濛々と砂塵が舞い、炎が揺らぎ、鉄と鉄がぶつかり合う音が響いている。
戦争はこの時代に珍しくはない、例え休戦状態であっても運が悪ければ起きる時は起きてしまう。
奮起し槍を持ち、抗う為、勝利する為に戦うことを決意する。
だが、それは人間同士の戦いだからこそ覚悟出来ることである。
同じ種族、人類だからこそ勝利の可能性という縋れる希望が見えるのだ。
この場で起きているのは違う。
人間と人外との戦い。一方的な恐怖の蹂躙だった。
破壊され原型が崩れている砦。戦いの前から負傷し疲弊しきった兵。整っていない装備の数々。
なにより士気が違い過ぎている。異形の集団に意識等存在していない、滅びを良しとし玉砕の下その身を使い潰す。
一方人間の方はどうだ。迫りくる悪意に怯え、今もなお震えが止まることはない。勇敢に立ち向かえば無惨にも斬られ、その身を更なる恐怖と絶叫が襲う。
動かない手足をでたらめに動かし、必死になって逃げ出そうとする者が半分以上を占めている状況。
このままでは彼ら、人間の敗北は決定的である中、
鉄塊が異形の者たち、一人の兵士に群がっていた白い頭骨を粉々に吹き飛ばした。
『マシュ! 適正エネミーは人間じゃあない! 骸骨兵だ! 容赦せず倒していいぞ!』
「アンタたち・・・・・・いったい・・・ッ」
「大丈夫ですか!? ご安心を、私たちは敵ではありません!まだ戦えますか?」
「あ、あぁ・・・・・・まだやれるッ!」
様子見として先に戦場へと到着し、次々と骸骨兵を屠っていくマシュの姿が見えた。
数は少ないが、残った兵士と共に奮戦している。
「この骸骨、冬木でも見かけた奴らだ・・・・・・ッ」
「スケルトン、しかもこれだけの数・・・いったい誰が絡んでいるんだ。
・・・・・・お前は後ろに下がっていろ、彼女が戦っている以上、お前を護る奴はいない」
「セージがいるじゃないか、頼りにしてるぞ?」
呆けた顔でそのようなことを言ってくる、具田。
内心で舌打ちをしながら、無言で服の中にある袋から種を取り出し周囲へと振り撒いた。
兵士やマシュ以外の生体反応を感じ取ったのだろう、骸骨兵の一部隊が俺たちの方へ刃を向けながら向かってきている。
「
詠唱の呟きと共に発動する散布された種の術式。
起動時の
現れるのは通常の植物ではない。原型に宿る属性を更に特化させた強化植物。
タイプ:Clematisクレチマス。その名の原型はKlema。ギリシャ語においてつるを意味する。
蔓性植物の頂点に君臨する女王。鉄と例えられる強度。意味するは策略。
巨大な蔓は生き物のようにうねり、養分となる敵性魔力を捉え、束縛せんと揺ら揺らと動く。
骸骨の兵団が一定の距離に脚を踏み入れた瞬間、敵性魔力原に自動的に反応。
骨で構成された、隙間だらけの身体に纏わりつきその身を拘束した。
捉えた対象の魔力を吸収しながら徐々に強まっていく拘束は最終的に獲物から全てを奪い去る。
向かってくる一部隊程度、それも思考能力を有さない使い魔のような怪物。
取り逃がすことはなく。なんなく安全圏を彼らは二人は手に入れた。
デミ・サーヴァント、マシュの介入によって戦況は変わり、骸骨の軍隊はほぼ壊滅状態となり、余裕が生まれている状態だ。
援軍と鼓舞によるせいか兵士たちも先ほどとは少し違った様子で骸骨兵相手に戦えている。
しかし、その戦い方には何処か、何か別のモノに対しての恐れが見える。
この時、戦場の異常に気付くことが出来ないのは、経験の足りなさと傲慢、気の緩みと言う他にない。愚かさだ。
「アンタたち、あんな化物相手よくやるな・・・・・・ッ」
兵士長なのだろうその男は、数少なくなった骸骨兵に剣を振りながら、マシュに向かって感謝と畏怖が混ざった声で称賛した。
やはり其処には焦りの色が残る。
「この骸骨兵はいったい、何処から来ているのです、説明していただけますか?」
「ジャンヌ・ダルクだ・・・ジャンヌ・ダルクが甦ったんだッ。
確かに彼女は死んだのにッ、イングランドに捕まり、火刑に処されたと確かに聞いたのにだ!」
「それは本当に彼女なのですか?」
「ああ、俺は聖女様をこの目で見たことがある、髪や肌、雰囲気こそ違えど・・・・・・
あれは紛れもなく・・・悪魔と取引したとしても、かつての聖女様そのものだったよ」
男の顔は苦痛に塗れている。
麗しき我らが聖処女が甦った、通常ならば喜ばしいことなのだ。
だというのに、その聖女は自分たちを敵として、化物たちを仕向け滅ぼそうとしてきている。
信じたいという思い。裏切られたのではないかという不安。現実ではない体験。
全ての出来事が彼らフランス兵を苦しませる。
「悪魔とは、この骸骨兵のような?」
「違う! あれじゃない!! あれだけならまだ俺達でも無理をすれば対処できる!!
この戦場もアレに燃やされたんだ!!」
「アレ・・・・・・とは、何を指して―――――――――「マシュッ!! 避けろォ――――――!!」
逸早く異常に気付き、脅威を察知したのはただ一人。
マシュの疑問が最後まで出されることはなく、具田総司の疾走と叫びと共に掻き消される。
彼はセージ・C・アコニートゥムが造り出した蔓の防壁内から抜け出し、一直線にマシュの元へ駆け出していた。
「彼奴、何をして・・・・・・いや、あれは・・・・・・ッ!?」
いつの間にか展開された植物の領域から抜け出していた総司の存在にセージは気付いた。
話しかけられようと適当な相槌を返していただけだった為、総司に意識が全く向いてはいなかった。
全力で駆ける総司に疑念を抱きながら、周囲に目を向けた。
あれだけ焦っているのなら、何か異常気付いたのだろう、と。
走り出した原因は瞬時に。嫌でも目に入って来ていた。
危険宣告。総司は必死の形相にマシュは困惑し、傍に居た兵士長は察することが出来たようで、一層怯えた声をあげる。
腕を伸ばし、2人を掴んだ総司は自分諸共、身を挺し両者を遠くへ押し飛ばす。
「せ、先輩、なにを――――――ッ」
「あぁ・・・ああああああ・・・アレが来る・・・また、やってくるぞ!!!」
焼け焦げた字面に擦れ、削れる金属音。
兵士長の叫びにようやく、事態を察したのだろう。今まで骸骨兵との戦闘に集中していた兵士たちはその場から我先にと逃れようと鎧を脱ぎ捨てる。
――――――――――――――――だが、もう遅い。
マシュ・キリエライトは天から迫る朱い存在を目にし、ようやく戦場の違和感に対して気づき始めた。
何故、城壁がこうも大胆に崩壊してしまっていたのだろうか、どうして骸骨兵だけしか居ないのに戦場は焦げていたのだろうか、
兵士たちが焦り、恐れていた理由とは
直後、マシュの元々立って居た場所へ火焔が降り注いだ。
絶句。セージは朱く動く物体を目にしてから開いた口が塞がらなかった。
馬鹿な、在り得ない、あれは決して有り触れたものではない。
今はもはや消え去った存在。生命体の絶対的な上位種。幻想種。
多くの物語、神話に登場する悪の象徴。
体表を覆う鱗は頑強なる鎧、顎に生える牙は強力無比なる刃、吐き出される息吹はあらゆる生命を燃やし尽くす。
――――――――――――――竜種:ドラゴン、ワイバーン。
幻想の象徴であるモンスターが何体も天空を飛び交い、戦場を破壊している。
「来た! ドラゴンが来たぞ!
逃げるな! 逃げては駄目だ! アレが来てしまってはもう逃げられない!!
抵抗しなければ、ドラゴンの腹に収まる以外、道はないのだぞ!!」
兵士長が逃げ惑おうとする兵士たちに向かって鼓舞をしようと躍起になっている。
ただ、身体の震えは隠すことは出来ない。
揺れ動く度に鎧の金属と金属がぶつかり、カチャカチャと連続する。
士気の低下は、一人間が覆せる程、簡単なものではない。
「二人とも大丈夫か!?」
「大丈夫です・・・・・・先輩。ありがとうございます。
ドクター、大型エネミーを目視しました。あれは、まさか」
『ああ、どうやらそのまさかだ。』
「あれは俺でも知ってる、ドラゴンだな。」
「いえ、先輩。正しくは竜の亜種体であるワイバーンです。
間違っても、絶対にこの十五世紀のフランスに存在していい生物ではありません!」
『――――――ッ!! このエネミーの動きッ、セージくんの方に向かっているぞ!! このままだと・・・・・・ッ』
「な!? セージ―――――――――――!」
セージ・C・アコニートゥムはこの日、再び死というものを目の前にする。
魔術的属性を込められた魔製植物であろうと、竜の息吹に耐えられるほどの構造、強度を有さない。
更に、今この防壁に宿っている性質は『束縛』と『罠』であり、守護防壁としての意味はなく、焼き尽くされるのは理解できる。
ならば、水分を多く有し盾属性を持つ種を出せばいいだけだ。そう、多少負傷はするが死ぬことはなくなるはず。
だが、セージの身体は行動を停止した。
予想を超えた存在の登場。人の焼ける匂いと生きたまま焼かれている絶叫。この場が死地であることを理解する。
無意識の内に経験した死よりも、この鮮明に目の前に迫る絶対的な死は逃れるという意識をも喰い殺す。
滑空した火竜は真っ直ぐと不動の獲物を睨みつけた。
あと数秒後、自らが焔の渦に飲み込まれる姿を幻視した。
何処からか、叫ぶような声が聞こえるが内容は入ってくることはない。
恐怖が支配した精神が未だに壊れきっていないことが不思議なくらいだ。
自分はそんなにまで強い人間だったのだろうかなどと、下らないことが浮かんできてしまう始末。
世界を赤が染め上げ、侵食しようとした瞬間
―――――――――――白光が俺を包み込んだ。
一閃。停止した瞳に焼き付いた聖なる光景。輝くその姿は今まで見たことのないものだった。
揺らぐ金の長髪と純白の旗、似つかわしくない鎧を着た少女。
「どうやら、貴方は間に合ったようですね、よかった・・・・・・」
彼女はほっとしたようにそう呟いた。
慈しむように俺に目を向けた乙女。一つ一つの動作が一種の完成された美であった。
あまりの神聖さに身じろぐことすら憚られる。現在、別の意味で自分の身体は動きを止めているのだ。
「・・・・・・聖処女、なのか?」
思わず口にした言葉。そうとしか思えなかった。
旗を持っていたから、鎧を纏っていたから、女性だったから、どれも違う。
例え姿を知らなくとも、死んだとされていても、本能的に感じる答え。
「ええ、その通りです。
―――――――サーヴァント、ルーラー。御助力致します。
さあ! 戦場に残った兵士たちよ! 武器を取って戦ってください!
私と共に! 続いてください――――――――!!」
彼女の言葉は戦場の救済。響き渡った声は兵士の迷いを瞬時に破壊した。
震えるのは喉、それは恐れからではない。奮起する為の雄たけび。勝利へと向かう一筋の希望。
振り返る者、立ち上がる者、装備を整える者・・・・・・・・・
全てが戦うというただ一つのことに対し繋がった。
聖女の一声だけで、だ。
「セージ(さん)!」
男女の声。総司とマシュが自分の名を呼んでいる。
顔に冷や汗を浮かべながら、安堵の表情を浮かべている。
「無事だったか・・・良かった、お前まで失うことになるかと思ったよ・・・俺は・・・」
此方のことを心配しているのが伝わってくる。解る。
理解している・・・が、俺には彼が自分を心配する理由を見つけられなかった。
俺と奴は、どうみても良好な関係を築いてはいない、ただただ俺は困惑する他ない。
しかし、この胸に宿る感情は・・・・・・・・そう思いながら、思考を放棄した。
いつも通り、変わることなき成長の見えない自衛と逃避。
「貴女はサーヴァントですね、その大盾からするとクラスはシールダーなのでしょうか?」
「はい、そうなっています。
そういう貴女は・・・・・・・・・」
「ルーラー。私のサーヴァントクラスは調停者となっています。
さて、お話は後ほどに・・・・・・今はこの戦いを終わらせましょう、戦えますね? シールダー」
マシュはコクっと無言で頷き、ルーラーはその動作に笑みを零す。
「御二方、少々私たちは離れます、大丈夫ですね?」
「セージ次第だと思うけど・・・・・・どうだ? まだ魔術は使えるか?」
「・・・今度は問題はない。ちゃんと動ける。俺のではそう長くは持たせられない、数分が限度だ。
それに、息吹は耐えれてもワイバーンの直接的な突撃は無理だ、耐性があるにしろ運が悪ければ一撃で粉砕される。
其処は・・・・・・其方の方で上手く処理して貰いたい。
――――――
取り出した樹木の種が大地に根を張り小規模な砦を形成する。
タイプ:ナナカマド。火と水への耐性に特化した防御系統植物。その名に記された意味は『あなたを見守る』。
十字架の元となる木であり、北欧語のルナが語源で、「お守り」を意味する。
キリスト教における竜の立ち位置、属性上では強い耐性を持つ樹木。
「解りました。では・・・いきましょう、シールダー」
「了解です、全力で蹴散らします!」
「マシュ! やられた人たちの分、倍にして返してやれ!!
でも、無理はするんじゃないぞ!」
「はい・・・・・・先輩ッ!」
総司の声援に力強く返答し、竜と戦闘する兵団の元へと瞬時に距離を詰めて行った。
そのやりとり。二人の姿が俺にどう映っていたのだろうか。何か言いたい訳じゃない。少しの間、ただじっと見続けていた。
大型トラックサイズの竜。亜種体であるが、その力はドラゴンに匹敵する。
振り下ろされる灰白の大爪。空間を切り裂き産み出される衝撃波、ショックウェーブが足元に群がる兵士を襲わんと突き進む。
「――――――――――『仮想宝具 疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)』」
衝撃は兵士に届くことは無い。展開された対人宝具にして防御宝具。
守護防壁は竜の一撃を四散させると共に、自陣を包み込む奇跡の抱擁、
対魔力と防御効果の付与。通常である人間を数倍のモノへと昇華させる。
無論、それは彼女たち英霊も例外ではない。
自らの攻撃を防がれたと理解したワイバーンは怒りを露わにし暴れ狂い、火焔を解き放つ。
降り注がれる炎。巻き込まれた兵士たち。竜は確信したことだろう、絶対的なる捕食者の優位を。
しかし、それは激痛によって否定される。
炎を射に返さず、地に降り立った化物に剣や槍、矢がいくつも突き刺さっている。
「やれる! やれるぞォ!! 攻めたてろ――――――!!」
兵士たちが叫んでいる。自分たちは通用しているという事実。抗うことが出来るのだ。
なにより彼らには戦乙女ともいうべき、守護者がついている。
立ち向かわずしてどうする。
「先輩方の為にもッ! 時間は掛けません――――――ッ!!」
「ギュガァァアアアアアアアアアアアア――――――――!!!!」
狙うは頭蓋。思考能力を有する核。
行く手を阻もうとする牙はマシュを喰らおうと曲線を描き首を振るう。
薙ぎ払われると感じ盾を前方へと出すが、その思考は直ぐに捨て去った。
飛来した矢が竜の眼に命中したのだ。
痛みのあまり悶絶する竜。コンマ数秒といった時間、動きを止めたのだ。
そんな隙が許されるほど戦場は甘くはない。相手が怪物、幻想種というのならなおさらだろう。
両手で頭上まで上げた盾を渾身の力で振り下ろした。
直撃した部分は十字架状の下部分。魔力によって強化された一撃、英霊の腕から放たれた必滅。
生えている角を粉砕。竜の頭骨を突き破り、飛沫する血飛沫。
とても竜からでるようには思えない高音域の断末魔が虚空の戦場へと響き渡った。
「ォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
喝采。兵士たちの歓喜たる叫びが木霊する。
当然だ。自分たちは討ち取ったモノは人外、物語上の最高位。
喜び以外出るはずがない、が、まだ気を緩ませるには早すぎる。
2つに別れた。先ほど死滅したワイバーンの悲鳴に共鳴するかのように激怒する竜と慌てて撤退する竜。
「皆さん! 油断をなさらないように! 一体倒しただけです! まだ向かってきますよ!!」
前線で旗を振るい兵士たちを鼓舞するするルーラー。
スキル:カリスマによる能力向上。兵士たちが先ほどまで刃の通らなかった竜にその手が届いたのは彼女が現れたところが大きい。
一人一人がワイバーン並とは言えないものの魔術師の使役する使い魔程度までに力を上げている。
集団戦において人間に勝るものなし、孤立した竜へと徒党を組んで追いつめる。
また一体、一体と潰えていく竜。
英雄に狩られるようにと願われた彼らは人間によってその生を終える。
いや、彼らもまた名もなき英雄といえるのだ。
立ち上がり、剣を持った護国の英雄たち、その証は確かに胸へと秘められている。
「これでッ、最後です――――――――!!」
振られる長い首に盾が垂直に叩きつけられる。
勢い良く振りかぶられたそれは首の骨を容易に砕き、L字状に折り曲げ、口から大量の竜血を吐き出させた。
グシャリと足を引き摺り、穴だらけの翼を持つ竜が最後の抵抗虚しく倒れ去る。
数えれば6体。それだけの竜がこの場に死骸を晒している。
しかし、勝利の雄たけびは一向に聞こえてくることはない。静寂だけが辺りに漂っている。
骸骨兵に加え、その後の竜との戦闘。士気上昇による効果があれど精神だけはどうともならない。
憔悴。疲労しきっていることは確実であり、戦いが終わったことによってルーラーのカリスマも薄れた。
疑い、疑念、畏怖、葛藤、あらゆる迷いが再度、兵士たちを襲っているのだろう、誰も言葉を発しない。
礼を言いたい、そのような兵もいることだろうが、場の空気がそれを許すことはないのだ。
「貴女は・・・・・・」
一人の兵士がようやく何かを言いかけるが、ルーラーはそれを静止した。
「なにも言わなくても大丈夫です。貴方方が無事でよかった。
では、私たちこれで失礼します。また、会えることを・・・・・・」
丁寧に礼をしながらルーラーは兵士たちとは反対方向へと歩き出す。
兵士たちは心の内になにが蠢いていようと・・・・・・聖女の、その女性の後ろ姿から目を離すことが出来るはずがなかった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
――――――――――――
――――――
・・・・・・
・・・
・
息吹と咆哮の音が停止した。
戦いの終わりと同時に植物の砦が枯れてきている。所々衝撃波や火焔の流れ弾が命中し、半壊状態といった所か。
急増の防御砦、内部に居る自分たちに被害が向かなかっただけでも上場だろう。
マシュとルーラーが此方の方へ向かってきているのが枝の隙間から窺える。
「戦闘終了、骸骨兵、ワイバーン共に殲滅しました」
『いやあ、よかったよかった。
セージくんが襲われたりで怖かったけど、竜との戦闘は手に汗とゴマ饅頭握って見入っちゃったな!』
「ドクター? それは私が用意したゴマ饅頭ですよね?」
『え? あれ そうなの? むぐむぐ・・・・・・』
戦闘の緊張をほぐそうとしているのだろうか、ドクターの気の抜けた声と会話の内容が聞こえている。
どうやらマシュが用意していた饅頭を盗み食いしたようだ。
食料不足であるカルデアでは重罪に近い行為だと思うが、実際どうなのか。
早いところフロアを借りて俺の仕事の準備を進めたい。思えば長らく触れては・・・・・・
――――――――下らないことを考えた。首を振るいその眼をルーラへと向け、一言。
「・・・・・・ルーラー、一つ聞きたい」
「なんでしょうか、私にお答えできるのであれば」
「貴女が・・・魔女と呼ばれているのはどういうことなのだろうか?」
「セージ、魔女ってことは、この人は・・・・・・」
総司が自分とルーラーを交互に見る。
この時代に来てすぐに聞いた名、流石にルーラーの真名を理解出来る。
ドクターと口論していたマシュであったが、此方の話しが耳に入っていたのだろう。
適当にドクターとの話を切り上げ、入ってくる。
「貴女は・・・ジャンヌ・ダルクなのですか?」
「はい、改めて自己紹介させて頂きます。
我がクラスはルーラー、真名をジャンヌ・ダルクといいます」
「処刑されて、魔女として甦ったって・・・・・・」
「そうですね、その話は後で纏めて説明した方がよろしいでしょう。
此処では彼らに聞かれてしまうかもしれませんし・・・・・・彼らには聞かせることでもありませんから・・・・・・。
この先の森へと向かいましょう。どうぞ、此方へ」
僅かに微笑みながら、此方へと手を伸ばしてくる。
「・・・・・・誘われました。どうしましょう」
「当然、行くに決まっているだろ、マシュ。セージも同じ意見だよな! ジャンヌが助けてくれたんだし!」
「・・・・・・勝手に代弁しないで欲しい、が、彼女は何かを知っていることは間違いない。ついていくことに意味はある」
『ボクも賛成だ。弱まっているようだけど彼女だってサーヴァントだ。
きっとこの時代の事情に精通しているはずだし。詳しい話を聞いてみよう。』
「フォウ! フォーウ!」
ほぼ満場一致で彼女に同行することが決定した。
踏み出そうとした時、総司が自分を呼び止めた。
「ところでセージ、ちゃんとジャンヌに言ったのか?」
「何の話しだ? 聞きたいことはさっき言った、話を聞いている内にまだ問いは産まれるかもしれないが・・・・・・」
「違う違う違う違、俺が言いたいことはそういうんじゃないって」
「・・・・・・だから何だ?」
話しが見えてこない、総司の表情は自分を小馬鹿にしている。
頭を抱え、口をへの字にし、哀れみの眼差しが俺を捉える。
「御礼だよ、御礼。
その様子だと絶対言ってないな、お前・・・・・・
駄目だろ、助けて貰ったんだから、ありがとうくらい言わないとさ」
「それは・・・・・・」
「まあ、俺も言い忘れてたけどな。
セージ、お前の魔術のおかげで助かった。ありがとうな。
マシュも安心して離れて戦えただろうから。
お前も後で、ジャンヌに礼を言っておけよ。会話は大事だし」
「・・・・・・・・・・・・。」
「あっ、いつの間にかあんな遠くまで行ってる!?
なんか、毎回一人は置いてかれてる気がするんだけど!」
駆けだした具田総司を背を眺めた。今、なんとなくだが解った気がした。
あの男は違う。自分が思い描いていたような人物では断じてなかったのだ。
そう・・・あの男は異常なのだ、と。自分の中で結論付ける。
己を嫌う人間を心配することも。恐怖の中で迷いなく動き出したことも。サーヴァントを身を挺し庇ったことも
セージ・C・アコニートゥムには理解出来ない、不可解でしかなかった。
有り触れた凡人が行える行為ではないと、決めつけた。
「お前は・・・何故そうあれる・・・」
自分でも気付かぬ内に零れた蚊の鳴くような声。
その意味に気づくことはない。きっと、気付けたとしても彼自身がそれを否定してしまうだろう。
今までセージの内に渦巻く感情はただ一つしかなかった。
自覚することは魔術師としての恥と同義。避けるべき、忌むべき行為。
一般人、具田総司に対しての感情、これは―――――――――――ただの醜い嫉妬なのだから。
雑魚の集団戦をどう描写するべきか、苦戦中。