Fate/trinity chalice -The Fictitious Hero-   作:琴浪新(水)

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Fateの二次創作を書き始めようと思いまして、書くことにしました。
設定を二週間ほど考えまして、まず登場させたい英霊が多すぎることに気づきました。
そこで7人に絞るのをやめたあたりから暴走が始まり、登場するメインの英霊は40騎を越え、現在ルートが7つあるという事態に……。
とりあえず落ち着いて、少しづつ書いていきます。
これが第一ルート、「The fictitious Hero」「偽りの英雄」です。



prologue
prologue 伝説の始まり


 それは霧のような雨の降るなんでもない夜のことだった。

 厠の前の川岸の道で私は過ちを犯した。

 私の目の前で弟が、弟だった者が倒れている。

 その体は千切れ、分断されている。

 四肢がもげて、バラバラになり、その遺体は見るに堪えない有様だった。

 赤い、紅い血が辺り一面の水たまりを赤く濁らせている。

 血は私の両腕からも滴る。

 私の着物は所々が赤く染まり、髪も赤い水で濡れている。

 手を見る。

 紛れもない、弟の血が私の手を濡らしている。

「ありえない……」

 私は呟く。

 そう、有りえるはずがない。

 私が、腕力で遥かに勝る弟に勝てるはずがないのだ。

 弟は誰よりも強く、誰よりも勇ましい。

 兄、いや姉である私よりも遥かに……。

 ここで私は死ぬはずで、死ぬつもりで私はここに弟を呼び出したのではなかったか……。

 しかし、弟は私に負けた。

 知恵ばかりで腕力など弟の足元にも及ばぬ私に……。

 何故?

 私は尋ねる。

 私は確かに父に背き、妻を娶り、私を呼びに来た弟に立ち向かおうとした。

 妻を守るために弟を倒すなどとそんな夢が叶うはずがない、と思いながらも……。

 では何故、弟は私ごときに敗れ、地に伏している?

 私は問う。

 何故? 何故弟を殺めることができたのか、と。

 知恵を巡らしたわけでもない。

 罠を張ったわけでもない。

 ただ、妻を守る一心に彼に立ち向かった私は、当然のように彼に殺されるはずではなかったのか?

 そうすれば父を裏切った罪も晴れると、そう私は考えたのではなかったのか?

「どうして?」

 私は弟の亡骸に問う。

 いや、あるいは自分自身に問うていたのかもしれない。

 当然ように答えは返ってこない、はずだった。

「それはお前が私と契約したからだ」

 私の影は答える。

 私と同じ顔が答える。

 私の顔が……。

 いや、それは弟だったのかもしれない。

 双子の私たちは本当にそっくりだったのだから。

 しかし、その声は私自身の中から響いているようで、眼前の死体から響いているようで捉えきれない。

 その声は私を捉えて逃さなかった。

 曰く、

「お前は妻を守る力を私に願い、代償として死後の己の魂を私に差し出した」

 と、その声は言う。

 お前は英雄になる、と。

 そういう運命を手に入れた、と。

 しかし、私は思ったのだ。

英雄(それ)は、弟ののような人にこそふさわしい呼び名だろう」

 と、そう思ってしまったのだ。

 声は語る。

「なるほど、確かにそうかもしれない。ならば、弟になれ。お前は弟として生きるのだ。そうすれば真にお前の妻は救われ、お前の罪も消える」

 なるほど。私は納得してしまった。

 確かに、私がこのまま弟を殺した犯人となれば妻たちは罪人の妻となる。

 ここで、私が弟を偽って私を殺したことにすれば妻は助かる。

 さすがの父も亡き者の妻を娶るほど彼女たちを求めてはいないだろう。

 そう、思ってしまったのだ。

 声は畳み掛けるように告げる。

「ならば道は一つ。私の力でどんな手を使ってでも英雄になれ。幸い、腕力はなくともお前には知恵がある。また、お前にはある力もあるしな。お前が弟の名を高めれば少しは弟の気も晴れるだろうよ」

 何故あの時そんな言葉を信じてしまったのかわからない。

 あの時はそれしかないと、そうすることが本当に弟の為だと、そう思えたのだ。

 当然、そんなわけがなかった。

 弟が何を望むかなどは弟にしかわからない。

 私は私が楽になる言い訳を講じていただけだった。

 私は自分を罰してみせることで罪を軽くしようとしているだけだった。

 弟に、父に、謝罪の一つもせずに……。

 声は言う。

「お前は英雄になる素質がある。親に嫌われ、妻に憎まれ、多くのものに裏切られて、それでもお前は英雄となるか?」

 ああ、何度思い返しても馬鹿らしい。

 あの時私はこう答えたのだ。

 ただ都に返って父と弟の墓に謝罪をすることの方が遥かに正しいことだったというのに……。

「いいでしょう。貴方と契約します。私は英雄となり、国を守り、弟の名を上げる。そして私が死んだなら魂なり何なりと貴方に捧げよう。代わりに貴方は私を支えるのです」

 声はそれを聞いて満足げにこう言った。

「今の言葉、忘れるな。死後は人界の守護者となりてその力存分に振るってもらう」

 次の瞬間、あたりを覆っていた神気は消え、元の厠の前の川岸の道に戻っていた。

 暗い空からは霧のような雨が降り注いでいる。

 目の前には一体の私と瓜二つの死骸が転がっていた。

 ヲウスの血は流れ、地面は数カ所を残して元の色を取り戻している。

 それでも私の手に付いた血は流れていなかった……。

 私は亡き弟の亡骸に向かって話しかける。

「すまない弟よ(ヲウス)、いや兄さん(オウス)(オウス)、いや(ヲウス)は…………」

 あの時、私は弟になんと誓ったのだったか…………。




主人公のサーヴァントの過去ですね。
すでに正体ばれちゃったかもしれないですが……。
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