明らかに盗掘で生計立てていますと言う感じの集落跡から離れ、向かった先はこの国の首都……と言うか、王の居る王都と言える場所。どうもホヒ(仮)はここから様々な所に出かけていたようで、この周囲の事についてはかなり詳しいんだとか。
だが、いくら魔術師と言っても少女が一人であんな所に行くのはどうかと思うがな。実際スフィンクスに助けられていなければのたれ死んでいただろうしよ。
ちなみにそのスフィンクスだが、俺の所に来た。カードとして。
『
そして王都に着いたんだが、どうやらホヒ(仮)はそれなりに権力のある存在だったようだ。ついでに本名はマナと言うらしい。この王都にいる神官たちの中でも相当の腕を持つ魔術師であるマハードと言う存在の弟子であり、次期神官として注目される存在でもあるとか。
だがしかし、俺がそう呼ぶと少々面倒な事になることがそれなりに多い旅の経験の中でわかっているため、名前を知ったとしてもそれを呼ぶのはしっかり関わると決めた後になる。今回の事で言えば、ホヒ(仮)の事を本名で呼ぶと色々と世界の比重がこちらに傾きかねないため、呼んでやれないのだ。
こんななりでも一応神格持ちだった存在でな。それも、日本神話の神格となるとそれに関わった存在が神霊になりやすくなる。エジプト神話で人間から成り上がる神霊と言えば間違いなく王しかいない。王の妻であっても神ではなく、王の子であってもただそれだけで神となるわけではなく、王にならなければ神にはならない。エジプト神話においてはそう言うものだ。
そして、俺が関わることで神となった存在は王であるならばまだしも、王でないならば間違いなく受け入れられることはない。だからこそ、俺はこいつのことを本名ではなくホヒ(仮)としか呼んでやることができないわけだ。呼んだらさっきの通り、歪んだ神格となって排斥されかねないからな。
だが、どうやら俺はなかなか運がいいらしい。早速王都に来た目的の一つである神官による裁定が行われているのをこの目で見ることができたのだ。それが幸運なのかあるいは不運なのか、とても見やすい位置に陣取ることができた。
「……何をしてるの?」
「裁定の見学。魔物を引き摺り出し、封ずる方法は色々な事に使えそうだからな」
「あはは、無理だよそれは。石版から封じた魔物を出したり、石版に封印したりするにはお師匠サマ達が持っている千年アイテムが必要なんだ。千年アイテムが無かったらそんなことはできないよ」
「道具を使って人間ができると言うことは、少なくとも人の手で行うことは不可能というわけではないと言うことだ。できないならばできないと言うから気にしないでいいぞ。恐らくできるだろうからな」
そう言って観察を続ける。封印の術式。封じるための石板の特殊性。様々な観点からあの状態を眺め、そして解析して行く。
そうしてわかったのは、人間がエジプト神話内であれを実行するには魂についての優先権を得る必要があると言うことと、その魂についての優先権はあの道具によって仮免許のようなものが発行されていると言うこと。そして恐らく神格に近い存在ならばある程度の融通が効くだろうと言うことだった。
要するに、王なら道具無しでも長いこと生きていれば不可能ではなさそうだと言うことであり、俺はちょいと手を回せば簡単にできそうだと言うことだ。
よし、それじゃあ次は……
「貴様! ここで何をしている!」
……面倒な。