Fate/Grand Order × El Shaddai 作:BBM00
原作:Fate/Grand Order
タグ:Fate/Grand Order El Shaddai 続きの予定は無いが大丈夫か?
ガギンッ!!
まるで空間を支えているかのように立ち昇る1本の光の柱に照らされた仄暗い洞窟に鉄と鉄を打ちつけ合う大きな音が響く。
「……フン!」
「あぐっ⁉︎」
「マシュ!」
近付こうとする者を悉く拒絶するかのような漆黒の鎧に身を包んだ整った顔立ちの少女が振り下ろした剣を受け止めた大きな盾を、構えていたマシュと呼ばれた少女ごと蹴り飛ばす。
予期せぬ攻撃だったのか、マシュは地面に尻もちをつき、転んでしまう。
「アンサス!」
マシュへと追撃の一太刀を加えようとした少女の眼前に炎の塊が飛び込んでくる。
少女が苦もなく切り払い、飛んで来た方向ーーー杖を握るラフな姿の青髪の男へと視線を向ける。
「おらよ!」
青年の勇ましい声に呼応するかのように、先程と同じ炎が、数を増やしながら飛んでいく。
「………」
切り払うことが無理だと悟ったのか、少女は飛び退き、炎をかわす。
目標を見失った炎が地面に衝突し、大きな爆音を上げた。
「ーーこの程度か?」
「チィッ…槍さえありゃあ、もうちょいイケるんだがな…!」
「キャスターとして召喚された己が不運を嘆くがいい」
そう零す男に、黒い少女は冷笑と共にそう返す。
「おい、嬢ちゃん。平気か?」
「っ…平気です。まだ、いけます…!」
少し離れた位置から心配そうに見つめる黒髪の青年をチラリと視界に納め、盾を持つと再び立ち上がる。
「よし、そうこなくっちゃな」
青年はそんなマシュを見て口角を吊り上げて見せた。
マスターの為に立ち上がるサーヴァントの、なんと凛々しいことかーーー
「それよりも」
マシュに声をかけられ、男は視線を黒い少女に向けたまま耳を貸す。
「準備の方はどうですか?」
準備、という言葉にピクンと反応を示す。
同時に、脳裏に休憩中に黒い少女を倒す為に決めた作戦がよぎる。
「ーー待たせたな。いつでもいけるぜ」
作戦は至ってシンプルだ。
マシュが前に出て黒い少女と立ち回りながら時間を稼ぐ。
自分はその間に援護をしながら魔力を溜める。
後はタイミングを見て、開帳した宝具で奴をぶっ飛ばす。
少し前ならいざ知らず、今は仮とはいえ契約したマスター。
そして、謎の組織『カルデア』からのバックアップがある。
何処ぞで『おっ死んだ』前のマスターからのオーダーもあり、チマチマと魔術を飛ばしていた時しか知らない今なら、あの聖剣を振るわれるよりも先に、奴に決定打を叩き込むチャンスがあるはずだ。
その為の
「では、打ち合わせ通り」
「おう」
後は、男とマシュ、そしてマスターである青年の運次第だ。
「ーーー話は済んだか?」
「ハッ、ご丁寧に待ってくれるたァ…堕ちても騎士ってわけか?」
「フン、思い残すことは無い…そう解釈しても構わないな」
「そりゃあこっちのセリフだ、騎士王」
「ーーーいきます!」
短い言葉のやり取りをしたところで、マシュが地面を蹴り、黒い少女へ飛びかかる。
だが、鈍器のように振るわれる盾を、少女は手に持つ聖剣で難なく受け止める。
「その突撃は3度目だ。いい加減、無駄だと悟れ」
「諦めません…っ! 先輩!」
「ああ!」
マシュの言葉に先輩、と呼ばれた男が腕をかざした。
かざされた手の甲にある赤く刻まれた器の刺青が煌めく。
「令呪をもって命じる!
ーーーマシュ、騎士王を抑え込め!」
男の言葉と共に、刺青が一部消え去る。
「ぬっ…」
同時に、盾越しにマシュの力が強くなり、黒い少女にかかる圧が大きくなり、受け止めていた姿勢から少しずつ片膝が地面に近付いていく。
「令呪によるブーストか。小癪な真似を…!」
「上手い! あの体勢なら、押すだけで精一杯のはずよ! 今の内にケリをつけなさい!」
「はい、所長!
ーーー頼む、キャスター!」
「おう!」
青年の声に、キャスターと呼ばれた男は短く、それでいて鋭い声色で返答をする。
同時に、杖を振るうと押し込むマシュと黒い少女を中心に、様々な文字が書かれた陣が浮かび上がった。
「私との戦いの最中に陣を組んでいたのか…っ!」
「ああ。つっても、コイツはお前を逃がさねぇため、それと熱を外に散らねぇための陣だ。本命はーーー」
そう言うと、キャスターは再び杖を振るう。
すると、既に組まれた陣の内側に、別の陣が現れた。
同時に、ひんやりとしていたはずの洞窟が熱をもったかのように熱くなり始める。
じっとりとした熱さは黒い少女やマシュ、キャスターや陣の外にいる先輩と呼ばれた男や、その横に立つ白髪の女性を呑み込む。
「焼き尽くせ、木々の巨人ーーー
『
キャスターがそう叫び、大きく杖を振るう。
同時に、ズシンと大きな足音が聞こえ、何処からともなく無数の細木の枝で構成された炎を見に纏う巨人が現れた。
「マスターの魔力供給でパワーアップだ! くらいな!」
ーオオオオオオーーッ!!ー
キャスターの声に応えるかのように、軋む音で唸り声を上げながら、拳に相当する部分を振り上げた。
マシュが飛び退き、圧の無くなった聖剣が何もない空を切り、少女はバランスを崩す。
直後、隙だらけとなったそこに炎と拳が振り下ろされると、巨大な火柱が上がった。
「マシュ、無事か?」
「はい、問題ありません」
火柱の上がるそこに、更に拳が叩き込まれ、更に大きな火柱が上がる。
自身を焼き尽くしながらも、尚止むことのない拳の殴打は、まるで戦いを求める狂戦士のようだ。
「これじゃあ流石に、あの黒いサーヴァントと言えど、終わったかしらね?」
そう言うと、所長と呼ばれた女性は先輩と呼ばれた男へと顔を向ける。
「ご苦労様でした。性格に難はありそうだけど…でも、カルデアの所長として、貴方を認めーーー」
「気を抜いてんじゃねぇ!」
所長の声を遮るようにして、キャスターの鋭い声が耳に届く。
直後、拳を振り上げていたウィッカーマンの腹部から肩に向けて一筋の線が入る。
ーオオオオオ…オオ…オ……ー
一瞬遅れて、逆袈裟斬りにされたウィッカーマンの身体が大きな音を立てて崩れ落ちた。
続いて、キャスターが敷いた陣がガラスが割れるような音と共に砕け散り、巻き起こる暴風と共に、炎が吹き散らされる。
「そんな…っ!」
「あれでもまだダメだっていうの⁉︎」
風が止み、中心にいるであろう存在に所長と呼ばれた女性が悲鳴のような声を上げる。
「少し驚いたな。もう少し遅ければ完全に焼かれていた」
「チィ…ッ、涼しい顔で言ってくれるじゃねぇか」
忌々しく吐きすてるキャスターに少女は鼻で笑うようにして応える。
焼かれかけた、と言うものの、少女の鎧や顔に目立った傷はない。
「では、次はこちらの番だ」
「! 来るぞ!」
キャスターがそんな言葉を放った直後、少女の持つ聖剣に光が収束していくのが見える。
「『卑王鉄槌』極光は反転する……」
「マシュ!」
「早くしなさい!」
「光を呑め!」
「宝具、展開します……!」
「『
マシュの言葉と共に、地面に突き立てた盾を更に覆うようにして、大きな魔法陣が出現する。
その直後、そこに黒い光の奔流が襲いかかった。
「うっ…くっ…」
「耐えてくれ、マシュ…!」
「は、いっ…!」
ガガガガガガッ、という光が陣を突き破ろうとする音に、マシュの額から汗が流れ落ちる。
それでも、マスターである男の言葉に応えるように、両足で踏ん張り耐える。
永遠に続くかと思われる程に感じられた時間は、光が消えることで唐突に終わりを迎えた。
だが
「あぐっ!」
「マシュ!」
光が消えたのとほぼ同時、マシュの盾の結界が消えるや否や、いつの間にか目の前までやってきていた少女が、マシュを盾毎蹴り飛ばした。
とっさにキャスターに突き飛ばされ、青年以外の3人が地面に転がる。
打ち所が悪かったのか、女性は気絶してしまったようだ。
「ぐっ…テメェ、セイバー…!
「…フ、その盾は既に一度測った後だ。名も知れぬ娘が、宝具使用後に僅かに隙が生まれることもな」
そう言うと、少女は青年へと向き直る。
直後、青年は金縛りにあったかのように身体がガチガチに固まり、動くことができなくなる。
少女が何かをしたわけではない。
鉄火場を潜り抜けてきた場数の差。
無造作に圧倒する力の奔流。
それらが『殺される』というどうしようもない事実となり、青年から動きを奪い取っているのだ。
「……っ!」
「何処ぞの輩のように無様に這いつくばり、逃げようとしない点は潔しと評価しよう。
ーーーだが」
カチャリ、という乾いた音と共に堕ちた聖剣が振り上げられる。
「くそっ! おい、退け!」
「逃げて、先輩!」
「終わりだ」
焦るキャスター。
叫ぶマシュ。
恐怖で動かない身体。
振り下ろされる聖剣。
それはゆっくりと、青年の肩口へと迫りーーー
「何⁉︎」
突如、洞窟内に溢れんばかりの光が満ちる。
同時に
ガァンッ!
という何かに打ち付けたような音が響く。
「これは…⁉︎」
「一体何がどうなってやがる…⁉︎」
ー神は言っているー
「何だ⁉︎」
「神…?」
ーここで死ぬ定めではないとー
誰が呟いたのかわからない。
だが、確実に全員の耳にそんな声が届き、光が晴れる。
すると、そこには青年を庇うようにして、何処までも白く、美しい半円型の物体を盾にして聖剣を受け止める、純白の不思議な鎧を身につけたジーンズ姿の金髪の大男の姿があった。
「誰だ」
「………」
突如現れた謎の男に女性は言葉をかけるが、男は何も答えない。
「やあ」
「!」
突如、青年が気さくな声が耳に届き、反射的に振り返る。
そこには、黒いシャツにジーンズというラフな格好をした男が立っていた。
片手には黒い携帯電話を握りしめ、ニヒルな笑みを浮かべている。
「人間にしては、中々いい根性をしているじゃないか。彼が目をつけただけのことはある」
「貴方は、一体…」
「おっと、自己紹介は後にした方がいいんじゃないかな? 彼女も、何時までも待ってはくれないだろうしね」
そう言うと、男は青年から金髪の大男へと視線を移す。
「イーノック、久しぶりの旅だ。今更聞くまでも無いとは思うが…大丈夫か?」
男はまるでわかりきった言葉を待っているかのように薄く笑みを浮かべる。
いつだって、彼の返す言葉は決まりきっている。
「ーーー大丈夫だ。問題ない」