよ?」

きょとんとしながらそう言うクイーンにルイーズは、じとっとした目を向ける。

「……君はこれから、引き継ぎだろう?こんなところで油売っていていいのかい?」

「へ?は?あ"あ"あ"あ"あ"あっ!!」

時計を見て奇声をあげたクイーンは、そのまま引き継ぎ会場へと消えた。

全て食べ終えるとルイーズは、両手を合わせる。

「さて、私達は詰所に戻るとするか」

「賛成です」

「異議なし」

三人は、会計をすませるとそのまま詰所へと戻っていった。






今回のニチアサ、コメディパートとの落差が凄いです



では、また外伝24で( ´ ▽ ` )ノ

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