ちなみに、オリ主は試合には出ません。
後半出すことがあっても、ほとんど試合に出すつもりはありません。
基本的にトレーニングをつけてくれる兄ちゃんポジですね。
「僕にバッティングを教えてください!」
日が傾き、人通りの少ない商店街を茜色に染め上げる。晩夏も過ぎ少し肌寒いと感じる秋の夕暮れ。リハビリも兼ねて行き付けのバッティングセンターでスイングの感触を確かめていると、不意に後ろから声をかけられた。
学生服を着たその少女は中世的な顔立ちをし、黄金色に煌く髪を後頭部で一つに纏めている。所謂ポニーテールをしたその人物は、お世辞にも男性とは見えないほど華奢な体格をしている。どこからどう見ても女の子である目の前の人物が、男が着る学生服を着てバットを片手に顔を真っ赤にして話しかけてきたのだ。咄嗟に悪態をついてしまっても仕方がないことだろう。
「寄るな変態」
「すまない……いきなり失礼なことを言ってしまって」
「ううん、僕もよく間違われるから」
あの後反射的に答えてしまった言葉への誤解を解き、施設内に備え付けられているベンチに俺と彼は並んで座っている。すぐ横の自販機で買ったスポーツドリンクをちびちびと飲む姿は、どこからどう見ても女の子のそれであるが、彼曰く自分は男であるとのこと。人の容姿をとやかく言う気はなかったのだが、咄嗟に言ってしまった誤解で彼を傷つけてしまったかと思うと少し申し訳なくなる。
彼は笑って許してくれたが、もし俺がそんな対応されたら怒っているだろう。彼はとてもいい人らしい。
「それで、俺になんか用があったんだっけ?」
「あぁ、うん。僕の名前は小山雅、ときめき青春高校の野球部なんだ」
ときめき青春高校と言えば、この近辺では有名な不良高校だ。設立当初は普通の公立校で、名前の通りに高校生という十代の青春をめいいっぱい謳歌してほしいという自由が売りの高校だった。だが、行き過ぎた自由は規律を疎かにする。十年ほど前から次第に風紀が荒れはじめたらしく、今では立派なエリート不良高校になってしまっているのだ。
そんな高校に通っている彼は、可愛らしい見た目とは違って意外と度胸のある人間なのかもしれない。
「とき青か……なんと言うか、凄いところに通っているんだな」
「あはは……まぁ、言いたいことはよくわかるよ」
「それで、とき青の野球部が俺に何の用だい?」
俺がそう尋ねると、彼は手に持っていたスポーツドリンクを置き真剣な顔をする。
「僕達野球部は最近活動し始めたんだ。最初は人数も少なかったんだけど、キャプテンがいろんな人に声をかけてね。メンバーも揃って来年の大会に向けて一生懸命練習しているんだけど……」
「バッティングに伸び悩んでいると」
「うん。僕はもともとパワーがある方じゃないから小技を絡めたバッティングをしていたんだけど、最近はそれも限界を感じてしまって。どうしようと悩んでいたら、バッティングセンターで綺麗にボールを打ち返す君を見たんだ」
彼は俺の手を取ると、キラキラと輝くような瞳を向けてくる。
「君のバッティングを見たとき僕は衝撃を受けたんだ。遠くに飛ばすことの出来る長打力も魅力的だけど、何よりあれだけの速球をすべて芯に当てて弾き返す技術。どんな変化球にも体勢を崩すことの無いバランス。こんなバッティングが出来れば僕の悩みも解決できるかもしれないって。そう思うと、いてもたってもいられなくなって」
彼が俺に向ける瞳には、希望、志望、憧れの情念が籠っている。先の見えない不安の中、俺の存在は彼にとって偶然にも見つけることの出来た、今の憤りを解決できる突破口なのだろう。俺の手を強く握る手はわずかに震えながらも、力強い意志を感じる。
自分だけが変わることが出来ず周りに取り残されていく恐怖感はよく分かる。その恐怖から逃げるため自分に言い訳をする人間は少なくない。「自分は才能が無いから」とか「練習出来なかったから」など、何かしらの建前を並べて能力の壁を認めたくない者がほとんどだろう。
そんな中、彼は俺を頼ってきた。自分に足りないものを認め、自覚し、それでも上を目指すために。
「俺は厳しいよ」
「それでも構わない」
「弱音とか許さないけど」
「今のままよりずっといい」
「そこまでして何を目指すの」
「僕は……僕たちは」
甲子園で優勝したいんだ
「いいよ。俺がお前を日本一の高校球児にしてやる。ちゃんと付いて来いよ」
「うん。ありがとう」
「俺の名前は平澤武志。パワフル高校の二年だ。よろしくな」
「僕は小山雅。ときめき青春高校の二年です。よろしくね」
短いですが、物語の冒頭部分なのでこれくらいでいいかなと。
雅ちゃんの口調がおかしいとかありましたら、どんどん指摘してください。
よろしくお願いします。