教官   作:takoyaki

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外伝8です!!


遅くなりまして大変申しわけありません!!



てなわけで、どうぞ( ´ ▽ ` )ノ


「基本、ボーナス近くで行われる」

「マジでやるとは思わなかったよ」

ベイカーは、大きくため息を吐く。

あの後、エラリィは、廊下が震える程のギャン泣きを披露した。

どう反応したらいいか戸惑っていた彼らを差し置いてエラリィ達は無事、自分達の部屋に戻った。

無事見つけ出したリモコンでテレビの電源をつけるとエラリィは、食い入るようにサンオイルスターを見ている。

「再放送ってことは、前にも見たやつでしょ?」

「阿呆!今回の話は、追加戦士が来る話なんだ!何度だって見たい!!」

「あぁ………そう……」

ベイカーは、ため息を吐きながら画面を見る。

確かに新たな色の戦士が他の面々と違うアイテムで戦っている。

「………何でみんなと違う道具で戦ってるの?」

「販促だからだ」

ベイカーの質問に割と元も子もない返答を返す。

「パワーアップも追加戦士も販促だ」

「そうなの!?」

「基本、ボーナスの近くで行われる」

「うわぁ……凄く聞きたくない話を聞かされたんだけど」

「ファンもそれぐらい分かって見ている」

「でも、楽しみにするんだ」

「逆に聞くが、新しい仲間が来てワクワクしないか?」

「………するね」

「パワーアップして勝てなかった敵に勝てるようになってテンション上がらないか?」

「………あがるね」

納得するところがあるようだ。

「もちろん。ただの販促にならないよう最高に盛り上げるのも制作サイドの腕の見せ所だ」

そう答えると再びテレビに戻る。

「ふーん」

ベイカーは、そう答えながらリモコンを探すときに散らかした部屋を片付ける。

片付けの音が気に障ったのか、エラリィは無言でテレビの音量を上げる。

若干イラっとしたが、うるさいと言わないだけマシだと思い直し再び掃除を始めた。

「………どうだった?」

エラリィは、テレビから目を離さず尋ねる。

「俺と同い年のギャン泣きは正直引いた」

「そっちじゃない。教官は、答えてくれたか?」

エラリィの質問にベイカーは、首を横に振る。

「いいや。なんか誤魔化された」

エラリィは、そこで初めてテレビから目を離した。

「誤魔化された?嘘を吐かれたじゃなくて?」

ベイカーは、首を傾げる。

「…………いや、嘘もついたけど」

「なんで嘘だと思ったんだ?」

「教官が嘘だよって言ってた」

「それは、嘘を吐いたうちに入らないだろ」

「あ、やっぱり?」

ベイカーは、そう答えながら掃除を続ける。

「それって、そんなに重要なところ?」

「完全に踏み込ませなかったというわけじゃないところがな」

エラリィは、視線をテレビに戻す。

「あの人が嘘を吐いたら僕もお前も分からないだろ」

その言葉にベイカーは、苦笑するしかない。

「まあね」

そう言って散らばった荷物を整え本棚に入れる。

「それにしても、エラリィ。お前の中でルイーズ教官の評価大分高いよね。なんで?」

エラリィは、画面を食い入るように見つめている。

画面の中では、追加戦士と協力して敵を倒すところだった。

そのクライマックスとも言える盛り上がりが終わるとエラリィは、テレビの電源を落とす。

「お前のあの練習メニューを作った人がダメな人のわけないだろ」

ベイカーは、少し驚いたように目を丸くすると頷く。

「そうだね」

「それで、ベイカー。お前は希望部隊決まったか?」

ベイカーは、肩をすくめる。

「まあね」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

部隊希望の提出締切。

 

 

 

 

「前いいですか?ルイーズ教官」

「どうぞ」

久々に二人で食べているルイーズとクイーンの前にベイカーとエラリィが座った。

ルイーズは、最後の一口を食べ終えると懐から本を取り出して読み始めた。

「なんの本読んでるんですか?」

「エロ本」

「…………………………」

「冗談だよ」

「いや、その冗談いらないでしょ!!」

顔を真っ赤にしながら叫ぶベイカーにルイーズは、面倒くさそうな顔をする。

「私嫌いなんだよねぇ。人が本読んでるときに邪魔してくる奴」

「ルイーズ、そんなこと言わずに教えてあげたらどうですか?」

クイーンの助け船にルイーズは、更に嫌そうな顔をする。

「いや、あのねクイーン。本のタイトル聞くだろう?で、答えるだろ?するとさ、『へぇ、聞いたことない』までならいいんだよ。ただ、『そんな読んでんの?』とかそう言うこと言われるのが腹立つんだよ」

「教官は、何か読書にいやな思い出でもあるんですか?」

「読書というか、学校生活自体がルイーズは、暗黒ですから……………」

「聞きたくない聞きたくない」

ベイカーは、頭をブンブンと横に振る。

「教官は、休み時間とかも本を読んでいるタイプだったんですか?」

エラリィから質問が出るとルイーズは、読書を諦め本を閉じる。

「まあねぇ……何というかほら、校庭でドッチボールをするのも嫌いじゃないけど、それよりも今、良いところだからそれどころじゃないってのが結構あってね」

「その気持ち凄いよく分かります!!」

「だよね!!」

目を輝かせるルイーズとエラリィとは対照的にクイーンとベイカーの瞳は濁っていく。

「そう言うことをやって許されるのは、普段からにこやかによく喋る社交的な人ですよね」

「よく分かっているですね、ベイカー。因みにルイーズは、普段からにこやかによく喋るけど決して社交的ではなかったので、無事許されなかったです」

「エラリィのあの自分の得意分野が来たときだけ饒舌な感じを見ると多分、彼も許されなかったでしょうね」

二人分の暗黒時代を何となく想像してしまったベイカーは、大きくため息を吐く。

対するクイーンは、少し固まっていた。

「クイーン教官?どうかしましたか?」

「……………いえ。ただ、私も知らないことだなぁっと思っただけです」

「?」

不思議そうに首を傾げるベイカーに構わずクイーンは、食事を終えるとルイーズの本を引っ張り出す。

「あ、こら!!」

ルイーズは、慌てて止めようとするがその本はベイカーの手元に渡ってしまった。

「『アイフリードの航海日誌』?」

 ベイカーが声を出して読むとルイーズが、その本をひったくった。

「文句あるかい?」

「いや、文句とかの前にどういう話なんですかそれ?」

ベイカーが聞き返すとルイーズは、少しだけ目を丸くした後咳払いをする。

「お伽話の『アイフリードの冒険』って知ってるかい?」

 「…………いいえ」

 ベイカーは、少し唾を飲み込んでからそう返した。

 ルイーズは、その震えた声に気付かないふりをすると続ける。

 「そのお伽話の原書というか、大元だよ」

「そうなんですか……」

そう言いながらベイカーは、一ページ目をめくる。

そこにはアイフリードの航海日誌というタイトル名と前編の文字が並んでいた。

少しだけ本を読み進める。

内容はアイフリードという人間が世界を股にかけて航海し、その行く先々の気候、文化等を時系列通りまとめてある。

 ある程度読んだ後、最後のページに目を向ける。

 

 

 『次の航海は、一年後』

 

 

 

 ベイカーは、読み終えるとルイーズに返す。

 「で、その次の航海日誌ってあるんですか?」

 「ないよ。エレンピオスには、存在しない」

 「へ?」

 まぬけな声を上げるベイカーに隣でエラリィが口を開く。

 「アイフリードの航海日誌は。クルスニクの日記、化け物の記録とならんで三代奇書の一つに数えられている」

 「そうなの?なんで?」

 「船もある、渡航に向けての準備もされている、だが、続編だけがない、後編のない書物、これが奇書に数えられる所以だ」

「別に完結してない物語なんて珍しくもないだろ?」

「………お前……」

「そんなこと言い出したら世の中奇書だら………」

「ストーップ!!」

ロクでもないことを言おうとするベイカーを全力で阻止するエラリィ。

ベイカーは、エラリィをうるさそうに見ると懐から紙を取り出し、航海日誌と一緒にルイーズに渡す。

「本返しますね。それと、部隊の希望調査票です」

「ん」

ルイーズは、ベイカーの希望部隊を確認する。

そして、一瞬だけ固まる。

「ルイーズ教官?」

ルイーズは、再度見直す。

そして見間違いではないことを確認する。

「ベイカー、君ねぇ………これ、マジ?」

「大マジです」

ベイカーの希望部隊は、ルイーズ隊となっていた。

ルイーズは、大きくため息を吐く。

「あのねぇ、ネガティブキャンペーンは、確かに褒められたものじゃないけど、アレあながち嘘じゃあないからね。私の隊になんて入れば間違いなく出世はないよ」

ルイーズの言葉にベイカーは、コクリと頷く。

「大丈夫ですよ。俺、出世とか興味ないですし」

「知らないよ、そんな事言って………将来結婚した時、出世出来ないせいで奥さんに給料が安いって文句言われても」

「何で微妙にそうリアルなこと言うんですか」

「出世や名誉に興味ないって、それ少年が主人公だから言うセリフだよ。手に職つけた奴がそれ言うと奥さんになじられて子供に笑われる寂しい未来しかないよ」

「本当にやめてください!!教官のそっち方目の説得力の強さどうなっているんですか!?」

「伊達に性格クソって言われた学生時代は、過ごしてないですよ」

「それフォローしてるつもりかい?」

胸を張って言うクイーンにルイーズは、呆れ顔だ。

二人の会話に焦れたベイカーが机をドンっと叩く。

「いいですよ!それじゃあ、一生結婚しませんから!独身貫けばそんなこといわれないんでしょ!!」

「えー……いやだよ、私。君がいい歳こいて独身だった時に『ルイーズ教官の隊にいた俺じゃ結婚なんて無理ですよ』とか言い訳に使われるの」

「……………………………そんなことしませんよ」

「その中途半端な間が凄いいやなんだけど」

ルイーズは、眠そうな目でジトっとベイカーを睨みつけている。

「ま、まあまあ!いいじゃないですか!!せっかく選んでもらったんですから!!このご好意を受け取るべきですよ!」

「ご好意ってなに?私は、アレなの?『好きな班作って』で性格のいい仲良しグループの人に入れてもらうような立ち位置なのかい?」

「どうして、そうネガティブなんですか!!というか、そこまで自覚があるならルイーズは、もっと自分の振る舞いを直して欲しいです!!」

クイーンは、少し涙目でポカポカとルイーズを叩いている。

ルイーズは、我関せずという風に目の前のベイカーを観る。

きっとこの先今回の選択を後悔をする日が来る。

それでもこの選択肢を選ばないとベイカーは、この先ではなく、今後悔する。

そう思っているのだろう。

いつか後悔することも織り込み済みで、ベイカーはこの選択肢を選んだのだ。

ルイーズは、大きくため息を吐いた。

「わかった。どうせ君しか希望者はいないし、受け取るよ」

「ちょっと待ってください。俺しかいない?」

「君みたいな奴が君以外にいるもんか」

ルイーズは、そう言って紅茶を飲む。

「だから、いつ異動希望を出してもいいよ」

別に悲観するわけでもなく淡々とそう言いながら、部隊希望用紙を受け取る。

「ようこそベイカー訓練生。歓迎するよ」

ルイーズは、笑顔でそう言った。

いつもの胡散臭い笑顔ではなく満面の笑みで。

その笑顔に思わず、不覚にも戸惑っていると食堂で悲鳴が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

悲鳴のでところを確認するとそこには、傷だらけの訓練生が倒れていた。

 






ちょいちょい自分に刺さる台詞があります………
なんとかペースを今まで通りに直したいです。


さて、それはともかく「氷菓」の実写見てきました!!
正直色々大人の事情が見え隠れする上に今更?な実写化ですが、まあ見てやろうと!自分の好きな作品なんだし!!
それにそこまで無理なものでもないだろう!!と思い見に行きました。
感想としましては、大変良かったです。
削ってもいいところは削り、残すべきは残し、足すところは足してあったのでストンと胸に落ちる形にまとまっていましたので不満点は特にありませんでした。



まだまだ語りたいですが、この辺で……
ではまた、外伝9で( ´ ▽ ` )ノ

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