教官   作:takoyaki

93 / 97
外伝93です。


久々に週2投稿です!
てなわけで、どうぞ!


「やっさしいですね〜ルイーズ!」

 「忘れ物はない?」

 「無いよ」

 「お世話になりました」

 翌朝、ベイカーとスカーレットの二人は玄関の前で、見送りを受けていた。

 「それじゃあ、父さん。楽しみしてるね」

 「あたしも」

 「あぁ。任せなさい」

 ピーターは、優しく頷いて見せる。

 そして、ひらひりっと手を振る。

 「いってらっしゃい」

 

 

 

 

 「「いってきます」」

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 

 少し前。

 

 

 留置場。

 

 

 

 

 「よぉ。まさかお前が来るとは思わなかったぜ」

 刀の切り裂きジャックは、アクリル板の向こうにいる人間にニヤリと笑いながら話し掛けた。

 「まあ、私も幾つか気になるので来たんですよ」

 人間、クイーンは、そう答えた。

 「ルイーズは?」

 「別件で手が離せないので、私で我慢してください」

 クイーンの言葉に刀の切り裂きジャック、肩をすくめる。

 「何が聞きたい?まあ、答えられる事なんて限られてるがな?」

 ルイーズが組織について質問したとき、一切答えなかった事をクイーンも聞いている。

 「切り裂きジャックの中で一番強いのは誰ですか?」

 「全員等しく強い」

 刀の切り裂きジャックは、自分を親指で指す。

 「もちろん、オレも」

 胡散臭そうに眉をひそめるクイーンに、刀の切り裂きジャックは、面白そうにカラカラと笑う。

 「嘘じゃねーさ。分かってると思うから言うが、全員、自分の武器を極めている。だから、弱い奴なんていない」

 クイーンは、少しだけ考える。

 一人一人の戦績を考えるとルイーズだけが勝っているだけで、後は、微妙だ。

 ベイカーに関して言えば逃げることに徹して何とかと言うところだし、クイーンは、一度負けており、エラリィとの共同戦線で初勝利だ。

 (全部が全部とは言い切れないですが、あながち間違いでもなさそうですね)

 ルイーズでないとこれ以上、嘘をついているかどうかの判断が出来ない。

 「もう少し時間があるぜ?これで終わりか?」

 クイーンは、チラリと看守を見る。

 ルイーズの推理が当たっているなら軍内部に切り裂きジャックの関係者がいる。

 下手なことを聞けば自分達を窮地に追い込みかねない。

 「…………切り裂きジャックになった経緯は?」

 「あー…………何年か前によぉ、裏路地で人を殺していたんだよ」

 意外な余罪にクイーンの頰が引きつる。

 看守は、思わず目を丸くした。

 「なんでですか?」

 「その日は、絶対やろうと心に決めていたんだよ」

 刀の切り裂きジャックは、肩をすくめる。

 「お前らに分かるように言うなら、アレだ、『カレーを食べよう』と思ったら何が何でも食べたくなる時があるだろ?その日は、まさにそういう日だったんだよ」

 「殺害相手に対しての怨恨とかはなく?」

 「あぁ。恨もうにも初対面だったしな」

 クイーンは、改めて目の前の男が、普通の人間とは違うことを認識した。

 「久々にヒリヒリした殺し合いの中での結果だった」

 刀の切り裂きジャックは、クイーンに構わず更に続ける。

 「その闘いと結果に満足してたらよ、何処からともなくそいつが現れてな、オレにこう言うわけよ、『その力で生きてみたくはないか?』って」

 「それで?」

 「当然、オレは頷いたさ。ルイーズにも言ったがオレは人殺しが好きなんだ。人殺し(それ)に理由なんていらない。そして、それだけで生きられるんだったらそれに勝るものはない」

 刀の切り裂きジャックは、懐かしむように続ける。

 「そっからは、早かったぜ。あっという間に切り裂きジャックに招き入れられて、人を斬って、斬って、斬りまくってた」

 「……………その道に後悔は?」

 「ないね」

 刀の切り裂きジャックは、肩をすくめる。

 「別に誰かに裏切られた、騙された、捨てられた、虐げられた、そんな事が原因でここに辿り着いたわけじゃない」

 刀の切り裂きジャックは、胸を張る。

 「生まれたときから悪党、そして殺人鬼の性を持っていただけだ。でも、別にただの一度もそれを儚んだことなんかない。寧ろ誇っていきた」

 刀の切り裂きジャックは、アクリル板に額を押し付ける。

 「オレは、いつだって、この生き方を誇ってきた。

 この生き方が好きだ。

 そして、この生き方を選んだ自分が大好きだ」

 本人は、気付いていないのだろうが、刀の切り裂きジャックの目が爛爛と輝き、口角が吊り上がっていた。

 分かっているのだ。

 自分が狂っていることも、

 それが到底、人の道から外れていることも、

 だが、それを悲観しない。

 矯正しようともしない。

 在るが侭を受け入れるだけではない。

 在るが侭を好んで、誇って生きている。

 「…………ほんと、早々に捕まえて正解でした」

 クイーンは、ため息を吐いて立ち上がる。

 「なんだ?もう行っちまうのか?」

 「えぇ。おまえが、おかしいと言う以外得られる情報がなさそうなので」

 刀の切り裂きジャックは、つまらなそうな顔になると、アクリル板が額を離した。

 「まあ、オレも仕事のことはあんまり話せねーしな」 

 「…………ルイーズにも言っていたみたいですけど、なんか呪いでもかけられているんですか?」

 「別に。まあ、一応仕事だったんでな。ポリシーって奴だ」

 「危機管理意識の高いことですね」

 クイーンは、肩をすくめて扉に向かって歩いて行こうとして、ふと足を止める。

 「最後に一つだけ。お前は、どうしても気に入らなくて人殺しの依頼を断ったことはあるんですか?」

 「ないな。まあ、どーーーーーーっしても我慢できないことがあれば断ったろうがな?」 

 「そのどうしても気に入らないこととは?」

 「『質問は一つ』だったはずだろ?」

 どうやら答えるつもりはなさそうだ。

 クイーンは、看守に退室を告げ、部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 

 「おかえ……………なんだ、君か」

 「なんだは、ないでしょう」

 クイーンが詰め所に戻ると落胆したルイーズが出迎えた。

 「エラリィは?」

 「まだ作業中。休憩までもう少しってところだねぇ」

 ルイーズは、そう答えながらティーコージーを外し、温めておいたティーカップに紅茶を注ぐ。

 「それで?刀の切り裂きジャックは、どうだったんだい?」

 「……………あいつは、ルイーズの推理に当てはまらないですね」

 クイーンは、紅茶を用意してくれたルイーズに一言礼を言って口をつける。

 「表の身分とかそういうモノもなく、最初から最後まで人殺しです」

 クイーンのついでに自分の分注いだルイーズは、スコーンに手を伸ばす。

 そうクイーンは、それを確かめたかったのだ。

 刀の切り裂きジャックの表向きの身分が分かれば、そこを足がかりにして捜査を進められるはずだ。

 とは言え、軍の中に切り裂きジャックがいる以上クイーンもあれ以上聞けなかった

 「それ以外の情報は?」

 ルイーズは、レーズンのスコーンを齧る。

 「ないですね。あ、でも、切り裂きジャックは、全員同じ強さらしいですよ?」

 「スカーレットの話と微妙に矛盾するんだよなぁ………」

 「組織のトップだからって、別に実力もトップとは限らないでしょう?」

 「後は、実力を隠している不届き者がいるか、ってところだねぇ」

 「私達の戦績を見る限り相対した連中は、似たようなものだと思うですけれど」

 スコーンを飲み込んだクイーンは、紅茶に口をつける。

 「となると、まだ出会っていない切り裂きジャックがいるとか…………まあ、その辺は追々と探ってくしかないねぇ」

 「そうですよねぇ」

 結局、決定的な証言を引き出せない以上、どこまで言っても想像でしかないのだ。

 小さくため息を吐きながら、クイーンは、もう一つのスコーンに手を伸ばす。

 「ところで、ルイーズ?」

 「なんだい?」

 「昨日は寝られたんですか?」

 「…………………何が言いたいんだい?」

 「クマ凄いですよ」

 ルイーズは、慌てて自分の目元を触る。

 「まあ、嘘ですけど」

 ピタリと動きを止め、ジロリとクイーンを睨む。

 「こんな手に引っかかるなんて、らしくないですね」

 クスクスと笑いながらクイーンは、不満そうに口を一文字に結んでいるルイーズを見る。

 「心配なんでしょう?スカーレットとベイカーが仲直りできたか」

 ルイーズは、ピタリと動きを止める。

 因みにクイーンは、スカーレットがベイカーの制服を盗んだ理由をルイーズから聞いている。

 ベイカーとベイカーの父親を見れば流石にスカーレットだって、何か行動を起こそうとするはずとルイーズは、考えていた。

 十数年の積み重ねのせいで上手くいかないのは目に見えている。

 となれば、ルイーズに相談の電話が掛かってくるだろうと身構えていたのだ。

 「ところが、GHSが鳴ることはなかったんですよね」

 実は、リッパーが相談相手になっていたのだが、もちろん、ルイーズは知らない。

 「別に。気にしてない」

 「嘘は良くないですよ、教官」

 ガチャリと扉が開き、白衣に身を包んだエラリィが出て来た。

 「僕に疑似リリアルオーブの説明してる最中、しょっちゅうGHSをちら見してたじゃないですか」

 エラリィは、そう言いながら、スコーンにジャムをつけて食べる。

 「…………………」

 ニヤニヤしているクイーンにルイーズは、不機嫌そうに眉を吊り上げる。

 まあ、クイーンの言っていることは大方当たっている。

 先程からルイーズは、ベイカーとスカーレットの二人が帰ってくるのを待っているのだ。

 たがらこそ、クイーンに向かってあんなことを言っていたわけだが。

 「やっさしいですね~ルイーズ!」

 椅子から立ち上がったクイーンは、ルイーズを後ろから抱きしめながら頭をなでる。

 鬱陶しそうに顔をしかめるルイーズなど、何その。

 クイーンは、わしゃわしゃと撫でる。

 そんなことをしていると扉が勢いよく開いた。

 

 

 

 

 「だーかーらー、俺のせいじゃないって言ってるでしょ」

 「少なくとも、あたしのせいじゃねーんだから、答えなんて一つしかねーだろ!」

 二人、スカーレットとベイカーが言い争いながら帰ってきた。

 「おかえり~。賑やかだけどどうしたんだい?」

 ルイーズは、クイーンの顔を手で押し返しながら二人に聞く。

 その質問に一番最初に食いついたのは、ベイカーだ。

 「駅に降りたときにこの切符の目的地じゃないって言われたんですよ」

 「切符買ったのあたしじゃねーんだから、原因なんて一人だけだろうが!!」

 スカーレットも負けじと言い返す。

 「つーか、足りない分の料金払って終わったんだから、いいだろ!!あたしが問題にしてねーのになんで、わざわざ蒸し返してんだ!!」

 「いや、なんか暗に俺のせいって言ってるから」

 「暗にじゃなくて、明確に言ってんのが分かんねーのか─────」

 スカーレットは、そこで言葉を切り、大きく息を吸い込む。

 

 

 

 

 

 「────この、クソ兄貴(ヽヽ)!!」

 

 

 

 

 

 その言葉にルイーズ、クイーン、エラリィは、ピタリと動きを止める。

 そんな三人に構わず二人は、言い争いをなおも続ける。

 「…………聞き間違いじゃないですよね?」

 エラリィは、その単語に少し戸惑いながらクイーンとルイーズを見る。

 クイーンは、ニヤリと笑いながらルイーズの頭に自分の顎を乗せた。

 「────仲直り、出来たみたいですね」

 「みたいだねぇ」

 そう答えたルイーズは、頭の上に乗っているクイーンをどかす。

 「さてと、二人とも。報告がまだだよ。とっとと争いやめて、席に着きたまえ」

 「「だって!!」」

 「紅茶冷めるし、スコーンもなくなっちゃうよ?」

 「「……………………」」

 二人は、口をへの字にしながら席に着く。

 そんな二人をニコニコしながらルイーズは、眺めていた。

 「なんか、いつにも増して教官、機嫌いいな」

 エラリィは、クイーンに耳打ちする。

 エラリィの言葉にクイーンは、クスリと笑いながら口を開く。

 

 

 

 「何やかんや言って仲の良い人を見るのが好きなんでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数秒後、このセリフがクイーン自身にも降りかかっていることに気が付き、しばらく俯くことになった。

 

 

 

 







何やかんやで仲直りです!!

今後は、クイーン隊として活躍してもらいましょう!!


ではまた、外伝94で
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