織斑先生に連れてこられたのは体育館――第二アリーナと呼ばれる場所だった。
「ハァイ、待ってましたよ織斑千冬さん、愛染朝陽さん」
女性の声がした……てここでは当たり前でした。
『先生、この方は?』
「あぁ、先ほどの方はスチェスタ・ニーヴァルト博士。ローマ・ギリシャのIS研究者だ」
「よろしくねぇ〜」
ぎゅっ、と手を握られる感覚。僕はよろしくお願いしますと返しておく。
「……ふぅん」
何かを思案するようにスチェスタ博士は声を漏らす。
それに被るように三人の声が連続して聞こえた。
「私の紹介はまだかね? 自己紹介したいのだが」
「ふむ、一番手は取られてしまったか。視覚的な意味合いでは負ける気がしないのだが、今回はそれが敗因か」
「くくっ、焦らしプレイも放置プレイも好きよ」
かなり愉快な人たちが集まっているなと思った。織斑先生に聞こうとしたらあっち側から紹介してくれた。
「――私は
「――私は篝火ヒカルノ。日本のIS研究者である」
「ロシアから来たユーリスカヤ・ビルマ・リトビャクよ。医者でもあるわ、よろしくね」
『あ、よろしく、お願い、します』
一通りの挨拶を終える。
「さて、始めましょうか。日本、ローマ、ロシアの面子が集まるなんてねぇ」
「まったくね。あ、ちょっとこっちに来てもらえる? 愛染朝陽君」
そういってユーリスカヤ医師が僕を呼ぶ。織斑先生がそっちに押してくれた。
「――おいおい、いきなり始めるつもりか? 説明くらいしないか篝火博士」
何をしようとしたかはわからないが木山先生が篝火博士のことに制止をかける。
「あ、ばれちったー? さっすが木山せんせー」
その時、「おい」と後ろから声が投げかけられた。
「うちの生徒に何をするつもりだ? 愛染の今の状態からの大幅な身体的な脱却という訳の分からないことにわざわざIS学園が受け、
踵を返して帰ろうとするのを木山先生が止める。
「まぁ待ちたまえよ織斑教諭、確かにこちらが全面的に悪かったなすまない。愛染君もな。この人には後でこってり言っておく」
「え、ちょ、マジですか。怒られるのはやだな、篝火博士は」
篝火博士は飄々とした声で言っていた。
そこに木山先生とスチェスタ博士、ユーリスカヤ医師が順を追って説明してくれた。
「今から君につけるのは私達が私、木山夏生とユーリスカヤ氏が長年構想を練っていた体に難のある人をISで補強する、といったことだ」
「ISを体に直接埋め込むか、何かISの情報を媒介できるものを身体に取り付け、ISをその対象者が患っている場所の身体的情報を解析させ、生体信号を送る、というものよ」
「まぁ、要は、ISを身体の一部にするというわけ」
三人が説明してくれたおかげで何をするのかは分かったが、それに織斑先生が待ったをかけた。
「待て、それなら愛染の身体的、精神的苦痛はどうなる? 今はまだ出ていないが愛染は時々ISに対して拒否反応のようなものが出る。ISを身体に埋めるなど大丈夫なのか」
織斑先生は僕のことを案じて言ってくれている。確かに時々、そういう発作が出る。だけど、大分軽くなったから今は楽だ。
『大丈夫、です。もしも、だめなら中止、してくれれば』
「あぁ、もちろんだ。不調が出るようならすぐにやめることを約束しよう」
木山先生の言葉を皮切りに作業が進められた。
僕は車椅子に乗ったまま、他の四人は僕の周りを忙しなく動いていた。
「――そっちは違う、それは電極用の装置だ。それは後で使うからこっちを頼むユーリスカヤ氏」
「スチェスタ博士、これを組み立て貰えるか」
「篝火ヒカルノ博士、ISの準備をしてくださいます?」
「はいは〜い」
ガチャガチャ時々、ゴリゴリ、ガッチャン。その作業は数十分で終わった。
「さて、完成か。愛染朝陽君、これを付けてくれるか? 織斑先生」
木山先生が一度僕に入ってから、織斑先生に確認を取る。
「これは……何だ? 見たところチョーカーのようにも見えるが、この機械とケーブルは何だ?」
「それがスイッチ、そしてケーブルが視神経の代わりになるものだよ」
篝火博士の言ったことに織斑先生が驚愕をあらわにする。
「核となるISコアには君の専用機となる機体を使わせて貰った。これで置く場所には困らない、車椅子にはバッテリーを積み込み、このチョーカーとコア、バッテリーを使って起動させる」
「ISを起動させるということか? なら、車椅子はいらないと思うが……」
「いや、ただ起動させるのではないよ。準起動状態にするんだ。これを設定するのには苦労したよ」
ちなみに普通に起動させたい時は二度押しで、解除したい時は三度押しね」と篝火博士は付け足した。
「準起動状態というのは単純にいうと肉体にISの力を行使させるというものだ。たとえば骨が砕けて歩けないのならISのエネルギーを使って
ただ、と篝火博士は告げる。
「まだ、情報が圧倒的に足りず、完全ではない」
「そして、これだけはやる前に聞いておかなければならい。愛染朝陽君」
ガシッと肩を掴まれた。
「この装置は良くも悪くも一度つけてしまえば、ISと君の生体信号がリンクしてしまい無理に取り外すことは死を意味することになる」
「な――」
驚愕の声は僕か、織斑先生のどちらかだったと思う。僕はあの時のことを思い出し、吐きそうになるが必死に耐える。
「だが、不用意に外れてしまってはい死んだ、何てことがないようには出来てるから安心してほしい……いや、無理か」
「貴様たちはふざけているのか? 言っただろう私は生徒に危害が加わるなら止めると」
『まって、ください、織斑、先生』
僕は織斑先生を止める。そして織斑先生にも他の人たちにも聞こえるように僕の気持ちを吐露する。
『僕は、乗って、みたいです。発作は怖いですが、もう一度、
しばらくの沈黙の後、織斑先生は分かったと告げる。
「お前自身で考えたことだ。私がどうこういうことは出来ん」
『ありがとう、ございます。織斑、先生』
こうして、ぼくにISが取り付けられることになった。