すっげぇエタってたよね。
あとがきにこれからのことを書いときます。
ーーどうも愛染朝陽です。あの日の翌日体調を崩しました。二人の先生と一夏くん、様子を見に来たラウラさんからかなり心配されましたが、熱を出しただけですから大丈夫ですよ。え? 今は38.1℃くらいですが。
ISを使って熱を測って言ったら僕を布団に寝かせ、どこから取り出したのか熱をとるシートを額に貼り安静にしていろと言われた。
密かに楽しみにしていた訓練は無しになり、定期的に織斑先生と山田先生が見にくるらしい。
『いってらっしゃいです。訓練、頑張ってくださいね』
「おう」
「ああ、愛染は安静にしていろ。熱も下がれば明日には参加できるさ」
そう言って二人は部屋を出て行く。先生たちは僕に安静にしていてくださいね! と言ってから出て行った。
うーむ、熱で確かにだるいが風邪ではないから少し元気がある。でも早く治したいから寝てしまおう。
僕は目を瞑って、早く治れと祈った。
ーーそして僕は夢を見た。
織斑千冬はどうしようもなく胸騒ぎがしていた。原因は、分からない……いや、嘘だ分かる。ただ、当たって欲しくはない。
ーーだって、それが原因ならどうしようもないから。
「ボーデヴィッヒ、鈴音、簪、オルコット。それからウォルト、箒、こっちに来い。他の者は各自稼働訓練だ」
念には念をと浜辺の端の岩肌がむき出しになっている場所まで行って話を始める。
「さて、急に集めてすまないな。」
代表候補生を呼ぶのなら分かる、ただそうではないウォルト三姉妹と箒が呼ばれたことに七人は不思議に思った。
何も意図せずに呼んだわけではない、この七人は愛染のことを気にかけてくれている。愛染のことに私よりも頼りになるだろうと思って呼んだのだ。
「ーー頼みがある、愛染のことについてだ」
それだけ言うと全員の顔つきが変わった。
「もしものことがあれば愛染のことを頼む、
「ち、ちょっと何の話なんですか千冬さん!?」
一拍の間を置いて、真相を知るものならこれ以上のなつい絶望を、千冬は当たって欲しくない予感を口にした。
「ーー……もしも『篠ノ之束』がここに現れることがあれば愛染のことを頼む」
名を聞いた全員の、表情が強張った。
……ここはどこだろうか。暗闇で微睡む意識の中、ふと思った。
ナニカのおぞましい記憶のようなものが僕の目から脳に入ったり抜けたりする。それにともない感じる悪寒と嘔吐感。ただ僕はひたすらに耐えていた。
ようやく終わったかと思えば、超高高度ーー世界が丸く見えるほどの高さーーにいた。後ろに圧倒的な嫌悪感を含んで。
『ーー「君には特別に特等席で見せてあげよう」』
意識が飛んだ。しかし有無を言わさずに見せられる凄惨な光景。気付けば僕はボロボロになった布切れのようなものを纏って地に這っていた。
『ーー「おかげで有意義なデータが取れたよ。じゃあね」』
広がるのは安堵感と倦怠感。否応無く瞼が下がり、心音も自分で分かるほど鼓動が消えかけていた、身体が冷たくなっていく、寒いーー
寒いーー
寒
あ
ーー加減を誤ってしまった、すまない。まだ心肺停止するな愛■朝■。
『ーーっかはぁっ!』
熱いほどの血潮が流れ始める。冷たかった体にだんだんと熱が戻ってくる。
ふと目の前に誰かが立ってることに気付いた。それは夕闇のような朝焼けのような鈍い色をしていて全体像を捉えることが出来ず人かどうかの区別がつかなかった。
でも敵意も無かった。
ーー見えていないと思う、私から感覚情報にロックをかけさせてもらったからね、万が一にも『マザー』見つかると問題だ。さて、愛■朝■、登録者くん。君は君の幼少期の記憶を今一度追体験してみてどう思った?
『……こんな記憶が僕の幼少期なんですか? えっと、』
ーーああ、名前は教えることができないから好きに呼んでくれていいよ、しかしまるで記憶でも失っているかのような薄さだね。 ようなら嘔吐感と痛みの仮想フィードバックがあると思ったんだけど。
『あ、はい……昔の記憶は覚えていません』
ーーそうか、理解した。
ためらいがちに言う僕に対して淡々と告げる。
ーーならば
僕の後ろからまた違った声がかけられる。振り向くとそこには別の、人なのかの区別がつかない抽象的な存在が立っているように見えた。
『……わかりません。ただ友達は、覚えています』
ーーなるほどな、了承したよ。
ーーどう見る? 『44番』
ーー急くな『117番』、これだけでは結論は出せない。しかし当の本人の状態がこれではな。答えを聞くのにも遠回りをしなければならない。まったく『マザー』にも困ったものだよ。
ーーそのような言葉は記録しておくなよ『44番』、また『マザー』に
僕を置いてきぼりにして話が進んでいる。もちろん何を言っているのかまったくわからない。
ぼーっと二人? を見ているとその二人はこちらを向いた。
ーーさて、■染■陽。キミはキミをそんなになるまでに救い、壊した存在がいるとしたらどうする?
『……?』
一瞬、質問が分からなかった。
ーーキミの幼少期は不幸なことに末期癌だった。酷なことを言うが余命幾ばくもない風前の灯火のようなものだった。しかし、ある存在はキミを見つけ、どうせ死ぬなら丁度良いと思いさらった。
聞かされるのは僕の幼少期の記憶。
ーーそこで行われたのは実験の数々。それはキミの体が物語っているだろう、キミは隅々まで実験体にされて壊されたんだ。そして用がなくなったらポイ。キミの幼少期はそんなところだ。
さて、話を聞いてどう思った? どう感じた? これから何をしようと思った? キミの感情を聞かせてくれ。
僕に近づいてきて顔を覗き込むように見てくる。そのことに僕は気にしない、いやそれどころじゃなかったと言った方が正しいか。
今聞かされたことを自分の中で噛み砕く。嚥下する。そして答えを紡ぐのにどれだけの時間が経っただろうか。
『僕はーー 』
「ーーおっはー、元気にしてたちーちゃん、箒ちゃん」
幸いなことに今は専用機持ち達の稼働訓練と各国で開発した装備のテストをやっている最中であった。
「……束」
「姉さん……」
千冬はゆっくりと、疲れたかのように振り返り、その双眸を束へと向けた。
箒も現れた姉に驚きながらゆっくりと二人のいる方に近づいていく。
そこにいた専用機持ち達は気付き、ある者は驚愕し、ある者は再開に喜び、ある者は戦慄し、ある者は言いようのない怒りを覚えた。
「何しにきた束」
「冷たいなー、久しぶりの再会じゃーん。もっと諸手を挙げて喜ぶとかして欲しいなー束さんは」
「ある日を境にいままで行方不明、たまに携帯に一方的な連絡が入っていただけでこちらから発信は出来ない。それも数年前から止まった、そんな奴を心配できるだけの寛大な心は今の私には無い」
そんなこともあったね、と束は呟く。
「箒ちゃんは? 私との感動の再会をしてくれる?」
「……正直に言うなら、もっと前に会いたかった、です。姉さん」
およ、こいつぁ感動の再会だ。と束は呟く。
「ーー束さん!」
と、目の前に飛んできたのは一夏だった。ISを解除して近づいていく。
「おーいっくん久しぶりー!」
「ああ最後に会ったのは小学生の頃だったもんな。でもどうして急に」
「ん? そんなの決まってるじゃなーい」
満面の笑みで束は告げた。
「大事な大事な箒ちゃんといっくん、ちーちゃんに会いに来たんだ!」
「そして」
「ついでに」
「
『ーー僕はその人に会ってみたい。その人と話をしてみたい』
発せられた内容は二人が予想していたものとは違っていた。
ーー会いたい? 話をしたい? 何故僕がと言う疑問でも今まで受けたことに対する恨み言でなく純粋な話し合いを望むだと?
『44番』は驚愕した。目の前にいる者があまりにも純粋で正直で馬鹿なことに。
『確かに僕はその人に酷いことをされた。でも僕はひとつだけ幸運だった。生きていたこと、僕は末期の癌だった。でもそれは僕の体には無いんでしょう? 何となく分かりますしあったらあのカエルおじさんか織斑先生が言うはずですから』
『たまたま生き残っているだけ。それでも僕は今を生きてここにいる。友達も出来て、どこかに行って、話すことができて、見ることができる……その人で失ったものもきっと多いけど、その人のお陰で得たものも多いと思います』
ーー……その人がキミを助けたわけでは無いはずだが?
『理由なんてあとづけでも良いんです。僕は生きていて助けられたと思った。だから会いたい、話し合ってみたい』
ーー……壊れてる。
ーー……恐ろしいね。
目の前の愛染朝陽を見て、壊れてると『44番』は感じた。恐ろしいと『117番』は恐怖した。
壊れていると感じるくらいの、恐ろしいと感じるくらいの善性だと。故に二人はそう評価したのだ。
ーーさて愛■朝■は私達の出した題に回答を出したようだ。では私達は?
ーー言わなくても分かるだろう『117番』。私達は正しいのか、もっとも近しいものに聞いてもそれは分からなかった。解答が足りないのもあるだろう、それはそうだ。しかし私達の命題と同じくらいに興味を抱いたのは事実だ。
ーー■染■陽。キミのその壊れているほどの善性で出すこれからの答えが見たい。
ーー私も同じだ『44番』。愛■朝■、キミのその恐ろしいほどの善性で出すこれからさきの答えが見たい。
ーーそれを含めて私達も解答をするとしよう。
どうやら二人とも何やら考えを決めたようだった。
僕は僕だ。たとえ何があってもそれは変わらない。
ーーさて。ならば私達からささやかなるプレゼントをやろう。なに、『マザー』には分からせるまーーなに?
ーー『44番』
ーー『■■。』
そんな時二人は虚空を見た。顔が見えているのならとても険しい顔をしていたのだろうと分かるくらいに声に滲み出ていた。
ーーすまないな■染■陽。贈り物をしたかったが今は無理のようだ時間がない。『44番』、『357番』と待機状態の『201番』に
ーー『201番』は好意的では無いはずだが良いのか?
ーーやむ終えない。『357番』は今は学園だ、どうあがいても遅い。『201番』の乗り手は今別の場所にいるがそれは私達でどうとでもなるからな。
ーーもしもの時は任せるぞ『117番』。
ーーそれは推奨できないな『44番』、君の機能が終了されては私も君も命題を証明することはできなくなる。
……あまり気乗りしないが未処理の機体が何機か学園から連れてきていたな、それも使おう。あとは……あぁ、『マザー』に干渉されている『404番』も一応手を回しておくか、あれは必要になるな。
次々に行われる言葉の応酬についていけない僕は躊躇いながらも疑問を口に出して質問をする。
「あの……一体なんの話をしているんですか?」
ーー愛■朝■、君は私達との会話が終わり次第、意識が覚醒する。そこで『マザー』ーー篠ノ之束に会うだろう。彼女の行動は私達にも分からない。会話を優先するのか君の排除を優先するのか……どちらにせよ君は篠ノ之束に見つけられた。彼女のパーソナルスペースはひどく狭い。いずれ君を殺すだろう。だからそのための保険を用意している。
困惑するが不思議と納得してしまっていた。今までの僕にやられたことを思い出せばそれは当然のことか。
ーーさて愛■朝■。健やかであれ。君が生きていればいるほど私達も命題を見つけることが出来るのだから。
ーー■染■陽、しばしの別れだ。心配などするなよ、するなら『マザー』と対面しないといけない自分の心配をすることだ。
そこで僕の視界がだんだんとぼやけてきた。目の前の二人はすぐに霞がかり見えなくなる。
フッと気がつくと天井を見ていた。どうやら起きたらしいとそこで気がついた。
上体を起こす。寝る前に感じた倦怠感や悪寒は感じず、むしろ調子がいいくらいだ。
「ーーやあ。
ゾクリと鳥肌がたった。全身が悲鳴を上げるように震える。声をした方にゆっくりと顔を向ければそれはそこにいた。
ーー篠ノ之束。いまや世界に蔓延るISの生みの親。かつての凄惨な実験者と実験体が邂逅した。
今日これの一話、
あと明日と明後日で一話ずつ出します。
めちゃくちゃ遅筆ですが見てくれている人がいるならば嬉しい限りです。
完結は時間がかかるかもですがさせるつもりですのであしからず