俺は竈の女神様   作:真暇 日間

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カレー臭のする聖杯戦争二日目

 

 ───不味い。

 この世界、この時代のカレーには期待できない。三つの店を回ってカレーの食べ歩きをして得た結論がそれだった。

 初日に食べたレトルトのカレー。アインツベルンの城を滅ぼして金目のものを無断で拝借したものを換金してからこの周囲で食べたカレー。どれもこれも不味い。私の国ならば金を払わせることなどできそうもない出来だ。むしろ成人する前に処刑しているだろう。

 だが、ここは私の国ではないし私の時代でもない。仕方無いので、とりあえず聖杯戦争が行われると言う日本の冬木と言う都市に行くことにした。走って。

 湖の乙女の加護により、水面を地面と同じように走ることができる。魔力放出を行わなければ、正確には放出量を多少抑えれば呼吸によって自力で魔力を生産できる以上、ずっと現界し続けることもできる。

 地図を買い、日本に向けて出発する。……大分遠いが、まあ問題ない。一番の問題は私が霊体化できないことによって移動中の姿を見られてしまうことだが……海上ならば早々見られるようなことはないだろう。

 

 では、出発だ。

 

 

 

 セイバー、この後魔力放出と風王結界を使ったジェットによって数時間後に日本に到着。そして日本のカレーはそれなりの味はあると言うことに喜ぶ。

 

 

 

「───不味い」

 

 ギルガメッシュは不機嫌だった。以前食べた城之内と言う男のカレー。日本で産まれて日本で育ったその男のカレーは、味だけならば神代のカレーに届きうるほどの美味だった。

 故に、この国のカレー文化には多少の期待を寄せていたのだが、その期待は今のところ常に裏切られ続けていた。

 

「ええい、何が有名カレー店か!同じ時代のあの凡骨にも及ばぬではないか!」

 

 ギルガメッシュは文句を言いながら店だった場所を後にする。つい先程までそこにはカレーを売りにしている店があったが、今は瓦礫の山になっている。

 満足できないカレーばかりを出され、ギルガメッシュはストレスを溜め込み続けていた。自身を縛る令呪もなく、行動するだけならば全く魔力を消費しない今の状態ではあるが、美味いカレーを食べられないと言うだけでギルガメッシュにとっては極大のマイナスに振り切っていた。

 ただ、ギルガメッシュは気付いていた。この国に、自身と同じカレーを愛する存在が居ること。そしてそういった存在がいる以上、絶対に美味いカレーを手に入れることができる方法があると言うことだ。

 だからこそ、ギルガメッシュはまだこの国を沈めてはいなかったし、不興を買った店だけを潰して他の店には手を出してこなかった。

 

 ギルガメッシュはゆっくりと、新たな美味いカレー屋を探して歩き回っていた。これから目的の物を見つけるまで、ギルガメッシュは止まらないだろう。

 

 

 

 ギルガメッシュ、単独行動スキルを活かして活動中。これまでに物理的に潰した店の数、32。見逃された店の数、2。

 

 

 求道者は問いかける。目の前にいるのは異教の、それも異世界の神ではあるが、数多くの人間を裁き、見定めてきた古き神格だ。

 唯一神を信仰する宗教の神父ではあれど、魔術に関わり、様々な神話の英雄達を呼び出して戦いを行う聖杯戦争の参加者である以上は他の神格の存在を認めざるを得ない。

 しかし、綺礼にとってそんなことはどうでも良かった。何よりも、自身の求めるものの答えを知っている者への問いかけにこそ、より大きな意義を見出だしていた。

 

 私は、なぜ生きている。

 私は、なぜ他の人間と違う。

 私は、いったい何なのか。

 私の願いとは。

 

 洩矢神はそれらの問いに一つずつ丁寧に答えを返した。

 

 お前が生きているのは、お前が生きたいと願い、そしてそれを妨害する力がお前の対処する力を越えなかったからだ。そこに意味はない。

 お前が他人と違うのは、お前が他人ではないからだ。個性と言うものなのだろう。

 私から見れば、お前は母とはぐれて何もわからない中でも必死に歩き回る子供のようなものだ。

 お前の願いは、お前が人間らしく生きること、だ。感情を揺らし、様々な事に心を震わせる。そうして生きていくことだろう。

 

 理解に苦しむ答えがあった。理解しようとしなくてもすとんと落ち着く答えがあった。その神はあらゆる問いに答えを返してくれたが、答える度に綺礼から魔力を持っていった。

 結局、一日のうちにできる問いは10にも満たずに終わってしまう。綺礼は外のことを何も知らずに、教会の中で問い続ける。

 

 

 

 言峰綺礼、少しずつ問いの答えを得ていく。

 洩矢神、問いに答えを返していく。

 

 

 

 私の占いと水晶を利用した擬似的な千里眼の結果、今回の聖杯戦争に参加している英霊のうち、私達を除いた六綺をヤバい順に並べた中で、一位、二位、四位のサーヴァントがカレー大好きだと言うことがわかった。

 美味しいカレーを求めてドイツの北からソビエト連邦まで走り抜け、北極海を渡って日本に向かってくる騎士王。

 美味しいカレーを求めて日本中のカレー専門店を回り、気に入らなかったり成長の余地がないと感じた店を物理的に潰している英雄王。

 大人しくしているように見えるが、自身の触れている館と土地を宝具化してスパイスを高速で育ててカレーを作り上げている湖の騎士。

 どいつもこいつも頭がおかしい。こいつらが頭おかしいうちに入らないならば、世の中の狂人の九割以上は間違いなく狂人の枠から外れるだろう。

 

 ……ちなみに、教会の地下にいるアサシンらしき存在は私が覗いていることに気付くと『めっ』てやってきた。

 私の目が『滅ッ!』てなった。具体的には外側はそのままに内側だけ蒸発して爆散した。勿論頭蓋まで弾け飛んだ。この身体じゃなかったら即死だった。

 

 そんな頭のおかしい存在を相手に聖杯を勝ち取るには、あちらの英霊たちがこの時代で食べることができないような美味しいカレーを作って釣るしかない!(カレー脳)

 そう言う訳で、カレーを作ろうとしているのだけれど……

 

「駄目ですね。作り直してください」

 

「駄目です。作り直して」

 

「駄目、作り直し」

 

「駄目」

 

 私があまりにカレーに厳しすぎる件について。

 いえ、理解はしているのよ? 確かに今の私が作る程度の味ならその辺りでも売っている。そうやって売っている店の殆どを潰しているあの英雄王の舌を満足させるには、この程度では駄目だと言うことくらい。

 でも、私はカレー初心者なのだから、もう少し甘く見てくれても───

 

「駄目。それ以上考えると騎士王および湖の騎士の粛清対象になるわ。あとそれに気付いて円卓の騎士を全員呼び出して会議が起きて取り敢えず宝具を最低13は真名解放で食らうわ」

「なにそれ怖い!?」

「無心に作りなさい……無心にね……」

 

 とりあえず、命がかかっていることは理解した。

 

 

 

 メディア、カレー作りに挑戦。

 メディア☆リリィ、カレー作りを監督。

 

 

 

「カレーは世界を救います。カレーは飢えを根絶します。カレーは病を駆逐します。カレーは人に安寧を与え、カレーは死を恐怖の対象ではなく安らぎを与える隣人とします。カレーを信じましょう。カレーこそが我らを救い、カレーこそが汝らを救い、カレーこそが救済の光となるのです。さあ祈りなさい。カレーこそが救世主。カレーこそが我らが希望。カレーこそがこの世の真理となるのです。

 されど全てをカレーに頼ってはなりません。カレーとは救いを与えると同時に我々に試練を課す存在でもあります。全てにおいてただ一つで解決していくのは楽でしょう。しかし、カレーに頼り続けていては人が前へと進む意思が失われてしまうのです。カレーはあくまでも我々に光を与え、我々に救いを与え、我々に力を与え、我々の道標として存在しています。しかし、いくらカレーが闇を照らし、力を与え、道を示したとしても、その道を歩むのは我ら人間でしかないのです。カレーと共に我々は歩み続けなければなりません。カレーに示された道を行くのみが正しいとは言いません。時には目を背けたり、寄り道をしていくのもけして悪いことではありません。しかし、全ての道がローマへと繋がっているように、全ての出来事は現在過去未来のどこかで必ずカレーと交わります。進んでいるうちにカレーと再び出会い、そしてまたカレーを楽しむことをしてください。我々はそれを望みとしています……では、両手を合わせ、復唱してください……いただきます」

「「いただきます」」

 

 ……長い、と思うのは悪いことなのだろうか。ただ、空腹なのに目の前に美味そうなカレーを置いたまま話を聞き続けるのは中々辛いものがあった、とだけ言っておこうか。

 

 ……やっぱ美味いなこれ。

 

 

 

 ランスロット、カレー布教中。

 間桐桜、新人カレー教信者。

 間桐雁夜、新人カレー好き。

 

 




へっ様のいる世界で万が一にもFGOな感じになったら特異点は多分こんな感じ。


特異点F 炎上汚染都市冬木
第一特異点 狂信咖喱幻想島ブリテン(初手からカレー狂信者供と一緒に蛮族狩り。聖杯はおそらくモルガンかヴォーティガーンあたりが持ってる。マシュの英霊の名前がもうわかる)
第二特異点 主神暗殺道化ユグドラシル(ロキがオーディンを殺害しちゃった。敵対者はロキ。神々と戦えるよ!やったね(白目))
第三特異点 石版決闘騎士エジプト(王様達と一緒に狂信者バクラを始めとするゾーク一味と戦う感じ。聖杯はもちろんゾークが持ってる)
第四特異点 影の国(シャドウワールド)ケルト(修行期間。スカアハを納得させると聖杯をくれる。マシュの格が上がる。ついでにマスターに新しく礼装ができる)
第五特異点 天衝不変神塔諏訪(神奈子が聖杯を手にして暴走したが即行鎮圧されてお仕置き(意味深)。聖杯は洩矢神が持っていて、いろいろな試練を超えたらくれる)
第六特異点 極限魔獣防衛線ウルク(絶対魔獣戦線バビロニアとよく似ている。違いはカレーの有無によって人間の死者数が凄まじく違うこと。あとなんか普通に勝てそう)
第七特異点 始原処女母神オリュンポス(ベルが他の時代から持ってっちゃったやつ。が、竈と一体化してなんだか凄いことに。具体的に何が凄いかというと、カレーの味が良くなる感じで)
終局特異点 冠位時間神殿ソロモン(ほっとくと魔神柱がいつの間にかどんどん倒されて素材が取れない。協力者が強すぎるからね。仕方ないね)
亜種特異点 邪神降誕異界アーカム(本編では書くつもりがないクトゥルフな世界。なお、GMバクラ。協力NPCアテム)
イベ特異点 秋のヘスティアカレー祭り(スパイスを集めてくると種類や量に応じていろいろなものと交換してくれる。カレーと交換するとAP全快したり、令呪が増えたり、カレー用コックコート礼装で一部のサーヴァントに凄まじいバフかけたりできるようになる。もちろん素材もある)


多分こんな感じ。

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