俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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竈の巫女、実家に帰る

 

 色々やった結果、俺の存在が無くとも諏訪子と神奈子は立派にこの地を治めて行けると思うようになった。少々危ういところもあるが、それはそれだ。危ういからこそ成長することができるのだろうし、不完全だからこそ人が付いてくる。完全な存在は個で完成し尽くしてしまっている。それはそれ以上の成長もなければそれ以上の広がりもない、やがて衰退する存在でしかなくなってしまう。そう言うものだ。

 俺も、そろそろ身体がいい感じに経験を取り入れたところだし、新たな場所に出発したい。常に同じ場所にいては入ってくる経験も少なくなってくるから、新たな経験をしてみたい。この世界ではベルとしての俺が神になり、眷属を生み出し、妖怪という形で分けただけとはいえ子まで作ったのだ。なかなかいい経験になったと言ってもいいだろう。

 一番の収穫と言えば、やはりまともな陰陽術の習得だろうか。基礎の基礎である陰陽五行の理解は多少あったし、基礎と言うのはどこまで行っても使えるからこそ基礎だからそれなりに使っても来た。なにしろルーンの属性強化にも使えるのだから驚きだ。

 だが、何よりもこの世界に一度とは言え根を張った俺は、恐らくこの世界の神として理解されているはずだ。諏訪子はあの在り方からして早々負けることは無いし、ついでに諏訪子が存在している限りは俺の存在が完全に忘れ去られるようなことも無い。ああ、全く便利な世の中になったもんだよ。

 

 それに、醤油に味噌に酒。米や豆から作ることのできるこれの製作ノウハウを得られただけでも十分だ。自分で作っただけでなく、村の人間達に命じてそれを作らせ、更に作ったそれを使って料理をさせるようにしてから病気も減ったし、俺に対しての信仰も多くなった。

 これから相当に時間が過ぎて、やがて神の存在が忘れられたころ。あの塔の内部が空洞だとされ、中への入り方が探られるようになったなら、俺はあの塔と、そんな時代になっても神の存在を心底信じ続けた奴を一度俺のところに招待するかね。

 多分だが、その頃になっても諏訪子は生きているだろうし、あの塔の高さを超えることのできる人工建築物は西暦にして2000年代に入っても作られてはいないだろうから……まあ、そのくらいの力は残されているだろう。少々無理矢理な形で手に入れた境界の力だが、今回の事でしっかりとした地盤ができたのもまた嬉しい。地盤ができたからこそ、そうした無理も効くかもしれないと思えるわけだし。

 

 そう言えば、俺が居なくなったら天津神はいったいどうするだろうかね。俺の塔を壊しに来るなら、一応対応策は作っておいたがいつしか攻略されるかもしれない。ゲームの様にバランスを考えて作ったわけではないが、人間の進歩の速度ってのは侮れないからな。神にも同じことが言えるだろう。

 だが、流石に自動で自身を強化し続けると言う訳にもいかない。そもそも、硬度や強度の強化ならば作り上げた時の波紋を使ってルーンを何万何十万と仕込んであるから何とかなる。『成長』を意味する『B(ベルカナ)』と『変化』を意味する『E(エワズ)』を主体として、『硬化』を意味する『I(イス)』と『木』と『再生』から『強化』と言う意味を抜き出した『Y(エイワズ)』を用い、そのどれもがより強く効果を増幅させるように『共存』を意味する『M(マンナズ)』で纏め上げる。当然、それらを『空白(ブランク)ルーン』で強化して、常時効果を発揮するようにもしてある。

 ……ここで陰陽五行論が役に立つんだが、塔の周囲に円を描くように『B(ベルカナ)』、『Y(エイワズ)』、『M(マンナズ)』、『E(エワズ)』、『I(イス)』の順に密度の高い位置を作る。すると、一度力を込めれば順々に効果を発揮しながら増幅し、半永久機関として稼働するようになる。

 ああ、やはりルーンは便利だし、五行論もまた便利だ。これからもいろいろと学んでいくとしようか。

 




すわかなの方で、諏訪子がドSになりました。誰かたすてけ

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