Fate/trinity chalice -The Fictitious Hero- 作:琴浪新(水)
誰が来る?
嵐の瞳の男はガーデンを出て大通りを歩いていた。
ブロードウェイを真っ直ぐガーデンからパークへと、ビルの並ぶ街並みを歩いていく。
ふと、男は立ち止まって車道を挟んで逆にある歩道を見た。
反対の歩道から強い魔術の波動を感じたのだ。
その発信源には薄紫色の髪を肩ほどまで垂らしたそこそこ長身の男が立っていた。
背には黒い棺のような物を背負っている。
それが重いのか、男の足は遅い。
そしてそんな彼の横を歩くのは、大人しめのファッションに身を包んだ中背の黒髪の青年。
その青年は隣の紫髪の男と会話をしながら歩いていた。
が、突然青年のイヤリングから黒い靄が発生し青年が男の方を見た。
二人の視線が交錯した直後、次から次へと車が通り男の視界が防がれる。
そして車の流れが途絶えた時、二人の気配は消えていた。
男はしばらくその場にとどまっていたが、やがて歩き出す。
マジソンスクエアガーデンへと……。
「サミュエル君、やはり街中での実体化は控えた方がいいんじゃないかい?」
魔術師の男とそのマスターの青年は謎の魔術師の男に睨まれたことに慌てて右折してその道を歩いていた。
キャスターはそこまで気にしていないが一応忠告といった感じでマスターに方針を訪ねる。
「キャスターがいれば別に大丈夫だろ。
この地球上の殆どのものがキャスターとの腕相撲には勝てないとオレは確信するけどね」
「……あの、私は一応キャスターなんだが」
「自分で一応、を付けてる時点で似合わない自覚があるんだろう?」
青年は手で両手の全ての指にはめられた色とりどりの宝石指輪の一つを弄びながら、隣を歩くキャスターに毒舌を向ける。
キャスターも言い返してはいるのだがイマイチ反論に力がない。
なにせ彼は今も超重量の匣を背負って歩いているくらいだからだ。
「いや、まぁ伝説が伝説ですからねぇ……。
いやまぁ事実なんですけども……」
「お前、筋力A以上って……ハァ…………。
その筋力があれば理想郷なんてジャンプするだけで届いたんじゃないのか?」
「私の後ろに多くの民がいたことをお忘れかな?」
「そこは『流石に無理だ』と言ってくれ……。
理想郷のありがたみが無くなっちゃうだろうが」
なおも無駄な口論一歩手前の貶し合いが続く。
どうでもいいといえば語弊があるが、低いならともかく、高すぎるステータスに突っかかってサーヴァントを馬鹿にするマスター。
彼の持つ宝石一つ一つには、それぞれ悪魔が込められており、彼はそれを使役して奇跡を起こす、正道からは少し外れた魔術師なのである。
先ほど、謎の魔術師の男に見られていることを彼に教えたのも、彼のイヤリングに使役された索敵専門の悪魔だった。
「サミュエル君も理想郷を聖杯に願うのですか?」
「そんなもん願うわけないだろう……。
オレが願うのはソロモンの指輪だけだ。
世界中の悪魔を従える程の力があればジュルリ……」
そして彼は魔術師としてもちょっとおかしかった。
簡単にいうと変人である。
根源など彼は求めておらず、彼が理想とするのは悪魔と友達になることのみ。
彼の好きな物は悪魔のみなのである。
筋力ステータスが並みのセイバーを上回っているキャスターもどうかとは思うが、根源への到達よりも悪魔と友達になることを目指す青年も青年で狂っていた。
「そんなもんってこのヤロウ……。
あとキモイですよサミュエル君」
「キャスター、オレは今無性に令呪を使いたい衝動に駆られているんだが」
青年は右手の甲に描かれた赤い紋をヒラヒラとキャスターの目の前で振って見せる。
夜の街の明かりが指にはめられた複数の宝石に反射して美しいが、やっていることは使い魔への下らない脅しである。
「召喚後何回目ですか! マスター……。
まだ開戦前ですよ、自重してください」
「ならオレには逆らわないことだな」
「理不尽!」
「それでこそ主従関係だろうが!」
言っていることは至極尤もなのだが、同じく主従関係のはずの悪魔達にトコトン甘い彼が言っても説得力皆無であった。
言っているそばからサミュエル青年はイヤリングの悪魔に敵っぽいの、を見つけたご褒美に魔力を与えている。
なおもブツクサと文句を垂れるキャスターを従えて? 青年は街を歩き続ける。
キャスターです。
これはわかりにくいですかね?
一応、本史の起源? に登場しています。
セリフ一瞬らしいですが……。
キャスターにして最高ランクの筋力ステータスを持つ魔術師……。
マジで格闘戦の可能性が……。