教官   作:takoyaki

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外伝41です。


とりあえず、平成生まれの私が考えたことのないことは、ふっかつの呪文が書かれたメモの保管場所です


てなわけでどうぞ!!


「さもないと、今日は私が料理を作る」

「いやぁ、申し訳ない!!まさか、息子の教官だったとは!!」

「いえいえ、分かればいいんですよ」

「全然良くないんですけど…………なんか、ケツに穴が空いてる気がする」

「それはもともとだよ」

青白い顔をして横たわるベイカーにルイーズは、にべもなくそう告げる。

「それにしても、全員同じところで寝泊まりとは………驚きです」

「まあ、私たち待遇が悪いので」

因みにルイーズは、さっさと誤解を解いた。

「そっか…………息子にも遂に春が来たかと思ったんですが………」

「まあ、人生はこれから先長いですから」

ルイーズは、適当にそう答えながら出されたクッキーに手を付ける。

「あ、紹介が遅れましたね。僕は、ピーター、ピーター・ドイルです」

そう言って握手を求める。

ルイーズは、食べようとしていたクッキーを置いて手を差し出す。

「ルイーズ・ヴォルマーノです。よろしく」

ルイーズは、握手に答えるとその後置いておいたクッキーを食べる。

食べながらちらりとピーターを見る。

「今日はお休みですか?」

「えぇ。たまたま有給が取れたので色々聞きたいことがあったので電話したんです」

そう言ってため息を吐く。

「ベイカー、父さんお前がドヴォール勤務になったって聞いてないんだけど」

「………………」

ようやく起き上がったベイカーは、気まずそうに目をそらす。

「おまけに最近、怪我して入院したんだって?」

「……………いや、まあ………うん……」

「連絡欲しかったな…………」

「…………してなかったのかい?」

ルイーズは、片眉を上げてベイカーを見る。

「ま、まあ」

「感心しないねぇ」

「教官に言われたくないです」

「………………」

今度はルイーズが目をそらす。

ベイカーは、ぼそりと弁明する。

「だって…………父さん仕事してるだろうし………」

「変な気を使うんじゃないよ」

少しだけ厳し声で叱る。

ベイカーは、居心地悪そうに身体を揺らしてからぺこりと頭を下げる。

「ごめんなさい」

「よし」

ピーターは、そう頷く。

「それで、こっちにはどれくらいいるの?」

「今週いっぱい」

「……………まあ、顔出しただけ良しとするか………」

ピーターは、大きくため息を吐く。

そんな少しぎこちない親子の会話の中更に居心地の悪そうなルイーズは、クッキーをボリボリと食べている。

そんなルイーズに気付いたピーターは、罰が悪そうに頭をかく。

「いやぁ、すいません……」

「いえいえ。お気になさらず」

顔の前でを手を振ってルイーズは、立ち上がる。

「あの、すいません。洗面所どこですか?クッキーが歯についてしまったので口を濯ぎたくて……」

「あぁ、それなら廊下を出た右ですよ」

「ありがとうございます」

ルイーズは、そう言って洗面所へと向かった。

そこには、男物の歯ブラシが一つ。

大分広がっているがそれしかない。

「ふぅん」

ルイーズは、蛇口をひねり水を手でため、口に含んでゆすぐ。

濯ぎ終わったルイーズは、そのまま戻る。

「どうも、ありがとうございました」

「いえいえ」

席に戻ったルイーズは、机の上にあるクッキーをじっと見つめる。

「ベイカー、ゼリーが食べたい」

「え?

「買ってきたまえ」

「は?」

「さもないと、今日は私が料理を作る」

「ぶどう味でいいですね」

ベイカーは、スクと立ち上がると家を出ていった。

それを見てピーターは、少しポカンとする。

ベイカーが完全に出て行くとルイーズは、軽く肩をすくめる。

「ま、あの子がいたんじゃ言いづらいこともあるでしょう?」

「言いづらいこと?」

「そ。私がね、貴方に言いづらい………いや、聞き辛いと言った方が正確かな?」

「…………何を言いたいんですか?」

ピーターの質問にルイーズは、クッキーをボリボリと食べながら口を開く

ルイーズは、クッキーを二つ手に取る。

「ベイカーの母親は?」

ピーターは、瞬間息を飲んだ。

だが、予想はしていたようだ。思ったより動揺していない。

ルイーズは、片方のクッキーを食べる。

ルイーズの指摘にピーターは、首を傾げる。

「入隊の成績は聞いているんですけど、流石に家族構成までは知らないですよ。私は人事部じゃあないので」

不思議そうなピーターにルイーズは、そう説明した。

「母親は、ベイカーを置いて去りました」

ルイーズは、眉をひそめる。

ピーターは、少しだけ自嘲気味に笑う。

「その女性と私は付き合っていました。こちらとしては将来を誓いあった仲でした。でも…………」

ピーターは、そこで言葉を切って自分のところにある紅茶を飲む。

「彼女は、結婚(ヽヽ)していた。それを知ったのは彼女の旦那さんが乗り込んで来た時でした」

ルイーズは、ピーターから視線をそらさずに話を聞く。

「正直、その時は、旦那さんの汚い言葉よりもショックの方が大きくて、何を言われたか覚えていないです」

ピーターは、肩をすくめながらそう言った。

「そして、それから五年後、彼女は再び僕の前に現れました。ベイカーを連れてね」

ピーターは、そこで言葉を切る。

「『貴方の子供だから貴方に育てる義務がある』と」

ルイーズは、話を聞きながら不愉快そうに顔を歪めた。

そして、一つの結論にたどり着く。

「なるほど、子どもが生まれて自分の特徴がどこにもなければ、そりゃ旦那さんも気付きますね」

「えぇ。私も何故あの時、乗り込んで来たのかようやく理解できました」

ルイーズは、耳元の髪をいじりながら考え込む。

「何故、五年後なのかは分かりませんでしたけど」

ピーターは、肩をすくめる。

そんなピーターを見ながら今度はルイーズが不思議そうに首をかしげる。

「それで、ベイカーを育てたんですか?」

「えぇ。言っている人間は間違っていますが言っていることは正しいので」

ルイーズは納得がいかなそうな顔だ。

そんなルイーズの顔を見てピーターは苦笑する。

「気持ちはお察ししますよ、正直、僕も迷わなかったと言えば嘘になります。

施設に預けようとも思いました」

「でも、『育てた』…………自分の人生を犠牲にして、それでも彼を『育てた』……何でですか?」

「さあ、何ででしょうね…………」

ピーターは、懐かしむように笑う。

そんなピーターを見てルイーズは、首を傾げるばかりだ。

「まあ、結局のところ、私は骨の髄まであの子の父親だったということでしょう」

ピーターは、何気なくそう言った後、ルイーズの方を見る。

「きっと、貴方にもわかる時が来ますよ」

「まず、相手がいないですけど」

ルイーズは、肩をすくめる。

すると、ベイカーが同じタイミングで戻ったてきた。

「お、戻ってきたねぇ」

そう言うとルイーズは、立ち上がった。

「さて、私は帰るよ。誤解も解けたみたいだしね」

「あ、待ってください、俺も」

「いいよ、来なくて。私の残務処理をするためなんだから」

「いや、だったらなおさら……」

「いいから。たまには親子水入らずの時間を過ごしたまえ」

ルイーズは、そう言ってぶどう味のゼリーをベイカーから無理やり奪い、代わりにお金を渡して玄関に行く。

「それじゃあ、ピーターさん。また」

「えぇ。また、来てください」

ルイーズは、ぺこりと頭を下げてピーターのうちを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、美味しい」

夕食を食べ終えたルイーズは、ベイカーに買ってきてもらったぶどう味のゼリーを談話室で食べていた。

エラリィとクイーンは、さっさとそれぞれの寝室で寝ていた。

ルイーズは、談話室でポツンと競りをつついている。

「戻りました」

すると、ベイカーが戻ってきた。

「おかえり〜」

ルイーズは、間延びした様子でそう返した。

談話室に戻ったベイカーは、ルームウェアに身を包みダラっとした様子でゼリーを食べているルイーズを見て目を丸くする。

「もしかして、俺が帰るの待ってたんですか?」

「んー………まあね」

ルイーズは、ベイカーと目を合わさずにそう答える。

「何か後ろめたいことでもあるんですか?」

ルイーズは、大きくため息をつく。

「君、やっぱり聞いてたねぇ?」

「当然です」

ベイカーはルイーズの前に座る。

ルイーズは、缶詰のようなブドウをすくっている。

「…………謝らないんですね」

「君だって私の両親のこと聞いたろう?お互い様だよお互い様」

ルイーズは詫びれずにそう返す。

言いたいことは山ほどあるが、ぶどうを掘り当てることに忙しいルイーズには、何を言っても無駄だ。

「というか、教官、人事部の人と繋がりなんてないですよね?」

「ないよ………というか、嫌われてるし」

「じゃあ、なんで俺に母親がいないこと知ってるんですか?」

ルイーズは、ブドウを口に放り込む。

「使用中の歯ブラシの数が足りないんだよ。夫婦で住んでいるなら、二つはあるはずだろう?なのに洗面所に行ったら一つしかなかった」

「………………もしかして、歯にクッキーがついたのって?」

「嘘だよ。まあ、カモフラージュとして口をゆすいどいたけど」

ルイーズは最後の一口を口に放り込む。

「どうにも奥さんの影が見えないからね、念のため確かめに行ったんだ」

ルイーズは空になった容器を流しに持っていく。

淡々と真実を当てていくルイーズにベイカーは、拳を少しだけ握り込み俯く。

ルイーズのあげた軍帽が落ちる。

「………………俺は、父さんが苦手です」

ルイーズは、綺麗に洗ったゼリーの容器を流し台に置いて振り返る。

「苦手?何でまた?」

「………………俺のせいであの人は、人生を、夢を犠牲にしたんです」

「夢?」

「父さんは、ピアノの演奏者でした」

その言葉が出た瞬間ルイーズは、目を丸くする。

「教官?どうしたんですか?」

「いや、部屋にピアノなんてあったっけなぁ、と思ってさ」

「父さんの書斎にあります」

今回通されたのは、リビングだ。

「口ゆすぐふりして見に行けば良かった」

「………………」

「冗談だよ」

「教官のは冗談に聞こえないんですよ」

ベイカーは、ため息を一つつく。

ルイーズは、不思議そうに首を傾げる。

「でも、それが夢を諦めることと、どう繋がるんだい?」

ルイーズの質問にベイカーは、肩をすくめる。

「父さんはそんなに人気の演奏者ではありませんでした。でも、自分だけなら何とか生きていける程度には、売れていました」

ルイーズの顔が少しだけ曇る。

「なるほどねぇ君が来たから彼は自分だけ(ヽヽヽヽ)というわけにはいかなくなった、と」

「えぇ」

ベイカーは、寂しそうにそう話した。

「それは何ともやりきれないねぇ」

ルイーズは、大きくため息を吐く。

「ところでさ、ベイカー」

「はい?」

耳元の髪を弄るのを止め、ルイーズはベイカーを指差す。

「………その話、君は誰から聞いたんだい?」

ルイーズは、さらに続ける。

「今日会ったけど、彼はどう考えたって、そんな話を子どもにするような人じゃあないはずだけど?」

「ある時、封筒が送られてきたんです。その中には、父さんのポスターと今言ったことが書いてある手紙がありました」

「送り主は、誰だい?」

「書いてありませんでした」

「そのこと、君はピーターさんに聞いたのかい?」

「聞けるわけないでしょ………」

「なら、嘘か本当かは………」

「少なくとも父さんは、そこまで人気のない演奏者だったことは確かです。そこは、調べたんですから」

そう言ってルイーズを見る。

「なら、その先だって事実のはずです」

「………ま、否定はしないよ。今の話を聞いた限りなら君の推理は正しい。ピーターさんは、夢を犠牲にして君を育てた」

ルイーズは欠伸をしながら立ち上がる。

もう、大分いい時間だ。

「でもね、ベイカー。ピーターさんは、そこまでしてでも君を育てようとしたんだ。だから、苦手なんて言っちゃダメだ」

ルイーズは、落ちている軍帽をベイカーの頭に乗せる。

「ありがとうって言ってあげなきゃ」

「でも───」

「少なくとも、ピーターさんは、君に罪悪感を感じて欲しいと思って育てたわけじゃあないはずだよ」

ルイーズはベイカーの反論を遮ってそれだけ言うと立ち上がり、自分の寝室に向かう。

「………それじゃあ、おやすみ」

その言葉とともにルイーズは、談話室を出て行った。

誰もいなくなった談話室でベイカーは、ため息を吐き椅子に深くもたれかかる。

「それが出来れば苦労はないんですけどね」

誰に聞かせるわけでもなくベイカーは、机の上だけ明るい部屋でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「『ピアノ』に『ピーター』かぁ…………」

ルイーズは、ベッドの上で窓の外で輝く月に想いを馳せる。

枕元にはアイフリードの航海日誌上巻。

 

 

 

 

 

「また、懐かしいこと思い出しちゃったなぁ…………」

そう独りごちるとそのまま夢の世界へと落ちていった。







新しいライダー始まりましたね!


さて、今回で事後処理編は終了です!
色々ありましたが、次回に続きますよ!!

ではまた、外伝42で( ´ ▽ ` )ノ
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