教官   作:takoyaki

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外伝60です


遅くなりました!!


てなわけで、どうぞ


「ノーコメントで」

「────!!」

クイーンは、慌てて振り返る。

振り返って目に入ったのは、見覚えのある仮面だ。

(切り裂きジャック………)

黒い作業用のエプロンのポケットをちらりと見る。

その中には作業用としてハサミが入っている。

手に取り、カバーを取るまで五秒もあれば事足りる。

そう見構えていると、切り裂きジャックは、クイーンに背を向けて走り出した。

「へ?」

まさかの行動に一瞬だけ動きが止まった。

そして、ようやく状況に脳が追いついてきた。

「ま、待つです!!」

慌ててクイーンは、切り裂きジャックを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

「逃がさないです!!」

足にかかるエプロンを膝で蹴りながらクイーンは、目の前を走る切り裂きジャックを追いかける。

授業中のおかげで幸い廊下には誰もいない。

走る切り裂きジャックは、目の前の廊下をしきりに曲がって逃げている。

(私を撒こうとしてるようですね)

この動きは、見たことがある。

ベイカーの制服を盗んだプラートが行なったのと同じ動き。

(地の利がある人間の動きです………)

つまり、それがさすことは、

(間違いなく、この学校の人間)

クイーンは、両脚に力を込める。

(ここで捕まえればルイーズを狙う人間が減る)

クイーンの頭の中には、エラリィの持ってきた案内図が広がっている。

クイーンは、切り裂きジャックを追わず階段を飛び降りた。

一瞬目を離してしまう。

だが、それは本当にその一瞬だ。

その一瞬を代償にクイーンは、切り裂きジャックの前に現れた。

クイーンを撒くことが出来たと一息ついていた切り裂きジャックは、とつぜん現れたクイーンに一瞬固まった。

クイーンは、切り裂きジャックに足払いを掛けて態勢を崩す。

態勢の崩れた切り裂きジャックをクイーンは、地面に押し付けた。

「さぁて、お顔拝見です!」

クイーンがそう言って剥ぎ取った仮面の下から現れた顔。

昨晩の会議を思い出す。

その中にルイーズが提出した容疑者の顔写真があったはずだ。

「えーっと、確か、リッパー?」

切り裂きジャック、リッパーは、顔をそらす。

「………まあ、いいです。とりあえず、警察ですね」

「ま、待って!!」

クイーンの『警察』という言葉にリッパーは、慌てだした。

「何ですか?ただの模倣犯ですか?なら、担任の先生ですね」

「ち、違う!!」

「じゃあ、何ですか?」

「そ、それは、その、えっと、」

「後十秒以内に答えないとそのまま警察です。はい、十九八七」

「げ、下駄箱に入ってたんだよ!!」

「え?」

クイーンのカウントが止まる。

「……………どういうことですか」

「え、えっと、その」

「六五四」

「げ、下駄箱開けたら、中にこの衣装と、この手紙が入ってたんだよ」

そう言って渡される手紙を受け取る。

『お前の秘密を知っている』

手紙にはそう書かれていた。

「……………それで、秘密って?」

「い、言えるわけないだろ!!」

「まあ、どうせ恋愛沙汰ですね」

「……………………」

驚いた顔でこちらを見るリッパー。

クイーンとしては、適当に言ったつもりだったのだが、どうやら図星だったようだ。

先ほどの威勢はどこへやら。どうやらこっちが本来の彼なのだろう。

 リッパーは、おどおどとしてながら目を泳がせた後、意を決したように口を開く。

「じ、実は、僕、友達の彼女の」

「ストップ!それ以上は、聞きたくないです。それより、これを指示した紙はどこにあるんですか?」

「い、いや、燃やせって書いてあったから燃やしたけど………」

「なら、何て書いてあったんですか?」

「こ、この格好をして、誰かに話かけろって…………」

「どうして、私に話しかけたんですか?」

「だ、だって、新しく来た人だから、僕の顔なんて知らないと思ったし………」

実はルイーズの報告のおかげで誰より知っていたのだが。

それより、先ほど少しだけ引っかかるところがあった。

「…………あれ?友達いるんですか?」

「そ、そりゃあ、いるよ」

「だって、クラスの中で一人いつもノートを塗りつぶしてるって」

「ノ、ノートじゃない。画用紙!色をごちゃごちゃ塗った上に黒いクレヨンを塗ってそれを削ると綺麗な模様になるんだよ!ぼ、僕の友達も同じ事をやる部活に入ってるんだ」

「あ〜なるほど……………」

予想外のオチにクイーンから思わずため息が出る。

「で、そ、その友達の彼女のことが」

「聞きたくないと言ったはずです」

「た、頼むよ、先生。他に相談できる人いないんだよ」

「他にいるでしょう!!」

「い、いないよ!!だって、友達だってそいつしかいないし」

何が楽しくて悩みの種に相談しなくてはならないのだ。

 「えぇー……………」

色恋沙汰の話はクイーンとしても大好物だが、重いのはゴメンだ。

しかし、仮にも今は教師。

そして、過去には教官もやっている。

ならば、それなりの対応をしなければならない。

「……………それで、相談って?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「というわけで、唯一の友達の彼女の事を好きになってしまった場合ってどうすればいいですか?」

「知りませんよ」

そんなわけで今日の会議、クイーンの発言にベイカーが冷たい声で突っ込む。

そして、机を両手で叩いて立ち上がる。

「というか、教官も隊長も報告でコントしないでください!!」

「ルイーズと違って好きでこんなことしてるわけじゃないです!!」

「というか、私の場合はまともな事を報告してるからね」

一応、容疑者の報告だ。

「うぅ〜私はルイーズと違って優等生なのにぃ……………」

「だって。どう思う、エラリィ?」

「ノーコメントで」

エラリィは、そう返すとコーヒーを口に含む。

隣でルイーズがうむうむと満足げに頷いている。

「女の子が傷付く事を言わないのは、ポイント高いよ」

「お前も教官には、気を使うよね」

「ベイカー、どういう意味だい?」

「ノーコメントで」

ルイーズの両手がベイカーの両頬を掴みそれぞれ反対方向に引っ張る。

「いひゃい、ほうひょくひゃんひゃい」

「ええい!!じゃれてないで話を続けるです」

「クイーン隊長が脱線させたんだが」

「うるさいです、エラリィ」

クイーンは資料を見せる。

「彼の言い分が正しいなら、切り裂きジャックに脅迫されたことになるです」

「まあ、そうなるよね」

「問題は、何故切り裂きジャックがそんな事をしたかというところです」

ルイーズは、耳元の髪をいじる。

「多分、私達を学校に拘束するためだと思う」

「というと?」

「私達は、今、切り裂きジャックがいるのかを調査しに来ている。

今、学園で起こっている事がただの模倣犯と断定されてしまうと私がいなくなってしまう。それが困るから、あえて情報を出したんだろうね」

「?憲兵を近くに置いて何の得があるんですか?」

クイーンが首をかしげながらそう言うと、ルイーズが自分の顔を指差す。

「奴らは、私を殺そうとしている。なら、これ以上はないだろう?」

「つまり、ルイーズはこう言いたいんですか?」

クイーンは、両手を組む。

「あの匿名の封書は、ルイーズを誘い出すための罠だと」

「まあね」

「いつから、そう思っていたんですか?」

「今に決まってるだろう。流石にここまで情報揃わなければ分からないよ」

クイーンは、じぃっとルイーズを睨みつけた後、大きくため息を吐く。

「ま、いいでしょう」

クイーンは、会議の書類をトントンと整えてファイルに綴じる。

「それじゃあ、明日も早いですし、今日はここまでです」

報告事項を終えたので会議はそこでお開きとなった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

コンコンとノックの音が聞こえる。

「どうぞ〜」

間延びしたルイーズの声に招かれて部屋に入ったのはクイーンだ。

「やあ、どうしたんだい?」

クイーンは、扉を閉める。

「暇なので、チェスでもどうですか?」

クイーンの手には折りたたまれて半分になったチェス盤があった。

「いいよ」

ルイーズは、そう答えると部屋の隅から座布団を持ってきてクイーンに渡す。

クイーンは、床にチェス盤を広げ、駒を並べる。

並べ終えると二人はそれぞれ順番に駒を動かした。

「ルイーズ、いつから勘付いていたんですか?」

「切り裂きジャックとやり合ったあたりかな?」

ルイーズは、部屋にかかっている制服を見る。

肩の傷は、ベイカーが綺麗に直してくれてある。

ルイーズは、兵士(ポーン)を動かす。

「随分前から勘付いていたんですね」

クイーンは、ため息を吐いてルイーズの兵士(ポーン)を取る。

その少しだけ不機嫌そうなクイーンの口調にルイーズは、面白そうに笑っている。

「何か不満かい?」

「友人としては」

クイーンは、自陣の動かす駒を選ぶ

ルイーズは、別の駒を手に取る。

「まあ、隊長としては、不確定な情報で隊を混乱させなかったので、良いと思うですけど」

「大変だねぇ、君も」

「おかげさまで」

クイーンは、自陣の女王(クイーン)を弄りながら考える。

「ルイーズ、切り裂きジャックの正体、どの程度予想ついてるんですか?」

「六割」

ルイーズの返答にクイーンは、ふむと考え込む。

この返答はある程度予想していたようだ。

「逆に聞くけど、君は何割になったら動くつもりなんだい?」

「八割から九割」

「十割じゃなくていいのかい?」

「残りの一、二割は不確定要素です」

クイーンは、盤上の駒を観察する。

「多分、私達、いや、私は何かミスをしているはずです」

盤上は、若干ルイーズの方が有利だ。

「えらく弱気だねぇ。どうして、そう思うんだい?」

「でなければ、潜入したその日にルイーズが襲われるわけがないです」

腕を組みクイーンは、目を宙に泳がせる。

「なら、どう失敗を取り返すんだい?」

ルイーズの言葉に対し、クイーンは、手に持った駒で自身の額を軽く小突く。

「取り返す?何を言っているんですか?」

クイーンは、エメラルド色の瞳に不敵な光を灯す。

「失敗は利用するものですよ」

クイーンの駒がルイーズの陣地に置かれる。

起きてしまったことは変えられない。

やっぱ無しや、待ったなどが使えれば楽だが、そうも言ってられない。

「頼もしいね」

ルイーズがその駒を取る。

「隊長ですから」

クイーンは、別の駒で王手(チェック)をかけた。

「うーむ…………」

ルイーズは、少し悩みながら考え込む。

詰み(チェックメイト)です。ルイーズ」

ルイーズは、ガクッと肩を落とす。

そんなルイーズの前で、クイーンは、チェスの駒を掴む。

「さて、駒は揃ったです」

そう言って女王(クイーン)の駒を渡す。

「後は手札だけ。頼んだですよ、ルイーズ」

親友からの隊長命令にルイーズは、軽く敬礼をした。








ライダーが熱い!!
ここまで熱くなるとは思いませんでした!
では、また外伝61で( ̄∇ ̄)

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