ジオウも来週最終回!!
てなわけで、どうぞ
「ちょっと、待てよ!そもそも、あたしにはリッパーをずっと見張っていた。アリバイがある」
「いいや。ないね」
ルイーズの冷え切った声が夜の教室に静かに響く。
「私が切り裂きジャックに襲われているとき、私の仲間が容疑者候補のアリバイを確認した」
「さっき言ってたな。全員アリバイがあったんだろ?」
「そう、私達で見張っていた面々はもちろん、リッパーも確認できた」
「だから、それが───」
「リッパーは、一人だったんだ」
何か言いかけたスカーレットにルイーズは、かぶせるように言い放つ。
「リッパーは、確認できた。でもね、スカーレット、君は確認できなかった」
あの時、ベイカーがルイーズのクラスに入った時、リッパーが一人でベイカーの接客をしていたのだ。
「スカーレット、君には決定的なアリバイがない」
ルイーズの言葉にスカーレットは、首を振る。
「確かにないかもしれない。でもな、それは、私がトイレで席を外しただけだ」
迷いもせず言ってのけるスカーレット。
「アリバイがない人間だけを切り裂きジャックというなら、別にあたしだけじゃないだろ?」
スカーレットの反論。
しかし、ルイーズもそれぐらいは予想していたのだろう。
眠そうな瞳を揺らがせ口を開く。
「この文化祭にはたくさんの着ぐるみがいたんだ」
ルイーズは、続ける。
「そんなに着ぐるみがいるのにどうして、切り裂きジャックは、真っ先にクマの着ぐるみを着ている私に襲いかかったんだい?」
「それは、お前がこのクラスの宣伝をしていたからだろ?」
「いいや。だって、このクラスの宣伝看板置いていったんだゼ?」
そう、ルイーズはクマの着ぐるみを着たはいいが、肝心の看板を置いていったのだ。
「この文化祭で君と私だけが、クマの着ぐるみを着ている事を知っているんだよ」
「…………………」
「まだあるよ。君、お客さんに頼まれてクマの着ぐるみを着ただろう?あの時、どうして低い声を出したんだい?」
「え?そりゃあ、何となくだよ。特に理由なんてねーよ。間違ってたか?」
スカーレットの言葉にルイーズは、首を横に振る。
「間違ってないよ。実際、私は切り裂きジャックに襲われた時、低い声を出していた。でもね、この場合間違っていないことが問題なんだ」
「は?」
ルイーズは、更に言葉を畳み掛ける。
「時代遅れで古臭さいとは言え、
そうスカーレットもルイーズも女性だ。
おまけに女性が可愛い着ぐるみを身につけたのなら、普通に可愛い声か地声を出せばいい。
もっというなら、声を出す必要はない。
だと言うのにスカーレットは、わざわざ声を出し、おまけに出した声は低音だった。
「答えたまえ、スカーレット、どうして、君と私しか知らないクマの着ぐるみの正体を短剣の切り裂きジャックは知っていたんだい?」
「それは…………」
「どうして、どんな寸劇をしていたか知らない君が可愛いクマの着ぐるみを着ながら低い声を出したんだい?」
ルイーズが静かにスカーレットを問い詰めていく。
スカーレットは、ぎゅっと拳を握る。
「───っ、だから、何となくだって言ってんだろ!!それに切り裂きジャックもたまたまお前を言い当てただけかもしれねーだろ」
「『何となく』に『たまたま』ねぇ………」
ふぅと、気怠げに呟くルイーズの声は夜の教室に溶ける。
「なら、決定的な話をしよう」
ルイーズは、黒い手袋をはめ、右手を顔の前で握る。
握られた真っ黒な右手の奥から眠そうなたれ目がスカーレットを射抜く。
「私は切り裂きジャックと戦った時、思い切り殴った」
息をのむスカーレット。
ルイーズは、続ける。
「別に殴ったのは顔だけじゃあない。もう一つ私は殴った」
ルイーズの言葉にスカーレットの視線が動く。
「殴りつけたとき、切り裂きジャックの動きがあきらかに一瞬止まった瞬間があった。そう、君の視線の先だ」
スカーレットの視線は自分の胸に向かっていた。
「殴ったときのあの感触、女ならイヤでも分かる。あれは、胸だ」
ルイーズの指先がスカーレットを示す。
ルイーズは、最後の一撃を模造品とはいえ、リリアルオーブに近い力で殴ったのだ。
「痛いよねぇ。動きが止まるほど」
ルイーズの言葉にスカーレットは、ギュッと手を組む。
「まあ、それは置いといても、そもそも、胸の感触があったということは、下着や服以外に何も防ぐためのモノを何も仕込んでいないと言うことだ。なら、絶対あるはずだ。私が殴った痣があるはずなんだよね」
何も防ぐモノがないというのに、ルイーズの全力に近い力で殴られたのだ。
いくらリリアルオーブの恩恵があっても無傷ではすまない。
「か、仮に、あたしがお前に殴られて胸に痣が出来ていたとしよう。でも、あたしが切り裂きジャックなら、
「いいや。治ってないね。君には、心理的ブレーキがかかっているのだもの」
ルイーズは、自分の胸を示す。
「君は、身の潔白を証明するために私が帰ってくるよりも前にクラスに戻っていないといけない。でないと、今みたいに私に疑われるからね」
ルイーズが戻るとスカーレットは、リッパーとともにクラスにいた。
「そんな一分一秒が惜しいときに
「それは………」
「おまけに君は着ぐるみを着るとき、制服のまま着ただろう?普通はジャージを着るのに」
「それは、その時も言ったろう!面倒くさかったんだよ」
「違うね。制服からジャージに着替えるとき、胸をさらすのを避けたかったんだろう?ここの更衣室は一人用がないんだ。うっかり誰かにでも見られたら大変だものね」
ルイーズは、更に続ける。
「それって、つまり、君の胸にはまだ、見られたら大変なものが残ってるってことだろう?」
ルイーズの言葉が追い詰めていく。
少しずつスカーレットの退路を塞いでいく。
「トイレで治す手もあったかもしれないけれど、何せ
ルイーズは、背中の窓をこんこんと叩く。
「そんなもの個室越しに聞かれるかもしれないしね。切り裂きジャックの衣装に着替えられても
ルイーズの指がゆっくりと切り裂きジャックを示す。
「さあ、スカーレット。胸を見せたまえ。女同士だ、何も恥ずかしがることはないだろう?」
そして、今、完全にスカーレットの退路は塞がれた。
スカーレットは、胸元のリボンをギュッと握る。
「……………………はぁ」
そして、諦めたようにため息を吐いた。
「いいよ、認めてやる。わざわざ見せたくねーしな」
スカーレットは、上着のポケットから壊れた仮面を取り出す。
それは、切り裂きジャックが顔を隠す際に使っているあの仮面だった。
「君………探偵名乗っといて犯人とか、ミステリー小説じゃあ、モノによっちゃぁ、顰蹙ものだよ」
ルイーズは肩をすくめる。
「よく言うぜ、探偵みたいなことしやがって」
「ま、否定はしないけど」
スカーレットは、短剣を確認しながら考え込む。
「なあ、お前、いつから、気付いてたんだ?」
「初日の夜に君と戦ったとき」
「…………マジかよ」
「あの状況を成立させるには、私のところから、宿題を抜き取られないといけない」
「まあな。あたしが、抜き取っといた」
「私はさっき他クラスの人間がわざわざ、私のクラスに来て、抜き取ったら、目立つと言ったね」
「言ってたな」
「でもね、クラスメイトでも目立つんだよ」
まだ、クラスに馴染んでいないルイーズの席に行くのは流石に目に付く。
「おまけに後々、話を聞けば、君はクラスから孤立している。こうなればますます、誰も私達の近くには来ないだろう?」
ルイーズの両手には、真っ黒な手袋。
「つまりさ、君ぐらいしかそれが出来るのがいないんだよ」
ルイーズの指摘にスカーレットは、大きくため息を吐く。
「つまり、なんだ?お前は最初からそう思いながら、あたしの側にいたってわけか?」
スカーレットは、鼻で笑う。
「女ってのは末恐ろしいな、そんな嘘だらけであたしの味方のフリして、ずっといたわけかよ」
「女に嘘はつきものさ」
ルイーズは、ゆっくりと拳を構える。
「そもそも君に言われる筋合いはないね」
スカーレットは、肩をすくめ、短剣を取り出す。
「お互い嘘まみれの偽りだらけ………か、まあいい」
両手に納まる短剣をスカーレットは、構える。
「切り裂きジャックとして、お前を殺そう」
「悲しいこと言ってくれるねぇ………私、泣いちゃうよ?」
スカーレットは、一気に間合いを詰める。
振るわれる短剣にルイーズの拳がぶつかる。
二つは、鈍い音に少しだけ甲高い音を混ぜてぶつかり合った。
「嘘つき」
「それはお互い様だろう?」
何回も書き直しました。
ホームズとの一番の違いは、ちゃんと探偵役をやってくれるところですね!
では、また外伝72で( ̄∇ ̄)