鬼滅の刃の映画見てきました!!
レイトショーだってのに凄い人でした。
兄妹の絆が限定公開されたとき、『鬼滅の刃が映画館で見られる機会なんて早々ない!!』と思い、夜明けと共に公共交通機関に乗って見に行ったこともすっかりいい思い出です。
というか、今回映画館で見られたって事は別にあの時、無理して行かなくても良かったんじゃ…………いや、あった!!だって入場者特典貰えたもん!!
てなわけで、どうぞ
『クルスニクの日記に出てくる、精霊を四つ答えよ』
夕飯を食べ終えたクイーンとベイカーは、大広間のソファに座りながらぼーっとテレビから流れるクイズ番組を見ていた。
今日の訓練を終えた面々は各々好きな時間を過ごしている。
因みにエラリィとルイーズは、擬似リリアル・オーブの完成に向けて、夕食を食べ終えるとすぐに研究室に閉じ籠もった。
「ベイカー、分かるですか?」
「本を余り読まないので…………」
「そこは、間違ってもいいから答えないと次から使って貰えなくなるですよ」
「どこ目線の忠告ですか。俺は軍人ですよ?」
「広報の一環でテレビ番組に放り込まれることあるんですよ。因みに過去にクイズ番組に出演した奴がいたです」
「うわっ………絶対ヤダ。というか、クイズ番組だったら教官出した方が………いや、やっぱり何でも無いです」
「危険察知能力が、上がって嬉しい限りです」
「風呂あがったぞー」
そんな会話をしていると寝間着に着替えたスカーレットが、タオルで頭を拭きながら大広間に入ってきた。
「それじゃあ、ベイカー入ってきてください。洗濯機を回さないといけないので」
「隊長は?」
「一番最初に入ってるですよ」
「分かりました」
ベイカーは、タオルと着替えを持って風呂へと向かった。
広間に残されたのは、クイーンとスカーレット。
「スカーレット。お茶飲まないですか?」
「えっと、それじゃあ、お言葉に甘えて」
スカーレットは、そういってポットを探し始める。
そんなスカーレットを見てクイーンは、目を細めた。
「ルイーズの淹れた紅茶があるので大丈夫ですよ」
「あ、そうスか」
クイーンにそう言われたスカーレットは、席に着く。
クイーンは、二つのカップに紅茶を注ぐ。
そして、隣に座るよう促した。
スカーレットは、特に逆らう様子を見せずクイーンの横に座る。
「ルイーズは、料理出来ないクセにお菓子と紅茶の腕はピカイチなんですよね」
紅茶を注ぎ終えるとクイーンは、机の上にあるクッキーをかじる。
「文化祭の時は、それで随分助けられたス」
ほんの数ヶ月前のことだが、随分昔のように思える。
スカーレットは、あの慌ただしい日々を懐かしむように微笑む。
「文化祭ですか………いいなぁ………私もルイーズの制服エプロン姿見たかったです」
「ここで菓子作るときとか着ないんスか?」
「違うんですよ!!学生服を着たルイーズのエプロン姿が見たいんです!!」
力強く言うクイーンにスカーレットの頰が引きつる。
スカートを嫌うルイーズは、基本的にズボンだ。
エプロンもその上に身につける。
クイーンの求めるものとは、また違うのだ。
「取りあえず、熱意だけは伝わったッス」
「ふむ、なら、熱意以外も伝えないとですね」
クイーンは、微笑みながら続ける。
「スカーレット、尽くしすぎです」
クイーンから発せられた思わぬ言葉にスカーレットは、思わず硬直した。
「夕食の時、ドレッシングを欲しがったスカーレットは、席を立ってまでして、取りに行ったですよね?」
「え、えぇ。まあ」
「食事中、スカーレットは常に誰が何を求めているかずっと注意してるですよね?」
「まあ」
「お茶にしないかと私が言ったのににスカーレットがポットを探したですね?」
「そりゃあ、まあ」
クイーンは、スカーレットを見て苦虫をかみつぶしたような顔になる。
少しでも申し訳なさそうな顔しているならまだいい。
だが、スカーレットは、戸惑ってはいるが、詫びれもせず答えている。
「隊長?」
「気を遣うのは、当然です。気を配るのも当然。
でも、スカーレットは、それらを通り越し私達に尽くし過ぎている」
「そうスか?」
自覚がない。
それをおかしいと思っていない。
つまり、
「スカーレット、スヴェント家にいたとき、ずっとそうやっていたんじゃないですか?」
「えぇ」
さも当然というふうに言ってのける。
スカーレットは、ずっとスヴェント家で気を張っていた。
嫌われないようにと。
そんな生き方が染みついてしまっているのだ。
だから、食事中もドレッシングを取ってほしいの一言も言えない。
いや、言うという発想がないのだ。
「スカーレット。取って欲しければ言ってください。おかわりが欲しかったら言ってください」
優しく、けれども少しだけ厳しい声音でクイーンは、語りかける。
「どうして、そこまで………」
「だって、」
クイーンは、ポットからカップに紅茶を注ぐ。
「食事は、楽しい方がいいじゃないですか」
軽くウィンクするクイーン。
そんなクイーンの言葉にスカーレットは、目を丸くする。
あの日から家族の食事が苦痛だった。
大勢で食べるのを楽しいと思えたのは、ここに来てからだ。
それでも身に付いたクセは抜けない。
気付かなければそれまでだし、気付いたとしても、それをわざわざいう必要はない。
何せ、自分達には、一切不利益が無いのだ。
それをクイーンは、わざわざ口に出して指摘してくれた。
間違っていると教えてくれた。
それは、ずっとスカーレットが望んでいたことだ。
「え?スカーレット?」
戸惑うクイーンの声。
スカーレットは、ようやく自分の頰が濡れている事に気付いた。
「いや、そんな強めに言ったつもり無いんですけど………」
「違うんス………違うんスよ…………」
ずっと、ずっと望んでそれでも手に入らなかった。
その一言をようやく言ってもらえた。
その事だけで胸がいっぱいだ。
「隊長。ありがとうございます………出来るだけ、直していくッス。だから、気長に待ってください。そして、出来れば間違えるたびに指摘してください」
涙を流しながら笑うスカーレットにクイーンは、少しだけ戸惑った後、頷く。
「えぇ。私は、スカーレット達の隊長ですからね。言われなくたって言うつもりでしたよ」
◇◇◇◇
「なにこれ?」
「静かにしてください」
研究室から出て来たルイーズは、クイーンに膝枕されて寝ているスカーレットを目にする。
「紅茶に何か入れたんじゃあないだろうねぇ?」
「ルイーズじゃあるまいし、そんなことしないですよ。単純に泣き疲れたんですよ」
ルイーズは、クイーンに言われてスカーレットの目元を見る。
確かに少しだけ目元が腫れている。
「何、泣かしたのかい?」
「人聞きの悪いこと言わないでください」
左手でスカーレットの頭を撫でながら不服そうに答える。
「ここでの食事中のスカーレットの行動を指摘しただけです。で、それを直すように言ったんです」
クイーンは、そこまで言ってルイーズを見る。
「ルイーズも気付いていたでしょう?」
「まあね。だから、自分で気付いてもらおうとしたんだけど、」
ルイーズは、ため息を吐く。
「無理だったんだねぇ」
「えぇ。スカーレットにとってそれは、当たり前の事なんですよ。だから、私が口を出したです」
すぅすぅと寝息を立てるスカーレットを見て、ルイーズは、苦々しげに舌打ちをする。
「想像以上にスヴェント家での日々は、大分ろくでもなかったようだねぇ」
だからこそ、スカーレットは、涙したのだ。
優しさにふれ、厳しさにふれ、思わず涙が流れた。
あそこでは得られなかった暖かさにスカーレットは、ようやく触れることが出来たのだ。
「それで、大泣きして最後は膝枕と」
「そう言うことです」
クイーンとルイーズは、肩をすくめながらそう言い合う。
「さて、こんなところで寝てたら、風邪引くし、部屋に連れてくよ。それに、君の足も限界だろう?」
「実は、痺れがいい感じに限界です」
クイーンは、そういって苦笑を浮かべる。
ルイーズは、スカーレットを背中に背負い、スカーレットの部屋へと向かった。
背中で寝息を立てるスカーレット。
「やれやれ、安心しきったように眠っちゃってさ」
階段を上り、スカーレットの部屋に入る。
ルイーズは、ベッドにスカーレットを寝かせ、布団を掛ける。
少しだけ目元の腫れているスカーレット。
普通に生きていれば手に入れられたであろう幸せを一体いくつ取りこぼしてきたのだろう。
「これから、少しずつ幸せになれるよう私は、祈っているよ」
ルイーズは、そういって部屋から出て行った。
◇◇◇◇
翌日。
「あー…………」
目を覚ましたスカーレットは、昨晩の事を思い出し布団に顔を埋める。
十代も後半に差し掛かったというのに大泣きして膝枕とか、恥ずかしいにもほどがある。
今日は一日、布団から出たくない。
とはいえ、そうは問屋が卸さない。
「あ″ーーーーーー!!」
ひとしきり叫ぶと朝食づくりのため、台所に向かった。
「おはようです。スカーレット」
階段をおりたところでクイーンとばったり会った。
昨日のことが脳裏によみがえる。
「え、えっと、あの、あたし、その昨日は…………」
しどろもどろになるスカーレットにクイーンは、面白そうにクスクスと笑う。
「別に構わないですよ。それに私は別に言いふらしたりしないですから」
「そうですか………なら」
「あれ?スカーレットじゃん?もう起きたの?」
ベイカーの声が聞こえ振り返る。
振り返るとベイカーは、大きな欠伸をするところだった。
「まあな。朝食作んねーとだし」
「俺がかわってやってもいいよ?膝枕で泣き疲れたんでしょ?」
「いや、そこまでしてもらわなくて…………いや、待て、兄貴なんつった?」
「俺がかわってやってもいいよ?」
「その後」
「膝枕で」
「はいそこ!」
スカーレットは、そこで遮る。
「隊長。聞いてもいいスか?」
「いいですよ」
「…………あたしをベッドまで運んだの誰ですか?」
「ルイーズです」
「兄貴」
「何?」
「誰からその話聞いた?」
「教官だけど?」
スカーレットの脳裏にクイーンの言葉がよみがえる。
クイーンは、言った。『私は』言いふらさないと。
なるほど確かに嘘は言っていない。
だが、それとこれとはまた別の話だ。
「ルイーズ!!」
スカーレットは、羞恥と怒りで顔を真っ赤にしてかけだし、二人の前から姿を消した。
「隊長…………」
「腫れ物に触るようにされるよりはマシじゃないですか?」
「あぁ。やっぱり分かってて黙認したんですね」
ルイーズがルイーズならクイーンもクイーンだ。
ベイカーは、大きくため息を吐いた。
因みにスカーレットは、間に合わず、エラリィの耳に届きしばらくからかわれることになった。
1人と1匹のころは結構させてましたが、この外伝では膝枕が初だしな気がします。
なんだったら、女性の膝枕とか初めて書いたかもしれません。
だって、ほとんどホームズがする側でしたからね。
では、また外伝97で( ̄∇ ̄)