遅くなりまして申し訳ありません!!
ちょっと色々立て込んでいました!!
てなわけで、どうぞ!
「ハァっ!!」
クイーンの刀が切り裂きジャックに向かって振るわれる。
「おしいおしい!」
クイーンの刀を切り裂きジャックは、間一髪で躱す。
「それじゃあ、こっちか────」
躱されたクイーンは、躰を回転させ、鞘で切り裂きジャックを殴りつける。
殴りつけられ切り裂きジャックは、中断させられてしまった。
「言ったはずですよ。難しいと」
切り裂きジャックは、ペっと、血混じりの唾を吐き捨て、再びクイーンに挑んだ。
◇◇◇◇◇◇◇
「おっと、ビックリした」
夜、すっかり暗くなった校舎。
ルイーズが教室の扉に手をかけるとリッパーが飛び出してきた。
「ア、アイリーン」
「どうしたんだい?えらく急いでるみたいだけど?」
「え、っと、そ、そのごめん!!ぜ、全部片付いたら説明する!」
リッパーは、夜の校舎を走り抜けていく。
首を傾げながら教室に入るとスカーレットが一人で、今日の喫茶店の片付けをしていた。
「リッパー、どうしたんだい?」
「リッパーならケリを付けに行った」
「ケリ?」
ルイーズが首をかしげ、しばらく考え込んだ後、ポンと手を叩く。
「あぁ、告白にでも行ったのかい?」
ルイーズの質問にスカーレットは、作業中のモノをがしゃんと落とす。
「お、お前、知ってたのか!?」
「え?あ、うん」
まあ、嘘は言っていない。
リッパー本人から直接聞いたわけではないというだけだ。
スカーレットは、大きくため息を吐く。
「別にいいつったんだけどよ、自分の分だけ片付けていくつって聞かなくてな……」
よく見ると三分の一は、綺麗になっている。
「やれやれ、義理高い奴だねぇ」
「ほんとにな」
ルイーズが、窓の外に目を向けるとキャンプファイヤーを心待ちにしている面々が校庭に集まっている。
「君は行かなくていいのかい?」
「踊る相手もいないしな。今日のうちに片付けとけば明日楽だしよ」
一夜の思い出より、翌日のことを考えて行動するスカーレット。
まあ、間違ってはいないが正解でもない。
「よく見ると、クラスメイトもいるね」
「そりゃあ、いるだろ、何てったってこの文化祭のメインイベントだぞ」
「さて、あの子達は、楽しめるかな?」
ルイーズの言葉にスカーレットは、首をかしげる。
「楽して後夜祭っていうメインイベントに参加してんだ。楽しいに決まってんだろ」
「楽して参加したメインイベントに価値なんてないんだけどね」
ルイーズは、懐かしそうに呟く。
ルイーズの言葉に対しスカーレットは、更に首をかしげながら、口を開く。
「おら、お前も来たなら片付けやれよ。どうせ、何の予定もないだろ」
「『お前も』って、君もないのかい?だって花火の後、キャンプファイヤーで踊るんだろう?しかも男女ペアで」
「あたしにあると思うか?」
「…………女二人で、今日の片付けか………虚しい青春だ」
「るせぇな!!いいだろ!!日中は、大量に人が来たんだから!青春だ!青春!」
スカーレットも気にしていたのだろう。
いつもより、強めに食ってかかる。
スカーレットの不満をルイーズは、ため息と一緒にに聞きながら、片付けを続ける。
「ま、あんだけ、客が入れば御の字だろうね」
片付けながらそう答えるルイーズにスカーレットは、キョトンとした後自慢げに胸を張る。
「まあな!客入りだけで換算したら下手すりゃあ学園一かもしれねーぞ!!」
昼時を過ぎた後、再び客がルイーズ達のクラスに来たのだ。
看板メニューのシフォンケーキはもちろん、紅茶もコーヒーもクッキーも完売となった。
「おかげで、私達がすべきはゴミ処理だけってのは助かるよねぇ」
「まあな」
ゴミを入れた袋を縛りながらルイーズがそう言うとスカーレットは、納得しつつ適当に返す。
「ところでよ、お前何やったんだ?」
スカーレットは、手を止めルイーズに尋ねる。
「何って?」
「とぼけんなよ。そんな場末の寂れた時代遅れの遊園地にいそうな着ぐるみのクマが歩いただけで、客があんなに来るわけねーだろ」
「え?そこまで言うの可愛くない?これ?」
ルイーズがクマの顔を見せながら尋ねる。
「古臭くて時代遅れのかわいさがある」
「どんだけ古いんだい。だいたい、時代遅れと古臭いってほぼ同じ意味だからね」
ルイーズは、残念そうにため息を吐く。
「前にも言ったけど寸劇だよ」
「誰が劇に協力すんだよ。あたし達三人しかいねーんだぞ。おまけにあたしとリッパーは、喫茶店から離れてない」
「………………」
ルイーズは、手を止め考える。
「転校生?」
「そうだねぇ………ま、女二人で片付けってのも味気ない。物語の青春っぽく、君に秘密を明かそう」
立ち上がったルイーズを窓からの月光が照らし出す。
「秘密?」
「そ。クラスメイトに驚愕の秘密があるってのが、学園もののお約束だろう?」
「まあ」
伊達眼鏡をゆっくりと外す。
「実は私、学生じゃあない。潜入捜査でここに来た憲兵なんだ」
◇◇◇◇◇◇
「後夜祭、盛り上がってるみたいですね」
クイーンは、窓の外に視線を向ける。
「それがどうしたんですか??」
切り裂きジャックの刃がクイーンに迫る。
クイーンは片手に持った刀で受ける。
切り裂きジャックは、クイーンを本棚まで押す。
クイーンの背中が本棚に叩きつけられる。
「いや、何、貴方の挨拶が好評だと聞いていたので、生徒には、申し訳ないことをしたな、と」
「なら、今ここで死んでください」
「くだらない願いですね」
クイーンは、切り裂きジャックの腹に蹴りを入れる。
切り裂きジャックは、後ろに下がって衝撃を減らす。
エプロンをはためかせ、クイーンが距離を詰める。
切り裂きジャックは、クイーンの刀を受ける。
「仕事が楽に済むように願って何が悪いんですか?」
「叶わない寝言は夢の中で言ってください」
二人は同時に離れ、間合いを取った。
◇◇◇◇◇
ルイーズの言葉にスカーレットは、キョトンとした顔をした後、首をかしげる。
「……………ギャグ?妄想?」
「残念。両方違う。大マジさ」
ルイーズは、緩く編まれた三つ編みをゆっくりと取る。
「『ルイーズ・ヴォルマーノ』、これが私の本当の名前さ」
そう言ってルイーズは、いたずらっぽく笑う。
「どう?驚いた?」
「あったり前だろ!!なんだそれ!!どういうことだ!!」
詰め寄るスカーレットをルイーズは、どうどうと両手でなだめる。
「実はね、この学園に切り裂きジャックがいるっていう手紙が軍に来てね、それの真偽を確かめに私は潜入していたんだよ」
スカーレットは、ポカンとした顔をしている。
「ついてきてるかい?」
「…………まあ、何とか。ところで、潜入調査って、お前何歳?」
「二十二歳」
「嘘つけ」
「どうして、そこで即答するんだい!!喧嘩売ってる!?」
「年下の方がまだ信じられる」
「愉快なことを喋るのは、この口かなぁ~」
ルイーズは、スカーレットの口を指でつまむ。
「ンむむむむ!!」
唇をもにゅもにゅとされ、変な声を出すスカーレット。
ルイーズは、ひとしきりスカーレットで遊ぶとパッと手を放す。
「まあ、そんな訳だから、私は明日にでもこの学園を出て行く」
なんてことなさそうに発せられるルイーズの言葉。
スカーレットは、一瞬、何を言われているか分からなかった。
「…………………え?」
「元々、任務で来ていた話だしね。任務が完了すれは即撤退さ」
「ちょ、ちょっと待てよ!!」
スカーレットは、慌ててルイーズの肩を掴む。
ルイーズの肩を掴む手に力が込められる。
「お前、何で、そんななんてことないように言えるんだ?」
ルイーズは、きょとんとした顔で首をかしげる。
そんなルイーズの顔を見てスカーレットは、唇を静かに噛む。
「………お前は、あくまで、仕事で来たっていうんだな」
「うん」
「じゃあ、あたしに近付いたのも仕事だからか?利用したのか?」
その言葉にルイーズは、ようやくスカーレットが何を言いたいのか理解できた。
しかし、それを踏まえて言いたいことがある。
「悪いけど、近付いてきたの君だからね」
ルイーズの反撃に今度はスカーレットが押し黙る。
そう、ルイーズが来た瞬間スカーレットの方から話しかけたのだ。
「………………そう………だな……」
あんなに熱くなった手前妙な気恥ずかしさがスカーレットを襲う。
ルイーズは、そんなスカーレットを見てクスクスと笑みをこぼす。
「言われる前に先に言っておくけど、文化祭に協力したのは、仕事じゃあないよ。もし、仕事を優先するなら、君に協力なんてしないもの」
ルイーズの言葉にスカーレットは、腕を組んで考え込む。
「あ、そうか。情報収集するなら、あたしだけより、他の奴に聞いた方がいいもんな」
「そゆこと。君を切り捨ててクラスメイトに聞いた方が有意義だもの」
だが、ルイーズはその有意義な方を取らなかった。
あえて、実りの少ない方を取ったのだ。
「って、騙されねーぞ!!お前、あたしをリッパーの見張りにしたじゃねーか!!思いっきり利用してんじゃねーか!!」
「君というより、その状況を利用しただけさ」
ルイーズはなんてことなさそうに返す。
まあ、確かに文化祭を手伝うようになったのは、ルイーズのミスである。
その状況を利用しただけだ。
とはいえ、「ハイ、そうですか」で流せるほどスカーレットは、単純ではない。
何やかんやで、切り裂きジャックの調査に利用されていたのだから。
「って、待てよ?」
スカーレットは、ハッとした顔になる。
「お前、今任務完了って言ったよな?」
「うん」
「じゃあ、聞くけどよ、切り裂きジャックが誰だか分かったのか?」
「うん」
窓ガラス越しに夜空を背負ったルイーズは、なんてことなさそうに答える。
スカーレットは、目を丸くして拳を握り締める。
「だ、誰なんだ!?」
興奮を抑えきれずスカーレットは、一歩ルイーズに向かって踏み出す。
ルイーズは、唇に指を当て少しだけ考え込む。
「んー………まあ、君になら話してもいいかもね」
しばらく考えた後ルイーズは、そう呟いた。
「さて、何から話したもんか…………」
耳元の髪の毛をイジる。
黙ってスカーレットは待つ。
夜の教室。
校庭は少しだけ騒がしい。
どうやら、文化祭の功労者をねぎらっているようだ。
何かが発表されるたび歓声が上がる。
「よし、最初から行こう」
ルイーズはパンと手を叩く。
◇◇◇◇
クイーンの刀が切り裂きジャックに迫る。
振り下ろされる刀を切り裂きジャックは、いなして、距離を取った。
「蒼破刃!!」
クイーンのリリアルオーブが輝き、切り裂きジャックに蒼い斬擊が飛ぶ。
「魔神剣!!」
切り裂きジャックの地を這う斬擊がクイーンの蒼破刃を打ち消す。
「やっぱり、リリアルオーブ持ちですか………」
「当然!!」
切り裂きジャックは、そう言うとクイーンに斬りかかった。
「剛招来!!」
クイーンは、赤い闘気を纏う。
その赤い闘気は、発生すると同時に切り裂きジャックを弾き飛ばした。
弾き飛ばされた切り裂きジャックにクイーンは、距離を一息で詰め、そして、刀を横凪に振るった。
◇◇◇
「まず、私は来たばかりの時、切り裂きジャックに襲われた」
「来たばかりって、お前の転校初日か?」
「そう、あの夜、私は宿題を忘れて学園に忍び込んだ。その時、待ち構えていた切り裂きジャックに襲われたんだ」
「お前、さっき二十二だっつたよな?」
宿題を忘れた二十二歳。
ルイーズは、頷く。
「そう、そこなんだよ。私が偶然宿題を忘れて、学園に忍び込んだら切り裂きジャックが私を待ち構えていた、こんな偶然あると思うかい?」
ルイーズの言葉にスカーレットは、首をかしげる。
「ん、まあ、確かに………お前が宿題を忘れねーと成り立たないよな?」
いつ来るかも分からないルイーズを待ち続けるのはあまり効率がいいとは言えない。
「そう。だから、切り裂きジャックは、私の鞄から宿題を抜いたんだよ」
「お前………自分が宿題忘れたの切り裂きジャックのせいにしてねーか?」
「おい、私のこと君はどういう目で見てんだ」
「二十二で制服着てる犯罪者」
「やめて!!それ自覚してるから!!ホントに傷つくんだよ!!」
制服をひらひらとさせながら涙ぐむルイーズ。
「しかも、何で似合ってんだよ、おかしいだろ」
「どうして、傷口に塩塗り込んでくんだい!?」
話がずれたのを自覚するとルイーズは、軽く咳払いをする。
「いいかい?私は潜入捜査に来てる。だから、目立つ事は可能な限り避けたい…………と思ってた、最初は………」
語尾に行くほど弱々しくなっていく。
クラスメイトに喧嘩を売り、生徒会に喧嘩を売り、あげく着ぐるみ着て大立ち回り。
流石に自覚しているのだろう。
『今更自覚しても遅いんですよ!!』
脳内でベイカーが小言を言っている。
ルイーズは、咳払いをして続ける。
「とにかく、私は最初は目立つ事を避けようとしていた」
『初志貫徹って書いときましたから毎朝起きたら復唱してくださいね』
まだ小言を言うベイカーを脳内から追い出し、話を再開する。
「転校二日で、宿題を忘れるなんて目立つ事は避けたい。だから、宿題が鞄に入っているか、私は確認した」
「つまり、プロとして宿題を忘れるなんてあり得ないと言いたいんだな?」
「そゆこと」
ベイカーではなく、クイーンがその場にいれば更に荒れただろう。
それぐらいのことをルイーズは、臆面なく言い切る。
「となると、誰が私の鞄から宿題を抜いたかが、問題になる」
ルイーズはそこまで言うとチラリとスカーレットに目配せをする。
「私よりも君の方が分かると思うけど、他のクラスメイトが自分のクラスに来ていたら不自然だと思わないかい?」
「確かに。何しに来たんだろうと、考えるよ」
「そう。そんな奴が転校生の机に近付くなんて、リスクが大きすぎる。だから、取りあえず、他のクラスは候補から外す」
「他のクラスメイトがウチのクラスメイトに頼んだって可能性は?」
「逆に聞くけど、君なら夜の教室で待つというリスクを背負うのにそんな大事なところを人任せに出来るかい?」
ルイーズの質問にスカーレットは、しばらく考え込んだ後首を横に振る。
「そう、そんなわけで切り裂きジャックは、ウチのクラスメイトってことになる。………ここまではいいかい?」
「まあ」
「よし、それじゃあ続けよう」
ルイーズは再び切り裂きジャックの説明に戻る。
「そして、文化祭当日………今日だね、私は切り裂きジャックに襲われた」
「うん…………うん??」
頷きかけたスカーレットは、首をかしげる。
「ちょっと待て!!どういうことだ!?」
「いや、言葉どおりだけど。着ぐるみ着ていたら切り裂きジャックに襲われたんだよ」
「………………」
「まあ、中止にならないように寸劇にしたんだけどね。おかげで、それが評判を呼んで喫茶店は大繁盛だったわけさ」
「うぉおおお~、どこから突っ込もう………」
頭を抱えるスカーレット。
そんなスカーレットに構わずルイーズは、続ける。
「いやぁ~大変だったよ。着ぐるみって本当動きづらいんだよ」
「…………あぁ、そう。それで、あの四人の中で誰が切り裂きジャックだったんだ?」
「なんか言い方、雑じゃない?」
「気のせいだろ」
雑にスカーレットは、返す。
そんなスカーレットに対しルイーズは、不満そうに頬を膨らませる。
「結論から言うとあの四人は切り裂きジャックじゃあない」
スカーレットは雑に返そうとした口をつぐみ、眉をひそめる。
「どういう事だ?」
「理由は、二つ」
二つ、ルイーズの指が立つ。
「一つ、彼ら、彼女らは、私が切り裂きジャックに襲われているとき、私の仲間が目撃している。つまり、アリバイがある」
ベイカー、エラリィ、クイーン、それぞれが容疑者候補を見張っていた。
三人が見張っている前で、ルイーズは、切り裂きジャックに襲われたのだ。
「そして、もう一個の理由」
ルイーズが立てている指は遂に一本だけとなった。
「さっきも言ったけど、私は着ぐるみを着ているときに襲われているんだ」
「災難だったな」
「まあね。でもね、災難だったけど、これが決定的なんだ」
ルイーズの眠そうなたれ目に力がこもる。
「私がクマの着ぐるみを着ていることをあの子達は知らないんだよ」
「………………………あ」
そう、ルイーズは、当日いきなりクマの着ぐるみを着たのだ。
当然協力していないクラスメイトは、もちろん、開祭宣言に出ていたリッパーも知らないのだ。
文化祭というお祭りなだけあって、着ぐるみを着ている生徒は確かにそこそこいた。
だが、誰だか分からない状況でルイーズ
「以上、二つの理由から彼ら彼女らは切り裂きジャックとはなり得ないんだよ」
スカーレットは、腕を組む。
「って、なると誰が切り裂きジャックなんだ?誰も当てはまんねーじゃねーか」
ルイーズは、首を横に振る。
「いいや。一人いる。当日アリバイがなくて、そして、クマの着ぐるみ着ていることを知っている人間が一人いる」
ルイーズの指はずっと一本だけ立っている。
◇◇
「くっ!!」
切り裂きジャックは、顔をそらして躱す。
そのまま態勢をのけぞらせながら、クイーンの刀を持つ手を蹴り上げる。
蹴り上げられたら手は思わず刀を離してしまった。
手から放たれた刀は、くるくると宙を回転しながら、クイーンの後ろに落ちる。
「はぁ!!」
クイーンに向かって刃が真っ直ぐに放たれる。
クイーンは、鞘でいなし、カウンターの容量で蹴りを入れる。
「グっ!!」
思わず息がつまる。
クイーンは、その隙を見逃さない。
床に刺さった背後にある刀を逆手引き抜きそのまま切り裂きジャックに斬りつける。
眼前に迫る刀。
「くっ!」
クイーンの刀を、切り裂きジャックは、
◇
「君だ、スカーレット。君が、
残った一本の指がスカーレットをまっすぐに指し示した。
もう、本当、気を遣いました。
では、また外伝71話で