技師の力は何が故に   作:幻想の投影物

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20話目くらいで完結しそうな勢い。
内容薄くて申し訳ありません。


case16

「Wow!?」

 

 魔女結界の消失と同時、アイザックの体は空中に投げ出されていた。近くにはとっかかりになりそうな鉄骨もなく、フリーフォールの20メートルが彼の眼前に広がっている。地面は酷く硬いコンクリートの塊で、断線したトラム(一つの街の様に広大な船の中を行き来するモノレールのような物)から落っこちた時より手酷いダメージを受ける事は間違いないだろう。

 体勢が整わず、ぐるぐるとバランスも取れずに落下し始めたアイザックだったが、何とかスーツの宇宙空間を移動するための空気噴射機能を起動させる。真下に落ちて行く状態から少しだけ横に逸れる事が出来た彼は、錐揉み回転で大きく体勢を崩しながらも、驚異的な動体視力とスーツの予測補助機能で何とか着地点の設定を決定。そして地面に接触する。

 

「オォォォォォォォォォ!? グァァッ!!?」

 

 ドン、という衝撃が右腕から伝わり、回転しながら廃棄された建設途中の鉄骨が見下ろすコンクリートの現場を転がって行く。ガン、ガシャン! と轟音を立てて身体を強かに打ちつけながら、何とか彼は地面と生きて再会する事が出来た。ひとえに未来で作られたスーツの優秀さに感謝すべきか、はたまたこんな生存をさせてくれた運に感謝すべきか。

 

「……ぐ……骨は…平気か? だが如何せん、派手すぎやしないか」

 

 自分の転がってきた場所は、荒々しく打ちつけた場所やスーツを含めた自重の全てを含めた大質量のものが上空から落下、後に転がったせいでひび割れや捨て置かれた備品を大きく破壊してしまっている。痛む体を引きずり、何とか近くの壁に背中を預けた彼は収納スペースに格納していたほむらから譲ってもらった携帯電話を取り出し、スーツの頭部を可変機能で収納して素顔を露出させた。

 夜特有の冷えた空気に加えて、先ほどまで魔女が結界を張っていたからか酷く不快な気持にさせられる違和感が魔女結界の入口があった場所から漂ってくる。大きく息を吐きだしたアイザックはスーツの言語統一機能を使用してから携帯をプッシュ。耳に当てた。

 

「アケミ、済まないが迎えに来てもらいたい」

≪今回の魔女、やっぱり相当だったのね≫

「いや、魔女は何とか殴り殺した。君の掛けた魔法が工具そのものにも帯びていたようでね、何とか叩き潰せたよ」

≪……深くは突っ込まないけど、すぐに迎えに行けばいいのね?≫

「頼む。流石に20メートル以上からのコンクリートダイブは難しかったようだ。鳥人間コンテストでも開けば優勝できそうな気はするがな」

≪次からはトばないように気をつけなさい≫

 

 心底訳が分からないと言った同様すら隠せていない彼女の声を最後に、アイザックは再び息を吐きだして背中に預ける体重を増やす。困ったものだと関節を少しやってしまったらしい右足の張れるような痛みに辟易していると、先ほどの衝撃で建設頓挫場が揺れたせいか、アイザックの頭上から一つのロボットが落下してきた。

 ゴツン、と肩に当たった其れに今度は何だと多少苛立ちを隠せないながらも仰ぎ見れば、それはこの都市開発の為に作られていたらしい作業補助用の小資材搬入用ロボットらしい。角ばったコブラの様な見た目をした可愛らしいそれに、アイザックは実入りもあまりよくなかった昔、スクラップ上で「SCAVENGER BOT」という自動資材回収ロボットを思い出した。

 

「………見てくれは可愛い奴だ。ああ、そうだ」

 

 おもむろに手を伸ばした彼は、そのロボットの腹をがばっと開く。中から転がり出てきたのはドライバーなどの前時代的でもあり未来に至るまで使用される工具で、アイザックの懐かしい気持ちは膨れ上がるばかりであった。

 ドライバーを一本手に取り、彼の右手からは未来の技術である「キネシス」の青い光が辺りのものを掻き集めるために伸ばされる。スーツの顔面部から発せられるライトの光を頼りに、エンジニアのちょっとした暴走が始まっていた。

 

 

 

 その頃、鹿目家では家族会議with巴マミが開催されていた。

 ほんの僅かな証拠から自分の娘がとんでもないことに巻き込まれていると知ったまどかの母、詢子の観察眼は感嘆の域であるとも言えるだろう。しかし今回ばかりはそれが裏目に出ており、巴マミもまどかの父親・知久のあれやこれやと言った話術によって自らの魂そのものであるソウルジェムを机の上に提出させられていた。

 まだ幼子であるタツヤを寝かしつけた知久が部屋の奥からリビングに戻ってきた所で、さて、と言った詢子の声が深夜の家に静かに響く。

 

「なぁまどか。今すぐにでもっていうスーパーセルからの退去命令に、私たちが街の路地裏向こうに見た化け物の姿。ネクロ…なんとかって言ったか? アレ、もう一度聞くけどどんなもんか本当に分かってんだな?」

「…うん。正確にはネクロモーフだよ、ママ」

「そしてあたし達は本当はああ言った化け物から逃げるため、そして余計な被害者を出さないためにお偉いさんの権限をどうにか使って退去命令が出ている。それで間違いないね? 巴さん」

「はい。正しくは上条君と志筑さんを伝手に伝播したようですが」

 

 マミの証言に、まどかの両親は揃って頭を抱えた。

 よりによって自分の娘と、それに準じた親しい者達全員がこの厄介事に関わっていると言ったのだ。そしてクラークという名前の大人は、彼女達の話ではネクロモーフと言う化け物を退治する専門家(というのがまどか達の主観)。未来の技術を使ってどう言う訳かタイムスリップしてきた化け物共を倒せるらしいが、現代の技術ではネクロモーフの弱点である手足をもぐ事すら難しいとの事。

 そもそもアスリートの男性が全力で走り続けてくるような速度を出す化け物が狂気を以って突っ込んでくるのだ。正常な人間では一瞬の虚を突かれて一生を終えることになりかねない。更にはスーパーセルと偽った強大な魔女と言う敵が迫って来ている。それに対抗できるのはまどかの友達であるさやかも含めた、先輩の巴マミ、転校生の暁美ほむら、そして協力してくれるかどうか分からない一人の少女達でしか無いという事実。

 知久がそんな事をさせるわけにはいかないと、口を開くが。

 

「…まどか。みんなに何とか言って―――」

「それはダメだよパパ。さやかちゃん達はもう決めてるし、それにあの魔女を何とかして、ネクロモーフも倒さないと世界が滅んじゃう」

「私たちは元から死ぬことを前提として戦っていますし、それに私たちはこの……ソウルジェムが、本体ですので。……多分、これだけでも残っていれば魔力を回復させれば、肉体も元に戻るかと。丸ごととなると、流石に数年かかるかもしれませんが」

 

 続いて行ったマミの言葉は震えていた。自分が化け物と同類と言ってもいい身体をしている事と、その事実を自分自身で告げたことに多少なりとも恐怖の色が宿ったのだ。そして魔法少女という名前の響きとは裏腹に、残酷で不死身と言う化け物にさせられている少女の運命を大人たちは悔いた。

 何故、そのような存在を自分たちは知らないのか。そして止める事が出来なかったのかと。その呟きは詢子の口から漏れ出ていたようで、マミは嬉しそうな頬笑みを見せながらに、悲しく笑って見せた。

 

「ありがとうございます。…でも、この契約を結ぶキュゥべえという生物は私たち魔法少女の才能がある人にしか見えなくて、彼自身も魔法少女じゃ捉えきれない程に神出鬼没なんです。それに現代で、そんな事を言っても信じてもらえると思いますか? 彼の話では、人類の創世記から彼らは人類を見守ってきたと聞きました。其れが真実なら―――」

「あたしら何もできない大人は、真実を知っても墓まで持ってくしか無いってことか」

「…うん。これは、さやかちゃん達の問題。それに此処で引き下げて見滝原が壊滅したら、さやかちゃんも、ずっとこのワルプルギスに備えていたほむらちゃんも絶対に納得しないと思う。少なくとも、わたしにはそう見えたんだ。……マミさんも、そうなんだよね?」

「………」

 

 まどかの問いかけに、マミは無言で目を閉じた。

 しばらくして、自分自身ですら確かめるように、小さく一度だけ頷く。

 

「そんな……玉砕覚悟だって言うのかい…!?」

「鹿目さんのご両親。どうかこの事は絶対に誰にも言わないと約束して…明日にでも、鹿目さんを連れてこの町から逃げてください。私たちはきっと負けません。貴方たちが祈る限り、私たちはちゃんと力にして戦いますから」

「そんな事…! テレビの魔法少女じゃないんだから、気休めにすらならないんじゃないのか!? なのに、そんな年で死のうだなんて何を言っているんだ!! 君は、命を――」

「失いたくありません! だから、だからこそ戦うなんて…私も嫌なんです。でも、他の魔法少女は領地の取り合いで絶対に参加なんてしません。誰かに頼んで魔法少女になって貰ったとしても、その子は何時敵である魔女になって怪物にならないとも知れない」

 

 だから、と見滝原の魔法少女を代行してマミはいう。

 

「私たちがやるしか、ないんです」

 

 唇を噛み締め、震えを押し殺し、それでもまどかの両親を見据えて言う。

 こんな年の少女がするには、あまりにも血に染まった考え方。恐らくは、魔法少女としての回復力でしか治らない程の大けがも何度もしてきたのだろう。その度に、命が失われる恐怖を乗り越えてきた。いわゆる「ベテラン」として言葉の重みを乗せたマミの宣言に、大人は項垂れるしかない。

 

「…分かった。まどか、おまえはどうするんだ?」

「ママ…! でも、まどかは」

「いいから。……此処に残って見るのか? 確か、話だとクラークさんはワルプルギス戦は武器を貸すだけで参加しないんだろ? だったら、戦える大人(・・・・・)に守ってもらった方が…そのキュゥべえって奴から守ってもらえるんだと思ったのさ」

「……わたし、は」

「鹿目さん。悪い事は言わないわ…ご両親と一緒に、遠くに逃げておいて欲しいの。きっと暁美さんも、あなたを戦いに巻き込みたくない筈よ」

 

 マミはまどかを遠ざける様に言った。正直、「ワルプルギスの夜」という魔女は現れただけでスーパーセルにも似た現象を引き連れてくる強大な敵だ。他の魔女とは比較にすらならないだろうし、それで巻き上げられた瓦礫や戦闘の余波が彼女に被害を及ぼさないとも限らない。だから、危なくなる可能性からは遠ざけておきたいと言うのが、魔法少女ツアーという危険な未知に誘ってしまった自分が言えるせめてもの償い。

 マミの言葉と瞳に圧倒されながらも、まどかは瞳を合わせて彼女に向かい合った。桃色のくすんだ目が金に輝く彼女がまどかによって見据えられる。

 

「…わたし、パパやママと一緒に逃げています。だから、頑張ってください…!」

「…よく言えたわ。そう、それでいいの。……思う存分戦ってくるから、私たち魔法少女の事を信じて待っていて? 刺し違えてでも、ソウルジェムだけは残して戻ってくるから。絶対に、どんな形でも生きて(・・・)帰ってくるからね」

「…うん……うんっ!」

 

 知らず流れる涙は、まどかの頬を濡らす。一滴の輝きを目にしたマミは己のソウルジェムを手にとって力を込めると、その場で変身した。

 金色の穏やかな魔力が部屋に満ちる。たちまちに戦闘装束に着替えたマミは、己の魔法を使って四本のリボンを作り出した。それは赤・青・黄・黒の、見滝原に居る魔法少女のイメージカラーを題材にしたもの。器用な手つきで結びつけ、カラフルな実にブローチを作ったマミはまどかの手にそれを手渡す。

 

「佐倉さんはどうか分からないけど…きっと協力してくれるわよね。うん、それが私たちだから、キュゥべえにお願いしない程度に祈ってくれると嬉しいわ」

「……分かりました。絶対に、帰って来てください。マミさん」

「後輩にみっともない所は見せられないもの。帰ってくるわ、必ず」

 

 それではごきげんよう、とスカートの裾を少しだけ持ち上げたマミは一礼の動作の後、すぐさま窓を開け放ってそこから飛び出した。マミの残されたリボンが冷たい風を取り入れそうになった窓を閉じ、金の影は宵闇に呑まれるようにして消えて行く。曇天の影った空を上に仰ぎながら、鹿目の家に住む者は皆崩れ落ちる。

 それは止められなかったことの後悔。そして、こうして送りだすことでしか自分達の安全が保障されない情けなさ。同時に、あんな身体能力を誇る超人ですら倒せるかどうか分からないと言うワルプルギスの夜へ対する畏怖の感情。

 

「まどか。良い先輩を持ったね」

「…うんっ」

 

 ただ一言、呟くように言った知久の言葉に、まどかはくしゃくしゃになった顔で答えるのだった。

 

 

 

 

「…何をしているの?」

 

 ごそごそと動く未来技術の結晶を身に纏った男に、一人の少女が話しかける。

 

「済まないがそこの鉄板をとってくれ。ちょうど10センチ四方に切り取った奴だ」

「ほら……それで? 随分元気そうだけど」

「済まない。後五分もあれば回路の積みこみも終わる。小さいコンピューターでいいが、何か接続用の端子は無いか? ああ、いや。コードさえあればパネルは必要ない。直接手を突っ込んで制御は可能だ」

「……私、こんな時どう言う反応をしたらいいのか分からないわ」

「黙って手伝え。出来ればこのまま運んでもらえるとなお良い」

「ハァ」

 

 カチャカチャと完全に自分の世界に入っている困ったエンジニアを前に、専門職の人は気難しい所もあると言う印象を持っていたほむらは、まさしく職人肌そのものな雰囲気を隠そうともしていないアイザックに対し、額を抑えつけることでしか自分の感情を表現する事が出来なかった。

 何やら細かい部品を寸分違わず選び、即席で地面のコンクリートからプラズマカッターで抉り取って造ったと言う作業台に小さな作業用ロボットを乗せ、完成するまでチミチミと組み立て始めている。更には機械額だけでなくシステム系や電気工学も網羅する彼は、就職後たったの二年で主要船に近い現場の船を触る事を許された経歴を持ち、そのエンジニアの中でもかなり高めの技術がこの500年も前に当たる過去で発揮されている。

 更には物理的にコードと電子盤さえあればパネルの入力端子は必要ないと言い張る辺り、ハッキングの心得もあるような発言はほむらを呆れさせるには十分な威力を持っていた。ほむらが話しかけなければ、黙々と作業を続ける鎧姿の男(アイザック)の姿は、傍目ちょっと怪しいおじさんである。

 

「ふむ…ガワは出来たが、ルーチンを組むにはコンピューターから打ち込まなければならないな。新しく命令上書き用のチップも作っておいた方が良さそうだ」

「…終わったの?」

「後は君の家に着けばな。さぁ、早く運んでくれ。こちらは足を動かすのもキツイらしい。メディカルパックは君の家の倉庫に全部預けてしまっていてね」

「グリーフシードは?」

「勿論、キネシスで材料を集めているついでに見つけておいたとも」

 

 目の前に差し出された魔女の卵を受け取り、今度こそ盛大に溜息をもらしたほむらは自分の盾の亜空間にグリーフシードを保管する。丸い盾を時計の秒針を止めるかのように抑え込んだかと思えば、その場にいた筈の男も少女も、ただ散らかされた機材を残して誰も居なくなってしまったのであった。

 

 そして約50分後。負の怨念が溜りそうな場所をいくつか巡ったが、ネクロモーフはおろか魔女の結界すら見つける事が出来ず、今度こそ帰路につく時間遡行者達。アイザックはスーツをガシャガシャと鳴らしながら、ふと呟かずには居られなかった。

 

「…これで、いいのか? 本当に」

「今日は随分独り言が多いのね。さっきといい、今といい」

「そう言う意味では無いが、ワルプルギスの夜…実物を見たことのない私はともかく、君はどのくらい強力な魔女なのか分かっているのか? 今まで聞いた事は無かったが、それだけでも聞いておきたい」

「……恐ろしく強大よ。魔法少女二人が自爆して、ようやく弱った。そこを魔法で強化したタンクローリーを四つ突っ込ませて一度怯みを見せた。日本の自衛隊やギャング連中から押収したミサイルを掃射して、ようやく笑い声を止めた。そして―――反転し、全てを破壊した」

「…君はどうなった?」

「分からないわ」

 

 その言葉に、アイザックは眼を見開いた。今はスーツのヘルメット部分を開けているので、その様子はほむらにも見て取れる。

 

「君らしくないな。状況分析、そしてデータの採取でこつこつと積んできたのだろう?」

「本当に分からないの。私はその時、恐らく一度死んだ。もしくは死ぬ直前に、偶然この盾を自分の手で逆回す(サカノボル)ことができたのか。……分からない」

「…では、今一度別の方を聞く。君は、何度遡ったのか覚えているのだろう?」

「…………」

 

 思い出したくもない、と言う顔をしたほむらにアイザックは首を振る。

 やはり、人間と言うものは忘れたくても忘れられない事柄には何を言われようとも口にしない。そして、そうする事でようやく忘れることができると信じずにはいられない生き物らしい。だがそれは全くの無駄である。一度心に、記憶に刻みつけられた衝撃は生半可な事では消えない。

 足を止め、ほむらの前方に回り込んだアイザックは彼女と視線の高さを合わせた。

 

「もう一度、言ってくれ」

「……もう、この世界は21巡目になるわ」

「その中で、一度だけでもワルプルギスを倒せた事は?」

「3度、だけ。その時は、まどかが魔法少女になって、一撃でワルプルギスを倒して、1時間にも満たず世界を滅亡させた。その前に、私は戻った。やりなおしたわ」

「自分の手でワルプルギスを退けたのは?」

「ゼロ、よ……」

 

 心底悔しそうに、歯を食いしばる。ほむらの手は強く握られ過ぎたのか、隙間から血が噴出し始めている。アイザックはそんな彼女を見て、やはり託すしかないと言う諦めの感情と共に、一つの「武器」をRIGの格納所から取り出した。

 それはほむらが一度も見たことのない形状をした、二本の支柱に鉄板を張り詰めたような形をした物。硬質な輝きを放つそれを、アイザックはほむらに手渡した。

 

「…本当は、私の身を守るためにも渡したくはなかった。奥の手だったんだがな」

「これは?」

Contact Beam(コンタクト・ビーム)。とりあえず20メートル級の肉塊ならフルチャージで吹き飛ばせる、高マイクロウェーブの他、弾丸そのものに付けられたステイシス機能によって対象のエネルギー浸透率を補助。高濃度のエネルギーを対象の内部で核分裂の様に反響させ、一定の値に達した所で爆砕させる。欠点としてはエネルギーのチャージが必要なため、チャージ中はエネルギーを暴発させないようゆっくり運用する事と、一発一発の単価が非常に馬鹿高い。弾数は私の用意できる資材では今は3発が限度だ。既にカートリッジに搭載してある」

「……工具?」

「悪質なスペースデブリや小惑星の破壊以外には、とりあえず馬鹿デカイ化け物にしか使ったことが無いが……それはもうアケミが持っていた方がいい。最高の目標が目下Hunterしかいない私には無用の長物だ」

 

 仕様書を同時に受け渡し、アイザックはほむらの家へ歩を進める。

 突然としてこんなものを受け取らされたほむらは、コンタクトビームの重さに四苦八苦しながら、何とか其れを盾に収めた。

 

「…突然どうしたの?」

「いや、こっちもさっぱりだ。ただ、渡さなければならない様な気がしてな」

「本当に唐突ね」

「…何時までもその“力”だけで取り繕うのも難しいだろう。新しい仮面の拠所ぐらいしか渡せないが、せめて最後まで隠しきれるよう祈っておくと良いんじゃないか? 助けの手すら伸ばさない薄情(クソッたれ)な神とやらにな」

「……そう、ね」

 

 ほむらは、どこまでも気丈にそう言った。

 

 

 再び夜明けは近づいてくる。

 ワルプルギスが到来するまで、それほどの時間は残されていなかった。

 




ようやく登場コンタクトビーム。当然設定は後付けアンドオリジナル。
でも、こうじゃなきゃゲームで使ったときに爆砕する理由が分からないし、そもそも巨大な肉塊を吹っ飛ばすなんてエネルギーがどーんだけじゃ説明つかない。
しかもあれ、数少ない「武器」かと思ったらやっぱり「工具」ってちゃんと説明書きに在ったという事実。

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