その世界にある乾燥地帯=ガレサステップにはタラール族と呼ばれる少数民族が生活している。
その族長ニムザの孫娘アイシャは “ 素手でモンスターを倒す ” 剛の者だった。
こことは別にある異世界「マルディアス」
その世界にある国の一つ、北バファル帝国には広大な乾燥地帯が広がっている。
この乾燥地帯=ガレサステップにはタラール族という遊牧民が住んでいる。
そのタラール族の族長であるニザムには「アイシャ」という名の孫娘がいる。
無邪気で好奇心が旺盛な15歳の少女だ。
遊びたがりの年頃の少女には村は狭く感じるのだろう、遊牧民特有の服装に身を包み、今日も愛馬「黒王号」の背に跨がりガレサステップを颯爽と駈けていく。
しかし、このガレサステップは多くのモンスターが蠢く危険地帯。
屈強な戦士すらも命をも落とす可能性があり、旅慣れた人すらも避けて通る難所。
だが、ガレサステップのモンスターたちはタラール族を襲うことは滅多にない。
経験の浅い若い個体、もしくは外から流れてきた個体のみが彼らを襲う。
キ シ ャ ァ ァ ァ ァ ァ ッ !!!!
獣の発する雄叫びと共に足下の地面が隆起。
アイシャを背に乗せたまま黒王号が宙に舞う。
だが、空中で身を翻して爪先から着地を決め、地面の下に隠れていたモンスターと一定の距離を取って対峙、鼻息を荒くして睨み付ける。
それは左右の鋏の大きさが異なる巨大な青い蟹。
タラール族が使っているテントほどの大きさはあるだろうか…?
両手の鋏を高々に上げて威嚇する。
アイシャは黒王号の背を蹴って空高く跳び上がり、モンスターの真上で頭を下にして急降下。
「 破 ァ ッ ! 」
モンスターに触れる間際で裂帛の気合いと共に拳を突き上げる。
アイシャの拳が巨大蟹の甲羅を砕き、穴を穿つ。
背中に黒い穴を空けられた蟹のモンスターは絶命。
バランスを崩し、地に伏す。
ガレサステップのモンスターがタラール族を襲わない理由、それは強い者がいるからだ。
【 暗転 】
「おじいちゃん、どうしたの急に呼んで?」
その日、アイシャは祖父であり族長でもあるニザムに呼ばれていた。
「おお、よくきたアイシャよ。お前に話がある…」
ニザムはガレサステップに起きている異変を言い聞かせ始める。
ローザリア王国の王子「ナイトハルト」がタラール族の集落にやって来たこと。
彼がこの地を政治的な理由で欲していること。
断れば彼のもう一つの名「カヤキス・レビタ(黒い悪魔)」に相応しい行動を取る、と脅しをかけてきたこと。
「我らは他者に縛られことは望まぬ……南西にあるカクラム砂漠……その地下にある湖の町に姿を隠すつもりじゃ……だが、その前にやってもらいたいことがある……」
ガレサステップの各地には多数の少数民族が生活している。
その集落の周辺で行方不明になる者たちが増えているということ、困った部族の長たちはタラール族にお願いをしにきたのだ。
ガレサステップにおいて最強と名高いアイシャを頼って…
アイシャは快く承諾、もっとも彼女にしてみれば遠出する理由が手に入ったと思っているが、そのことはニムザも理解していた。
アイシャはガレサステップにいる人攫いを締め上げて居場所を吐かせ、真っ正面から人身売買の組織に乗り込み、一人で壊滅。
「北エスタミルのアムト神殿。そこに奴隷にされた人たちがいるのね…」
炎で燃え盛る古い砦を背にアイシャはその地を後にする。
アムト神殿にある隠し部屋。
部屋の中で激しい戦闘があったのだろう、鎧兜で武装した私兵たちが一人残らず床に倒れている。
その光景を見ていた私兵の一人は語る。
「小娘の拳の一つで人が、大の男が壁まで吹っ飛ばされた。俺は今でも夢の中の出来事じゃないかと思っているよ。だが、10年以上経っても消えないこの傷痕が否応なしに現実だと気付かされる……」
ある者は兵士として使い物にならなくなり、ある者は男として使い物にならなくなり、酒場で第二の人生を歩むことになった。
「頼む! 命だけは!」
命乞いをする首魁・アフマド。
アイシャは肩の上に相手を仰向けに乗せ、顎と腿を掴み、相手の背中を弓なりに反らしていく。
「慈悲深き “ アルゼンチン・バックブリーカー ” !」
アムト神殿の奥深くで男の絶叫と、骨がへし折れる音が木霊する。
騒ぎを聞きつけて駆けつけたエスタミル兵士がそこで見たものは、床に倒れているアフマドの私兵たちと……背骨をへし折られ失神しているアフマドの姿だった。
「見ろよ、この鎧。拳の跡がくっきりと残されていやがるぜ……アフマドはいったいどんな化け物を敵に回したんだ?」
エスタミル兵士が奴隷を解放し、アフマドと関わった人間たちを護送していく。
それを城壁の上から眺める人物がいる。
遊牧民の衣装を着た赤毛の少女、アイシャである。
アイシャは今回の事件で一つの人身売買組織を潰しているが、奴隷に関しては否定的ではない。
非合法なモノだけを潰すのだ。
「おじいちゃんたちのためにも、もう少し派手に動いた方がいいよね♪」
そう自分に言い聞かせてアイシャは城壁の上から飛び降り、姿を消した。
そしてニムザも自分の孫の性格を理解しており、世界を見聞した方が孫のためになり、世の中のためになるだろうとも考えていた。
これが「アイシャ伝説」の幕開けであり、始まりである。
(´・ω・)にゃもし。
夢で見たモノを修正して執筆しました。
もはや私の中のアイシャは強者、ナイトハルトに助けられるような非力な少女ではない。