Dies irae 番外の軍神   作:祇園

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第3話

「さて、ベアトリス……お前に2、3聞きたいことがある……大人しくして貰おうか」

 

諏訪原の夜の街が燃えている

 

東方正教会によるものもあるが軍神とベアトリスの周りを囲むように燃える炎は軍神の創造によるもの

 

「少佐……私は大人しく出来ません。この諏訪原の人々のためでもあり、戒のためでもあるんです」

 

「それはお前でなければいけないことなのか?」

 

「私がやるんです。東方正教会のメンバーの魂でスワスチカを開いて首領……いえ、ラインハルトを討つんです」

 

ベアトリスの目には決死の覚悟が浮かんでおり、テコでも動かない程の決意だと軍神は感じ取った

 

「50年前なら軍法会議をすっ飛ばして銃殺刑ものの発言だな」

 

「そうですね……ですけど、私は少佐を前にしても決意は変わりません。少佐にお聞きしたいことがあります」

 

「……ツキが落ちるぞ」

 

「落ちても構いません……どうして、少佐は黒円卓に入られたのですか?」

 

「守るためだ」

 

「え……?」

 

ベアトリスは信じられないという顔をするが軍神はそのまま話を続ける

 

「軍人として当たり前のことだが、祖国を守るために俺は力を求めた。全ての害悪から祖国を守るため……ただそれだけだ。それが俺の渇望であり、死しても祖国を守るため、俺がメリクリウスに求めた力だ」

 

「祖国を守るためならなんで貴方は!あの惨劇を止められなかったんですか!!」

 

「そこまでだ……ベアトリス」

 

戒は腐毒を撒きながら炎を抜けてベアトリスの前に立った

 

「戒……ッ!」

 

「足止めありがとうございます。あとは僕がやります……」

 

「なら、早くしろ。お前の時間もあと僅かだと言うことを忘れるな」

 

戒は「はい」と答えるとベアトリスと対峙する

 

「ベアトリス。ここまで来てしまったのなら、僕はもう……」

 

「分かっているわ……私もそのつもりで来ている」

 

「それならいいんだ。いや、よくはない。どうして……どうしてなんだ」

 

「私は死人で出来た道を照らしたくない。それが光の道なんて信じられない!私は戦場を照らす光となりたい。だから……ここを暗闇の世界へ変えている根源を破壊しなくちゃいけないの!分かるでしょ……?」

 

「あぁ、分かっている。その姿こそがベアトリスだ」

 

「だけど」そう言いながら櫻井は贋作を取り出す

 

真に近づけようとしたため、真よりも忌むべきものとなった槍

 

一族を呪いという枷で縛り続ける、最悪の槍

 

戒は巨大な槍を地面に突き刺す

 

持ち手によって形状を変えるため槍というよりも、その形状は太刀に近い

 

その槍からベアトリスへ怨念、後悔、憎しみ、ありとあらゆるものが伝わってきた

 

そこにプラスの感情など一つもない

 

恐ろしいまでにマイナスで創り上げられた槍だった

 

ベアトリスも稲妻をまとった剣を取り出す

 

その剣で戦場を照らし、上官と愛する人を救いたかった

 

叶うのならば、今からでもそう願い続けたかった

 

先に動いたのは戒

 

戒の上段から振り下ろされた攻撃をベアトリスは受け止める

 

だが、力で押し切られるのも時間の問題だった

 

間合いを取ろうと後ろへ下がるが、戒の槍は依然としてベアトリスを捉えたまま動かない

 

「どうして……どうして君は一人で解決しようとするんだ!」

 

「それが、私に出来る唯一のことだから!」

 

「他にも出来ることはあるはずだろう!」

 

「私はこのやり方しか知らない。それを言うなら戒にだって別の選択はあったでしょ!」

 

「なっ……」

 

動揺した戒の一瞬の隙をつき、ベアトリスが間合いを取る

 

櫻井は追撃する素振りを見せなかった

 

(僕は君と蛍を守るためだけを思っているのに……ほかにどんな方法があるというんだ)

 

「戒……どうして」

 

戒の異変に気が付いたベアトリスの口から、心配の言葉が漏れる

 

戒はそっと自分の目に手を当てると雨とは違う、生暖かい滴が溢れていた

 

「戒、貴方はまだそんなに綺麗じゃない……だったら、そのままでいてよ!私のためにも蛍のためにも!汚れるなんてそんなのやめて!」

 

「誰かが汚れることで救われるなら、僕は喜んで引き受ける。それは僕にしかできない。全身腐り果てている櫻井戒にだけ許されていることだから!」

 

「貴方はどうして!」

 

ベアトリスが振る剣には迷いがあった

 

『戒を殺したくない』

 

その思いは戒も分かっている

 

それでも、真に2人を守るためには、あの悪知恵を働かす黄金の代替を納得させるために戒も剣を振るい続けなくてはいけなかった

 

二つの剣がぶつかりあおうとした、その瞬間だった

 

Briah―――

 

「時間切れだ……ベアトリス。先にヴァルハラに行け」

 

軍神の口から絶望の言葉が紡がれる

 

次の瞬間、ベアトリスの体は炎に包まれた

 

「お前に恨みはない……だが、お前は焦りやり方を間違えた。誰かと共になら出来た」

 

ベアトリスの体が燃え尽きると第一のスワスチカが開かれた

 

「すいません……最後までお手を煩わせてしまって」

 

戒の体は屍化が進行して立つのもやっとの状態だ

 

「ここまで進行していたか……よく、あそこまで戦えたものだ」

 

「えぇ……自分でもそう思います。最後に貴方に蛍をお願いします」

 

「妹……蛍をか?」

 

「はい……僕がどうなったかは伝えないでください。きっと蛍は僕を救うために手段は選ばないと思うので」

 

戒はそう言うと完全に屍となった

 

「くそっ…また救えなかったのか!俺は!!」

 

軍神は、苛立ちを博物館にぶつけるが何も変わらない

 

過去は変わらない

 

雨の降る諏訪原の街はただ静かに朝を迎えることとなる

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