IS・人並みの幸せ   作:1056隊風見鶏少尉

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今年も最後の投稿となります。
皆さん良いお年を。





十八話『コロコロと話が進むと何か怖いですよね』

 

 

 

 「――は? いきなりなんだい?」

 

 数日後、メンテナンスのために篝火ヒカルノ博士、スチェスタ・ニーヴァルト博士、ユーリスカヤ・ビルマ・リトビャク医師、木山夏生先生が来た。

 そこで篝火ヒカルノ博士に倉持技研のこと、ここ最近、製作を中止したISのことを聞いてみた。

 

 篝火博士は作業の手を止め、少し唸ってから口を開いた。

 

 「――……まぁいいか、凍結したものだし。話そうじゃないか」

 

 そう言うと止めていた手を動かしながら話し始めた。

 

 「作っていたISは日本の代表候補生に渡るものだった……いや、渡るはずだったが正しいな。打鉄を第3世代型に後継発展機(ベースアップ)することを目的に作られたものさ。第3世代型特有の操縦者のイメージ・インターフェイスを用いたマルチ・ロックオンシステムを使った兵器や荷電粒子砲を搭載させ、中・遠距離を対応させた機体をコンセプトにしていたその名も『打鉄・弐式』」

 

 「――だが、いきなりだ。図面に書き上げ、完成させるだけの機材もある。そんな状況で制作はもういいときたもんだ。流石に驚いたものさ」

 

 『……それは男性操縦者のISを、頼まれたからですよね?』

 

 「うん?」

 

 篝火博士は疑問系の返答を返してから再び話し始めた。

 

 「よく知っているね、でも正確には少し違うかな」

 

 『え?』

 

 「まあ、ぶっちゃけた話になるけどIS一機、二機を基礎から造ることの手間は大して変わらないんだ。それよりもこちらとしてはデータが取れる分、そちらの方が美味しかったりするから技研や研究所はIS操縦者を抱え込もうとするわけさ。

 ――話が逸れたね、でだ、こちらが開発・完成させるはずだった『打鉄・弐式』は依頼主(クライアント)であった更識……更識何だったかな、確か水色の髪で眼鏡をかけていたんだが、まぁそういう人が来てね、開発はもういいですありがとうございました的なことを言われてポイ、そんな感じだったね。あ、言いに来たのは眼鏡をかけていなかったねそう言えば。雰囲気もどこか違ったし」

 

 全く、どうしてあそこまで開発者と整備者に文句を吐けるものか、君たちIS乗りを支えている影の功労者だというのに、と思い出したように悪態を吐いていた。

 

 『でも、何故いきなり……』

 

 「それこそ私が知りたいくらいだね、せっかく3日かけて製作したデータがパーにしたんだ、大層な理由があったんだろうね。

 ――まぁ、せっかく作ったものを廃棄するのも忍びなかったから君のISやもう一人のISの基礎として部分的に組み込んでいるんだけどね、それでも完成させたかったよ」

 

 まだ冷めやらぬといった感じを残したまま僕の大破していた専用機を組み替え終わったようだった。それにしても僕と織斑君のISにも使われているのか……それならば僕のも少しは役に立つのかも知れない。

 

 それに連鎖するようにスチェスタ博士、ユーリスカヤ医師、木山先生も終わらせたようだ。

 

 ……言うならば今しか無いだろう。僕は篝火博士に聞いてみた。

 

 『……篝火博士、一つだけお願いがあります』

 

 「ん? 何だい? 私のスリーサイズでも知りたいのかい」

 

 「…………なになに、えっちぃ話?」

 

 「まぁ静かにしていようかスチェスタ博士」

 

 茶化すように言う篝火博士、それを興味深げに聞く三人。

 

 『』

 

 『その『打鉄・弐式』のデータ、譲ってくださいませんか?』

 

 ピタリと篝火博士の動きが止まり、表情が曇る。

 

 「――何故かな? そういうデータはちょっとおいそれとは貸せないんだよねー」

 

 『……僕の相部屋になっている人がまさに、その『打鉄・弐式』に乗るはずだった人なんですよ』

 

 誤魔化すとかそんなことを言うよりは僕が思ったことを言おう、それで断られた時はその時にまた次の案を考えよう。

 

 『そのISに乗るはずだった人は、すごく今凄く苦しんでいるんです。多分ですが、中止になったISを自分の手で、作っているんだと思います。少なからず僕が関わっているなら助けてあげたいんです』

 

 僕は簪さんが今までしてきたことを知らない、部分的に牧部さんから聞いたにすぎない。

 だけど、苦しんでるなら助けてあげたい。

 

 

 篝火博士はしばらく考えるように沈黙し、やがて口を開いた。

 

 「渡す理由としては弱いな愛染朝陽君」

 

 ……ダメか。

 

 「――――しかし、良いだろう。譲るのではなくこちら側からの提供ということならね」

 

 『……いいんですか?』

 

 「もちろん。私としても完成させれるならばそれに越したことは無い。もともとそのために作ったんだからそれが見れるのなら是非とも提供しよう。それに――」

 

 

 「何故、あの依頼主が途中で中止にしたのか気になるしね」

 

 『ありがとう、ございます、篝火博士』

 

 僕は博士に深く頭を下げて礼を言った。

 自己満足かもしれないが僕ができることがあるなら力になってあげたい。簪さんにはまだまだ未来があるのだから。

 

 

 ――僕のIS、チョーカーの点検と修理が終わり、無事に了解も取れた。心なしか体がいつもより動く気がする。

 その足で整備室に向かう、中を覗くと……目的の人物がちょうどいた。

 

 『牧部先輩』

 

 「ん? あぁ、愛染朝陽君か、今日はどうしたんだい」

 

 『はい、今日は牧部先輩にお願いがあって、来ました』

 

 「お願い?」

 

 牧部先輩の質問に頷いた僕は篝火博士と話した内容を先輩にも話した。

 たどたどしくも話した内容をを牧部先輩は理解してくれたようで「何故私に話したのか」と問われたがそれは決まっている。

 

 「一番簪さんに親身に、していたのは先輩ですから。僕が言っても突っぱねられそうで……」

 

 睨まれたことを思い出して苦笑いを浮かべる。

 

 「彼女のために一番動いたのは君のはずだ。現に最もISを完成させるためのカードを君は手に入れたじゃないか。

 渡すのは君でなければ。私は適任ではないさ」

 

 僕の言葉を遮って、だが。と言葉を続ける。

 

 「だが。君が私にわざわざ話してきたということは何かしらの理由があるのだろう? それならば私も渡す際には同行しよう」

 

 『……ありがとうございます!』

 

 それから先輩とちょっとだけ細かい話をした。データは篝火博士から織斑先生に渡されるので織斑先生には僕が言っておくので先輩が受け取ってもらえるようにお願いした。

 僕が持っていると何だか無くしそうだし、相部屋が簪さんだから分かってしまいそうで。

 

 先輩との話を終え、今度は織斑先生のところに行き、事情を説明する。すると簡単なことなら篝火博士から話されたらしい、そのデータを牧部先輩に渡しておいてくださいと言うと複雑な表情を見せ、口を開いた。

 

 「お前は何故……そうも真っ直ぐなんだ、真っ直ぐでいられるんだ」

 

 ひとりごとのように小さく発せられたそれは僕の耳には届かなかった。

 織斑先生は分かったとだけ言って仕事に戻ったので頭を下げてから織斑先生の元を後にする。

 

 

 

 ――今日は色々なことがあった、日記に書くことが多くて嬉しい。

 その分嬉し疲れというやつか、どっと疲れがやって来た。身体が思い出したかのように重くなり、眠気もやって来た。

 

 そんな時、コンコン。と控え目なノック音が聞こえた。誰かやって来たようだ。

 

 「あ、良かったここに居たんだね」

 

 やって来たのはシャルル・デュノアさんだった。

 

 「前に言ってたでしょ? 稼働データならこれに入れたほうがいいと思ってさ」

 

 そう言ってだしてきたのは小型の端末。そう言えばデュノアさんにも言わなくては。

 

 『それなんですがデュノアさん……ごめんなさい、それはもう必要ない、かもしれません』

 

 「え、必要ない?」

 

 デュノアさんに事情をかいつまんで説明する、デュノアも色々と考えていたのだろう、そう考えるとすごく申し訳なくなる。

 

 「そっか――」

 

 「そうか、そうか。必要なかったね、いらない世話だったかな?」

 

 『いえ、デュノアさんの助言があったからできたことですから。とても助かりました。ありがとうございます』

 

 「そう言ってくれると僕も嬉しくなるよ。じゃ、僕はこれで、お休み愛染君」

 

 パタン、とまた控え目な音を立ててドアが閉じられた。

 

 ――さぁ、勉強して、運動して日記を書いて寝よう。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――

 

 「……もう駄目かぁ」

 

 「しかたないよね、しかたないよね僕が生き残るためだもん」

 

 「私が生き残るためだしね」

 

 「時間はまだあるんだ、やれるだけのことをしよう」

 

 「じゃあ私はもう一人の男の相手を(じゃあ僕はもう一人の男に話して)するよ、後始末は任せた(おくね、始末は任せた)

 

 「僕が生き残るためだしね、仕方ないよね(私が生き残るためだもん、仕方ないよね)




最後のやつは気にしないでください
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