ヴァイオレット・エヴァーガーデン見てきました。
涙涙ですよ、えぇ!!
話は、素敵だったのですが、上映中いびきかいて寝てた奴がいまして…………
寝るなとは言わないのでせめて静かに寝てて欲しかったです。
取りあえず、泣くほど恥ずかしい目に会え!と祈っておきました。
てなわけで、どうぞ
「ベイカー、スカーレット」
翌日、朝食の最中、ルイーズが二人に封筒を一つ渡す。
「これを二人で届けて欲しい」
二人でという言葉に名前を呼ばれたベイカーとスカーレットは、嫌そうな顔をする。
「想像通りの顔だねぇ。でも、そんな顔したってこの話は取り下げないよ」
実は兄妹だったとは言え、二人の間には未だに深い深い溝がある。
「私はこれから、エラリィに引き継ぎしなきゃだし、クイーンは、何だか忙しそうだし、君ら二人しか出来る人がいないんだよ」
「じゃあ、俺だけで行ってきますよ」
「ダメだよ」
「じゃあ、あたしだけで行ってくる」
「ダメだよ」
二人の言葉を短く否定するルイーズ。
先に我慢できなくなったベイカーが口を開く。
「理由は?」
「私がダメだと言っているんだけど?」
要は、ダメと言ったらダメと言うことだ。
ベイカーは、諦めてルイーズに別の質問をする。
「中身は何なんですか?」
「私が欲しかった報酬」
ルイーズの回答にベイカーは、首を傾げる。
「自分の欲しかったもの手放すんですか?」
「まあね。元々、そのつもりだったし。と言うか私が持ってても仕方ないし」
「「??」」
ますます、中身がわからない。
というより、もう一つ分からないものがある。
「つーかよ、ルイーズ。誰に届ければいいんだ?」
スカーレットの最もな質問にルイーズは、ウィンクをする。
「ベイカーのよく知る人物さ」
◇◇◇◇
日はすっかり傾きその日の夕方。
「やっとついた………」
「ほんとにな!!言っとくけどな、テメーがあんなに乗り換えをミスらなければこんなに時間かかんなかったんだからな!!」
エラリィも苦労したベイカーの電車音痴ぶりにスカーレットは、ものの見事に振り回された。
「ドヴォールに行くつってんだろ!!ディールについてんだよ!!」
「何だよ…………俺だけのせいじゃないだろ。お前だって知らなかったんだし」
不満げなベイカーにスカーレットの怒りが頂点を飛び越す。
「ったりまえだろ!!どうして
そう二人は、ベイカーの実家の前にいるのだ。
スカーレットは、知らないことだが、ベイカーのこの電車音痴ぶりはルイーズが熟知している。
少なくとも駅にいるときは、自分の側から離れさせない。
エラリィは、それに気付くのに時間がかかりひどい目にあった。
それでもエラリィは、ちゃんと目的地を把握していたのでまだ良かった。
今回スカーレットの方が時間がかかったのは、目的地を把握していなかったからだ。
実家なのだから、自分より本人の方がいいルートを知っているのかも知れないという迷う人間について行って一緒に迷う典型的なパターンを繰り返したのが、今回の原因だ。
「まさか、教官の報酬を渡したい相手が俺の父さんだったなんてなぁ」
「おい!都合悪くなったからって無視してんじゃねーよ!!」
スカーレットに対してうるさそうに顔をしかめながらベイカーは、呼び鈴を押そうとする。
「賑やかだね。押さなくても分かったよ」
そんなベイカーより早くピーターが扉を開けた。
「ルイーズさんから話は聞いてるよ。二人とも上がって」
人の良さそうなピーターにスカーレットは、少し面くらいながらも何とか断ろうとする。
「いや、もう夕方ですし………あたしは…………」
「??ルイーズさんからは、夕方ぐらいにつくから泊めて欲しいって言われてるけど?」
「……………………………」
頭の中で馬鹿笑いをするルイーズが鬱陶しい。
ルイーズにとって二人が迷ってここに辿り着くことも予想通りだったのだろう。
「で、でも……………」
断ろうとした瞬間、スカーレットとベイカーのGHIが鳴り響く。
「隊長?」
二人は、画面を開く。
『厳選なくじ引きの結果、今日の食事当番はルイーズになりました』
「「泊めてください。お願いします」」
◇◇◇◇◇◇
「さあ、どんどん食べて」
机の上には、ローストビーフやハンバーグ、ポテトサラダと言った料理が並んでいた。
「腕によりをかけたんだ」
誇らしげなピーター。
「「いただきます」」
ベイカーとスカーレットは、並んで食事に手を付ける。
本当はベイカーが、ピーターの隣に行こうとしたのだが、「兄妹なんだから並んで食べなさい」という言葉に負け、今に至るのだ。
久々の父の食事にベイカーは、嬉しそうに食べている。
そんなベイカーの横で気まずい面持ちで食事をするスカーレット。
「新聞見てるよ。また、切り裂きジャックを捕まえたんだって?」
「教官がね。後、隊長とエラリィだね」
ちょっと居心地悪そうに答える。
「俺がいなきゃ、もっと簡単だったんじゃないかな、とも思うんだよ」
ベイカーが思い出すのはあの教室での闘いだ。
結局、ベイカーは人質に取られていた。
その出来事がどうしてもベイカーの中で渦巻いていている。
「って、君のお兄さんは、言ってるけど、どうなの?」
「えっ………っと」
突然話を振られたスカーレットは、戸惑う。
何せ、その時は厳密に言うと軍所属ではなかった。
と言うか何だったら切り裂きジャックだったのだ。
「よく分からない…………です」
上手い答えが思い付かず、全く面白みのないことを言ってしまうスカーレット。
そんなやりとりを誤魔化すように食べ物を口に運ぶが、味が分からない。
より正確にいうなら感じている余裕がない。
「どうしたの?スカーレット、何か嫌いなモノでもあった?」
「いえ、その……………」
思えば最初からおかしかった。
つまりは、そう言うことだ。
言わないでおこうと思ったが、限界だ。
この気まずい空気に耐えられない。
「あたし達が兄妹だって、あたしも、コイツも、言ってないですよね。なんで知ってるんですか?」
食卓に降りる沈黙。
先程まで楽しそうに食事をしていたベイカーの手が止まった。
スカーレットだって分かっている。
目の前の男が、かつて己の母が捨てた男だと。
これでまだ、母の方に非がなければ、まだ、マシだ。
というより、スカーレットの性格から大喜びするだろう。
だが、現実は違う。
母の方に非がある。
もっと言うなら全面的に母が悪い。
そんな母を持つ自分が今、この場所にいるということの居心地悪さ。
「……………スカーレット・スヴェントとベイカーが来るとルイーズさんから聞いていたからね」
ピーターは、食事の手を止めて話を続ける。
「『スヴェント』と『ベイカー』、それと『ルイーズさん』、これだけ揃って察しがつかないほどマヌケじゃないよ、僕は」
「…………全部分かった上で受け入れたんですか?なんで?」
「…………わだかまりがなかったかと言われれば嘘になる。でもね、君の顔を見たらどうでもよくなっちゃった」
言い合いが聞こえる扉を開けたときの様子を思い出す。
「二人ともそっくりなんだもの。あぁ、やっぱり兄妹なんだなぁって思ったら何だか全部どうでもよくなっちゃったよ」
よほど自分の心境の変化が面白かったのだろう。
ピーターは、屈託なく笑いながら食事に手を付ける。
ベイカーもそれにならうように食事を再開しようとして、本来の目的を思い出した。
「あのさ、父さん。これ、教官から預かってきたんだ」
そういってルイーズが託したモノを渡す。
「中身は教えてくれなかったんだけど…………」
ベイカーの言葉を聞きながらピーターは、封筒の中身を取り出す。
「……………!!」
「何が入ってたの?」
ベイカーの質問にピーターは、封筒の中身を見せる。
「『グランツ音楽祭参加通知書』…………?」
4連休も後半ですね。
では、また外伝91で( ̄∇ ̄)