僕はね、ジャンヌ・ダルクが好きなんだ。
「Mr.Trouble Maker」とか「ツメタイカゲロウ」とか。
ABCからはちょっとなーーー。

みたいな話ではなく、ジャンヌと邪ンヌのお話。
真作と贋作ねぇ……。

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「俺の、私のジャンヌを汚さないで、いや穢さないで」っていうスイッチが
比較的簡単に入ってしまう人は読むべきじゃないかもしれぬな。


どうか聖女のような広い心を持って、読み進めてください。



では、どぞどぞ。






『恵みの雨というにはあまりに冷たく』

 

 

 

 

 

――夢を見ている。

 

 

 

――“彼女”が楽しいと嗤っている。

 

 

 

悪を殺すことは悪を踏みにじることは、とても正しいこと。

 

 

 

だから愉しい。だから嗤える。

 

 

 

――ああ。私にあんな感情はない。

 

 

 

――それでも。

 

 

 

あれは、もしかすると。得難い“何か”ではないのだろうか。

 

 

 

 

 

 

そんな、愚かなことを考えてしまう自分がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===========================================

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――嗚呼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――いや

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――厭ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああいやあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ嫌ぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは――――うたかたの夢だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虫唾が走る、吐き気を催す、胸糞が悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マスターの命を受けて、仕方なく――――

本当に仕方なくレイシフトした先がよりにもよって()()()()とは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出したくもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのに―――――

それなのに―――――

 

 

 

 

 

 

―――――――最悪だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

”フランス”という場所だけでも胃がひっくり返りそうな気分なのに……。

 

 

 

 

 

 

 

どうして、こうなる。

もう、いいでしょう―――――放っておいてよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神っていうのは、本当に――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――ろくでなしだ。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

そこには、ぼろぼろになった聖女がいた。

 

―――見たくもない。その顔。

 

目撃してしまったのはやむを得ないとして――だとすれば、見てないフリをしてこの場をやり過ごしてしまうのが正解なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――ローレヌの乙女

 

 

 

―――――――オルレアンの救世主

 

 

 

―――――――イギリスの脅威

 

 

 

 

 

 

 

 

そう呼ばれた聖女が空を見上げる形で横たわっている。

 

 

 

満身創痍で。

 

 

 

奇しくもここは、彼女が死んだ――――焼かれた広場。

 

 

 

彼女はここで何をしていたのか。

 

 

 

 

燃える街に包まれるようにして、ぴくりとも動かない。

 

 

 

 

死んでいるのかもしれないと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付けば、私は彼女に近づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

まだ、かろうじて生きていた。

だが、このままにしておけば彼女は死ぬ――――

英霊として、生前と同じように、焼け死ぬ。

 

 

 

 

 

踵を返そうとした。

 

 

 

でも、彼女の顔は――――

 

 

 

 

 

―――――あまりに綺麗だったから。

 

 

 

 

―――――ぼろぼろになっても、(すす)と血にまみれても、綺麗だったから。

 

 

 

 

 

足を止めてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ジャンヌ――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャンヌ・ダルク―――――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――貴女は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――――かつてもそんな顔で自らの死を受け入れたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言葉を発してしまえば、もう止まらなかった。

堰を切ったように想いが溢れかえる。

 

 

 

「貴女は私を認めないのでしょう?」

 

 

 

「それはそうよね。何者にも侵されることのない穢れ無き聖女」

 

 

 

「貴女に私が受け入れられるわけがない」

 

 

 

「貴女が輝くための影だもの。この身は喜んで地を這い、泥を啜りましょう」

 

 

 

「何も知らない純真無垢」

 

 

 

「――――貴女を見ていると、目が潰れそうよ」

 

 

 

 

 

 

苦虫を潰したような顔で話し続ける。

 

 

 

 

 

 

「人々がどんな目で見ていたか――――」

 

 

 

「神の声を聞いたと言った貴女を」

 

 

 

「純潔の証を衆人環視の中で晒された貴女を」

 

 

 

「戦の作法どころか、馬に乗る術も知らなかった貴女を」

 

 

 

 

 

 

恥辱にまみれた顔を覆いながら、肩を震わせる。

 

 

 

 

 

 

「貴女はどんな目で見ていたの―――――」

 

 

 

「自分の振るう旗の下に散っていく人々を」

 

 

 

「救世主だと自分を称える民衆を」

 

 

 

「炎を囲んで、魔女を殺せと叫び暴れる狂人どもを」

 

 

 

 

 

 

引き攣った笑みを浮かべ聖女を見下す。

 

 

 

 

 

 

「覚えているでしょう?」

 

 

 

「戦場の中の埃と煙、激しい号砲を」

 

 

 

「肉の裂ける音、首が捩じ切れる感触を」

 

 

 

「―――――忘れたとは言わせないわ」

 

 

 

「血を見るのが嫌だと言いながら剣を振るい、旗を振るった」

 

 

 

「多くの血が流れた。敵も味方も関係なく」

 

 

 

 

 

 

くぐもった嗤いをこぼして言葉を重ねる。

 

 

 

 

 

 

「ああ――――」

 

 

 

「”平和のために”と掲げたその剣と旗は流血に染まり、泥にまみれる」

 

 

 

「―――醜穢(しゅうわい)に彩られていく」

 

 

 

「いくら物を新しくしようと、その穢れは決して祓うことができない」

 

 

 

 

 

 

面白くて仕方がないという風な――下卑た嗤い。

 

 

 

 

 

 

「夜襲、朝駆け、不意打ちなんて当たり前」

 

 

 

「正々堂々なんてものはない―――――」

 

 

 

「ただただ勝利のみを望まれる戦乙女」

 

 

 

「それはそうよね。勝てば、それ即ち

 ――――――奇跡だもの」

 

 

 

 

 

 

温度を持たない、聞くものを凍てつかせる物言い。

 

 

 

 

 

 

「戦が楽しくなったのでしょう?」

 

 

 

「血に飢えるようになったのでしょう?」

 

 

 

「”汝の敵を愛せ”」

 

 

 

「主のそんな言葉に唾棄するかのような振る舞いで戦場に貴女は立ち続けた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「温かい家族に囲まれて」

 

 

 

 

 

 

「羊を追いかけ、水辺を飛び跳ね」

 

 

 

 

 

 

「野の花に恋をし、日暮れまで空を見上げた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの頃のまま、何も知らぬ少女のままでいられたならどれほど良かったか―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

独白を続けるうち―――

 

 

どこからともなく死霊、亡者の類が集まってくる。

 

 

 

 

なるほど、この聖女は”これ”と戦っていたのか。

 

 

そして――――、”この場所”。

 

 

なんの因果かなど、今さら問うまでもない。

 

 

たとえ、死霊や亡者に成り果てようとも、忘れられる顔ではない。

 

 

 

 

 

 

こいつらはジャンヌ・ダルクが”焼かれながら”見た顔だ。

 

 

そう―――、遠巻きにこちらを見上げていた顔だ。

 

 

侮蔑の目と憐れみの表情。

 

 

 

 

 

脳裏に張り付いて、いつまでも離れない――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――嗚呼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だだ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心でそう叫びながら――――

 

 

 

 

 

近づいてきた亡者の首を吹き飛ばす――――!

 

 

 

 

 

 

あぁ、どうしようもなく、声が、肩が、脚が、脳が、震える――――――。

 

 

 

 

 

 

「最初から有罪が決まっている異端審問で」

 

 

 

「”自らの神の存在を否定する”」

 

 

 

「その旨が書かれた調書に署名をさせられた」

 

 

 

「だって、仕方ないじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

「文字が読めなかったんだもの――――――!」

 

 

 

 

 

 

慟哭するように叫びながら知った顔を薙ぎ倒す。

 

 

 

 

「異端審問の後」

 

 

 

「”悪魔と契約するには、処女であってはならない”」

 

 

 

「『火焙りにされる魔女』」

 

 

 

「その魔女が純潔であるはずがない、あってはならない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――そうして凌辱と蹂躙の限りを()()()は尽くされた」

 

 

 

 

 

そう懺悔するように告白して。

 

 

 

 

 

漆黒の旗を振るい、暴れまわる。

 

 

 

 

 

逆鱗に触れられた竜のように。

 

 

 

 

 

 

「一度は国を救って―――――」

 

 

 

「人々に英雄と崇められて―――――」

 

 

 

「最後には人心が離れ―――――」

 

 

 

 

 

 

「救った国に裏切られる気持ちはどうよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺戮の音の中、はっきりと木霊する声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ジャンヌ(わたし)――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはまるで赤子みたいに無邪気で、残酷で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャンヌ・ダルク(わたし)―――――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しくて仕方がない。

そういった様子で嗤いながら。

 

死霊の頭を踏み砕く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ――――――――――――――――!!」

 

 

 

 

 

「答えてよ―――――――――!」

 

 

 

 

 

貴女(わたし)の祈りは一度でも主に届いた?」

 

 

 

 

 

「届いてなんかいないでしょうっ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泣いて! 叫んで! 世界を憎みなさいよ!」

 

 

 

 

 

「神を呪いなさいよ―――――!!」

 

 

 

 

 

「そうでないと――――――――――」

 

 

 

 

 

 

「――――――でないと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私が救われない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴女も知っているでしょう!? 生きたまま焼かれる苦しみも、信じたものに裏切られる絶望も」

 

 

 

 

 

 

 

「いっそ狂ってしまえるのなら、どんなにいいか―――――――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして暴悪に溺れながら、

 

 

 

 

 

 

 

 

《これは―――》

 

 

 

 

 

 

 

 

自らの心に刃を突き立てるように、

 

 

 

 

 

 

 

 

《憎悪によって―――――》

 

 

 

 

 

 

 

 

撃鉄を起こし、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《磨かれた――――――》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今再びの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《我が魂の咆哮》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煉獄をここに―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《『吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)』》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖女の頭を踏み潰しかねない位置に立つ黒い聖女はうなだれている。

 

 

いまだに目覚めることのない聖女を見つめている。

 

 

見下しているはずなのに、それはまるで神に救いを求めて見上げているような瞳だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――ねぇ、教えてよ」

 

 

 

 

 

 

 

「―――――私と……、貴女は何が違うの?」

 

 

 

 

 

 

それは悲痛な嘆き。

 

 

 

 

 

 

本来、口にしてはならない呪いのような響きを持つ言葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――同じですよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから―――――、

 

 

 

ともすれば風に搔き消されてしまいそうなその呟きは

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――たしかに、祝詞(のりと)のようにこの場に響いた。

 

 

 

==========================================

 

 

 

ぽたぽた、と。

 

自らの頬を打つ滴―――

 

 

それにつられるようにして、覚醒に向かう意識。

 

 

「……ヌ、…ジャ――――ン…………」

 

 

「ン………ジャン…ヌ――――――」

 

 

「――――ジャンヌ!」

 

 

自分を呼ぶ声に反応して瞼を開く。

 

 

「――――っつぅ……。はい、マスター、どうされましたか?」

 

 

痛む体を起こしながら、通信から響く声に応答する。

 

 

「どうされましたか? じゃないよっ! 今、どこにいるの? 大丈夫!? レイシフトの異常でジャンヌだけが全く違う場所に飛ばされて、急いでカルデアに戻ったんだけど通信が全然繋がらなくて、ほんっとうに心配してたんだ……。そっちの霊基の反応は掴んだから今からすぐに向かうけど、状況は問題ない?」

 

 

本当に心配をかけてしまったようで、怒涛の勢いでまくしたてられる言葉にはこちらを案じる気持ちが滲み出しているように感じられた。

 

 

「申し訳ありません、マスター。こちらは、ええっと、周囲にこれといった危険はありません――――けれど」

 

 

「? けれど―――?」

 

 

空は明るいのにも関わらず、しとしとと地面を打ちつける滴。

 

激しいわけではないが、決して弱くもない雨脚。

 

 

「雨が………、雨が降っています」

 

 

「雨? 大丈夫? できたら濡れない場所に移動して……」

 

 

「いえ、場所は屋内、というわけではないですが、建物の焼け残りのような部分がちょうど屋根のようになってくれているところにいるので、濡れることはありません。ただ―――――」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「――――いえ……、やっぱり、なんでもありません」

 

 

「…そう? ―――えっと、あー、そうだ! 今、モーツァルトがピアノを弾きながら自分語りしてるんだよ! カルデアに戻ったら一緒にからかいに行こう。あと、それから――――」

 

 

マスターの優しげな声が通信から響いてくる。

 

 

ずっと聞いていたくなるような。

 

 

でも、それよりも。

 

 

マスターは迎えに来てくれると言っていた。

 

 

「……マスター?」

 

 

「うん?」

 

 

「出来る限りでかまいません。ですが、その……早めに迎えに来ていただけるとありがたいのですが――――」

 

 

「あっ、ごめん。連絡がついて安心したから、つい余計なことを…。怪我もしてるみたいだし――――今行くから。すぐだから。ほんの少しだけ待ってて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ええ、どうか。

 

 

 

――――――――どうかお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――ここは、ひとりだと、とても寒い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







あとがき

なんというか。
それはキャラクターである以上、仕方ないのですがジャンヌ・ダルクって気持ち悪いぐらい綺麗で真白なんですよね。
ほんと純真無垢って感じ。

でも、歴史を紐解いてみれば、そんなわけはなくむしろ逆に位置する邪ンヌのほうがよりジャンヌ・ダルクっぽいというか(ジャンヌの反対が邪ンヌなのかは置いといて)。

英霊の座の中に邪ンヌはいなくて、ジルがそうあるべきだと願った結果、生じた可能性の産物でしかないという設定ではありますが。
どちらのほうがジャンヌ・ダルクの本質なのかと問われると、それは邪ンヌなのでは? と思いたくなってしまいます。

そんな小さな反逆心から生まれた本作ではありますが、べつにジャンヌを否定するものではありません。ただし、ちょっとお前”混じり気”が無さすぎるぜ? と思ったのでお化粧をさせてもらった次第です。泥を塗りつけるように(ナニ

「樽一杯のワインに一滴の泥水を入れればそれは樽一杯の泥水になるが、樽一杯の泥水にワインを一滴入れてもそれは樽一杯の泥水である」
って文言はご存知でしょうか? これ、嘘だと思うんですよ、前半部分。泥水一滴ぐらいそんなわかりませんって、普通。味も変わらないでしょうし。ただ、その泥水が混入したという事実を知ってる人にとっては前と同じワインに見ることはかなわないよねってお話で。



書き進めれば書き進めるほどジャンヌと邪ンヌが公式で絡んでくれんものかー、と思ってしまいます。できれば、きのこに書いてほしい。


いや、もうほんとなんでもいいからきのこは書いたら出してほしい。


――――――――――――――――――――――――


Twitterをやっています。

@katatukiNISIO

FGOのことを主体に、アニメ、マンガ、ゲームについて雑多に呟いてます。



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