教官   作:takoyaki

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外伝47です



やっぱり、年内完結は無理かも…………


てなわけでどうぞ


「あぁ、もう!!いい歳こいて何悪ふざけやってるんだい!!」

「さてと、」

ルイーズは、カバンに家に持ち帰るべき教科書を詰めていく。

あれから数日が経った。

ルイーズは、両手を合わせて弾くことはマスターした。

しかし、音楽というのは、それだけではない。

テンポ、強弱などなど。音楽を構成する要素を出来るようにしていかなければならない。

「昨日連絡入れたし、準備してるだろうなぁ」

そんなわけで、練習するためにまたアイフリードの家にいくのだ。

アイフリードは、今日はお休みなので、直接おいでよとルイーズを誘ったのだ。

荷物をまとめ終えたルイーズが教室を出ようとすると、先日の男子たちが扉の前で通せんぼをしていた。

「何?」

「ここは通せませーん。通りたかったら10,000ガルド払ってくださーい」

コメカミがひくつくのがわかった。

この前の意趣返しだろう。

思わず立ち尽くしてしまったルイーズのカバンを別の男子が引っ張り、ルイーズはそのまま床に転ばされた。

「いった〜…………」

打ち付けた尻を撫でながら睨みつける。

「何するんだい?」

「俺の教科書とか捨てたこと謝れよ!!」

「もう謝ったじゃん。それに君たちも私の本をとったろう?」

ルイーズは、立ち上がってパンパンと埃を払う。

「るさい!!」

一人がルイーズを突き飛ばす。

再び態勢を崩しそうになるが、なんとか堪える。

「俺たちは、あの後、先生に怒られたんだよ!!」

「そんなこと言われても…………」

ルイーズは、心底困った顔でそう答える。

「だから、ここを通りたかったら10,000ガルドな!!」

「いや、持ってないし…………」

「じゃあ、一生通れませーん!!」

間延びしたその声にルイーズは、首をかしげる。

「じゃあ、君たちも帰れないの?」

不思議そうなルイーズの声に男子たちは、ピタリと動きを止める。

ルイーズを一生通さないのなら、足止めしている男子達も一生帰れない。

男子たちは、ボソボソと相談し始めた。

「あ、あと、そろそろ先生戻ってくるよ?」

先生の行く道も塞ぐことになる。

どうなるかは、火を見るよりも明らかだ。

男子たちは、ルイーズを再び突き飛ばし、そのまま各々捨台詞を吐いて教室を後にした。

ルイーズは、よろめきながらも何とかこらえた。

「よし、今度こそ」

アイフリードの家を目指してルイーズは、歩き始めた。

学校から直接向かうのはルイーズも初めてだ。

「えぇっと、ここを行けばあそこに出るはずだから」

ルイーズは、頭の中で地図を広げながらアイフリードの家に辿り着く。

家に着いたルイーズは、呼び鈴を鳴らす。

しかし、なんの反応もない。

「おや?」

ルイーズは、もう一度鳴らしてみる。

「………………」

だが、やはり何の反応もない。

「どこか行ったのかねぇ」

試しにドアノブに手をかけて回すと、何の抵抗もなく扉が開いた。

「え?」

突然のことにルイーズは、思わず間抜けな声が出た。

「開いているなら中で待たせても〜らお」

勝手なことを言いながら部屋に入るルイーズ。

そんなルイーズの足に何かが当たる。

ルイーズは、足に当たったものを見ようと視線を落とす。

 

 

 

 

 

そこには、寝間着姿のアイフリードが倒れていた。

 

 

 

 

 

 

「お姉さん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

ぱっと見は、風邪のようだ。

しかし、ルイーズ一人ではどうにもならないので、早々に電話を掛けた。

電話に出たリーフは、直ぐに向かうと返事をした。

返事を受けたルイーズは、部屋の鍵をかけアイフリードの看病をしている。

目の前には、布団をかけられたアイフリード。

本当ならベッドに運べれば良かったのだが、十歳のルイーズには、流石に無理だった。

ルイーズは、仕方なくベッドから掛け布団を持ってきて床に倒れているアイフリードに掛けた。

荒い呼吸で額に脂汗を浮かべているその辛そうなアイフリードの額に濡れたタオルを置く。

「お姉さん………」

布団から出ている手を握る。

弱々しくアイフリードが握り返した。

「───()

「え?」

(ゴメンね)……ゴメンね」

うわ言のように呟くアイフリードの手をルイーズは、優しく撫でる。

「いいよ。練習ぐらいいつでも出来る」

そう言って、腕をまくって汗を拭こうとしたルイーズは、ピタリとその手を止めた。

「…………………何……これ?」

普段隠れていたその腕にあったのは痛々しいまでの傷跡。

それも一つや二つではない。数えるのが馬鹿馬鹿しくなるような数の傷跡が、そこにはあった。

そんな事をしているとチャイムが微かに聞こえた。

その音でルイーズは、現実に戻ってきた。、

「ばあちゃん来たのか、早いねぇ」

しかし、いつまで経っても部屋に入ってこない。

「……………あ、もしかして、隣の部屋かな?」

そうアイフリードは、部屋を二つ借りている。

一つは、本のためだけの部屋。

そして、もう一つが今、ルイーズたちのいる部屋だ。

「はぁ………仕方ない」

ルイーズは、ため息を一つ吐いて出て行こうとする。

しかし、そのルイーズの手をアイフリードが握って離さない。

無理やり解けば起きてしまうかもしれない。

そうこうしているうちにチャイムが連打され始めた。

「あぁ、もう!!いい歳こいて何悪ふざけやっているんだい!!」

ルイーズは、何とか体を伸ばして近くにある電話に手を伸ばし、リーフのGHSにかける。

スリーコールの後、リーフが出た。

『はい?』

「あ、ばあちゃん。私、ルイーズ」

『おや、どうしました?』

「どうしましたじゃなくて、お姉さんの部屋は隣だよ」

『あなたは、何を言っているんですか?』

「いや、ばあちゃんこそ何やってるんだい?インターホン連打なんて、近所迷惑だよ」

ルイーズの呆れた声にリーフは、しばらく沈黙する。

「…………ばあちゃん?」

『ルイーズ。結論から言います』

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私はまだ、アイフリードの部屋に来ていません、勿論おじいさんも』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………へ?」

ルイーズから思わず間抜けな声が出た。

「じ、じゃあ、さっきからずっとインターホン鳴らしてるのは誰?」

ルイーズは、自身の声が震えているのを感じていた。

この時、ルイーズは初めて怖いと思った。

幽霊の話や化け物の話なら何度も読んだ。

だが、今起こっていることは現実で何より、原因は人間だ。

インターホンは鳴り止むことなく、そして、どんどん鳴り響く。

そして、ピタリと音が止む。

「止ん…………だ?」

次の瞬間、今度は、アイフリード本来の部屋のインターホンが鳴り始めた。

「────!!」

思わず息を飲んだルイーズに構わず、インターホンは止まることなく鳴り始める。

「ば、ばあちゃん………!!」

『ルイーズ。鍵をかけてできるだけ扉から離れなさい。そして、一切出てはダメです』

リーフから指示を受けている間もインターホンに止まる様子はない。

「鍵…………?」

そこでルイーズは、思い出した。

確かに鍵は掛けた。

だが、チェーンは掛けていない。

「ヤバイ!」

ルイーズは、アイフリードの手を振りほどき慌てて扉にチェーンをかける。

チェーンをかけ終えたルイーズは、ホッと胸をなでおろす。

インターホンも鳴り止んだ。

(諦めて、帰った?)

「良かっ────」

次の瞬間、扉が叩かれた。

ドンドンと、まるで太鼓でも叩くように連続で扉を打ち鳴らす。

その威嚇のような音にルイーズは、思わずへたり込んだ。

そうチェーンをかけに行ったのは良かったのだが、その音が扉の向こうまで聞こえてしまった。

結果、外にいる相手に中に人がいると教えてしまったのだ。

すっかり腰が抜けてしまったルイーズは、這って電話まで戻る。

「ば、ばあちゃん!今度は扉を叩きだして……………?」

そう言った矢先、扉を叩く音が止まる。

そして、今度は鍵からガチャガチャという音がし始めた。

(まさか…………!?)

「ヤバイ………!!ばあちゃん。今度は、ピッキングしようとしてる!」

『チェーンは?』

「さっきかけたけど………」

『なら大丈夫………いや、鍵のかかる部屋に逃げなさい』

「わ、分かった!」

ルイーズは、アイフリードを揺する。

「お姉さん、お姉さんってば!」

「─────ん?」

熱でぼんやりした顔のアイフリードが目を開けた。

「なんか、誰かが扉を………」

カチンという音ともに鍵が開いた。

そして、開けようとして今度はチェーンに引っかかった。

「ね、ねぇお姉さん、鍵のかかる部屋ってどこ?」

「……………付いてきて」

フラフラとした足取りでアイフリードは、歩く。

その後ろをルイーズは、支えながらついていく。

そして部屋に入るとアイフリードは、鍵をかけ、机の前にテーブルを置いた。

作業を終えたアイフリードは、床にへたり込んでしまった。

「お姉さん!!」

「ゴメンね………巻き込んじゃったね……」

「いいよ。それより、今の人は誰?」

「…………あいつは……」

喋ろうとしたアイフリードは頭を揺らして上半身を床になげだした。

「お姉さん!!」

元々体調の良くなかったアイフリードは再び意識を手放した。

その時、扉の向こうでガキンという音が聞こえた。

そして、扉が開く。

(まさか…………チェーンを切った?)

床を革靴が叩く音が部屋に響く。

それは、つまり、扉の外にいた男が侵入した事を意味している。

(ヤバイ!!)

ルイーズは、漏れそうになる息を押さえるため口を両手で押さえる。

足音は止まらない。

(来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな)

ピタリと止まる。

そして、ドアノブが動いた。

「────!!」

鍵がルイーズたちのいる部屋を守る。

扉の向こう側にいる人間は、再びドアを蹴り出した。

威嚇ではなく、蹴破るために。

息を潜め入って来るなと祈り続けるルイーズ。

だが、それは届かない。

 

 

 

 

 

 

 

扉は、蹴破られた。

 

 

 

 

倒れた扉の陰から現れたその男を見た瞬間、ルイーズは思わず息を飲んだ。

虚ろなその瞳に何が写っているのか、ルイーズからでは判別出来なかった。

「ここにいたか………」

そう呟くと男はアイフリードに歩みを進める。

「ま、待って!!この人、具合が悪いんだ!」

「知ってる。だからきた」

「看病?」

「似たようなものだ」

「だったら、その手に持った包丁を置いてよ」

ルイーズは、震えながらも目の前の男を睨みつける。

そんなルイーズに対し男は不思議そうに首をかしげる。

「何故?」

「何故って、必要ないだいろう?」

「そうか?皮を剥くのに使うだろ?」

男はそう言って包丁の刃を触る。

「リンゴの?」

「何言ってるんだ?リンゴの皮なんて剥くわけないだろ?」

ルイーズは、声が震えるのを押さえるために唾を飲む。

「………なら、何の?」

男は出来の悪い生徒を前にしたようにため息を吐く。

 

 

 

 

 

 

 

「皮っつたら皮膚だろ?」

 

 

 

 

 

 

 

「へ?」

一瞬、この男が何を言っているかわからなかった。

「つーか、お前、普通に話しかけてきてるけど、誰だ?」

「何でこっちが名乗らなきゃいけないんだい?」

「はっはっはっ」

乾いた笑いを浮かべた瞬間男はルイーズに切りかかった。

迫る包丁にルイーズは、身動きが取れない。

その脈絡のない行動はルイーズでは、予測できなかったのだ。

思わず目を瞑るルイーズ。

だが、いつまで経ってもルイーズに痛みは襲ってこない。

恐る恐る目を開けるとそこには、腕を血だらけにしたアイフリードがいた。

「お………むぐぅ!」

ルイーズが何か言う前にアイフリードは、無事な手でルイーズの口をふさぐ。

「逃げて……こいつに常識とか良識とかそんなものないから………」

そう言って口から手を離す。

「でも!!」

「あるぜ、良識ぐらい。食事の前には手を洗うし、ストレスはたまらないように適度に息抜きもする」

ルイーズとアイフリードの会話に心外そうに男はそう呟いた。

「お前が何処かに行ってから俺のストレスは溜まる一方だ。おかしいよな?人を不健康な状態に追い込むなんて、とても人間のやることとは思えないな」

腕に刺さる刃物にさらに力を込める。

「────っ!!」

アイフリードの虚ろな瞳が細くなる。

「ぅはははは!!いい顔だぁ!!俺のストレスが消えていく」

「お……むぐぉぅ!」

再びルイーズの口をふさぐ。

アイフリードの腕からは流れる血が掛け布団を赤く染めていく。

熱と痛みで噴き出る汗のせいでアイフリードの額に髪が張り付く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、なら、儂のストレスも消してもらおうかのう」

 

 

 

 

 

 

 

 

ルイーズは、声のした方に目を移す。

「娘に刃を向けてニヤニヤ笑ってじゃない!!」

どこかで聞いたことのある声と共に男は、壁に叩きつけられた。

「──じいちゃん!!」

気付けばルイーズは、叫んでいた。

「ってめぇ…………うぐっ!」

モーリスは、それに構わず男が立ち上がるより早く懐から手錠を出して、その両腕を拘束し地面に押し付けた。

「不法侵入及び傷害の容疑で逮捕する。なお、お前には黙秘権がある。

取り調べの供述は法廷で不利な証拠として用いられる場合がある。

君には取り調べの時に弁護士の立ち会いを求める権利がある。

もし、経済的な理由で弁護士が呼べないのなら、公選弁護人をつけてもらう権利がある………っと、こんなところか」

ふぅっと大きくため息を吐くとそのまま男に腰を下ろした。

「じいちゃん!!」

「おぉ、ルイーズ。無事じゃったか!」

「うん、でも…………!!」

ルイーズの視線の先には血だらけになっているアイフリードがいる。

モーリスは、そのへんの布を千切って傷口に巻く。

「安心せい。ばあさんから連絡が来てすぐに応援と医者を呼んである」

「いや、それはいいんですけど………」

脂汗を浮かべながら、アイフリードはモーリスを見る。

「モーリスさんもどうしてそんなもの持っているんですか?」

「?だって、儂警察官じゃし?」

制服に身を包んだモーリスが予備の手錠を回しながらそう答えた。








看病回だと思った?
残念でした!!



ではまた外伝48で( ´ ▽ ` )ノ
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