教官   作:takoyaki

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外伝27です。


五月も半ばを過ぎ暑くなりましたね、と言おうと思ったらまた涼しくなってきましたね…………


てなわけで、どうぞ


「流石、面倒臭いポンコツスイーツ女はいう事が違うね」

「やれやれ、とりあえず破傷風じゃなくて良かったね」

翌日、一行は、ベイカーの見舞いに来ていた。

クイーンとエラリィは、うんうんと頷いている。

「ええまあ。それは同意しますけど」

病院のベッドの上でベイカーは、頷きながら側で腰掛けているルイーズを睨む。

「それよりも教官、狙われてることを知ってたってどういうことですか?」

「えー………言わなきゃダメ?」

「どうしていいと思えるんですか」

もっともなベイカーの言い分にルイーズは、ため息を吐く。

「私はこう見えて優秀な技術者だったんだよ?奴らが求めてる技術がどの程度レベルかまでは、分からないけど、恐らく相当力になると思うんだ」

「……………そんな優秀な技術者がどうしてここにいるかって言うのを毎回聞いてるんですけど答えてくれないんですね」

「だから、実験の事故のせいだっていてるじゃあないか」

「……………」

そんなことを言うルイーズをベイカーは、胡散臭そうに睨む。

ルイーズは、目をそらした後コホンと咳払いをする。

「まあ、とにかくだ。私が狙いってのが分かったのは進歩だよね」

「進まないよりはいい程度の話ですけどね」

ベイカーの言葉にルイーズは、肩をすくめる。

「そんなことよりベイカー。事件のことを私たちに教えておくれよ」

「…………ざっとの概要でいいですか?」

「ダメ。何を喋っていたのか漏らさず話しておくれ」

ふざけた様子から一転、真面目な調子でルイーズは、ベイカーにそう告げた。

ベイカーは、仕方なそうに昨晩の出来事を全て話した。

全てを聞き終えたエラリィは、感心したように頷く。

「教官相手に不意打ちを仕掛けていたのが、役に立ったな」

「人生何が何処で役に立つか分からないね」

そう言いながらため息を吐くベイカーの背中をクイーンがバンと叩く。

「流石、ルイーズの一番弟子ですね」

クイーンは、そう褒めながらルイーズの方を向くと、当の本人は、耳元の茶髪をいじりながら眠そうな目を中に泳がせていた。

「なーんか、違和感があるんだよなぁ……」

ルイーズは、そう言ってしばらく考え込んだ後、耳元の茶髪から手を離す。

「そっか、セリフが変なんだ」

「セリフ?」

首を傾げるクイーンにルイーズは、頷く。

「ベイカー、確かに切り裂きジャックは、命乞いをしてきた相手に『うーん………そうも言ってられないんだな……これが』って言ったんだね?」

「はい」

「何処か変ですか?断ってるだけですよね?」

エラリィの返答にルイーズは、指を突きつける。

「私が、君にこう言ったらなんて答える?例えば………『サンオイルスターを見るのをやめたまえ』とか」

「嫌です」

「だよねぇ」

ルイーズは、そう言って今度はクイーンに指を向ける。

「余り聞きたくないけど、君が疲れているのに私達の分の料理を作っている時、ベイカーにこう言われたらなんて答える?」

そう言って咳払いをする。

「『隊長疲れてるみたいですし、ルイーズ教官に作らせらたらいいじゃないですか?』」

「『そうも言ってられないんですよ』………あ!」

クイーンは、何かに気が付いた。

ルイーズは、ニヤリと笑う。

「そう、楽しんでいるものなら、拒否だけの台詞が出てくる。

提案に対して添えない理由がある場合のみその言葉が出てくるんだ」

もちろんと言葉を続ける。

「提案に添えない理由がある場合でも拒否だけのセリフは出ることはできる。

でも、逆はない」

ルイーズの説明にベイカーは、首を傾げる。

「つまりどういうことですか?」

「切り裂きジャックは、快楽殺人者なんかじゃない。何らかの目的があって殺している」

クイーンは、ルイーズのその言葉を聞いて、スゥっと目を細める。

「ルイーズ、言ってる意味分かってるんですか?

被害者の中に軍属の人間がいるんですよ。その人間達が目的を持って殺されたっていうのが、何を意味するか分かってるんですか?」

ただの怨恨などではない。

最悪クーデターだってありえる。

「もちろん」

ルイーズのそのしたり顔を見てクイーンは、ため息を吐く。

「ハァ…………信じたくないですけど、信じるですよ」

「おや、友達だからこそ信じられないって前、言ってなかったっけ?」

「友達だからこそ信じられるんですよ」

クイーンは、そう言って肩をすくめる。

「ルイーズの実力()確かですからね」

ルイーズは、きょとんとした後ニヤリと笑う。

「それじゃあ、隊長。今後の捜査方針を」

クイーンは、その言葉を聞いた瞬間腕章を少し引っ張る。

「これからは、二つの方面から当たってください」

クイーンは、戸惑う面々を他所にそう言うと指を二つ立てる。

「一つ目、天候、日付、殺害の順番、状況、そこから共通点を探してください」

「何でだい?」

クイーンの質問にルイーズは、片眉を上げる。

「快楽殺人者の場合、何らかのルールのもと殺人を行なっている場合があるからです」

クイーンの指摘にルイーズは、ふむと考える。

「一理あるねぇ……確かにその場合も断ることに理由が存在する」

ルイーズは、ニヤリと笑う。

「なるほど、盲点だったよ。流石、隊長」

「ルイーズには負けるんですけどね」

そう言うと指をもう一本立てる。

「二つ目は被害者周辺の洗い出しです。

どんな人間だったのか?周囲の人間は?何かトラブルを抱えていなかったのか?」

「…………容疑者に対しての捜査ってことですか………」

ベイカーの質問にルイーズは、頷く。

「そういう事。被害者の共通点、それさえ分かれば、神出鬼没のの切り裂きジャックの行動が読めるようになる」

ベイカーは、ベッドの上で考えをまとめる。

「つまり、被害者の共通点と状況の共通点、その二つから探せってことですか?」

「そう言うことです」

クイーンはそう言いながら頷く。

「とりあえず、私とルイーズで被害者の共通点を探すので、エラリィとベイカーは状況の共通点を探してください」

ルイーズは、その提案に少しだけ眉をひそめる。

クイーンは、それに気付かないフリをして、更に指示を出す。

「それじゃあ、ベイカー、退院次第二人で捜査に当たってください」

「それじゃあ、エラリィ、見張り頼んだよ」

ルイーズは、そう言うと病室を出て行った。

「見張り?」

「お前、切り裂きジャックに襲われたの忘れたのか?」

「…………報復にくるの?」

「さあな」

「……….ねぇ、夜中トイレに行きたくなったら何でもいいから歌ってくれない?」

「牛が売られる奴でいいか?」

「いいわけないだろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「あの…………ルイーズ、怒ってるんですか?」

「…………別に」

ルイーズは、そう返しながらドヴォールの資料室で街で起こった切り裂きジャックの事件を探している。

被害者の名前を片っ端から書き出していく。

(これ、ガチの奴です………)

ルイーズは、そう言いながら目を合わせない。

「あの…………怒ってるんですよね?何がそんなに………」

「君は分かってるんだろう?」

「やっぱり怒ってるじゃないですか。何が『別に』ですか。面倒臭い彼女みたいなこと言わないでください」

「流石、面倒臭いポンコツスイーツ女は言うことが違うね」

飛び出す毒を含む発言にクイーンは、居心地悪そうにする。

ルイーズの毒も自分に後ろ暗いところがなければ怒れる。

だが、後ろ暗いところがあれば逆だ。

少しずつ静かになっていく。

そう、クイーンはちゃんとルイーズが何に怒っているか分かっている。

「…………班割ですよね」

「他にあるかい?」

「ないです…………」

ルイーズは、一切目を合わせない。

クイーンは、場を和ませようと必死に笑顔を作る。

「あれですか!!やっぱり、ベイカーと一緒に捜査したかったんですか!?

ひゅうひゅうお熱いで」

「エラリィと捜査したかったな」

ルイーズの言葉にクイーンは、ピタッと止まりルイーズを見る。

ルイーズは真顔のままクイーンを見ている。

「それは…………その本気ですか?」

クイーンは本当に恐る恐る尋ねる。

ルイーズは、そんなクイーンの顔を見るとニヤリと底意地の悪い笑みを浮かべる。

「嘘だよ」

「……………心臓に悪いのでやめてください」

「何でだい?」

「え?」

「何で、私がエラリィと捜査したいって言うと君の心臓に悪いんだい?」

「それは…………」

顔を真っ赤にして黙り込んでしまうクイーン。

そんなクイーンを見てルイーズは、大きくため息を吐く。

「まあ、意地悪はこの辺にしてあげるよ」

ルイーズはそう言って捜査資料に付箋を貼って閉じる。

「班割だけど、二つ納得出来ないところがある」

指を二つ立てながらルイーズは続ける。

「一つ、過去の話とはいえ、私は教官だ。だから、班割としては君と私がそれぞれエラリィかベイカーのどちらかと組むのが普通だ。でないと、彼らに成長がない」

先輩と後輩を組ませるのは当然だ。

特にこの隊は隊長と隊長並みの実力者が合わせて二人いるのだ。

新人隊員と組ませない理由はない。

「もう一つ、エラリィを捜査の人手と数えたところ。

忘れてないと思うけど、彼は技術者として入っている。捜査に関わらせるのは筋違いだと思うよ」

「でも、状況が状況ですし、そんなことを言っている場合じゃ………」

「私は別に関わらせるなとは言っていないよ。筋を通せと言っているんだ」

ルイーズは、ノートを閉じる。

「せめて、こういうべきだ。『技術者として入っている貴方には申し訳ありませんが捜査に協力してくれませんか?』とか」

「………上官に言われたら断れないじゃないですか、そんなの」

「断れる断れないは問題じゃないよ。一言付けるのが筋だって話をしているんだよ」

ルイーズはそう言って更に続ける。

「君がそれに気付かないとは思えないんだけどねぇ………」

「……………」

クイーンは、黙って俯く。

ルイーズの言う通りだ。

全部クイーンは、理解していたし、そして、そう出来なかった理由も自覚していた。

「………あんまり好きじゃないんだけど」

俯くクイーンに対してルイーズは、そう前置きをしてから続ける。

「話しておくれよ。君とエラリィのことを。私が見て来た限り君たちは一言も会話をしていない」

「ルイーズに話せば解決するんですか?」

「少なくとも君がもやもやとしているよりはね」

ルイーズは、少しだけ厳しい口調になる。

「何せ君は解決しようとしていないのだもの」

その言葉にクイーンは、グゥの音も出ない。

実際その通りなのだ。

これ以上悪化するのを恐れてしまいクイーンは、行動出来てない。

解決したい(ヽヽヽ)とは思っていても解決しよう(ヽヽヽ)とはしていないのだ。

「クイーンもエラリィも私の事を信じてくれた人達だ。そんな二人がそんな風なのは正直嫌だよ」

不満げな口調でそう言うルイーズにクイーンは、目をパチクリとさせる。

「ありがとうです、ルイーズ」

でも、と言葉を続ける。

「そこは、『大切な人達』のほうがしっくりると私は思うのですけどね?」

「自惚れてんじゃあないよ、ポンコツスイーツ女」

ジトッとした目で言い返すルイーズ。

そんなルイーズを見ておかしくなったクイーンはクスリと笑う。

 

 

 

 

 

「えぇ。分かったですよ。ルイーズの赤面(ヽヽ)に負けて話してあげるです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………フン」

 

 

 

 

 

ルイーズは、不満そうに鼻を鳴らした。






デレてはきてるけど、基本的にクイーン相手だけですね………




では、また外伝28で( ´ ▽ ` )ノ
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