Fate/Survivor Order     作: エポナ

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第0.5節:思案

其処はまるで外界と隔離された世界。

いや、実際にこの場所に辿りつけるのは限られた存在だけだ。

木々は揺らめき、侵入する者を拒み続け、害成す者を寄せ付けない。

 

威圧感さえ漂う緑生い茂る深い森の中、更にその先、手入れのされた美しい植物庭園。

庭園を超え、最奥に到達し、ようやく見える暗がりの洋館。

 

俺にとって牢獄とも言えるだろう場所、実体の無い茨に縛られたような一部屋。

 

ただ、同じことを無駄に繰り返していた。

腐った種に水を与えても芽吹かないような、毎日続けた愚かな研鑽。

 

誰もが美しい華へを目を向けるだろう、道の片隅に勝手に生えた草に興味を向けるわけがない。

しかし、踏まれ、千切られ、関心を受けなくとも、それでもなお雑草は朽ちない。

いつか、名が付けられ、大衆へと根付くだろうと淡い希望を抱きながら、その生を執拗に長引かせる。

だが、きっとそれは無意味な行為でしかなく、結局は自らを―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「フォーウ!フォーウ!ミュキュー。フォフォウー!」

 

 

身体の上で何か得体の知れないモノが上下している。

小刻みに揺れ動かされ夢の世界から強制的に現実へと引き戻された。

 

 

「・・・・・・なんだこの犬、何処から入ってきた」

 

「フォウフォーウ!」

 

「跳ねないでくれないか、埃が舞う」

 

 

寝起きで気怠い身体を起こしながら、目を擦る。

よく見えていなかった景色が次第にはっきりとしていき、視界に映ったのは犬のようなリス。

 

全体が白い巻き毛で、瞳、耳や長い尾が鮮やかな群青色をしている。

首に何かローブのようなものを絞めているが、どういう役割があるのだろうか。

 

そんな奇妙な生き物は跳ねるのを止め座っていた。

 

 

「フォーウ?」

 

 

此方に向けている視線を崩さず、首を傾げ、なにかしらの鳴き声をあげている。

聞いたことのない鳴き声である、カルデア内で造られた魔獣かなにかとしか判断できない。

 

多少疑問が残っているが、別段、気に留めることなく身支度を整え、非常食として常備されているゼリー状の透明体を飲み干した。

味がよく解らない、成分表示もなく、単なる栄養を取ることだけを目的としたものなのだろう。

外界とは遮断されているカルデア、食料不足が深刻とされている。

・・・・・・ドクターロマンに大き目なフロアを拝借出来るか聞いてみる必要がありそうだ。

 

 

何処かへ向かいたいという訳ではない、だが、このまま自室に居るというのも違う。

当てはないが、部屋からでる選択を取り、ドアが開く。

 

 

「キュー、キャーウ!」

 

 

トテトテと軽い足音が聞こえてくるようなステップで魔獣が自分の後を追いかけるようにして付いてきた。

そう早く歩いては居ない為、直ぐに追いつかれ、脚に辿りつくとズボンの裾に噛み付き別方向へ誘導するように引っ張ろうとする。

 

 

「フォーウ・・・フォーウ・・・!」

 

「なにをしているんだ、お前は・・・伸びるから止めろ」

 

 

明らかに体重差が違う俺と小動物では引っ張る等、到底無理な話である。

必死に力を入れているのは伝わってくるが何がしたいのか自分にはいまいち伝わっては来ない。

だが、不思議と振り払うという気にはなれない、動物が嫌いという訳ではないし、こういう場合の対処の仕方もよく解っていないからだ。

今まで触れたものは、思えば植物、言葉を発さない物が大半であった故に。

困ってはいない、別にこの状態を気まずいとも感じてはいない、ただ、この次の段階へ進む何かが欲しいと思っている。

 

考えあぐねていると昨日見た少女が小走りでやってくるのが見えた。

 

 

「フォウさん、此処に居たんですね、また勝手に何処かへ行ってしまいましたから、探すのが大変でしたよ」

 

「フォーウ・・・・・・」

 

 

どうやらこの魔獣はフォウという名前を付けられているようだ。

そしてこの少女は・・・・・・そういえば、昨日彼女の名前は聞いていないような気がする。

 

それに、自分自身も名を名乗ってはいない。

解らないのは当然のことだ。

しかし、何故だろう、何か、違和感が・・・・・・・・・

 

 

「マシュ・・・マシュ・キリエライトです。

カルデアの局員でしたが、今はデミ・サーヴァントとして先輩のサーヴァントになっています。

此方のリスのようなのがフォウ。カルデアを自由に散歩できる特権生物です」

 

「成程・・・丁寧な対応感謝するよ。

俺はセージ・C・アコニートゥム。

昨日は・・・・・・その、失礼だった、すまなかった」

 

 

目線は下に向け、そんなことを言う。

俺がそのようなことを言うと、マシュ・キリエライトは目を見開いた。

自分は何も可笑しなことは言ってはいないずだ、やはり対人関係は面倒で難しいものでしかない。

相手の態度、対応を一々気になってしまう。

 

 

「・・・・・・なにかな」

 

「いえ、少々意外だったので。

昨日の先輩に対する態度と異なっていましたし、

ドクターからは気難しいという説明だけは受けていましたから。

あの・・・どうして、先輩にあのような事を聞いたのですか?」

 

「別に・・・ただ、少しだけ感情的になってしまった、それだけだ」

 

「・・・・・・そうですか、ではこれからは気を付けてくださいね。

この先、一緒に戦っていくことになるのですから。

いがみ合うような関係は好ましくありません」

 

「・・・・・・・・・ああ」

 

 

おそらく、そうなることはないだろう。

一緒に戦っていくことになる確証はなく、一抹の不安と不満が自分の心に霞がかかる。

何も籠っていない返事を返した。

 

 

「そうでした。管制室に集まるようドクターから指示を受けてたんです。

先輩は私が連れて行きましたが、フォウさんが此処に居たという事は、セージさんの方はフォウさんが連れて行こうとしていたのですね。

これでフォウさんが近づく人、3人目になりましたね」

 

「フォーウ♪」

 

「それでは管制室に案内します、着いてきてください」

 

「助かる、事故の影響か、カルデア内の構造をよく覚えていない。

同行させてもらうよ」

 

「フォウフォーウ!」

 

 

マシュ・キリエライトとフォウ、彼女たちに何か不思議な魅力を感じたのは事実だった。

対応が俺自身でも他と異なっているような気がする。

晴れることのない疑問、俺と彼女たちに関係性等無縁。

 

少し考えるが、それも無駄だろうと思い、また別の事を考えだした。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――

――――――――――――

――――――

・・・・・・

・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――というわけだけど、ここまではいいかな?」

 

 

青く光る管制室、カルデアスの浮遊するレイシフト、霊子ダイブを行える唯一の場。

 

ドクター・ロマンが具田総司、マシュ、自分に対して以下の説明をしている。

 

行うべきこと、特異点の調査及び修正と聖杯の調査。

決定的なターニングポイントに何が起きたのか、事件を調査し解明、修正しなければ人理は崩壊する。

そしてその原因たる聖杯、歴史改変、時間逆行、異常を可能とする万能の願望器。

 

人類を救うにはこの二つが主目的となる。

 

他に召喚サークルの設置やまだ具田総司やマシュは会っていなかったのだろう、ダ・ヴィンチの紹介を挟み

 

俺に関する事の話となった。

 

 

「ところで、セージくん、君はレイシフトする気なのかい?」

 

 

普段の態度とは少し違った、厳しめな言い方でロマンは問いかけてくる。

一緒に特異点に向かうだろうと、そう当然のように思っていた具田総司が言葉を漏らした。

 

 

「ドクター、彼がレイシフトすることになにか問題があるんですか?」

 

 

「まだ君たちには話していなかったね、彼、セージくんは奇跡的に目覚めることが出来た。

けれど、その代償か、または別の原因か、サーヴァントとの契約能力を持たないマスターになっている。

冬木のように敵対サーヴァントが特異点で徘徊している可能性は非常に高いし、

野良のサーヴァントでも運が悪ければ殺されることもある。

君たちの危機的状況を共感し合えるパートナーが居ないのは危険だと思う」

 

 

一度、冬木のサポートをしたからか、解りきっていることを説明していった。

そう、初めから死ぬかもしれないことなんて、解りきっている。

 

 

「それに、此方は連絡しか出来ないからね、セージくんに対してサポートは無理だ。

総司くんとは違い、魔術師であってもセージくんの方が死ぬ可能性は高い。

ボクとしては、セージくんにカルデアに残って貰ってサポートする側に回って欲しい」

 

「それでも俺は、特異点へ向かいたいです。

俺は何度も言う、マスターとしてカルデアに来た、それ以外のことをする必要はない」

 

 

ロマンを真っ直ぐと睨むように見て、続ける。

 

 

「マスター適性は完全に失われていない以上、レイシフトは可能だ。

それに、今は亡きオルガマリー所長の力もあったからこそ、冬木の修復が出来たと言える。

魔術を知る者が現地でサポートできるのは大きいことだろう。

霊脈の探知や治療、暗示、他にも俺に出来ることはある」

 

 

「俺にレイシフトさせて欲しい」

 

 

 

沈黙。ロマンと自分は互いに顔を向き合っている。

一刻の猶予もない中、選択を迫られているのはロマンの方だ。

確かに、過去の世界において魔術師という存在は大きいだろう。しかし、重要な人員を失う可能性は十分に高い。

通常の戦争でもなく、経験したことのない、予想だにしていない世界がこれより彼らを迎える。

少しの隙で、全てが崩れてしまうことさえある

 

ロマンが降した決断は

 

 

「わかった・・・君のレイシフトを認めるよ。

きっと何を言っても君は従ってはくれなさそうだろうからね・・・・・・

 

でも、くれぐれも無理はしないでほしい、死んでからじゃ遅いんだから」

 

「死ぬ気はないです。

それより霊子筐体(コフィン)の準備は?」

 

 

「出来ている、一応、君たち全員分のを。

総司くん、マシュ、セージくん、準備はいいね?

彼方に着いたら、霊脈を探すことから始めるんだ。

その時代に対応出来てから、やるべきことをやるんだぞ」

 

「無事と健闘を祈る」

 

 

霊子筐体(コフィン)へと入る直前、具田総司から声を掛けられる。ただ一言。

 

 

「よろしく頼む」

 

「・・・・・・解った」

 

 

無心で適当な言葉を返した、不機嫌そうな態度は出ていないだろうか

なるべく、表に出ないよう心がけようとはした。

 

けれど、上手くはいかないものだ。

 

 

このレイシフト、最大の理由は・・・・・・

俺はこの男に敗けたくはない、蹴落としたいのだろうか。

そんな下らなく、生産性のない考えだけなのだろうか。

 

我ながら卑しい男だと何度も思いながらも、ある考えは止めれない。

 

 

【アンサモンプログラム。スタート。】

【霊子変換。開始します。】

 

例えようのない浮遊感、自らの身体が別のナニカに変えられていく。

 

崩れていく身体を見ることは出来ない、拭えない違和感。

 

【レイシフト開始まで、あと3、2、1、・・・・・・】

 

【全行程、完了(クリア)

 

 

ようやくマスターのようなことが出来ると少しだけ心が弾む。

 

そして、そう思った時点で、おそらくはマスターになることなど・・・・・・・・・

 

【グランドオーダー 実証 開始 します】

 

 

 

―――――青白い光が全てを包み込んだ。




次回から邪竜百年戦争 オルレアン編
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