教官   作:takoyaki

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外伝88です!!
コロナを乗り越え、終わったゼロワン!
そして新たに始まったセイバー!


てなわけで、どうぞ!!


「その表現はどうなんだろうねぇ………」

 「テメー………」

 忌々しそうにジランドは、ルイーズを睨み付ける。

 当の本人には、素知らぬ顔でのほほんとしている。

 「(ルイーズ………)」

 小声で話し掛けるクイーンにルイーズは、ウィンクし、口だけ動かす。

 

 

 

 

 ───後は、任せた☆───

 

 

 

 

 

 頰が引きつり、眩暈がする。

 予想出来なかったわけではない。

 ただ、回避出来なかっただけだ。

 この場で、上層部相手にやり合わなければならないのだ。

 クイーンは、さらさらと手近な資料にペンを走らせる。

 『どの報酬が欲しいんですか?』

 クイーンの文字による問いかけにルイーズが指を二本立てる。

 クイーンは、誰にも気付かれぬよう大きく息を吐き出す。

 へその下に力を入れ、覚悟を決める。

 (よし)

 覚悟を決めたクイーンは、ルイーズの頰を思い切り引っぱたいた。

 会議室に乾いた音が鳴り響く。

 その音と共に会議室のざわめきが収まった。

 『何するんだい!!』

 「私の部下が長官達に失礼な口を聞き申し訳ありませんでした」

 クイーンが深々と頭を下げる。

 「あぁ、いや、君を責めるつもりは………」

 音楽祭の説明した上層部が、口を開く。

 クイーンは、それを確認すると胸のポケットから、ボイスレコーダーを取り出した。

 「しかし、ルイーズの言うことも最もです。おとり捜査には特別手当が着くのに黙っていた、それは少しばかり納得がいかないです」

 「…………何が言いたい」

 「特別手当として、ルイーズが二番目に提案した────をいただきたいです」

 クイーンの発言にジランドの隣にいる上官は、露骨にほっとした顔になる。

 「それでいいなら、直ぐにでも手配できる」

 「それは、本当ですね?これに誓って?」

 スカーレットは、先程取り出したボイスレコーダーを指差す。

 ジランドの顔が歪む。  

 「お前、内輪の会議でそんなもの用意するなんて何を考えてやがる」

 「別に。ただの記録用ですよ」

 しれっと言い返すクイーン。

 ジランドがため息を吐く。

 「いいぜ。それぐらいなら。こちらに割り当てられた枠もまだある」

 「それは、良かったです」

 ルイーズは、頰を押さえながらクイーンにだけ見えるよう、サムズアップをする。

 チラリと一瞥するとクイーンは、直立不動のまま更に続ける。

 「では、戦力強化のためにルイーズのいった『リリアルオーブの追加支給』、『スカーレット・スヴェントへのリリアルオーブの返却』、『技術予算の追加』の三つもお願いしたいです」

 会議が再びざわめきだす。

 上官二人の表情が凍り付く。 

 何だったら、ルイーズの表情も凍り付いている。

 「ま、待て、今、特別手当の話は、」

 「えぇ。終わったところです。ですが、私の言っているのは、特別手当ではなく、戦力強化のための話です」

 クイーンは、更に続ける。

 「私の隊員が囮役になると言うことは、必然的に私達の負担が増す………という言い方は適切ではないですね。十中八九、私達が切り裂きジャックと刃を交えることになるでしょう」

 「おい、待て!!別にお前のところだけ、特別というわけじゃないだろ!俺達だってフォローに回るんだから」

 今までクイーンの言い分を黙って聞いていた別の隊長が口を開く。

 「そんなことないでしょう?以前、私達がまだ訓練生の教官だったとき、切り裂きジャックと交戦したときのこと忘れたとは言わせないですよ?」

 別の訓練生を救いにルイーズ達でとある空き家の洋館に行ったときのことだ。

 あの時、刀の切り裂きジャックとルイーズは、交戦した。

 「あの時、誰一人として応援に来てくれなかったですよね?結局、私達が一番最初に辿り着いてルイーズを回収することになったんですよ?」 

 クイーンの言葉に意見した隊長は、眉を吊り上げる。

 「俺達が見捨てたと言いたいのか?」

 「いいえ。単純に同じ隊員の方が想いが違うという話をしようと思ったのですが…………もしかして、見捨てたんですか?」

 クイーンに逆に聞き返された隊長は、二の句が継げなくなる。

 不満を封殺したクイーンは、改めて、ジランド達に向き直る。

 「感情論では、不満でしょうか?なら、もう一つ、私達の隊は、切り裂きジャックを誰よりも逮捕しているんです。その隊が、これ以上、装備を増やせないというのは、納得がいかないです」

 クイーンは、会議室の面々に視線を向ける。 

 その中には、ルイーズが洋館から助け出した訓練生の元教官もいる。

 「そんなわけで、是非、『リリアルオーブの追加支給』、『スカーレット・スヴェントへのリリアルオーブの返却』、『技術予算の追加』の三つをお願いしたいのですが?」

 相手の弱みを突くのではなく、触る、そんな手段を用いて、少しずつ退路を埋めていく。

 ジランドの横で金縁眼鏡の上官が冷や汗を拭いながら口を開く。

 「し、しかし、『スカーレット・スヴェントへのリリアル・オーブの返却』は…………」

 「なんでしょう?」

 「まぁ、やっぱり、その、ね、彼女、元切り裂きジャックの一員でしょ?まだ、何の実績もこっちに残してないのにそんな事は………」

 そう、スカーレットには信用がない。

 彼女にリリアル・オーブを返却するのはリスクが大き過ぎる。

 「我々が付いているのですが、それでは不満ですか?」

 そう言いつつもクイーンとしては、この展開までは読めていた。

 「まあ………その、ね」

 というより、クイーンは、その瞬間を待っていた。

 

 

 

 「なら、一番目の『リリアル・オーブの追加支給』なら、いかがでしょうか?」

 

 

 

 

 

 クイーンは、真っ直ぐに金縁眼鏡の上官を見据えてそう言った。

 (この子、それを狙ってたな…………)

 顔に出さないようルイーズは、心の中で苦笑を浮かべる。

 「確か、リリアル・オーブの追加支給は、検討事項でしたよね?だったら、我が隊へせびとも欲しいのですが」

 元々、ルイーズとしては二番目の要求をのませるために敢えて、首を横に振りそうな条件を並べた。

 難しい条件を断らせれば、後に続く簡単そうな条件を飲みやすい。

 そのためだけに用意した無理めな願いだったのにクイーンは、ルイーズと似たような手法を使って、更に相手が絶妙に嫌がる部分に触れながら、追加を取ろうとしている。

 (…………それにこの条件って……)

 金縁眼鏡の上官は、少し思案しながら小さく頷く。

 「ま、まあ、それ────」

 

 

 

 

 「待て」

 それを遮ったのはジランドだ。

 「お前、気付かれねーとでも思ってんのか?」

 「何のことでしょう?」

 「『スカーレット・スヴェントへのリリアル・オーブの返却』とお前の隊への『リリアル・オーブの追加支給』は、ほぼ同じ事だろ?」

 「え?」

 金縁眼鏡の上官は、何を言われているか、分からないと言う顔だ。

 「スカーレット・スヴェンへリリアル・オーブを返却しようと、クイーン隊へリリアル・オーブを支給しようと、お前の隊で使用できるリリアル・オーブが一つ増えることは変わらない」

 クイーンは、表情を変えずジランドの言葉に耳を傾ける。

 「お前だって、この二つの条件を飲ませられるとは思ってないんだろ?だから、この条件のどちらかを飲ませようとしていた、違うか?」

 「……………」

 クイーンの表情が曇った。

 「浅いな、考えが」

 ジランドは、フンと鼻で笑う。

 「というわけで、お前の隊へのリリアル・オーブの追加支給は、後回しだ」

 拳を握りしめながら、クイーンは、ジランドを真正面から見据える。

 「し、しかし、戦力強化は急務です。我が隊は、他の所に比べて人数が少ないんです。リリアル・オーブぐらい融通していただかないと、今後死人が出てしまうんです!!」

 「なら、技術予算をくれてやる。お前の申請額でいい。それでせいぜい頑張ることだな」

 「な!?」

 息をのむクイーンにジランドは、ニヤリと笑みを浮かべる。

 「お前が余計な欲を出さなければ、

 余計な策を仕込まなければ、

 余計な思惑を張り巡らせなければ、

 こんなことにはならなかったのにな」

 クイーンは、ギュッと唇を噛み締める。

 後回しではあるが、ボイスレコーダーの手前、ちゃんとした約束だ。

 いずれリリアル・オーブの追加支給は来るだろう。

 ただし、今回の作戦には間に合わない。

 「…………なら、せめてその予算の配当は、来週中にお願いしたいです」

 「いいぜ。大した手間じゃあないからな」

 ジランドは、ボイスレコーダーを指差しながら、頷く。

 クイーンは、大きく息を吐き出す。

 「もう一つ、最後に確認いいですか?」

 「なんだ?」

 「万が一、切り裂きジャックが現れなかった場合、ウチの隊だけで責任を取れなんて言わないですよね?」

 クイーンの言葉にジランドが眉をひそめる。

 「だって、そうでしょう?ルイーズを使って切り裂きジャックをおびき出す作戦は、そちらが隊長の私を通さず、しかも伏せたまま行おうとしたものです」

 クイーンは、淡々と告げる。

 「それでまさか、私達に責任を取れなんて言わないですよね?」

 「………………お前」

 「こちらには濡れ衣着せられすぎて、下着までびしょびしょのルイーズがいるんです。これだけははっきりさせておきたいです」

 「その表現はどうなんだろうねぇ………」

 隣で聞いていたルイーズが若干頰を引きつらせる。

 今この場で、分かったと答えてはいけない。

 それは、そのつもりがあったと認めることに他ならない。

 ならこの場は、どう答えるべきか?

 

 

 

 

 「当然だろ。全責任は立案者である俺達が負う」

 

 

 

 

 

 こう答えるしかないのだ。

 「ならいいです。クイーン隊、全力で任務に当たらせていただく所存です!」

 綺麗な敬礼を決める。

 そんなクイーンにジランドは、鋭い視線を送る。

 「それから、クイーン、発表曲はこちらで指定する。あまり変なもの弾かれても困るからな」

 「なら、衣装の指定はこちらでお願いしたいです」

 「分かってると思うが、軍人が演奏するに相応しい服だぞ?」

 「当然です」

 「ならいい」

 「ですってよ。ルイーズもいいですね?」

 「………いいよ。と言う以外ないだろう?」

 「なら、こちらとしても言うことはないです」

 クイーンは、そう言って席に座った。

 「え、っと、会議に戻させてもらう」

 二人の舌戦の後、金縁眼鏡の男の号令で会議が再開された。

 

 

 

 

 







もう、何となく分かっているんですが、絶対百話行く。


では、また外伝89で!
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