教官   作:takoyaki

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外伝43です


連続投稿ですので、お気に入りから来た方はお気をつけください。




最後の挨拶
「誰がマイナスだってぇ〜?」


「おぉ!!今回の詰所は綺麗だねぇ」

数日後、ルイーズ達はトリグラフの詰所に来ていた。

荷物を置きながら詰所を見回す。

確かにあのドヴォールとは違い綺麗な家だ。

うきうきとしているルイーズの隣で、クイーンはぐったりとしている。

「どうした?クイーン隊長?」

エラリィの言葉にクイーンは、ため息を吐く。

「引き継ぎに疲れたんです」

対して時間の経たないうちに引き継ぎだ。

おまけにルイーズのやったことなど微妙にグレーなことをぼかして伝えなければならず、クイーンの苦労は尋常ではなかった。

「私も手伝ったろう?書類作りはほぼやったし」

「まあ、その点は感謝してるですけど」

「隊長、騙されちゃダメですよ。プラスマイナスゼロなんですから」

「誰がマイナスだってぇ〜?」

「いひゃいいひゃい」

ルイーズは、引きつった笑顔でベイカーの頬を引っ張った。

「さて、まずは地元の警察へ挨拶して、生活必需品を買って、それと食事当番も決めないとですね…………」

「とりあえず、今日は私がご飯を作ろうか?」

『『絶対ダメです!!』』

「えー………」

一斉に否定されルイーズは、不満そうに口を尖らせる。

「どいつこいつも舌が子供だよなぁ………」

「そういう問題じゃなくて………というかルイーズにだけは、言われたくないです。ブラックコーヒーは、飲めるようになったんですか?」

「砂糖は小さじ一までで我慢できるようになったよ」

「それは、ブラックコーヒーとは言わないです」

そんなことを言っているとルイーズのGHSが震えだした。

ルイーズは、ポケットから取りだして電話に出る。

液晶にはリーフの文字があった。

「もしもし?」

『おや。今回は出ましたね』

「…………まあ、何言われるか分かったもんじゃないし………」

震える声でそういうルイーズにリーフは、続ける。

『それより、ルイーズ。貴女これからトリグラフ勤務なのでしょう?』

「まあ」

『いったんうちに来てください。渡したいものがあるので』

「渡したいもの?」

『はい、びっくりしますよ。必ず来てくださいね』

そこで電話は終わった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

荷物を置いたルイーズは、実家に来た。

「………で、なんで君たちまで来ているんだい?」

後ろにはクイーン、ベイカー、エラリィが付いてきている。

「いや、どんなものか興味ありますし」

ベイカーの言葉にクイーンは手を挙げる。

「それにこの前、会えなかったので久々にあいさつしたいんです!」

「この前?」

「あの入院した時の話ですよ。ベイカーに聞きましたけど二人とも来たんですよね?」

「入院…………?」

その時に思い出したのは、モーリスが見せてくれたあのメールだ。

「ふっ」

「あ、何ですか!!その笑みは!!」

「いや、別にぃ〜〜……そっかそっかぁ」

意地の悪い笑みを浮かべながらルイーズは、家の呼び鈴を鳴らす。

たいして待つこともなく扉が開き、リーフが現れた。

「おや、思ったより早かったですね」

そして、ルイーズ以外の面子がいることにもたいして動じず中へ案内する。

リビングには、ルイーズの子供時代に使われていたであろうカバンが飾られている。

ヴォルマーノの名札が貼り付けられたカバンが目に入ったルイーズは、嫌そうに顔を歪める。

「まだ、このカバン飾ってるのかい?」

「なら、貴女が捨てますか?」

「う…………」

6年間、雨の日も風の日も背中にいた、ある意味で相棒のような存在だ。

この世にこれほどいらないけれど捨てられないものはないだろう。

リーフの軽やかな物言いにルイーズは、ため息をついてリビングに目を向ける。

リビングには、モーリスが新聞を読んでいた。

「そう言えば、リーフさん!私達新聞に載ったんですよ」

新聞を見て得意げに胸を張るクイーン。

「あら?そうなんですか?」

「えぇ~……見てないんですか」

不満そうなクイーンにリーフは、眉尻を下げて謝る。

「ごめんなさいね。あまり新聞を読む習慣がなくて……」

「新聞どころか本だって読まないじゃん」

「そんなことありませんよ。これでも、料理本なら読みます」

不服そうにそう言った後リーフは、何故か少しだけ自慢げに言う。

ルイーズは、頬を引きつらせるているとモーリスが新聞から顔を上げた。

「来たか、ルイーズ……………にありゃ、クイーンちゃん達まで!?」

「はい、この前は挨拶出来ず、すいませんでした」

「いいんじゃよ、写真送ってくれたしな」

「写真…………………あ!!」

クイーンは、モーリスの言葉でようやくルイーズの言いたかった事が分かった。

そう肩を寄せ合い仲よさそうに撮ったあの写真をクイーンは、一時のテンションに身を任せてモーリスに送ったのだ。

ルイーズは、ニヤニヤと笑っている。

「い、い、いや、アレはその…………」

「クイーン隊長…………まさか」

頬の引きつっているエラリィにクイーンは、慌てる。

「一時のテンションに身を任せるとこうなるよね、うんうん」

ルイーズは、隣で頷いている。

「み、見たんですか!?」

「さあ、どうだろうねぇ」

ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべるルイーズの横でベイカーは、首を傾げる。

「どんな写真何ですか?」

「お、ベイカー、興味あるか?」

そう言ってモーリスは、GHSを開こうとする。

「そんなことより!!ルイーズに渡したいものがあったんですよね!ね!」

「お、お、おう」

必死の形相で詰め寄るクイーンにモーリスは、そう答えるしかなかった。

ルイーズは、つまらなそうにため息をつく。

「ちぇ、もう少しだったのになぁ」

「何くだらないことやってるんですか」

そういうルイーズの頭にリーフが封筒を一つ置く。

「今日はこれを取りに来たんでしょう?」

そう言われたルイーズは、頭に乗った封筒を確認する。

「これ、私の?」

「えぇ。開けてみてください」

ルイーズは、不思議そうに封筒を開けるとそこには鍵が入っていた。

「鍵?」

隣でベイカーが首を傾げる。

クイーンとエラリィも首を傾げる。

「これ、どこの?」

ルイーズの質問にリーフは、安楽椅子に腰掛け、紅茶を飲み始めた。

「『アイフリード』と言えばわかりますね」

ルイーズは、目を丸くする。

「来たのかい!!ここに!!」

「いいえ。十二年たったら渡してほしいと私たちが頼まれていたんです」

「何で十二年?」

「十年が懲役期間じゃからな。二年は、安全策じゃろ」

ルイーズは、手のひらにある鍵をしばらく見る。

「教官?」

ルイーズは、とても大切そうにきゅっと鍵を握り締めた。

「ありがとう、じいちゃん、ばあちゃん。ちょっと行ってくる」

「おう」

「えぇ」

にっこりと笑う二人にルイーズは、手を振ると玄関まで歩いていく。

「え、ちょ、教官!」

ベイカーの呼びかけでルイーズは、彼らと一緒に来ていたことを思い出した。

「そっか、いたね」

ルイーズは、少し考えた後、振り返る。

「君達も来たまえ」

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと」

とあるアパートに辿り着いたルイーズは、部屋の扉に鍵を入れる。

だが、

「あれ?開かない」

「えぇー…………」

思わず気の抜けた呆れた声のでるベイカーに構わず、ルイーズは耳元の髪をいじる。

「…………まさか」

ルイーズは、そう言って隣の部屋に鍵を差す。

すると今度はカチンという音とも鍵が開いた。

「なんか、分かってきたぞ」

ルイーズは、そう言って扉を開き、部屋の中に入る。

その後ろについてベイカー達も入る。

入った瞬間まず目に入るのはその本の量だ。

辺り一面にそれこそまるで壁のように本棚が並びそこに本がびっしりと入っている。

「何ですか、ここ?」

「うーん、まあ、趣味の部屋かな?」

クイーンの質問にルイーズは、答えながら奥の部屋に入る。

部屋の中にもやっぱり本が所狭しと並んでいた。

そして、中央には四つの足がある箱があった。

箱の上には、真っ赤なベレー帽が置いてある。

「へぇ、置いていったんだ………」

そのベレー帽をどかすとそこには先ほど同じ封筒が置いてあった。

封筒の中には便箋が一枚入っていた。

ルイーズは、深呼吸をして便箋に目を通す。

「何て書いてあるんですか?」

「読んでくださいよ」

「プライベートな内容なら別にいいですけど」

三者三様に好き勝手なことを言う面々にルイーズは、ため息を吐いて読み始めた。

「『久しぶりってことになるかな?まあ、私にとっては昨日のことなんだけどね。色々、書きたいんだけど、書き出すとキリがないから用件だけ伝えるね。

 

 

 

 

 

ルイーズ、あなたにこの図書館をあげるよ…………』は?」

 

 

 

 

 

 

 

その文章にルイーズは、思わず便箋を落としそうになった。

ルイーズは、続きを読み始める。

「 『実はね、この部屋だけは買い取ってあるんだ。だから、いつか時が来たら誰かに渡そうと思っていたんだ。そこでモーリスさんとリーフさんに頼んでルイーズが大人になったら渡してくれるように頼んだんだ』………ごめん、一回深呼吸させて」

「いいですけど…………」

エラリィの答えを聞くとルイーズは、もう一回大きく深呼吸をして読み始める。

ちょっと理解が追いつかない。

「よし!『もちろん迷惑だったら売ってもいいよ。どう処分しようとルイーズの自由だよ。まあ、そこら辺はお任せ。あくまで、私が渡したいってだけの話だから………と、便箋も終わりに近づいてきちゃった。最後の挨拶は、散々やったから、ここでは今更書かないよ。それじゃあ、君の人生に幸の多からんことを』…………ふうん。なるほどねぇ」

そこで手紙は終わっていた。

「教官?」

その少し寂しそうで、でもとても懐かしそうなその表情をしているルイーズにベイカーは、思わず声をかけた。

「ん?あぁ、別にどうってことないよ」

そう言って帽子を被る。

「どう?似合う?」

「うーん、どうでしょう?」

「えぇー………」

ベイカーの言葉にルイーズは、ため息を吐いて帽子を置く。

「これを機会にズボンではなく、スカートを履いたらどうですか?案外似合うかもしれないですよ?」

「えぇーひらひらして、動きづらいし、やだ」

ルイーズは、ぶぅと不満そうに口を膨らませる。

そして、それぞれの顔を見る。

「まあ、聞きたいことは分かるよ」

ルイーズは、そう言って手紙をひらひらと振る。

「これを書いた人だろう?」

「後、教官とはどんな関係だったんですか?」

ベイカーの質問にルイーズは、腕を組む。

「さて、なんと答えたものか…………」

「え?ちゃんと答えるつもりなんですか?」

エラリィが本気で驚いた声をあげる。

ルイーズは、肩をすくませる。

「ま、たまにはね。いつも本当のことを言わないと思われるのも癪だし………」

ルイーズは、そう言ってネクタイを少しだけ緩める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、話してあげるよ。これは、まだ私がクイーンと出会う前の話だ」







また過去編です!!気長にお付き合いいただけるとありがたいです!!


では、また外伝44で
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