教官   作:takoyaki

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外伝3です。
遅くなりまして大変申し訳ありません!!
もう一年以上が経ちますね………


ええ、何とか勘を取り戻しつつ進めていきますので、どうか一つ!




てなわけで、どうぞ







「美人なのに何ですか?」

「部隊ね………」

ベイカーは、食堂に着くと紙と睨み合っていた。

悩むベイカーの前にエラリィが陣取る。

「どんなことが書いてある?」

エラリィの質問にベイカーは、紙を渡す。

「仕事内容とそれに伴う希望部隊か………」

そう言いつつエラリィは、ニヤリと笑う。

「なるほど。悩むのは、これが理由か」

そう言ってエラリィは、隊長の名前を指差す。

隊長の中にルイーズ・ヴォルマーノの文字があった。

とんかつ定食を突きながらベイカーは、頷く。

「教官が隊長やるなんて聞いてないよ」

「まあ、教官やって隊長というのがよくある流れらしいぞ」

「へぇ。それは知らなかった」

「聞いてなかったの間違いだろ」

エラリィは、さらりと毒を吐き、再び説明に戻る。

「教官と訓練生というのは、連携が取れているから、半分ぐらいは、自分の教官が隊長のところに入隊するらしい」

「………残り半分は?」

「やはり、合う合わないはどうしてもあるし、後は自分のやりたい仕事を目指したいと言うのもあるから、別の隊に入るらしい」

「なるほど………」

ベイカーは、説明を聞いてもう一度隊長の名前を見る。

やはり爛々と輝くのは、ルイーズの文字だ。

「あの人の下で働いたら、俺はどうなるんだろ………」

ガタガタ震えながら答えるベイカーをエラリィは、面白そうに笑っている。

そんなエラリィを見てベイカーは、顔をしかめる。

「というか、お前知ってたでしょ!!」

「当然だ。お前より早く貰っていたんだからな」

「というか、なんで知ってんの!?お前、技師でしょ!!黒匣(ジン)の研究するような奴がどうして、部隊要望を受けてるの!?」

ベイカーの言葉にエラリィは、ため息を吐く。

「技術屋でも二つある。一つは、お前の想像通り、新しい黒匣(ジン)等の兵器開発部門。そして、もう一つは、部隊の黒匣(ジン)メンテナンス部門だ」

「へぇ。知らなかった」

「何度でも言うが、聞いていなかったの間違いだ」

午前の訓練を丸々サボったベイカーは、知らなくて当然だ。

エラリィの毒にベイカーは、口をへの字しながらもぐもぐととんかつを食べる。

「どこにしようかな…………ま!俺は成績上位者だからな!どこ行ったって余裕だけど」

「そうだな。中の上だって、言い方変えれば上位だよな」

「おいやめろ、どうして人の精一杯の誤魔化しを真っ先に潰すの?」

「見苦しいから」

淡々と返すエラリィの言葉がベイカーの心をえぐる。

ベイカーは、悲しそうな顔をしながらもう一度隊の一覧を見る。

「クイーン教官のところなら、無事に過ごせるかな………」

「止めとけ。お前の友人や知り合いを紹介しろとせがんでくるぞ」

エラリィの言葉にベイカーは、苦笑いを浮かべる。

ずっとルイーズに背後から一撃を加えようと様子を伺っていたベイカーは、あの頭の悪い会話をすべて聞いていた。

「美人なのにね…………」

「美人なのに何ですか?」

聞き覚えのある敬語に思わず隣に顔を向けると、そこには噂のクイーンがいた。

ベイカーは、掴んでいたとんかつをぽとりと落とした。

「さあさあ、ベイカー訓練生続きは何ですか?」

クイーンの瞳はその言葉で終わらしたらタダでは、済まさないとかたっていた

「美人なのに………」

「うんうん」

「か、可愛いからモテるんじゃないですか」

「そう言うことは目をそらさないか、顔を赤らめながら言わないとモテないですよ」

目をそらし、青白い顔で更に引きつった笑顔浮かべているベイカー。

そんなベイカーにクイーンのモテないという言葉が、刺さる。

「そ、それはともかく、ルイーズ教官とは一緒ではないんですか?」

その言葉に今度は、クイーンが押し黙る。

「教官?」

「……最近、ルイーズに部屋以外で会わないんですよ。おまけに会ってもロクに喋ってくれないですし」

「……避けてるんですか?クイーン教官のことを?」

ベイカーの言葉をクイーンは、ため息を吐く。

「えぇ。まあ、理由は想像できるんですけど……」

「?」

ベイカーは、頭にはてなマークを浮かべる。

クイーンは、少し重々しく頷く。

「まあ、ベイカーもよく考えた方がいいですよ」

「はぁ、まあ、言われなくても考えますけど………」

「えぇ。もう直ぐ昼休み終わりですから、ペース配分考えた方がいいですよ」

「もっと早く言ってください!!」

ベイカーは、大慌てで残りのトンカツをかきこんだ。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

(うぇっぷ、気持ち悪い………)

ベイカーは、午後の訓練開始前。

訓練生達の前でルイーズは、ちらちらと自分の後ろにある時計を見ている。

どうやらまだ、開始時間ではないようなので、待っているようだった。

かきこんで消化しきれないとんかつがベイカーの中で不快感、いや、存在感を放っていた。

周りのメンバーは、部隊をどこにするかと言うような話で盛り上がっていた。

ベイカーは、気持ち悪くてそれに参加する余裕などどこにもなかった。

たまに話を振られても、おお、だとか、あぁ、だとか雑な返ししか出来ない。

「なあ、今日は、訓練休んだ方がいいんじゃないのか?具合悪そうだし」

一人、そんな風に声をかけてくれる訓練生がいた。

確かに普通に具合が悪かったら確かに休んだだろう。

だが、トンカツの胸焼けで具合が悪いなどベイカーのプライドが許さない。

「もしかして、ルイーズ教官の罰が怖いのか?」

「いや……ちが」

否定しようとするベイカーに構わず、その訓練生は、馬鹿にするように鼻で笑う。

臆病と笑われたと感じたベイカーは、思わずムッとして言い返そうとする。

「まあ、今の内だけだ。だから、今だけ耐えとけばいいんだよ」

そんなベイカーに構わず訓練生は、そう返す。

「?お、おお」

思わぬ言葉にベイカーは、喉元まで出かかった言葉が消えた。

(何だ、今変な違和感があったような気がしたけど……)

そんな話をしているとルイーズは、自分の後ろにある時計を見て時間を計る。

そして、パンと手を叩く。

少し遅れて、訓練生のお喋りが止まった。

「さて、それじゃあ、始めるよ」

そう言って手元の資料を見る。

「まずは、連絡事項。部隊希望調査表は、今週いっぱいまでだから忘れないように。希望を締め切った後は、上層がそれを元に配属を考える期間に入る。

その間は、君達の自主練時間だ。しっかりね。

つまり、ここにいる面々と顔を付き合わせるのも今週まで。しっかり、頑張るように」

ルイーズは、そう言うと指を一本立てる。

「さて、話を戻して、今日の訓練の話だ。君達には、この前から大分走り込んでもらってるけれど」

いつもの調子で説明をする、ルイーズ。

「今回から、この荷物を背負って走ってもらうよ」

いつも通りのはずだ。

(だけど、何だ……この違和感は?)

「君たちの大好きな実戦の戦場で身一つで行進なんてありえないからねぇ」

(気のせいかな?)

「てなわけで、体力つけてもらう意味も込めて、これを背負って十周走ってもらうよ!さあ、それぞれカバンをとりたまえ」

訓練生達は、それそれぞれカバンを背負う。

全員背負ったのを確認したルイーズは、号令をかける。

「それじゃあ、位置について、はじめ!!」

皆一斉に走り出した。

ベイカーは、自分のペース配分で走る。

周りはそれぞれグループを作りながら楽しそうに走っている。

ベイカーは、それらに混ざらず走り続ける。

賭けてもいいが、今の状態で喋りながら走ったら吐く。

楽しそうなお喋りを聞きながら、ベイカーは、今日の出来事を思い返していた。

(絶対に何かあるはずなんだけどなぁ)

何かが変なのだ。

だが、何が変なのか分からない。

目を合わせないというのもそうだが、それだけではない。

(………考え過ぎかな?みんなこんな和やかに訓練しているんだし)

そう思いながらベイカーは、自分の後ろで和やかに話す面々を見る。

そして、再び前を向いてベイカーは、ようやく気が付いた。

(俺の前に誰もいない?)

ベイカーは、決して抜きん出て実力があるわけではない。

エラリィも言っていたが、よく言えば、上位。

悪く言えば中の上、それがベイカーの実力だ。

そんなベイカーの前を誰も走っていない。

(まあ、話しながらやってれば、そんなもんか)

そう誰とも喋らず黙々と走るベイカーは、トップを走っていた。

少しずつベイカーのテンションがあがっていく。

(いけるんじゃないか?今回ばかりは、俺が………!)

「俺がトップだー!!」

いつの間にやら声に出ていたベイカーは、順調にスピードを上げていった。

もう中の上などと言わせない。

正真正銘の上位だ。

(行ける!行けるぞー!!)

「見てろよ!エラリィ!!」

次の瞬間ベイカーは、足を挫いて倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 





馬鹿がアホやってます。



さて、遂にニチアサ8時も終わってしまいましたね。
毎週最終回のような盛り上がりと言っていましたが、本当に最終回を迎えてしまいました。
寂しいですが、それでも自分の中で傑作といっても過言ではないです!!

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