ゴールデンウイークも残すところ後、1日となりました。
私は、部屋の掃除がてら、本を売りに行ったら二時間待ちと言われました。
皆、考えることは同じですね。
てなわけで、どうぞ
「うぅー………やっと引継ぎ終わったです…………」
クイーンは、そう言いながらルイーズ達のいる詰所まで戻ってきた。
「おつかれー」
ルイーズは、ゴーグルを外しながらそんな出迎える。
「ベイカーのことどうしたんだい?」
「まあ、何とか誤魔化しといたです」
「誤魔化せるんだ…………」
ルイーズは、呆れながらそう答える。
「とりあえず、ご飯作っといたから食べたまえ」
「…………誰が作ったんですか?」
「私」
「ごめんなさい。私、ちょっと、あの、あれがそれでこれがどれなんで……」
クイーンは、そういうと先ほどまで疲れが嘘のように機敏な動きで椅子から立ち上がった。
だが、そんなクイーンの肩をルイーズが掴む。
「大丈夫だって、今回はうまく行ったから」
そう言って皿に盛った料理を目の前に置く。
「……………これなんですか?」
真っ黒などろっとした液体が盛られた皿を見ながら聞きづらそうに尋ねる。
「ビーフシチュー」
「何をどう間違えれば真っ黒になるんですか!?」
「いや、普通にレシピ通りに……」
「やってればこんな事ならないです!!何か隠し味を入れたんでしょう!!」
「よく分かったね。実は、木炭を砕いていれたん………」
「馬ッッッッ鹿じゃないですか!?どうしてそんな話になったんですか!!」
「いや、ご飯炊く時に入れるっていうから………」
「ご飯の時はね!!だいたい砕いて入れるもんじゃないですからね!!」
クイーンは、うがー!と頭を掻き毟る。
それからつり目の男がいない事に気付く。
仮にもルイーズの元で教わっていたのなら壊滅的な腕前は知っているはずだ。
「ベイカーは、どこ行ったんですか!?」
「私が料理を作ろうとしたら見回りに行ったよ」
(逃げたんですね…………ベイカー)
クイーンの返答にどっと疲れが襲ってきた。
「何度も言ってるじゃないですか!!ルイーズは、致命的に料理が下手なんですから基本通りに基礎的なものからやって欲しいって!!」
「例えば?」
「例えば、オムレツとか」
「そんな初心者丸出しのも作りたくないなぁ」
「ルイーズは、初心者以下なんですから、そんな事言ってられないでしょう!!」
ルイーズは、げんなりしながら嫌そうな目でクイーンを見る。
「はいはい、分かりましたよ。というか、君は何をそんなに怒っているんだい?」
「ルイーズもいつか言われれば分かるですよ」
もう面倒臭くなったクイーンは、そう言うとキョロキョロと辺りを見回す。
「あれ?エラリィは?」
「私の料理食べたら涙目になって眠りについたよ」
「意識失ってるじゃないですか!!」
慌ててエラリィの元へと走って行った。
◇◇◇◇
「うぅ………」
「うなされてるんですけど、エラリィ……」
布団に運ばれたエラリィは、布団でうなされていた。
ルイーズは、気まずそうに目をそらす。
「うん。これからは、味見するよ」
「逆にしてなかった事に驚きですよ」
クイーンは、ため息を吐きながら一通り処置すると部屋を出た。
部屋を出て扉を閉めるとルイーズは、机を挟んでクイーンに睨まれていた。
「うん。今度から気をつけるよ。エラリィにも後で謝っておくよ」
「本当にお願いですよ」
クイーンは、そう言いつつ試しに一口食べる。
口の中にざりっとした感触が広がりすぐに吐き出した。
「エラリィも飲み込んだ瞬間倒れたんだよね」
「そりゃそうですよ」
ルイーズは、鍋の中身をゴミ箱に捨て、炊事場で洗い始める。
「………リリアルオーブに近いもの作るの難航中ですか?」
鍋の汚れを何とか落とす。
「まあね。この前解析したけど、あれ、人間の技術じゃないよね」
「…………それってまさか」
「さてね」
怪訝そうなクイーンに対して何て事なさそうにルイーズは、肩をすくめる。
「そんなもの作れるんですか?」
「別にリリアルオーブを作らなくたっていいさ。それに匹敵するものを作ればいいんだから。一つ案があるんだ。今はそっち方面で開発中」
ルイーズは、そう言いながら洗剤でゴシゴシと洗い流す。
そして最後は水洗いをする。
「よし」
綺麗になった鍋をコンロにおく。
クイーンは、エラリィが寝込んでいる部屋の方にちらりと目を向ける。
「あんまり………無理させない欲しいです」
ルイーズは、お湯を沸かし始める。
「させるつもりはないよ」
そう言うとカップを二つ取り出す。
「無理をするのは、言い出しっぺの責任さ」
「ルイーズの無茶は心臓に悪いので本当にやめて欲しいです」
そんな話をしているとヤカンがピーっとなり始める。
ルイーズは、ヤカンを取り出すと二つのカップにお湯を注ぎ、少したった後に流しに捨てる。
その後、ティーパックをカップに入れる。
「えーっと………」
台所をあさり温度計を見つけるとヤカンに入れて温度を見る。
「よし」
目的の温度になるとカップにお湯を注ぐ。
徐々に水の色が紅い茶色に染まっていく。
「さて、ティーパックで申し訳ないけど、多分こっちは美味しいよ」
クイーンは、受け取ると飲む。
そして大きなため息を吐いた。
「本当、こっちは美味しいですよね。これを少しでも料理に生かすべきだと私は思うですよ」
「お菓子なら負けないんだけどなぁ……」
「何ですか、その中途半端な女子力」
クイーンは、そう言いながら紅茶を飲みつつ、エラリィの部屋をちらりと見る。
ルイーズは、そんなクイーンを見ながらポツリと何となく尋ねる。
「エラリィのこと気になるかい?」
「へ?あ、いや、まあ、うん」
クイーンは、しどろもどろになりながら、頷く。
目の前のクイーンの様子にルイーズは、首を傾げる。
「んー?」
「な、なんですか?」
たじろぐクイーンに構わず、ルイーズは、紅茶を飲み干し、クイーンに背を向けカップを洗い出す。
「君、もしかしてエラリィのこと好きだったりする?」
大して確信も持たず「今日の夕飯カレー?」ぐらいの軽いノリで聞く。
ルイーズは、自分でそう言っときながら、そりゃないかとケラケラ笑いだす。
何せクイーンの理想からは、あまりに遠すぎる。
エラリィが当てはまるところは残念ながら、どこにもない。
ルイーズは、一頻り笑ってから不審に思う。
クイーンから一切の返答がないのだ。
いやな汗をかきながら勢いよく振り返る。
そこには、顔を真っ赤にしながら紅茶を口から外したところに注いでいるクイーンがいた。
「……………………おい、君、まさか」
流石にルイーズも地雷を踏み抜いた事に気が付いた。
「そんな事はありえませんよ」
口をパクパクとさせながらクイーンが何か言おうとしたのに被せるようにエラリィがそう言った。
「あれ?もう起きたのかい?」
「えぇ。おかげさまで」
疲れ切った顔のエラリィが、眼鏡をかけ直しながら席に着く。
クイーンとは、一人分空けて。
対するクイーンは、ハッとしたように勢いよく立ち上がる。
「じじじゃあ、私は、なんか服が紅茶まみれになっちゃってるんで、ちょっとこれで!!」
そう言うと詰所の自分の部屋へと駆け込んだ。
ルイーズは、その一部始終を見ながらエラリィの方を見る。
「あれ見てもそう思うのかい?」
「えぇ。それと僕にも紅茶をください」
どうでも良さそうにエラリィは、そう言った。
ルイーズは、納得行かなそうに頷きながらティーパックをカップに放り込んでお湯を注ぐ。
「電車での約束、守らなければ良かったです…………何をどうしたらあんなものできるんですか?」
「う、うーん、やっぱりさ、何か個性を出したくなるじゃん?」
「出ていたのは、毒性です」
「君、結構容赦ないよね」
ルイーズは、傷付いた顔をしながらクイーンが置いていったカップを洗う。
「ねぇ、前から思っていたこと聞いてもいいかい?」
「僕が断っても聞いてくるでしょう?」
エラリィは、諦めながらそう言う。
ルイーズは、洗剤を水で流すとカップを洗いカゴに置き振り返る。
「クイーンと一言も会話していないように見えたのって気のせい?」
ルイーズの質問にエラリィは、少しだけ目を伏せる。
「……………気のせいじゃないです」
ルイーズは、少しだけ声を落とす。
「……クイーンのこと嫌いかい?」
「……………」
エラリィは、紅茶を持つ手に力を込める。
「……………ねぇ、どうしてこの隊に入ってくれたんだい?だって、クイーンが隊長なんだよ?『嫌いか』と聞かれて即答出来ないような人が隊長なんだよ?」
『好きか』と聞かれて即答出来ないのとは訳が違う。
エラリィは、ルイーズを睨み返す。
「教官がいたからじゃダメですか?」
「そんな嘘臭い甘い言葉で誤魔化されるほど安い女じゃあないよ」
ルイーズは、真っ直ぐにエラリィを見据える。
「嘘を吐くことには慣れているんだ。嘘を見抜くことにも慣れっこだよ」
ルイーズのその視線に耐えられなくなったエラリィは、再び俯く。
「……………教官には関係ない話です」
エラリィは、そう言うと紅茶のカップを流しに置いた。
「もう少し開発してます」
そう言うと食堂から出て行った。
食堂にルイーズだけがポツンと残された。
「やれやれ、何だかイヤーな感じだなぁ…………」
ルイーズは、台拭きを濡らすと机の上を拭く。
単純だと思っていた人間関係に思わぬ一面を見てしまったルイーズは、苦虫を噛んだ顔をしている。
ルイーズではどうにも出来ない部分が多い。
だが、逆に言えばどうにか出来るところが少しはあるということだ。
「……………少し考えるか…………いやだけど」
人の感情に関わることほど嫌なことはない。
面倒だし、苦しいしロクなことはない。
関わりたくないというのが本音だ。
しかし、その度にあのエラリィの辛そうな顔が呼び起こされるのだ。
「クイーン隊の隊員だからね。他人事じゃいられないね」
ルイーズは、そう言うと耳元の茶髪をいじりはじめた。
次の瞬間、ルイーズのGHSが鳴り響く。
画面にはベイカーの文字が映し出されていた。
ルイーズは、舌打ちを一回するとGHSに出る。
「もしもし?」
『切り裂きジャックが現れました!!現在交戦中!!至急応援お願いします!!』
どこまで、人を不幸にする料理、それがルイーズの作る残念料理です。
ではまた、外伝25で( ´ ▽ ` )ノ