最近これしか言ってませんが、今回も言わせていただきます!
遅れてすいません!!てなわけでどうぞ
「なるほど。よく分かりました」
ルイーズの説明を聞いたベイカーは、理解はしても納得のいかない顔をしている。
「でも、それって、生徒会役員が売り上げ金をちょろまかしているってことが前提ですよね?もし、違ったらどうするんですか?」
ベイカーの質問にルイーズは、指を一本立てる。
「このやりとりが必要になってるってことは、あの子達がお金をちょろまかしていることは確定さ」
ルイーズの回答にベイカーは、更に首を傾げる。
それを察したルイーズは、続ける。
「いいかい?そもそも、文化祭の経費ってどこから出ているんだい?」
ルイーズの質問にベイカーは、視線を彷徨わせる。
「えーっと、生徒会ですよね?」
「なら、募金のするときの金ってどこから来てるんだい?」
「えーっと、文化祭の売り上げを徴収するから結局、生徒会?」
「じゃあさ、文化祭の売り上げが増えていいことってなに?」
「そりゃあ、募金額が増えることでしょ?」
「なら、文化祭の売り上げが減って困ることって何?」
「募金額が減ることでしょう?」
ルイーズは、とっくに食べ終えたアイスキャンデーの棒をゴミ箱に投げ捨てる。
「なんで?」
「へ?」
「何で募金額が減ると困るんだい?」
「え?」
「あぁ、なるほど」
まだ、首を捻るベイカーとは対照的にクイーンは、納得した。
「ベイカー、おさらいです。募金額は文化祭の売り上げ。売り上げってのは経費込みです。ここまではいいですか?」
「えぇ」
「その経費ってのは、入ってくるお金ですか?出て行くお金ですか?」
「そりゃあ、経費なんだから出て行くお金じゃないですか?」
「それじゃあ、売り上げってのは?」
「えぇーっと、入ってくるお金ですよね?」
「なら、募金ってのは?」
「出て行く金ですよね?」
一つ一つ確認していくクイーンにベイカーは、答えていく。
「では、少し話を簡単にしてみるですよ。クラスは一クラスです」
クイーンは、財布をひっくり返し、百ガルド硬貨を取り出し、それを並べる。
硬貨は全部で10枚、1,000ガルドだ。
それとは別に10ガルド硬貨もいくつか広げる。
「では、ベイカー。この100ガルド10枚、1,000ガルドが生徒会の金です。その中から文化祭の経費として百ガルドをどうぞ」
「はぁ、どうも」
ベイカーの手元には今、100ガルドがある。
「生徒会の金はいくらですか?」
100ガルド硬貨が9枚。
「900ガルドです」
ベイカーの答えにクイーンは、満足そうに頷く。
「では、ベイカー。ベイカーのクラスでの売り上げが110ガルドでした」
クイーンは、そう言ってベイカーの手にある100ガルド硬貨の上に10ガルド硬貨を置く。
「それでは、規則に則り売り上げを私にください」
「えーっと、はい」
ベイカーは、110ガルドをクイーンに渡す。
「さて、私も規則に則ってこの110ガルドを施設に寄付です」
クイーンは、そう言ってルイーズに渡す。
「ではここで問題です。ベイカー、生徒会のお金はいくらですか?」
クイーンの前には100ガルド硬貨が9枚。
「900ガルドです」
そう答えるベイカーを見てルイーズは、クイーンに110ガルドを返す。
クイーンは、返してもらった110ガルドから100ガルド硬貨を再び生徒会の金の中に戻す。
「それでは、ベイカーもう一度最初からです。まず、ベイカーのクラスに100ガルドを経費として与えるです」
ベイカーの手に再び、100ガルドが置かれる。
「さて、文化祭が終わったのですが、何と客足が伸びず、ベイカーのクラスの売り上げは10カルドでした」
ベイカーの手から、今度は隣で見ていたエラリィが100ガルドを取り上げ、10ガルドを渡す。
「では、ベイカー、その10ガルドはどうすればいいのでしょう?」
「えーっと、売り上げは生徒会に渡さなくちゃいけないので、こうですね」
ベイカーは、そう言って10ガルドをスカーレットに渡す。
「では、今回も規則に則って、この10ガルドを施設に寄付です」
スカーレットは、そういってルイーズに渡す。
「さて、ベイカー、生徒会のお金はいくらですか?」
「えーっと、900ガルド……………あ!!」
「流石クイーン教え上手!!」
「おだてたって何も出ないですからね。後、10ガルド早く返してください」
ルイーズは、唇をとがらせながら10ガルドを弾いて渡す。
宙を舞う10ガルドを空中でクイーンは、キャッチした。
キャッチしたのを見届けたルイーズは、口を開く。
「さて、今のやりとりで分かったと思うけど、文化祭の売り上げが低くても生徒会に大きなデメリットは、ないんだよ」
そもそも募金額が少ないというのは、受ける取る側にはデメリットがあるが、渡す側には本来デメリットなんて存在しないのだ。
「もっと言うなら、これはあくまで生徒会の公的なお金。個人のお金ではないんだ。だから、売り上げが低くたって生徒会の参加者にはデメリットがないんだから、文句をいう必要はどこにもないんだよ」
「でも、文句を言いに来る…………そうか!!売り上げが下がるとちょろまかすお金が減るんだ!!それは、文句を言わざるを得ない」
「そゆこと♪」
ようやく理解したベイカーに笑顔でウィンクするルイーズとは対照的にクイーンは、渋い顔をしている。
「まあ、正解なんですけど、罪悪感とか正義感で行動したって回答が一切でないあたり、ルイーズの弟子ですよね」
「誰かをつるし上げたりするような奴にそんなものないだろ」
エラリィは、淡々と紅茶を口に運ぶ。
「ま。そういうわけさ。いつからかは知らないけれど、この返しをしなければいけないということはもうあの子達は不正を働いていることは確定なのさ」
これで全てを説明したとでもいうようにルイーズは、紅茶をお代わりする。
だが、先程全てを理解したベイカーは、まだ首を傾げている。
「何?何処かまだ分からないところあるかい?」
「どうしてそこまで策を教えてあげなかったんですか?」
ルイーズが、二人に授けた策は、学園全体の売り上げを下げる方法、そして、それを問い詰められたときを乗り切る方法だけ。
もっというなら、この金額のやりとりの説明は一切していない。
更に、上記二つの方法をとったときに起こる弊害や不正を突き止める方法は、一切伝えていなかった。
ルイーズは、背もたれに背中を預け、のびをする。
「全部やってあげたら、意味がないのさ」
ルイーズのコップから湯気が立ち上る。
「結局、これは彼らの問題で彼らが勝たなくてはいけない話なんだ。だから、土俵も用意してあげるし、あと一歩までは教えてあげる」
「でも、とどめは自分で刺すべきだと?」
「そういう事。どこまでも人のレールの上を歩いてるだけじゃ、先へは進めないのさ」
ルイーズはそういって二枚目の紅茶に口を付ける。
「でも、リッパーがそう言わないとは思わなかったんですか?」
クイーンが首を傾げながら尋ねる。
「思わないよ。だって、彼の父親は、寄付をしている。だから、それに類似する書類の存在も知っているはずさ」
「いや、そうではなくて、リッパーはとても人と積極的に喋るような人じゃないでしょう?」
あの潜入捜査の中、クイーンは、ルイーズには劣るがリッパーとそれなりに接点があったのだ。
「まあ、苦手だとは思うよ」
ルイーズの脳裏にはスカーレットに不満を覚えさせるほど、つっかえながら喋るリッパーがいる。
「でも、あの子は、
そう言ってウィンクをする。
「あの子は、頑張る誰かのために頑張れる奴さ」
◇◇◇◇◇
パァンという乾いた音が鳴り響く。
その拍子にリッパーは、唇を切ってしまった。
「た、叩いたね?な、何もしていない僕を?」
「──────!!」
その生徒会役員は、慌てて叩いた自分の手を後ろに回す。
「そ、それは図星と受け取っていいの?」
「だ、だれが!!そんなの言いがかりです!!」
「い、言いがかりだって?」
──────
紅茶を飲み干したルイーズは、天井を眺める。
「さあ、悪ガキども、君らは自分のことを凄いと思っているだろう?人を騙し、人を利用している自分は他とは違うと胸を張っているだろう」
──────
「ひ、人の顔を叩いておいて、人に罪を着せておいて、挙げ句、自分が示すべき証拠も出せないようなお前達が、」
─────
「そんなくだらない充足感は、正論の前には脆く崩れ去るゼ」
─────
「ど、どの面下げて言いがかりと言うんですか!!」
ボリュームの壊れたスピーカーのように問い詰めるリッパー。
生徒会役員は、遂に何も言い返せない。
「い、いっとくけど、全部録音してあるよ。出るとこでたっていいんだからね」
ルイーズに言われた言葉が脳裏を巡る。
『…………どうせ貴女達のクラスの売り上げなんて意味ないくせに』
『言ったね?口から出た言葉には責任を持ちたまえよ』
今更になって毒のように身体を巡るルイーズの言葉に生徒会の役員は、ぐっと拳を握る。
リッパーの言葉に生徒会役員は、顔を真っ青にし。そのまま教室を出て行った。
クラスでも最下層の二人が、生徒会役員を追い返した。
その事実にクラス中が、ざわめく。
そんな中、リッパーはへなへなと床に座り込んだ。
「腰がぬけた………………」
先程までの勢いはどこへやら。
情けない声と共にリッパーは、うずくまっていた。
「後、お腹痛い……………」
「慣れねーことするからだよ」
スカーレットは、大きくため息を吐くとともに自分達を遠巻きに見ているクラスメイトを睨み付ける。
クラスメイト達は、慌てて目をそらした。
クラスメイトが目をそらすとスカーレットは、屈んでリッパーと同じ目線になる。
「でも、ありがとな。助かった」
まだ、腹が痛むのだろう。
リッパーは、脂汗をかきながらゆっくりと頷く。
「どういたしまして……………ただ、お腹痛いし、保健室行って来るね」
「あぁ」
リッパーは、スカーレットの返事を聞くと教室を出て保健室に向かって歩き出した。
そして、その後ろをスカーレットがついて行く。
「いや、なんでついてくるの?」
困ったようにリッパーが聞くとスカーレットは、自分の右手を持ち上げる。
スカーレットの右手は、リッパーの右手にしっかり握られていた。
「あ、!ゴメン!!」
リッパーは、慌てて手を放した。
叩かれそうになったとき、スカーレットは、リッパーを守ろうとしたのだ。
でも、それをリッパーが押さえた。
リッパーとしては、叩かれたという結果を残したかったのだ。
まあ、離すの忘れていつまでも握っていた訳だが。
「別に問題ねーよ。おら、あたしが連れてってやる」
慌てて離そうとするリッパーの手を逆に握り返し、スカーレットは、保健室へと歩いて行った。
「恥ずかしくないの?」
廊下をすれ違う面々が二人を振り返る。
「お前をダンスに誘った時よりマシだ」
「え?恥ずかしかったの?」
「っるせえな!そこ聞き返してくんじゃねーよ!」
スカーレットは、少しだけ頰を赤くしながらリッパーの手を引いて歩いた。
そんな後ろ姿と自分の右手を握る彼女の手を見て、昨日までの出来事を思い返す。
胸を刺す小さな痛みとそれに勝るほどの楽しい日々だった文化祭。
(ありがとう、アイリーン)
そこに巻き込んだ転校生に礼を言う。
そして、あの後夜祭の時にリッパーを探し出し、最後まで一緒にいてくれた彼女。
「……………ありがとう。スカーレット」
「あぁ。どういたしましてだ」
◇◇◇◇◇◇
「さて、これでこの話はお終いだよ」
「あの学園この後大変そうですね」
「まあね」
ニヤリといたずらっぽい笑みを浮かべながらルイーズは、ベレー帽をくるくると回す。
その隣でクイーンは、書類をまとめている。
今回の事件の報告書だ。
「あぁ、そうそう。クイーン?例の件どうなったんだい?」
クイーンの手が止まる。
「おかげで、また私の交渉技術があがったです………」
暗い顔をしている。よっぽど疲れたのだろう。
「流石!!頼りになるぅーー!」
「そう思うなら───」
「あぁ、はいはい。報告書手伝ってあげるから………」
そんな会話をしていると呼び鈴が鳴り響いた。
「お?」
ルイーズは、そう言って玄関に向かっていった。
残されたクイーンにベイカーとエラリィが詰め寄る。
「教官、今度は何したんですか!!」
「というか、今回は、何かお叱りを受けるようなこと何もないはずだぞ!」
詰め寄られたクイーンは、大きくため息を吐く。
「まあ、言わなくたってすぐ分かるでしょう」
そんな事を言っていると部屋の前でドタバタと音がする。
「ほら、こっちこっち!」
「わーったから、引っ張るなよ」
「ン?この声………」
聞き覚えのある声にベイカーの頰が引きつる。
「お待たせ~」
そう言ってルイーズが引っ張ってきたのは、赤毛のくせっ毛と、少しつり目、そして、制服に身を包んだ女の子。
「「え?」」
会議の最中、何回も見たその人、スカーレットだった。
ベイカーとエラリィがマヌケな声を出している横でクイーンは、大きくため息を吐いた。
「あの、教官?どうしてこの人ここにいるんですか?」
「なんでって、今日からこの子は、クイーン隊の一員だもの」
スカーレットは、少し居づらそうに頰をかく。
「「ハァアアアアアアアアアアアアアア??」」
素っ頓狂な声を上げるベイカーとエラリィ、ニヤニヤと誇らしげに笑うルイーズ。
そして、もう何度目か数えることすら面倒くさくなったため息を吐き出すクイーン。
「よ、よろしく?」
そんなカオスな中、スカーレットは、困ったように首を傾げた。
はい、そんなわけで合流です。
テイルズでちょくちょく見るちょっと遅れての追加メンバーです!!
暖かく見守ってあげてください!
では、また外伝82で