そして、罰としてカドケウスはケーリュケイオンの代わりにマスターから色々とお仕置きをされてしまうのだが……。
(多少エロいです。でもプチえろにとどめてます。あとけっこう長編になってますので、頑張って読んで下さい!!)
とりあえず、20000文字にまでなっているので、何とか頑張って最後まで読んで欲しいです。
<(_ _*)>何卒よろしくお願いします(笑)。
あと、読者様の股間の辺りを少しでもムズムズさせられれば、こちらの勝ちだと思ってます。
ではでは。
カドケウスは一人で、ファンキル学園の学生寮の廊下を、少し退屈した様子で歩いていた。
彼女は両手を頭の後ろで組み、赤紫のリボンをふよふよと頭の上で揺らしながら、ピンク色の可愛いスリッパをペッタンパッタントッペンタンとリズミカルに鳴らしながら歩いている。
カドケウスは特にあてもなく、学生寮の誰もいない廊下を、ただぷらぷらと散歩し、寮の談話室の横を通り過ぎる時には、部屋の中には誰もいないなと横目でチラリと確認してから、またパタペタとスリッパを鳴らしていった。
だが、彼女はその部屋を少し通り過ぎた所で、ピタリと唐突にその場に立ち止まった。
そして、その場で野うさぎのように、鼻をくんくんと鳴らして、周囲の匂いを嗅ぎ始めた。
彼女の鼻が、廊下にほのかに漂う、何かの甘い香りを感じとったのだ。
カドケウスは、くんくんとその匂いを嗅ぎながら、その香りの出どころに向かって、ふらふらと談話室の中へと入っていった。
そして談話室に入ると、周囲をキョロキョロと、あたかも宝探しをするかのような輝く瞳で、見回し始めた。
すると、壁際の戸棚の上に置いてある、シンプルで光沢のある白い紙の箱を見つけた。
カドケウスはすぐにピンときて、にんまり笑うと、さっそくその箱をテーブルに移し、いそいそとふたを開けて、その箱の中を覗き込んだ。
そして彼女は嬉しそうな驚きの呟きを漏らした。
「……わお♪」
その箱には、とても美味しそうな苺のショートケーキが7個と凝った細工のモンブランが1個入っていたのだ。
そう言えばとカドケウスは思い出していた。
先日、仲間のキル姫達が今日、自分達のマスターとお茶会をしようと言っていたのを。
カドケウスは、輝く瞳でそれらをじっと見つめて、ペロリと舌舐めずりをすると、ごくりと大きな音を立てて唾を飲み込んだ。
そして、その唾と同時に沸き上がってきていたイタズラ心が、彼女の胸の内にもわもわと渦を巻き始めていて、もう彼女には、どうしてもそれを抑える事が出来なかった。
カドケウスはおもむろに、ショートケーキの上に乗っている真っ赤な苺を1つ、指先でひょいっと摘まむと、そのままぱくりと口の中に入れて食べてしまった。
その苺はとても瑞々しく、噛むたびに甘酸っぱい風味が口一杯に広がってくる。
それは、ほんとにびっくりするほど美味しくて、カドケウスの顔に自然と笑顔が浮かんできた。
カドケウスは、周りの気配を気にする小動物のように、キョロキョロと一度周囲の様子を窺ってから、そのケーキを見つめたまま、しばらく考えを巡らしていた。
そして彼女は、またもやケーキに手を伸ばして、ケーキの上に載っている苺をもう一粒摘まんで、口の中に入れてしまった。
ひょいぱくっ。もぐもぐ。
カドケウスは、この苺の乗ってない2つの真っ白なショートケーキを見て、含み笑いをしながら独り言を呟いた。
「……んふふ、こっちのほうが面白いよね~」
カドケウスが考えたのは、お茶会が始まって、この苺のないショートケーキの事で色々と意見を言い合う仲間に対して、とりあえず自分が進んで、このイタズラをされたショートケーキを食べるとしても、それでは、すぐに皆に怪しまれて、自分の仕業だとばれてしまうので、何かつまらないと言う事だった。
それならば、もうひとつ苺のないショートケーキを増やしてしまって、誰かもう一人を巻き込んでしまえば、もっと長い間、その状況を楽しめるんじゃないか、と言うような事を考えたのだった。
そして、カドケウスは、巻き込む相手を選ぶならば、姉が一番適任だろうと思った。
あの姉ならば、こそっと耳打ちすれば、すぐに察してくれて、口裏を合わせてくれるはずであった。
それに姉ならば、食べてしまった苺に対してのフォローのほうも、後でやりやすいと言った利点もある。
カドケウスはくすくすと笑いながら、楽しげにお茶会のその時の状況を想像していた。
前もって苺を食べちゃうというイタズラをしかけたカドケウスは、もうそろそろケーキの箱を閉じようとしたが、何となく箱の隅にあるひときわ目立つ茶色のモンブランに目が引き寄せられた。
このモンブランが自分のマスターの分であることは間違いなかった。
自分のマスターは大のモンブラン好きで有名だからだ。
カドケウスは、このモンブランをずっと見ていて、またもや心の内のイタズラ心がうずうずと疼いてきた。
あとそれに、彼女の口の中に苺の酸味がまだ残っていて、彼女の舌が何か甘いものを欲しているからでもあった。
唾を飲み込んだカドケウスは、すっと人差し指を立てると、そのモンブランの表面を、なるべく目立たないように、ちょびっとだけ、その指で削り取った。
そしてそのクリームの付いた指をペロリと舐めた。
そのクリームは控えめな甘さで、とっても美味しい。
カドケウスは本当に幸せそうな笑顔になった。
実はカドケウスもモンブランは大の大好物なのだ。
カドケウスはその人指し指をくわえたまま、名残惜しそうにまたモンブランを見て、一瞬だけ躊躇した後に、またもやそのモンブランに指を擦り付けた。
今度は少し大きく大胆に。
モンブランの表面に指でなぞった跡がうっすらと残った。
カドケウスは、たっぷりとクリームがついたその指をぱくりと口に入れて、ちゅうちゅうと舐めとった。
調子にのったカドケウスは、さらにその指をモンブランに突き立てた。
その時にはもう、彼女の中にある、マスターの物は私の物、私ならマスターに何をやっても許されると言った、カドケウスとマスターの間だけに通じるような、独自の理論が猛烈に働いていたのだった。
そして、カドケウスはモンブランから引き抜いたクリームたっぷりの指をまたくわえて、美味しそうに舐めていた。
その時、カドケウスは廊下からこちらに近付く何人かの人の気配を感じとった。
カドケウスは慌ててケーキの箱を閉めると、急いでそれを戸棚の元の位置に戻した。
そして、彼女は窓を音もなく開いて、そこから身を乗り出すと、身軽に窓から飛び降りて談話室を抜け出た。
そして彼女は、中庭をスタタタと一気に駆け抜けて、誰にも気付かれずに、見事にその場から逃げ出す事に成功したのだった。
その頃、談話室にはケーリュケイオンを先頭にシェキナー、ロンギヌス、ミストルティンが入ってきていた。
彼女達はその手にお湯を沸かすポットやら、ティカップやお皿やフォークの載ったお盆などを持って、楽しそうに談笑している。
ケーリュケイオンがケーキの入った箱をテーブルの上に移して、お皿を並べ出した。
実はこのケーキを買うためにわざわざ街に出掛けたりして、今回のお茶会を計画して主催しているのは彼女なのだった。
ケーリュケイオンは、お茶会に呼ぶ残りのメンバーを皆に呼びに行ってもらい、自分は一人でうきうきと談話室で準備を進めていた。
カドケウスは、廊下を歩いているところをロンギヌスに、お茶会を始めるよと呼び止められて、いけしゃあしゃあと彼女と一緒に談話室へと向かうことになった。
そしてちょうど残りのメンバーのレヴァとパラシュも談話室に集まり、そこに何やら少しにやにやして怪しげな、カドケウスもそこに到着した時に、箱の中身の状態が初めて発覚したのだった。
ケーリュケイオンが箱の中身を見て険しい声をあげていた。
「……何、これは!?」
カドケウスは、姉がケーキを取り分けようとしているのを見て、冷や汗をかき始めた。
主催者が、自らケーキを取り分けるのが、自分達の習わしであるからだ。
カドケウスは後悔し始めたが、もう時すでに遅しだった。
……まさか、お姉ちゃんがこの会の主催者だったなんて。
道理でやたらと美味しい苺とクリームだった訳だ。
お姉ちゃん取って置きの高級店のケーキなのだろう。
皆がどうしたのと訊ねて寄って来て、揃って箱の中身を覗きこんできた。
そこには、苺がないショートケーキが2個と、無惨な形になっている1個のモンブランが見えた。
苺がないショートケーキはまだ良いのだが、モンブランは見た感じあまり洒落にならない形になっていた。
それに、それを食べるはずの自分達のマスターが、今この場にいないのが、その気まずさを倍増させている感じがする。
皆が眉を寄せて箱の中身を眺めていた。
カドケウスも一応その箱を覗き込んで、あら~これはひどい……と言った顔を自然に取り繕ろう事には成功した。
だが、改めてその箱の中身を眺めて見ると、指でつつきまくったモンブランの無惨な姿に合わさって、苺のないショートケーキのほうもあまり洒落になっていないように見える。
カドケウスは姉の剣幕に怯えて、全てを正直に話して謝る機会を逃してしまった。
そして、カドケウスは危険な賭けに出る覚悟を決めた。
もう、こうなったらしらばっくれるしかない。
カドケウスは平静を保って、その場の雰囲気に合う演技を始めた。
さすがそこら辺はイタズラの天才である。
だが、姉のケーリュケイオンだけは、妹のカドケウスのその様子をじっと見つめていた。
そしてケーリュケイオンは誰にともなく言い出した。
「全くこれは、少しイタズラが過ぎるわね。誰がやったのかしら?……今、名乗り出るなら許してあげてもよいのだけど」
皆が顔を見合わせて、こんな事をいったい誰がやるだろうと考え出した。
イタズラと言ったら、とりあえずカドケウスを連想するので、皆が一度はカドケウスのほうを見るのだが、カドケウスがケーリュケイオンのその言葉にも、まるで動じずにとても堂々としているので、みんな彼女を疑う事をしなかった。
だがケーリュケイオンだけは、ずっとカドケウスから目を離さなかった。
妹は、とても自然に振る舞ってはいるが、こちらを見る回数が、何かいつもより少ない感じがするのだ。
ケーリュケイオンは何気なくカドケウスに近づいて、ふと気が付いたように声をかけた。
「……あら?貴女、口元に何かついているわよ」
カドケウスはその言葉にも慌てずに答えてきた。
「え?ほんと?なんだろ」
とても自然な受け答えだった。
だが、ケーリュケイオンは一瞬カドケウスの手が、ほんの少しだけ動揺してピクリと小刻みに動いたのを見過ごさなかった。
ケーリュケイオンのカドケウスへの疑いが次第に強まってきた。
ケーリュケイオンは少し苦々しく思い始めた。
まったくもう。早めに謝れば許すと言っているのに……。
この娘はしらばっくれて逃げおおせると思っているのかしら。
この私に対してイタズラを仕掛けておいて、それが私にばれかけて、疑われてしまった後での、この私の疑惑の追及から……。
ケーリュケイオンは、カドケウスの事をしばらくの間じっと見つめて、妹が何も言い出さないのを確認すると、意を決した。
これはもう、一度皆の前でイタズラを暴いて、妹をきちんと叱るべきなのかもしれない。
ケーリュケイオンはカドケウスから離れると、ロンギヌスにこそっと耳打ちして入り口の扉を塞ぐように頼み、同様にレヴァとパラシュには、窓辺に立つように頼んだ。
そして、ケーリュケイオンはケーキの入った箱の前に戻り、ケーキの箱を指差して、宣言するように言った。
「では、これから犯人を見つける事にしましょう。もうこれからの謝罪、弁明などは、私は一切聞きません」
それを聞いたカドケウスは顔を青ざめて、まさかと言うような表情になっていた。
ケーリュケイオンは話を続けた。
「私のキラーズ、【ヘルメスの杖】は真実を見通す力を持っているの。私が今ここで、その力を使って、このケーキに悪戯をした犯人を見つけ出すわね」
彼女は両手を気持ち持ち上げて、意識を集中すると、瞳を閉じて呟いた。
「真実を見通す、その力を顕現せし象徴……螺旋を描く絡み合う二匹の蛇の1つ【ヒュドラ】よ!この場に出でよ!……トリートケインっ!」
(説明しよう!このトリートケインと言う掛け声はケーリュケイオン固有の呪文なのである)
ケーリュケイオンの服が、風に大きくはためいて、そのスカートがふわりと彼女の白い太ももを見せるまで舞い上がった。
そして、彼女のその言葉に応じて、頭に王冠をつけた青い瞳の黄金の大蛇が、彼女の背後に後光のように光輝いてその姿を現したのであった。
ケーリュケイオンはその大蛇に向かって言った。
「ひゅーちゃん、お願い。このケーキにイタズラをした犯人を私に教えて」
ヒュドラはその青い瞳を輝かして、そのケーキの箱を照らし出した。
すると、その場に、そのケーキの箱を開けている人物の映像がおぼろげに投影されてきた。
どうやらそれはこの部屋の過去の映像らしい。
そこに映し出された人物は、赤紫のリボンをした小柄な少女であり、その映像は、その少女がキョロキョロしながら部屋に入ってきたところから始まっていた。
そう、その人物は紛れもなく、この場にいるカドケウスその人であった。
映像の中の彼女は、箱を見つけてそれを開けると、嬉しそうに苺を二度頬張り、モンブランのクリームを指で触っては嬉しそうな顔でその指を舐めとっている。
だが、カドケウスは、自分が映ったその映像を見ても、まるで金縛りにあったようにピクリとも動けなかった。
姉が、ヘルメスの杖の魔法の大蛇を、皆の前で呼び出したのを見て、まずかなり驚き、更にはその力を皆の前で披露するのを目の当たりにして、かなり動揺していた。
まさか、姉妹でずっと秘密にしていた、この力を堂々と皆の前で使うとは思ってもみなかったのだ。
しかし、もうこれで、このいたずらが自分の仕業だと皆に完全にばれてしまった。
だが、とりあえずこの場から一旦逃げようにも、扉も窓も前もって仲間に、完璧に抑えられてしまってどうしようもない。
じりじりと詰め寄って来る仲間達を見て、カドケウスはもうヤケになった。
カドケウスは片手を天に向けて叫んだ。
「出でよ!螺旋の蛇の一つ【アウルム】!ディボードケインっ!!」
(解説しよう!このディボードケインの掛け声もカドケウスの固有の呪文なのである)
ケーリュケイオンと同様に彼女の後ろに、王冠を頭につけた赤い瞳の黄金の大蛇が光と共に現れてきた。
カドケウスはその大蛇に向かって頼んだ。
「あーちゃんっ!この場から私を逃がして!!」
ケーリュケイオンが慌てて叫んだ。
「あ!いけないっ!みんな、カドケウスを押さえてっ!」
それを聞いた皆が一斉にカドケウスに殺到する。
だが、一瞬早くカドケウスは大蛇と共に光の中に溶け込むように消え去っていった。
その場にはもう光の粒だけで、他には何も残ってはいない。
ケーリュケイオンは、皆に自分達のこの不思議な力の事を簡単に説明してから、マスターの元へと向かう事にした。
このゴタゴタにより、今日のお茶会はもう取り止めにしたからだ。
とりあえず、その事をマスターに説明しに行かなければならない。
ケーリュケイオンは、無事なケーキは皆に配って、苺の乗ってないショートケーキ2つを自分とカドケウスの分として残し、あとのモンブランもマスターの分として箱に残す事にした。
そして、ケーリュケイオンは中止の原因となったこれらのケーキをマスターに見せる為に手に持って、マスターの部屋へと向かった。
ケーリュケイオンはマスターの部屋に着くまで、逃げていった妹の事を考えながら歩いていた。
……あの娘は、いったいどこまで逃げていったのだろう。
ケーリュケイオンは、マスターの部屋の前まで来ると、その部屋の扉をトントンと軽くノックした。
するとすぐに部屋の中の奥のほうから返事があった。
「開いてるよ。入ってくれ」
ケーリュケイオンは扉を開けて、マスターの部屋の中に入り、奥の書斎へと向かった。
マスターは書斎の机で何やら書き物をしている。
ケーリュケイオンは少し落ち込んだ声でマスターに告げた。
「ごめんなさい、マスター。マスターが楽しみにしていた今日のお茶会が中止になってしまったの」
マスターは驚いた様子で振り向いて言った。
「えっ?そうなんだー。それは残念だなー」
だがそれは、何だか少し棒読みで演技をしているような口調であった。
ケーリュケイオンはすぐにその違和感を感じとったが、何故マスターがそう言うのかまでは分からなかった。
彼女はとりあえず説明の為に持ってきたケーキの箱を開けて、マスターに見せた。
「あの子……カドケウスのイタズラでね。開けたらこんな感じだったのよ」
マスターは箱の中身を覗き込んだ。
「ああ、なるほど……これか」
マスターは苦笑いをして言った。
何だか、マスターはこの事を前もって知っていたような感じがする。
マスターはケーリュケイオンに不思議そうな目で、じっと見つめられたのに気づき、慌てて口を開いた。
「あ、いや、まあ、しょうがないヤツだよなぁ。カドケは……。でもあれだ、俺はこのモンブランでも別にかまわんぞ。多少形はいびつでも、味は変わらなく美味しいだろ。ケーリュお勧めの店のなんだから。そりゃもう、とてつもなく美味いに決まってるさ」
ケーリュケイオンは、マスターのその言葉にふと頬が緩んで、微笑みを浮かべた。
それを見たマスターは、ここぞとばかりに言葉を足してきた。
「あ、それにだ!この苺の乗ってないショートケーキだが、1個はカドケの分で、後のもう1個はケーリュの分なんだろ?これに、うちの冷蔵庫にある果物を添えてさ、改めてちゃんとこれらをフルーツケーキとかにすれば、とりあえずそれで、ケーキは一応もう元通りって言う事にして……」
ケーリュケイオンは、マスターの言葉をそこまで聞いて、やっと腑に落ちた。
マスターが何でこんなにも頑張ってケ-キの件のフォローをしてくるのか。
そうなのだ。
本気で怒った私に怯えたカドケウスが、逃げてくる先は、たった1つしかないではないか。
たぶん、カドケウスは真っ先にここに来て、マスターにこの件の事を、洗いざらい全部説明したのだろう。
そしてその時に、怒っているこの私に対しての取りなしも、ちゃんと頼んでいるはずだ。
ケーリュケイオンは、額に指を当てて、はぁと小さくため息をついて言った。
「……ほんと、マスターはあの娘に甘いんだから」
マスターは少したじろいで聞き返した。
「え?あ、な、何の事だ?」
とぼけているのが見え見えである。
そうしてマスターと話している内に、ケーリュケイオンは、マスターがちらちらと部屋の隅のほうを、何度も見ている事に気が付いた。
自分には特に何も見えないが、たぶんそうなのだろう。
ケーリュケイオンは、その部屋の隅に目を向けると、そこに片手を伸ばして言った。
「ひゅーちゃん、その陰に潜む真実を照らし出して。……トリートケインっ!」
ケーリュケイオンの腰にベルトのように小さくなって巻き付いていた、螺旋の蛇の1つヒュドラがその鎌首をもたげて、澄んだ青い瞳を光らせた。
すると部屋のその隅っこに、うずくまっている赤紫のリボンをした少女の姿が現れた。
それは体育座りの身を丸めた姿勢で、蛇の力によって姿を消して、部屋の隅に身をひそめるようにしていたカドケウスの姿であった。
カドケウスは、あ、と言うような顔で姉を見てきた。
ケーリュケイオンは、怖い顔でカドケウスを見ながら妖しく微笑んだ。
「やっぱりそこにいたわね、カードーケーウースゥ」
「……あ、お、お姉ちゃん……」
顔を引きつらせたカドケウスは、後ろに後ずさろうとしたが、もうすでに部屋の隅にいるので、これ以上下がりようがなかった。
精神的に追い詰められていたカドケウスは、また蛇を呼び出して、この場から逃げようとした。
「あーちゃんっ!お願いっ、私を逃がして!ディボード……」
ケーリュケイオンはそれを見ても、少しも慌てずに、静かに言った。
「待ちなさいカドケウス。これ以上どこに逃げると言うの?貴女はマスターに助けを求めたのでしょう?貴女はマスターの先程からの、貴女に対する力添えを、全て無駄にすると言うのかしら?それこそ私は、そのような恩知らずな貴女を、絶対に許せなくなるわね」
それを聞いたカドケウスは何も反論出来ずに、心底困った様な瞳で、姉とマスターを交互に見ていた。
マスターはケーリュケイオンに向かって、なだめるように言い出した。
「まあ、な、ケーリュ。話はカドケから全部聞いたよ。あ~なんだ、カドケもとりあえず反省はしているみたいだからさ。ここは何とか大目に見てやってくれないか?」
ケーリュケイオンは、鋭い刺すような目で、カドケウスをしばらく見据えていたが、やがてふうと息をついて言った。
「……ごめんなさいは?」
カドケウスは、すぐさま床に手をつき、頭を下げて謝った。
「ごめんなさいっ!お姉ちゃん!!」
しょうがないと言った感じでケーリュケイオンは表情を緩めた。
「ではマスターに免じて、このケーキに対するイタズラの件だけは許しましょう」
カドケウスは、ほっとした様子でマスターのほうに目を向けた。
だが、ケーリュケイオンは、腰に手を当てて、カドケウスに詰め寄ると、改めて言い出した。
「……でも、企画したお茶会が中止になったのはまた別の話よ。これは私だけではなく皆にも迷惑がかかっているのだからね。もちろんスケジュールを空けてくれたマスターにもよ。その辺は貴女にも納得は出来るのかしら?」
その事実を突きつけられた、カドケウスは渋々と言った感じで力なく頷いた。
ケーリュケイオンは満足げに頷いて、宣言するように言った。
「では、これより貴女に罰を与えます。これは、お茶会を中止にした事に対しての罰ね。ちなみに、これはマスターや私や皆にかかった迷惑を全てひっくるめての罰とします」
彼女は目を光らせて言った。
「覚悟はいいわね?」
「あうぅ……」
カドケウスは床にぺたんとお尻をつけて座り込むと、もう観念したように呻いた。
マスターは何と口を出して良いか分からずおろおろしている。
ケーリュケイオンは、マスターのほうにチラリと目をやってから、カドケウスに向かって言った。
「さて、その罰、言わば貴女に受けて貰うお仕置きなのだけど……、カドケウス、貴女に一応選択権をあげるわ。このまま私と二人っきりになって受ける事になるお仕置きと、マスターが私の代わりに貴女にしてくれるお仕置きとをね」
マスターがギョッとしたように言った。
「お、俺がか……?」
「ええ、そう。だってマスター、一応この娘の事が心配でしょう?」
「いや、まあ……な」
マスターは頭をぽりぽりとかいている。
ケーリュケイオンは、カドケウスにまた目を向けた。
「さあ、どっちを選ぶの?」
カドケウスは小声で答えた。
「……マ、マスター」
ケーリュケイオンは微笑みながら、耳に手をかざした。
「ん?何て言ったの?小さ過ぎる声で全然聞こえないし、はっきりどうして欲しいか言ってもらわないと、まるで分からないわ」
やがて、カドケウスは恥ずかしそうにだが、はっきりと口に出して言った。
「……マスターに、お仕置きをして欲しい……」
ケーリュケイオンは、また笑顔を見せた。
「ふふ。では貴女のお望み通りに、マスターにお仕置きをしてもらう事にしましょう」
彼女はマスターを見て言った。
「マスターも良いわね」
「あ、ああ。まあそれは構わないけど。……でも、いったい何をすればいいんだ?」
「そうね……」
ケーリュケイオンはしばらく考えを巡らせると、カドケウスに向かって言った。
「ではまず、カドケウス。貴女のあーちゃんの指揮権をマスターに移譲して」
「ええっ!!」
カドケウスは心底驚いたような声を出した。
それもそのはずで、カドケウス姉妹と大蛇達は、キラーズの根本で精神や魂が繋がっているようなものだからだ。
それ故に、その大蛇の指揮権の移譲なんて事はもう、自分ではない他の誰かに、心や命を委ねるのと一緒のようなものなのである。
だがケーリュケイオンは、カドケウスのその驚きは心外だと言うような顔つきになった。
「あら?貴女はマスターに対して、キル姫として一生涯の忠誠を誓っているのでしょう?それともあれは、全くの嘘だったのかしら」
「……で、でも、お姉ちゃん……」
カドケウスは若干怯えたような顔つきになっている。
それを見たケーリュケイオンは、不適な笑みを浮かべて言った。
「ふふ、貴女のマスターに対しての信頼は、その程度の事で揺らいでしまうような、とても薄っぺらい、ちり紙程度のようなものなのかしら?いつもあんなにお世話になっているにもかかわらず?」
カドケウスは少しむっとしたような顔つきになった。
「……そんなことないよ!マスターになら私、何されてもいいもんっ!……分かった!!あーちゃんっ、あなたはこれからマスターに従ってね。いい?」
カドケウスは背後にいる赤い瞳の大蛇に向かって話しかけた。
アウルムは御主人のカドケウスの指示に従い、新しい御主人となるマスターの元に向かって床を這って行き、その足元にまとわりついた。
その瞬間、マスターは何か強大で不思議な力がその身に宿ったのを感じて、ぞわっと全身に鳥肌が立ったのだった。
満足げな顔でケーリュケイオンは次の指示を出した。
「さて、カドケウス。そろそろマスターにお仕置きを始めてもらいましょう。……そうね、まずはそのベッドに仰向けに寝てもらえるかしら」
「え……?」
カドケウスは何か疑問を言いたそうな目で姉を見たが、とりあえず素直に従ってベッドの上に横になった。
カドケウスは、いつもそばにいて身を守ってくれているアウルムがいないので、とても落ち着かなくて、心がどこかすーすーする感じで、何か胸がすごくどきどきとして、鼓動が早まって来るのを感じた。
ケーリュケイオンは、マスターをベッドのそばに連れてきて、二人して横たわるカドケウスを見おろした。
ケーリュケイオンはカドケウスの頬に優しく触れて言った。
「さあ、マスターにお願いしないとね。これからお仕置きをしてもらうのだから」
カドケウスはこくんと頷くと、小さい声で言った。
「や、優しくして下さい……マスター」
その言葉にマスターは不覚にも少し前屈みになってしまった。
「はい、良く出来ました。さてマスター。まずはこの娘の動きを封じましょう。……そうね、あーちゃんとひゅーちゃんを使って両手足をそれぞれのベッドの脚に括り付けるのが、一番手っ取り早いかしら」
「ええっ?そんな事をするのか?」
マスターは驚いて聞き返した。
「ええ、あんまり動かれても厄介だもの」
「しかしだなぁ……」
マスターは少し躊躇している。
ケーリュケイオンはマスターに、こそっと耳打ちした。
「お仕置きと言っても、この娘の身体をちょっとくすぐるだけよ。それに縛っておいたほうがくすぐり易いし、あと、そういった格好のほうがそれとなくお仕置きっぽいと思うの」
マスターはそれらを聞いてやっと納得した。
「まあ、それなら……。えと、アウルムよ。カドケの両手をベッドの両端に固定してくれ」
赤い瞳の大蛇は、にょろにょろと動き出すと、カドケウスの両手首に巻き付いて両側に引っ張っていった。
そしてケーリュケイオンに命じられたヒュドラも、同じ様な感じでカドケウスのそれぞれの足首に巻き付いて、同様に両側に引っ張り出した。
カドケウスの身体はベッドの中央で、四肢を各ベッドの脚に繋がれて大の字の形にされて、まるで身動きが出来ない姿にされていた。
「ん……んん」
カドケウスは手足を動かして、その強度を調べているようだが、びくともしていなかった。
彼女の足に大蛇が巻き付く際に、彼女が少し足を動かしたので、服の裾がまくれ上がり白い太ももが見えてしまっている。
何か、彼女のこの縛られた状況とその格好が合わさって、何かとてもえっちな感じがしてならなかった。
ケーリュケイオンがマスターの手に、真っ白で大きな鳥の羽根を握らせてきた。
どこからこれを出したのだろう。これも大蛇の魔法の力だろうか。
「はい、これをどうぞ」
「あ、ああ」
「この娘ね、くすぐりにかなり弱いのよ。ふふ」
マスターは、手に持ったその羽根をさわさわと触れてみた。しっかりしている割にはとても毛先が滑らかだ。
これを使ってくすぐるのなら、かなりくすぐり甲斐があるだろう。
カドケウスは、手足を縛られた格好で、不安そうにマスターの、その手元の羽根を見つめている。
とりあえず、マスターはその羽根でカドケウスの素足の太ももを触ってみた。
カドケウスはびくりとその足を震わせた。
普段なら、別に何でもない事なのだと思うが、守護者であるアウルムを渡してしまった事で、身体の感覚がかなり鋭敏になってしまっているようだった。
「あ、ねえ、ちょっと待って……」
カドケウスは、もう少し待って欲しいとお願いしようとしたが、2人に黙殺された。
マスターの操る羽根が、太ももからゆっくりとつま先まで下がっていき、やがて柔らかく敏感な足の裏を、さわさわと触りだした。
「……きゃ、う、うう~、……ひゃうっ!」
そこは普段でもすぐに逃げ出してしまう程弱いのに、今はいつも以上に敏感になっているので、もう耐えようがなかった。
「あ、あ、ああダメ、マスターやめ……、ダメ……ダメダメ……あは、きゃ、きゃはははは……っ!!」
ホントにくすぐったくて、我慢出来ないカドケウスは、ばたばたと暴れるのだが、がっちりと手足を固定されているので、全く動けていなかった。
マスターはとても良い反応を見せる、このカドケウスの身体に夢中になり始めた。
自分の思うがままに彼女の反応を引き出せるのだから面白くて仕方がない。
確かに足の裏が一番くすぐったそうだが、毛先で足全体を舐めるようにして触ると、彼女は身悶えながらその身体を震わすのだ。
それに足の上のほうにいくにしたがって、それはくすぐったそうと言うよりも、どこか気持ち良さそうな気配を見せるのでマスターは何か変な気持ちになってきてしまった。
そのマスターの気配を、敏感に察したケーリュケイオンが、改めて次のくすぐる場所の提案をしてきた。
「マスター。では彼女の次の弱点に移るわ。その場所は、ズバリ彼女のおへそよ♪」
「ええっ!」マスターとカドケウスは二人して驚きの声をあげた。
もちろんカドケウスのおへそは、服の下であり、ここからでは触りようがない。
それにカドケウスはいつものワンピースを着ているから、そのおへそを出そうとするならば、裾のほうから服をまくり上げるしかないのだった。
マスターはためらいだした。
「いや、それは、なあ……」
それを聞いたケーリュケイオンは意外にもすんなり折れたように言った。
「それならしょうがないわね」
マスターとカドケウスは、ほっと安心したが、ケーリュケイオンは言葉を続けてきた。
「……それならこれからのお仕置きは私が変わるわね。私はマスターみたいに手加減はあまりしないから、カドケウス、貴女かなり頑張ってね♪」
カドケウスは慌てて言い出した。
「あ!ま、待って待って、お姉ちゃん!私、マスターにお仕置きされたいなぁ~……」
「あら、でも、マスターはあまり乗り気じゃないみたいよ」
そう言ってケーリュケイオンは、マスターのほうをちらりと見た。
そして、二人に聞こえるように、そっと呟いた。
「たぶん私、貴女の反応があまりにも素晴らしいものだから、マスターの十倍位は、貴女の弱い所をくすぐっちゃうかもしれないわね♪」
「……う、う~。マ、マスタ~……」
カドケウスは涙目でマスターを見つめて、涙声を出した。
マスターはやけになって言った。
「あ~!分かった、分かったよ!とにかく最後まで面倒みるよ」
ケーリュケイオンは、にっこりと笑って、カドケウスは、ほっとしたような顔をしていた。
「ではどうぞ♪」
ケーリュケイオンは、片手でカドケウスのおへそのある所を指し示した。
マスターは溜め息をつくとカドケウスの服の裾に手を掛けて、そうっとめくっていった。
彼女のふっくらとした白い太ももが見えてきて、そしてその上の、彼女の白い下着が見えてきたところで、それ以上服をめくれなくなってきた。
カドケウスが恥じらいの為にか、無意識のうちで服をお尻で押さえ付けてめくれないようにしているようだった。
マスターは、言いにくそうにカドケウスに向かって言った。
「カドケ、悪いが少し腰を浮かしてくれ」
「え?あ、うん……」
カドケウスはやっとその事に気が付いたように、素直にその言葉に従った。
服はそのままどんどんとめくれあがり、彼女の可愛いシンプルな白い下着が丸見えになってきた。
そしてその上のほうに、丸みを帯びて柔らかそうな下腹部も見えてきて、そしてその真ん中にある小さい穴が見えてきた。それこそ、彼女のおへそであった。
マスターは、カドケウスの下着はあまり見ないようにして、羽根の毛先をおへそ周りで、小刻みに動かした。
カドケウスは、羽根の毛先がおへその中に入るたびに、身体をくねらせて、くぐもった喘ぎ声をあげている。
マスターはなるべく、その視線を彼女の下半身からそらしていたが、やがてカドケウスの顔のほうに目が引き寄せられていった。
マスターは、カドケウスのそのくすぐりを耐えるような、そして恥ずかしさを隠すような、彼女の必死に我慢しているその何とも言えない表情に釘付けになってしまったのだ。
よそ見をしながら羽根を動かしているので、マスターの動かす羽根の先が、おへそのある下腹部からずれて、彼女の下着の上を何度も何度もさすっていく。
「きゃっ……、ひゃうんっ!」
またカドケウスは、自分で予想もしてない声を出してしまっていた。
カドケウスは、もう何がなんだか分からなくなってきてしまっている。
毛先がおへそと下着の上を何度も行ったり来たりして、くすぐったいのか気持ち良いのかも、良く分からない。
それにマスターにじっと顔を見つめられているのも、すごく恥ずかしく、それがまた身体を敏感にさせているのかもしれなかった。
カドケウスが、喘ぎ声を上げて、はあはあと息を切らして身をよじっていると、ケーリュケイオンがまた口を出してきた。
「では次の場所ね。くすぐりの定番といったら、やっぱり脇腹と腋の下よね」
「ええっ!?」また2人は驚くように言った。
それを耳にしたケーリュケイオンは落ち着いた口調で言い出した。
「あら?それなら続きは私が……」
カドケウスは、すぐにそれを遮ってマスターにお願いをした。
「マスター。あの、……お仕置きの続きを、お、お願いします……」
マスターは唾を飲み込み、覚悟を決めて頷くと、また彼女の服をめくりあげていった。
すでに彼女の下半身は剥き出しであり、その上半身もみるみる内に、その綺麗な白い肌を現していった。
初めは滑らかなみぞおちが見えて、その上に二つの膨らみを隠す白い下着が見えてきた。
マスターは更にめくり上げて、カドケウスの頭からそのワンピースを引き抜いた。だが手は縛ったままなので、その服は肩を抜けた辺りで止まってしまった。
その服が更に彼女の動きを制限してきているので、何かとてもマニアックな感じになってしまっている。
服をめくられた下着姿の半裸の少女が、ベッドの上で四肢を縛られて、大の字に寝かされているという、世間様には絶対見せられない光景が目の前にあった。
マスターのある部分に、どんどん血液が流れ込んでいくのは、男の生理現象として、もう仕方のない事だろう。
マスターは半裸のカドケウスから、また目をそむけて、羽根を使ってくすぐり始めた。
その羽根が彼女の腋の下、胸の谷間、更にはもうかなり敏感になっている胸の頂点を、縦横無尽にこすりまくるので、カドケウスは顔を赤らめて身悶えまくっていた。
「ひゃ、……あんっ、うっ……、やん、あっ」
マスターは、あえて目をそむけてくすぐっていたので、カドケウスの色っぽい声がすぐそこから聞こえてきたせいで、よこしまな妄想がどんどんと湧き上がってきてしまっていた。
マスターは心を強く持とうとした。
自分は、ただ単に彼女の身体をこちょこちょと、くすぐっているだけなのだ!
マスターはそう思い、気を取り直して、改めて目をカドケウスの身体に戻したが、半裸で縛られて身をよじる彼女の色っぽい乱れた姿が目に入り、もうほとんど我を忘れて、手に持った羽根を彼女の弱そうな部分にこすりつけていった。
可愛いあえぎ声をあげるカドケウスは、しだいに内股になりもじもじと腰をくねらせ始めた。
「……マ、マスター……あうっ、あの……も、もう、……もれ、漏れちゃうっ……」
マスターは彼女のその反応に、鼻血が出そうなほど興奮したが、やっと我に返る事が出来た。
このまま続けると、彼女がどうなるか見たかったが、これはどうにもヤバイ。くせになりそうだった。もうこの辺で止めておくべきだろう。
マスターは手を止めて、カドケウスと共に、はあはあと息を切らしていた。
すると、ケーリュケイオンが2人に近づいて来て、当たり前のように言い出した。
「では、最後に下着も全部取りましょうか」
「ええええっ!!」
2人して驚き、そして2人で同じ様な情けない声でケーリュケイオンに訴えた。
「ちょ、ちょっと待てケーリュ!それはいくらなんでも……」
「お、お姉ちゃん……もう許してぇ……」
ケーリュケイオンは、この2人を静かに見つめて肩をすくめた。
「では、くすぐりはここまでにしましょう。この娘も限界が近そうだし」
マスターとカドケウスは、ほっと胸を撫で下ろした。
そしてケーリュケイオンは明るい声で言い出した。
「では、これからお茶にしましょうか。せっかくケーキもある事だし」
マスターは安堵した様子で言った。
「よし、そんなら、俺がお茶を沸かしてくるよ。コーヒー、紅茶、オレンジジュース、何がいい?」
「私は紅茶。カドケウスは?」
「それじゃあ、私も紅茶……」
カドケウスはそう答えたが、自分はいつまでこの格好なのだろうと少し不安になってきた。
「マスター。それじゃあ、お茶のほうはお願いね。私はケーキの準備を担当するわ。お皿とフォークと……あっ、あとケーキに添えるフルーツと♪」
ケーリュケイオンはとても楽しげな様子を見せている。
マスターは、半裸のまま縛られて、こちらに顔を向けているカドケウスを見て、ふと疑問が頭に浮かんだ。
……あれ、カドケは?俺は、この束縛を解かなくていいのか?
だが、ケーリュケイオンが急かしてきたので言いそびれてしまった。
「早くお茶にしましょう。あとマスター、とりあえず手は念入りに洗っておいてね」
「ん?ああ、うん、分かった」
マスターは疑問を残したまま、首をひねりながらながらもキッチンへと向かった。
二人っきりになったカドケウスは恐る恐る姉に訊ねた。
「……あの~、お姉ちゃん?私は?私も一緒に何か準備を手伝いたいな~……なんて」
ケーリュケイオンは初めてその事に気が付いたような感じで妹を見て言った。
「あら、貴女はそんな事全く気にしないで良いのよ」
「え?でも、そんな、悪いよ」
「ふふ♪」
ケーリュケイオンは妖しく笑って、それには何も答えなかった。
そしてそのままマスターを追ってキッチンに向かって行ってしまった。
一人残されたカドケウスは、とりあえずこの縛られた状況を何とかしようと、手足を動かしてみた。
だけど、かなりがっちり固定されていて、どうにもならない。
そこで彼女はこそっと声をひそめて、ベッドの下に向かって言い出した。
「……あーちゃん。……あーちゃんっ……、……もうっ!ねえ、あーちゃんってばっ!」
彼女はぐいぐいと腕を引っ張って、手首に巻き付く元自分の大蛇アウルムの注意を引いた。
大蛇のアウルムはその鎌首をゆっくりともたげて、カドケウスのほうにその顔を向けた。
カドケウスは不満げに言い出した。
「もうっ、やっとなの?まあ、いいや。ねえ、あーちゃん。そろそろ、この手首ほどいてくれない?」
だが、アウルムは巻き付いているその手首をチラリと見て、またカドケウスを静かに見つめ返してくるだけで何もしてはくれない。
頭にきたカドケウスはアウルムを睨んで言い出した。
「もう、何なのよ~ばかばかばかぁ!あーちゃんっ!いいからそれをほどきなさいっ!……ディボードケインっ!!」
だが、しーんとした静寂だけが辺りを包んでいる。
……へ?
カドケウスは信じられないような顔でアウルムを見つめると、顔を赤くして何度も繰り返して言った。
「ディボードケインっ!!……ディボードケインっったら、ディボードケインっだっちゅうの!こらぁ!あーちゃん!?無視しないの!ねえってば、ねえ」
アウルムは少し困った様な雰囲気を出してカドケウスを見つめると、そっとその頭をベッドの下に引っ込めてしまった。
それを目で追ったカドケウスは慌てて言い出した。
「あ、こら!待って待って、あーちゃん!アウルムっ!ねえ、アウルム様ぁ~……」
「……何をしているの貴女は?」
呆れたような声がいきなり横から聞こえてきた。
ケーリュケイオンがいつの間にかベッドのそばに戻って来ていたのだ。
「……きゃ!あ、お、お姉ちゃん……」
カドケウスは、ばつの悪そうな顔で姉のほうに振り返った。
ケーリュケイオンは諭すような口調で言った。
「全く……。貴女はもうあーちゃんの権限をマスターに全て明け渡したでしょう。貴女があーちゃんに指示をすることは、今はもう一切出来ないのよ」
「あ、あはは……」
カドケウスは笑ってごまかすしかなかった。
ケーリュケイオンはケーキの箱をベッドの上に置くと、持ってきたお皿の上に、ケーキをそれぞれを取り分けていった。
そして苺のないショートケーキのお皿には、美味しそうなフルーツを見た目良く綺麗に添えていった。
そのフルーツは缶詰の桃と小分けに切ったオレンジと巨峰で、そのショートケーキの見た目がとても豪華になっていった。
カドケウスは輝く瞳で、姉がよそり付けるそのケーキ達を見つめていた。
マスターのモンブランの皿にも、同様にそれらのフルーツを取り分けて、そして最後に、それぞれのお皿に輝く銀のフォークを横に添えて、ケーキの盛り付けが完了した。
だが何故か、そのお皿の1つだけに銀のフォークが載っていない。
カドケウスはその光景にすごく違和感を感じて、そして何かとてつもなく嫌な予感がしてきた。
カドケウスはあまりその事を質問したくなかったが、もう聞かざるを得なかった。
「あのう、お姉ちゃん?あのお皿にだけフォークがない……よ?」
「え?ああ、大丈夫よ。心配しないで」
ケーリュケイオンはやたら上機嫌だ。
カドケウスはそれが何かとても怖かった。
マスターがお茶を載ったお盆を持って表れた。
「お待たせ。……って」
マスターはまだ、ベッドに縛り付けられた状態で半裸のカドケウスを見て目を見張った。
「おいおい、まだカドケを解放してなかったのか?」
ケーリュケイオンはきょとんとした顔で答えた。
「え?だってお仕置きはまだ終わってないもの。」
「はい?」
2人はまた顔を見合わせた。
ケーリュケイオンは説明を始めた。
「全裸くすぐりは、2人のリクエストで、もう止めておくとして、その代わりと言っては何だけど、これはお仕置きも兼ねてのお茶会と言う訳ね。でもこれは、カドケウスにとってお仕置きと言えるのかしら?たぶん、ご褒美と捉える事も出来るかもしれないわね」
そう言ってケーリュケイオンはやはりフォークの載ってないお皿をカドケウスのほうに差し出してきた。
「はい。これが貴女の分」
カドケウスはそのケーキの載った皿を見つめた。
それは、フォークがないので食べようがなさそうに見える。
それに、とにかくそれを手掴みで食べようにも、自分の両手は今、全く動かせない。
後は口を寄せて犬食いしようにも、ほとんど動けないのだから、もうどうしようもない。
どうすれば良いのか、答えが全く分からないカドケウスは戸惑いの顔で姉を見た。
「ふふ、貴女にはマスターがいるじゃない」
ケーリュケイオンは、そんなカドケウスの表情を見て、微笑みながらマスターのほうを見た。
そして、マスターに向かって言い出した。
「この娘は、フォークがあまり好きじゃないみたいなの。こんな感じで」
彼女はマスターの分のモンブランを指し示して話を続けた。
そのモンブランには指の跡がくっきり残っている。
「だから、マスターがこの娘に食べさせてあげて欲しいの。彼女の好きな素手での食べ方で」
「え……この手でか。」
マスターは自分の手を見つめて言った。
ああ、なるほど。
だから手をちゃんと洗って来いと念を押してきたんだな、とマスターは腑に落ちた。
「だがなあ……」
マスターが渋っていると、ケーリュケイオンが裏切られたと言わんばかりの表情になって言ってきた。
「最後までこの娘の面倒見るといっていたのに……」
「分かった!分かったよ」
マスターは投げやりに答えた。
「それじゃあお願いするわ。やはり初めはクリームを味見させてあげたほうが良いかも」
マスターはケーリュケイオンの助言に従い、人差し指でショートケーキの白い生クリームをすくい取った。
そしてその生クリームがついた指をカドケウスのほうにそろそろと近づける。
カドケウスはその指をじっと見つめると、あーんと口を開けて、その指を自分の口内へと迎え入れた。
ぱくり。
カドケウスの唇が閉じた。
彼女はマスターの指を完全に口に含んで、指に付いているその生クリームを口の中で、舌を使って綺麗に舐めとっていった。
マスターの指についたその生クリームは、甘くてとても美味しかった。
彼女は幸せそうにマスターの指に舌を絡めていき、そしてちゅうちゅうと吸っていった。
マスターはカドケウスの口に指を突っ込んだまま固まってしまった。
彼女の柔らかい唇に指が挟まれたかと思ったら、もっと柔らかい彼女の舌が、指の全面を丹念に舐め回して来たからだ。
彼女のぬるぬるした口内の至る所にその指が触れて、彼女の固い歯の感触さえ、何かもの凄く気持ちが良い。
もう味はないだろうと思うほどに、彼女はマスターのその指を舐めていた。
マスターが取りあえず指を引き抜こうとすると、彼女はその指を離したくないと言うように首を持ち上げて追ってきた。
だがそれ以上、前にいけなくなって、彼女の口からちゅぽんと音を立てて、その指が抜けた。
カドケウスは、おもちゃを取り上げられた子どもの様な、そしてかなり物足りなそうな顔でマスターを見つめてくる。
ぞくりとしたマスターはケーキを手掴みで持ち上げて、彼女の口元に持っていって、その込み上げて来た気持ちをごまかした。
彼女は美味しそうにマスターの手から、ケーキを頬張って食べている。
マスターは自分の手からケーキを食べるカドケウスを見て思った。
……これは、いったい何だろう?
このぞくぞくする気持ちは?
優越感、支配欲、保護欲、嗜虐心……。
これら色々な気持ちが入り混じったような、とても複雑な感情が湧き上がる。
だが、これは決してよこしまな感情だけではない……。
そしてマスターは、ケーキを全て食べ終えて、そのケーキを掴んでいた指を、ぺろぺろと舌を出して健気に舐めてくるカドケウスを見て思った。
今自分が、このカドケを見て感じる心境は、親鳥がくちばしで、その子どもの口の中に餌を入れて食べさせていると言う心境が一番近いだろう。
そう、それはまるで、親が子の世話をせずにはいられない、と言った感じだ。
マスターは残りのフルーツも、手掴みでカドケウスに食べさせた。
その際、オレンジの果汁がマスターの手に平に飛び散り、マスターは後でそれをティッシュで拭こうと考えたが、彼女は丁寧にマスターの手の平全体を、自分の舌で綺麗に舐めとっていった。
カドケウスが自分の分を全て食べ終えて、最後に紅茶の入ったティカップを、マスターが彼女の口元にまで運んで、ゆっくり飲ませてあげて、そして彼女がそれを飲み干す事で、このお茶会はやっと終わりを迎えた。
マスターが彼女の縛めを解いて手足を自由にすると、カドケウスは服を整え始めた。
服を整えた彼女の表情はとてもいきいきとしていて、その肌も前より何だか艶々としているような感じがする。
それにマスターを見る目がいつもより熱を帯びてきている感じがする。
特にマスターの手に向けられる視線が熱い。
マスターはとにかく、カドケウスに借り受けていたアウルムを返す事にした。
「ほら、お前に返すよ」
「え?あ~うん。……でも、もう少し貸しといてもいいよ。実はね、あーちゃんがそばにいないのはすごく不安なんだけど、その替わり強烈にマスターの事を感じる事が出来るのね。それが何かすごく心地よいと言うか……なんと言うか……」
マスターは苦笑いをして言った。
「アウルムはお前の元に帰りたがっているぞ」
「え?マスターも、あーちゃんとお話出来るの?」
「いや、お前と話しているとアウルムが何となくそわそわするから、そう感じてると思っただけだ」
マスターはカドケウスの頭に手を置いて言った。
「カドケウスのところに戻れアウルム。……ディボードケイン」
黄金の大蛇はマスターの足元から姿を消して、再びカドケウスの背後に、そして彼女を守るかのように現れた。
やはり彼女達は一緒にいたほうが絵になる、とマスターは思った。
カドケウスがアウルムに色々話しかけている時に、ケーリュケイオンがマスターのそばに歩み寄ってきた。
「やっぱり最後はお仕置きにはならなかったわね。何かとても楽しそうだったもの2人とも……なんか少し妬けちゃった」
ケーリュケイオンがマスターの手を触って、含みのある声で言い出した。
「この前は、私がマスターに食べさせてあげたわよね?だから今度は、私にも食べさせて欲しいな。その手で、い・ろ・い・ろね♪」
マスターはその声にぞくりとした。
それを耳ざとく聞きつけたカドケウスが話に割って入った。
「あ~駄目よ!お姉ちゃん。あれは私とマスターの独自のプレイなの!」
プレイって、お前……。マスターは心の中で大きなため息をついた。
珍しく動揺しながらケーリュケイオンが言い返した。
「い、いいじゃない!あれを考えたのは私なんだから著作権は私にあるわ!」
著作権って、あんた……。マスターは心の中でうなだれた。
姉妹で、ぎゃあぎゃあと言い合っている内に、マスターはそうっとその場から逃げ出した。
2人の激しい論争にやっと決着がついたようだ。
「それなら、右手はカドケウスに譲るわ」とケーリュケイオンが言う。
「分かった。それなら左手はお姉ちゃんのものね」とカドケウスが言った。
さすが仲の良い姉妹だ。仲良く半分個にしたらしい。
だが、その頃にはマスターはもう玄関のドアを開けて、自分の部屋からそうっと抜け出ようとしていた。
ケーリュケイオンとカドケウスは、マスターのその逃げる後ろ姿を見つけたが、全く慌てずに、2人で微笑みながら顔を見合わせた。
そして各々がその場で決めポーズをとると、声を揃えて呪文を唱えた。
「「奇跡を行う、螺旋を描く2つの蛇よ、我らがマスターを捕まえ、ここに顕現せよ!!」」
「トリート……」
「ディボード……」
「「……ケインっっ!!!」」
彼女達の背後に現れた2匹の大蛇達がまばゆい光を放つと、部屋の真ん中に、1人の駆けている男性のシルエットを浮かびあげて、そのシルエットは、すぐに実体化していった。
それはまさしく、先程部屋を抜け出て廊下を走っていたマスターその人であった。
いきなり元の部屋に連れ戻されて、かなり戸惑って、部屋の中をきょろきょろ見回しているマスターに、2人は勢い良く、揃って両側から抱き付いた。
「私達のもとから……」
「……もう逃がさないんだから♪」
楽しげな口調のこのセリフを、この2人のどっちがどう言ったのか、抱きつかれたマスターにはまるで区別がつかなかった。
{終わり}
これはプチえろの許容範囲なのかなぁ?
もう何か分からなくなってきた(笑)。
さて、魔法少女物の扉は開きましたよ。
これからどうしよう?
トリートケイン♪
ではまた。