俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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ホヒ(仮)、悟る

 

 戻った。元の時間軸に戻った。周りでは誰もが普通に動いているし、声もちゃんと聞こえる。癖でついつい服を強化しちゃうけれど、これもまあ不意打ちに対して効果があるだろうからこのままでもいいやと思ってそのままにしている。

 それと、これは予想外だったのだけれど十倍速くらいまでは自力で何とかできるようになった。十倍速で動くためにはいろいろ問題があるけれど、どれもこれも魔術で何とかできる範囲だ。むしろ思考の加速だけは何百倍単位でもできるんだけれど、そこまで行っちゃうと身体がついてこない。強化の魔術もそこまで万能ではないし、呪文を唱えるにもあまり早口すぎると呪文として成り立たなくなってしまうから加減が必要だ。なんとかそんな状態でも魔術が使えるようになりたいけど、超加速中は呪文詠唱がとっても難しいんだよね。何しろ思いっきり息を吐こうとしても実際に息が出てくるのが数秒後とかそう言う感じになっちゃうし。

 だから、今はそんな状態でも使えそうな魔術を開発している。呪文詠唱じゃなくて意思一つで発動できるようなのだと嬉しいんだけれど、流石にそれは難しいので事前に呪文を唱えておいて合図があるまで発動させないまま溜めておくか、あるいは呪文を他の何かで代用できる物がないかを考えている。今のところ溜めるのは短時間にしておかないと減衰が酷くて使い物にならない物しかできていないし、呪文の代用はまだ見つかっていない。

 ……いや、あることはある。踊りや演奏で代用することはできるし、一部は文字として詠唱の内容を紙や粘土板などに刻み込むことで呪文の詠唱をしないで魔力を流し込むだけで魔術と同じ効果を出すことができているけれど……そう言うのは踊りの長さや刻む文章の量に比べて効果がかなり小さい。ただ、正確に刻むことさえできるのならば誰が魔力を流しても全く同じ効果が出るようになっているから数さえ用意できればかなり使えるかもしれない。

 具体例を出すならば、王宮の城壁いっぱいを使って、かつそれだけの術式を動かすことができるだけの魔力を用意することができるのならば、神と呼ばれる存在の攻撃も防げる可能性のある防御用の結界を張ることだってできるかもしれない。もっともっと効率を良くすることができれば、王宮の竈に火を入れるのがとても楽になるかもしれない。

 魔術で世界を動かすって言うのも少しだけ面白そうかな、とは思うけれど、社会情勢を考えて多分駄目だと思う。魔術と言うものが特別だからこそ強力な魔術師は高い地位と責任を負うことで社会に溶け込むことができているのに、魔術が特別なものでなくなったならそこには色々な弊害が出てくるだろう。メリットがあることも否定しないが、そのメリットがデメリットに目を瞑ってもいい程の物かを判断するには私は色々と経験が足りなさすぎる。足りていてもあまりやりたいとは思わないけれど。

 そう言う事で、作った物は秘密にしておこうと思う。あるいは完全に私用にして他の誰かには使えないようにするか、最悪でも使用者が私の手から離れることが無いようにしておかないといけない。使わないようにするにはこの技術は便利すぎるし、そもそも元はカレー屋さんの壁の模様だ。この国では使われていない不思議な模様が異国における魔術発動の媒介となっていると聞いた時には目から鱗が落ちたような気分だった。呪文を使わずに魔術を発動しようという発想自体がこの国の魔術師には存在しなかったからね。仕方ないね。

 

 ……あ、そっか。あの人達に教えてもらえばいいのか。それに、誰でも使えると言っても魔力を送り込むのは魔力を理解し、認識できないと難しい。あまり気にすることもないのかな?

 




 
 今日のバクラ

「ふぅ……やっと戻ってこれたぜ……あんのクソ猫が。次見かけたら毛皮にしてやらぁ」

 ニャーン

「ッ!?」
「……なんだ、空耳か……」

 ゴッ!

「痛ッ!?」

 ニャーン

「テメッ!またっ! ……あ」




「……あれぇ? 見つけたはずなんだけど……」
(またかよぉぉぉぉぉ!?)
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